ウィザードリィI・II

ジャンル:RPG
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:ナグザット
発売日:1993年7月23日
価格:8400円
商品番号:NXCD3024


◆「元祖RPG」がいまごろ移植!

外見 「ウィザードリィ」はゲームに興味のある人ならまず知らぬ人はない、と言える超有名作。なにせコンピューターRPGそのものの「元祖」的存在であり、アップルから始まってパソコン、家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機などあらゆるマシンに移植され、今なお新シリーズが発売され人気を博しているという、とんでもない存在なのだ。
 「ウィザードリィ」の由来を語ることはそのまんまRPGの由来を語ることになってしまうぐらいで、あくまでPCエンジンコーナーであるここでは大筋しか書かないが、そもそも「ロール・プレイング・ゲーム」なるものはトールキンの『指輪物語』(「ロード・オブ・ザ・リングス」ですな)の世界を、その世界の登場人物になりきって仮想冒険をすることから始まった。「テーブルトークRPG」などと今日では言われるジャンルの発生だが、それを1980年代に普及し始めたばかりのパソコンで再現して見せたのが「ウィザードリィ」だった。単純な線で描かれた複雑な3Dダンジョンの中をパーティーを組んで探索し、モンスターと戦い、金やアイテムを入手し、謎を解き、経験値をつんでキャラクターを成長させ…というRPGの「お約束」はこの時点でほとんど完成されていた(もちろんテーブルトークの時点で完成していたものをPC上で再現したわけだが)。「ウィザードリィ」はコンピューターRPGというジャンルを確立させ、ファミコン移植によっていっそう一般に普及していった。日本におけるコンピュータRPGの金字塔となった「ドラクエ」がファミコンに登場したのは「ウィザードリィ」より早かったが、そのシステムは基本的には「ウィザードリィ」をより遊びやすくしたものだといっていい。

 さてたいていのゲーム可能なマシンには移植されているのではないかと思える「ウィザードリィ」だが、PCエンジンに登場したのは割と遅めのSCD時代。しかもシナリオ第5作「ウィザードリィV」(’92)から初登場となった。ここで取り上げる「ウィザードリィI・II」はその「V」に続く発売で、そのあとで「ウィザードリィIII・IV」(’94)が発売されるという込み入った順番になっている。もちろん各シナリオは基本システムはほとんど変わらず、ストーリー的にも独立しているので順番は別に問題にはならない。育てたキャラクターをシナリオ間で転送させて遊べるのもこのシリーズの特徴だが、「I」「II」「III」は全く同じシステム上で動いているため同じバックアップRAMを使ってキャラクターデータのシナリオ間転送が可能となっている。先に発売された「V」との間ではバックアップRAM共有が出来ないがパスワードを使用することにより転送が可能。パスワードによる転送なら、別のPCエンジンSCDマシンでシリーズをプレイしている友達などにキャラクターを渡すことなんかも可能になる。


◆狂乱物価の試練場

 記念すべきシリーズ第一作となる「I」は「Proving Grounds of the MadOverload(狂王の試練場)」というタイトルが付いている。目標は地下迷宮の奥深くにいる魔法使いワードナを倒し、盗まれた魔よけの札をとってくること。しかし基本的にストーリーなんてのはどうでもよく(笑)、ひたすら迷宮を探索し、それを解いていくのがゲームの主眼だ。
 さて僕自身はこの手の3DタイプのRPGは初めてではないが、「ウィザードリィ」自体は今回の執筆のためのプレイが全くの初体験だった。「元祖RPG」とはいかなるものなのか、と興味深々でプレイし始めたものの、最初のうちはやることなすことよくワカラン、という状態が続いてしまった。よく分からない原因の大きなものに、種族からアイテム、魔法、コマンドの類に至るまであらゆるものが「英語表記」であることが挙げられる。原作のパソコン版の雰囲気を重視したものなのだろうが、日本の家庭用ゲーム機への移植なんだから日本語訳しても良かったのでは…と思うところが多い。もちろん日本語でセリフや説明がなされる場面も多いのだけれど、それらはなぜか「オールひらがな」の小さなフォントで表示され、はっきり言ってよみにくい。これも原作の雰囲気を重視したものではあるんだろうけど…。

 まずキャラクターを作らねばならない。デフォルトですでに何人か用意されているが「FIGHTER」「SAMURAI」「PRIEST」だのといった英語の、しかも職業名そのまんまのキャラばかりなので自分で作りたくなるのが人情というものだが、人間、エルフ、ホビット、ドワーフといった種族を選び(こうした種族も『指輪物語』以来の伝統だな)、なおかつその特性値を割り振ってなれる職業を選ぶことになる。最初のうちはこれすらもよく分からない始末だった。
 そしてようやくキャラが作れて使用するシナリオを指定し、いよいよ酒場でパーティーを組むお約束の展開だ。しかしこれも自由にはいかない。キャラ作りをしたときに「善」「悪」「中間」という性格づけを行っているのだが、「善」と「悪」は基本的にパーティーを組めないのだ。しかも後で分かってくることだがダンジョン内で「友好的な敵」と遭遇して戦っていると「善」が「悪」になってしまうケースがあり、さっきまで組んでたパーティーを一回解散したら組めなくなってしまった、なんてことも起こるのだ。
 パーティーを組んだらお買い物。所持金でボッタクリ、もといボルタック商店へ各自赴いて使用できる武具を買うことになるが、これがなかなかに高いのだ。もちろん安いのはあるにはあるが、その次ぐらいに強そうなのが一様に物凄く高い。とにかく当分の間は手が出せそうにない値段設定になっている。
 武器・防具とくれば薬類を買っておくのがRPGのお約束だが…これがまた高い。薬や呪文類が売られていはいるのだがはっきり言って序盤は手が出せない高さ。それでいて結構序盤でほしいものが多く、とにかくこの商店の値段設定には泣かされたものだ。

ひたすら続くダンジョン なんだかんだでパーティーを組み、いよいよダンジョン一階へ侵入。オートマッピングなんて便利なものはないから、当然ダンジョンは一歩一歩進みながら鉛筆で方眼紙などに書き込んでいくことになる。で、結構これが分かっているつもりでも単調な画面ゆえに迷いやすいのだ。視点を変更しても切り替えの動きが全くないうえ、扉などが見えたり見えなかったりするし。おまけに場所によっては視界が全く無い「ダークゾーン」が設けられていて、しっかり自分の位置・方向を確認しておかないと思い切り路頭に迷うことになる。なお、デフォルトではダンジョンの壁が綺麗に描きこまれているが、オプションで設定すれば元祖パソコン版と同様の黒地に白い線で描いただけのシンプルな画面にすることもできる。これもオールドファン向けのサービスなんだろう。
 基本的に各階は20×20のマス目でマップが作られている。マップの端までいくと反対側の端に繋がっていることも多く、慣れないうちはいろいろと戸惑うことも多い。あるマスに止まると強制的にプレイヤーの向きが変えられてしまう(ターンテーブル)なんてこともあって、結構意地悪なマップにもお目にかかる。

 そして扉を開けるとたいていモンスターと遭遇して戦闘になる。この戦闘も慣れないうちは大変だ。直接武器で斬りあえるのは前列の三人のみで、後列三人は魔法などによる攻撃、もしくは回復サポートに徹することになる。だから当然パーティーには半分ぐらい魔法使いや僧侶を混ぜておかねばならないわけだ。
 成長してくると戦士やサムライなどより魔法使い系統の方が圧倒的に頼りになってくるのだが、彼らの魔法使用方法がやや特殊(あくまでその後のRPGに慣れた立場からだが) 。MPを消費するといったものではなく各魔法(魔術系と僧侶系がある)のレベルごとに、各成長クラスで決められた回数ぶんだけ使用できるという決まりなのだ。未プレイ者には説明しにくいのだが、役に立つ魔法はあっさり回数分使いきり、用の無い魔法は売れ残り気味、という状態になりやすい。特に序盤ではダンジョン内で息切れ状態になりやすく、行っては戻りを繰り返すハメになる。

 モンスターを首尾よく倒すとお約束でお金が手に入るが(よく考えると「RPG最大の謎」。このころからあったわけだ)、これがかなりケチ。序盤ではさんざん苦労して勝利しても一人当たり一ケタぐらいのお金しか入手できない。しばしば宝箱を入手できることがあるがかなりの確率で罠がしかけられており、魔法で罠を見抜いても罠はずしに失敗することはしばしば。毒なんぞかぶってしまうと毒消し魔法か呪文を持ってなければ2、3歩歩いただけであの世行きだ。僕などはこの宝箱で何度かキャラ死亡の憂き目に会い、すっかり宝箱恐怖症になってしまった(笑)。
 死亡したキャラクターは城にある寺院にお布施をしてお祈りしてもらえばよみがえらせることができる。「ドラクエ」でもおなじみだったこのシステムだが、当然ながら激しく高いお布施を要求される。払えなければ「背教者よ去れ!」と追い出される、かなり強欲な寺院である。しかも困ったことに大枚はたいて復活を要求しても結構失敗率が高いのだ。復活に失敗したキャラは「灰」状態になり、その復活はなおさら高価となる。悪くすると「LOST」となって永久にゲームから消滅だ。そんなこんなで、寺院での復活なんてのをいちいち頼んでいたら金欠状態になりまくりなので、僧侶系キャラが成長して復活魔法を覚えるまでは死者についてはあきらめる、ということになる。
 なおパーティーが全滅した場合でも、その死体がダンジョン内にそのまま残っていることになっていて他のパーティーを派遣して「救出」することも出来る(死体ぶんのキャラの空きが必要)。死体をかついでダンジョン内をウロウロしているというのも想像するに恐ろしい光景だが(笑)。

 とにかく苦労して探索し、九死に一生、という気分でスタート地点の「城」に還ってきても、よくあるRPGのように簡単には疲れを癒せない。宿代がこれまたとにかく高い。値段はピンキリで高い良い部屋ほど回復が早いのだ。いちおう無料の「馬小屋」に泊まる事も出来るが、体力は回復せず魔法が回復するだけ。序盤では回復はほとんどパーティーメンバーの魔法を使って行い、魔法使いだけを宿に無料で泊まらせる、という展開になるはずだ。
 なお、経験値をためてのレベルアップはRPGの醍醐味といえるものだが、「ウィザードリィ」では規定の経験値がたまってもダンジョン内ではレベルアップせず、宿屋で休んだときにレベルアップする仕掛けになっている。この時に魔法呪文を新たに覚えたりした時の感動はひとしおだ。


◆全滅しまくり→リセット作戦

 まぁとにかくいろいろと書いたが、「元祖RPG」の手ごわさは事前の想像以上のものがあった。慣れない序盤戦ではとにかくパーティーを全滅させまくったものだ。全滅したパーティーはその現場に死体となって転がっていることになっていて、別のパーティーで救出に行くことも可能だが、先述のようになにせ高くつくものだから、ほとんどあきらめるようになっていた。しかしそこそこ成長させたパーティーが全滅したときはやはり痛く悔しいもの。そうこうしているうちに覚えるのが「何かあったら即リセット」作戦である。

 この「ウィザードリィ」のセーブシステムは独特で、聞くところではオリジナルのパソコン版以来の伝統であるらしい。宿屋でセーブするとかではなく、ダンジョン内でキャンプを張ったとき、または戦闘終了時に自動的にセーブが行われる仕掛けとなっているのだ。だから「あ、全滅しちゃった。しょーがないな、セーブしたデータからやり直そう」というマネは不可能なのである。戦闘で誰かが死んじゃったり、あるいは戦闘でパーティーが全滅したり、罠にはまったり、呪いアイテムを身につけちゃったり、あるいはテレポート先を間違えて「岩の中」に入っちゃったり…といったことが起こってからではもう遅い。とにかくなんかマズイことが起こった文字表示が出たら即リセット!しちゃうのだ。このゲームはリセットしてもCD−ROMシステム起動画面に戻るのではなくゲーム冒頭の城に戻るだけで、そこからダンジョン内のパーティーを再開するコマンドを選べば前回自動セーブが行われた地点から再開することが出来るのだ。

戦闘場面 この「リセット作戦」については、「そんなのは邪道だ!」という意見もあろう。あくまでリアルに、まっとうに勝負して幾多の屍の上にゲームを解いていく、というのも面白いと言えば面白いが、慣れてきて「ウィザードリィ」攻略の面白さにハマった人のセリフじゃないかなぁ、というところ。とにかくWIZ初体験であり、とにかく解くことに重きを置いた僕などはひたすらリセットしまくり、「I」をクリアしたときにリセット回数が「169回」と表示されていた(ゲーム中断時に習慣でリセットした分も含む。念のため)。くそっ、ちゃんとカウントしていやがったな(笑)。

 急ぐだけ急げば、「I」については結構早く解けてしまうと思う。もちろんいくつか凶悪な謎や罠も存在したが、思いつくことをどんどんやっていけばクリアじたいは楽。で、目的を達してエンディングを拝んでも続けるのはプレイヤーの勝手だ。
 先ほども書いたが実のところシナリオじたいのクリアはあまり問題ではない。このゲームにハマってくると、ダンジョン探索そのものと、そしてモンスターとの戦闘に勝利してアイテムをゲットすること、そしてキャラクターのレベルアップをどんどんさせ転職させるなどして強力なキャラに育てていくこと、それら自体が楽しくなり、中毒状態に陥ってしまうのだ。こうした中毒状態はその後の「ドラクエ」などのRPGにもしっかりと受け継がれた、RPGの醍醐味と言えるものだ。

 「I」をクリアしたら、今度は「II」へ。もっとも本作ではキャラを作ってシナリオごとに登録しておけば「I」からでも「II」からでも始めることが可能。まぁそれでも「I」でキャラクターをある程度育ててから「II」を始めるのがセオリーという気もする。実際オリジナル版「II」では「I」クリア済みが必須であったようで、実際「II」では最初の階から敵がそこそこ強い。なお、「I」で使っていたキャラを「II」へシナリオ変更すると、レベルは1に戻されHPも半分に減らされる。

 「II」のシナリオ名は「The Knight of Diamonds(ダイヤモンドの騎士)」。原作でもシナリオ2に当たる本作だが、ファミコン版では「III」になっていたためそちらで知ってる人も多いとか。神殿の奥深くにあると言う杖を探しに行くというお話だが、これまたストーリー自体はあってないようなもの。「I」とはやや色調とBGMが異なるダンジョンの中で、ひたすら迷宮探検をして宝探しやら戦闘やらに明け暮れることになるが、やや序盤のモンスターのレベルが高く、最初の階からいきなりダークゾーンがたくさんあるなど上級者向き。「II」からいきなりプレイできる仕様になってはいるのだが、恐らくは「I」をクリアしそのキャラクターを使うことが前提となっているように思われる。

 そしてこの「II」でさらに苦しめられるのが各所で出される「なぞなぞ」だ。さすがに「なぞなぞ」自体は日本語字幕で出題されるのだが、これを英語で答えなければならない!これに答えなければアイテムも手に入らず先にも進めないという重大な問題なのだが、これがかなり難しい。一部のものについては僕もどうにか解いたのだが、それでも全く分からずネット上を探し回ってようやく答えを知ったというものもあった。そこで知ったのだが、この難題はなぜかPCエンジン版のみのオリジナル要素であるらしく、他機種の同シナリオにはそんなものはないらしいのだ。古いソフトの移植だから何かオリジナル要素を、と思ったのかもしれないが、これはちと難しいんじゃないのか。調べてみた限りでは他にも重要な部分でアレンジがなされているらしい。

 この「II」、全体的にザコ敵が強いが、それでもクリアだけひたすら目指せば(なぞなぞさえクリアすれば)、階層も少ないので割と早くクリアしてしまえると思う。もちろん「I」同様にそのまま探索を続けるのもOK、あるいは気分転換に「I」にキャラクターを転送して両方行ったり来たりでで遊んでみるのも一興だ。
 そしてこの時点では未発売だった「III」にキャラクターを転送することも可能となっている。これはパソコンライクで親切な作りだなと感心するところではあるのだが、難が一つ。本作は恐らくそうした仕様のため必要なセーブデータ容量が異様に大きくなっており、PCエンジンのバックアップRAMを全て使い切ってしまうのだ。「ウィザードリィ」シリーズをプレイしている間は他のセーブデータ必要ゲームはプレイ不能と腹をくくらなければならない。
 
 最後になるが、このPCエンジン版「ウィザードリィ」の「I」〜「IV」のモンスターデザインはファンタジー系の有名イラストレーター山田章博氏によるもので、当時さまざまな機種で展開されていた「ウィザードリィ」の中でも出色の出来なのではないかな…と個人的には思う。
 

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.66
3.85
3.84
3.65
3.88
3.46
22.34
第188位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
75
パトリオット佐藤
70
ウォルフ中村
90
メタラー佐々木
85

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

ローリング内沢

中村美紀

ジョルジュ中治



迷い込んだ方はこちらから