ギャラガ'88 
ジャンル:シューティング
媒体:Hu-CARD(2M)
発売元:ナムコ
発売:1988年7月15日
価格:4900円
商品番号:NC63002


商品外見◆古典的シューティングの移植作

 「ギャラガ'88」(’88)は、そのタイトル数字の前年の1987年にゲーセンにお目見えしたナムコのシューティングゲーム。そしてPCエンジンには数字通りの1988年に素早く移植されている。1988年といえばPCエンジンの歴史の最初期で、このPCエンジン立ち上げ時にナムコはハドソンと並ぶ有力なソフト供給メーカーとなっていた。そのナムコがゲーセンで大人気のソフトを速攻で移植したわけで、当時としてはかなりのキラーソフトだったと思われる。

 ここで「ギャラガ'88」に至るナムコシューティングの歴史を簡単に。1978年にタイトーの「スペースインベーダー」が社会現象になるほどの大ヒットを記録したあと、その後釜を狙ってナムコは1979年に「ギャラクシアン」をリリースした。これは「インベーダー」を改良したものといってよいものだったが、敵キャラの動きに個性が加わり、画面下まで来た敵はまた画面上方から再出現するという仕掛けになった。
 「ギャラクシアン」は「インベーダー」の後釜として人気を博し、ナムコはさらなる改良を加えた「ギャラガ」を1981年にリリースする。敵キャラはより個性的となり、攻撃方法も多彩。その編隊を組んでの動きも実に見事で、音楽とあいまって「芸術的」にさえなった。また後述するように自機をわざと敵に捕獲させパワーアップをはかるとか、ボーナスステージの導入とか新しい試みがさまざまに加えられた。これまた息の長いヒット作となり、1984年にはさらなる続編「ギャプラス」もリリースされた。

 そして1987年に「ギャラガ'88」が出る。これは続編というよりリメイクで、あくまで「ギャラガ」のパワーアップ版である。基本的にはほぼ同じシステムなのだが、コース分岐ルールやスクロール面、巨大ボス戦など「ギャラガ」後のシューティングゲームの新要素が加えられた。
 このPCエンジン版はゲーセンでのリリースから間もない時期に移植されたもので、TV画面に合わせて若干のアレンジがあるほか(縦長画面を横長にしたため「寸詰まり」感がある)、容量の都合から一部コースや演出の削除、家庭用向けに難度を下げるといった変更点もあるが、敵編隊の芸術的な動きやそれとシンクロする音楽を実によく再現していて、当時としては良質な移植といえるだろう。


◆音楽とシンクロする華麗なる動き

 一応「新作」の移植なのだが、もともとの「ギャラガ」自体がすでに「古典」となっていた時期でもあり、発売当時でもさすがに「デコレーションされた古いゲーム」な印象があったと思う。なにせ自機が画面下に固定され左右にしか動けない。これぞまさしく「インベーダー」の流れをくんだ仕様で、画面上に整列状態になる敵キャラを「撃墜」して全滅させれば面クリア、というところも同様。ただし画面下まで来た敵がまた画面上から戻って来る仕様、敵キャラに種類があってそれぞれ個性が設定され、それが編隊を組んで華麗な動きを見せてくれるところが「ギャラガ」のオリジナリティだった。

 もう一つ、「ギャラガ」の大きなオリジナリティが、自機をわざと敵に「捕獲」させ、それを取り返すことで自機のパワーアップがはかれる、という仕組みだ。敵キャラの中の「ボスギャラガ」は吸引ビームを放って自機を捕獲して来るのだが、ここであえて抵抗せずに捕獲されておき、次の自機でこのボスギャラガを撃墜すると、捕獲された前の自機が画面下に降りて来て自機にくっつき、二機セットになった「デュアル」状態になる。こうなると攻撃力は単純に倍増し、かなり楽にゲームを進めることができるようになるのだ。

巨大ボス戦 「ギャラガ'88」ではこのルールがさらに発展し、ゲーム開始時に自機の種類を「SINGLE」「DUAL」の二つから選択できるようになった。つまり「DUAL」を選べば最初からデュアル状態なのだ。攻撃力は倍増、その代わり敵弾に当たってしまう幅も大きくなるわけだけど、そのデメリットを埋めてあまりある攻撃力なので、楽に勝負したい人はこっちを選ぶと思う。
 で、「'88」でも捕獲→奪還ルールがあり、「デュアル」状態でわざとボスギャラガに捕まり、それを奪還すると一気に大型の「トリプルファイター」にパワーアップできる。いったんこれになってしまえばほとんど無敵状態。もちろん敵弾に当たる確率も上がるのだけど、当たっても「トリプル→デュアル→シングル」とパワーダウンしていくだけで即死亡でもない。

 また「'88」の新要素として、「ディメンションワープ」と名付けられたルート分岐がある。ステージ内で小惑星などの障害物を破壊したり「ゴエイ」という敵キャラの合体状態を撃墜すると「ワープカプセル」が落ちてくる。このカプセルを二つ手に入れておくと、ルート分岐時により次元(ディメンション)の高いステージへワープすることができる。高次元ステージほど得られる点数も高いのだが難度も高いため、クリアを優先してあえてカプセルを取らず低次元ルートを進むという選択肢もある。PCエンジン版ではゲーセン版よりルートが一つ削られて「ディメンション」は最終的に4つ。それぞれに異なるエンディングが用意されている。

 さらに「'88」では前作のボーナスステージを改良した「ギャラクティック・ダンシング」というステージが6つ用意されている。いっさい攻撃してこず画面内を動き回る敵編隊を撃墜してボーナス点を稼ぐステージなのだが、「ダンシング」とあるように、音楽に合わせて編隊が動き回る、撃墜するのが惜しくなるほど実に芸術的なステージとなった。出て来る敵機全40機を撃ち落とすと「パーフェクト」とお祝いの花火が打ち上がり、さらなるボーナス点がつく。
 この「ギャラクティック・ダンシング」は「'88」の最大の見どころと言っていいほどで、音楽と動きの見事なシンクロぶりはPCエンジン版でも(若干のアレンジはあるが)実に良く再現されている。

 この「ダンシング」だけでなく、通常ステージでの敵キャラの動きも実に見事なものだ。各面では最初に敵が編隊を組んで次々と画面内に入って来て、それがやがて画面内の所定の位置に停止し、自機に向かって多種多様の総攻撃をかけてくる様もやはりダンスのよう。撃墜された時に花火のように弾けて派手に音を立てる者もいるし、手裏剣を放って来る者、分裂して襲いかかって来る者、画面下で一回転して不意を突いて来る者など、目にも耳にも飽きさせない作りになっている。編隊で飛んで来るのでポイントを押さえて集中的に撃つと一挙に連続撃破できるのも爽快だ。
 オリジナルはプレイしたことがないのだが、このPCエンジン版は画面構成の変化もあるし、家庭用ということでかなり難度を下げているとの評価を聞く。それでも僕なんかにはかなり難しいレベル。デュアル、トリプルになればなんとか進めるが…。裏技として、スタート時に上を押しながらRUNを押すと裏面モードに入り、そこでデュアルを選ぶとカプセルをとっただけでトリプルモードになったり、一定時間無敵や連射を可能にするカプセルなども用意され、「裏」と言いつつ初心者向けな作りになっている。
 

◆STG史の1ページとして

 僕自身、このゲームはつい最近になって初プレイしたのだが、ゲーム内容そのものよりも原色系のカラフルさやスムーズでリズミカルなキャラの動き、それと音の演出とが、古めかしさを覚えつつもかえって新鮮だった。当時プレイしてないので「懐かしさ」は感じないのだが、そこで試みられている「新しさ」は時代を越えたものがあるんだなと思ったものだ。

 PCエンジンは発売当時のゲーセンの主流であるシューティングゲームの移植を念頭に設計されているため、特に80年代のアーケード向けシューティングゲーム名作の多くが高い移植度で移植され、ちょっとしたゲーセン博物館状態になっている。シューティングの元祖とも言うべき「インベーダー」も「スペースインベーダーズ復活の日」(’90)「スペースインベーダー・ジ・オリジナルゲーム」(’95)となぜか2作も出ているので、それをプレイしてからこの「ギャラガ'88」をプレイし、「ゼビウス」「グラディウス」「スペースハリアー」「ダライアス」「R−TYPE」と進めてシューティングゲーム発展の歴史を学びながら遊ぶというのも一興だろう。中でも「ギャラガ'88」は一つのゲームの中でオリジナル「ギャラガ」の古典ぶりと、その後のシューティングが導入していった各種要素が同居しているところに面白さがある。
 
 また、この「ギャラガ'88」は当時の主流マシンであったファミコンには移植されず、PCエンジン以外ではパソコンX68000とゲームギアしか移植されていなかったので、PCエンジン版はオリジナルに近い雰囲気のものを家庭用で手軽に遊べるものとして貴重な存在だった。本作は海外向けPCエンジン「TG16」用にもリリースされたが、発売時期のせいで「GALAGA'90」と改名している(中身はまったく変わらない)

 2007年には任天堂Wii向けの「バーチャルコンソール」でPCエンジン版が配信され(アーケード版も配信された)、さらに2011年にPSP・PS3向けの「ゲームアーカイブス」でも、このPCエンジン版が配信されているので、最近のゲーム機でも本作に触れることは可能だ。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.085
4.082
3.793
3.886
3.821
3.912
23.061
第119位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★


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