三高歌集

寮歌(光さみしく)

大正十五年 新原安郎 作詞   田澤一郎 作曲

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光さみしく黄昏るゝ
賀茂の柳に影見せて
都慕ひし旅人は
愁の路をはるばると
夢寐にも幸を求めつゝ
今たどり來ぬ神楽丘


ひかりさみしく たそがるる
かものやなぎに かげみせて
みやこしたいし たびびとは
うれいのみちを はるばると
むびにもさちを もとめつつ
いまたどりきぬ かぐらおか


夕べ静けき星空に
思いを馳するふる里の
花美しく綻びし
幻淡く浮ぶとき
ふるへる若き魂は
人に知られで涙する

ゆうべしずけき ほしぞらに
おもいをはする ふるさとの
はなうるわしく ほころびし
まぼろしあわく うかぶとき
ふるえるわかき たましいは
ひとにしられで なみだする


げに吾等こそ荒浪を
渡る小舟に似たらずや
今宵繋がん島も無く
惑へるまゝに漂へば
正しき水路を進めよと
水馴棹執る友ごころ

げにわれらこそ あらなみを
わたるこぶねに にたらずや
こよいつながん しまもなく
まどえるままに ただよえば
ただしきみちを すすめよと
みなれさおとる ともごころ


舵に疲るゝ腕なれど
若き生命の溢れには
人生のもつれ何かせん
眞理を抱くわが胸に
低く傳ふる囁きの
恃みこそいざ謳いなむ

かじにつかるる うでなれど
わかきいのちの あふれには
じんせいのもつれ なにかせん
まことをいだく わがむねに
ひくくつとうる ささやきの
たのみこそいざ うたいなん


噫、その友ともろともに
運命の燈火明くして
この世の縁談らひつ
交みに酌まん宴には
溶くる情の美酒こそ
われらが若き泪なれ

ああそのともと もろともに
さだめのともし あかくして
このよのえにし かたらいつ
かたみにくまん うたげには
とくるなさけの うまきこそ
われらがわかき なみだなれ

(注) この行「闇にも叫ぶ友のこゑ」とも歌う

この歌唱では四番は跳んで歌われている。

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