今にして思うとかなりレアな周辺機器を買っていたものだと思う。買ったのは初めてPCエンジンを入手した直後のことで、「ストリートファイターII’」(’93)で弟相手に対戦格闘をやってみたくなった、という動機だった。マルチタップは店でいろいろ売っていたが、 どうせ5人も一度に遊ぶことなどなかろうし、と最低人数の2人だけの同時プレイができるこの商品を買ったというだけの事にすぎない。だいぶ後になってからこのマルチタップはPCエンジン史の初期に発売され、それっきりのレアな周辺機器であることを知ったのである。今にして思うとその店もなにげによくこんな古い商品を新品で売っていたものだ。
発売元は「X」から始まるその名が示すように、これは「マイコンBASICマガジン」を出していた電波新聞社から発売の「マイコンソフト」ブランド。この「X−HE2」発売の翌月には9500円もするこだわりの逸品ジョイスティック「XE−1PRO HE」を発売している。ファミコンとは違うPCエンジンというニューマシンにこの社がかけた期待の大きさが感じられるところで、当時電波新聞社のスタッフはNECアベニュー発売のPCエンジン初期の移植作の開発にも関わっていたという。
使い勝手については…要するパッドを2つ接続して2人同時プレイが可能になるというだけのことで特に良くも悪くも無い。強いて言うなら5つも端子があっても空きが多くて見栄えがしない純正マルチタップより、無駄の無い設計とデザインのカッコよさはあるだろう。
これと同じ2人用マルチタップはシュールド・ウェーブから発売された「ツインタップ」(’92)なる商品があるそうだが、まったくお目にかかったことがない。また非公認品ながらホリ電機の「ツインコマンダー」という、2人で遊べるようにアダプタをつけたパッドも存在する。
パーティーゲームならともかく、大半はせいぜい2人対戦ゲームなんだからこういうマルチタップの需要もあるんじゃないかと思うんだけど、実際には大は小を兼ねるということなのか、NEC-HE純正の5人用マルチタップ、ハドソン製の3人用マルチタップがPCエンジン末期まで多く出回っていた印象がある。電波新聞社も初期だけで、あとは製造してなかったんじゃないかと思うのだが。