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「ルパ
ンの結婚」(短編)
LE MARIAGE
D'ARSÈNE LUPIN
初出:1912年11月「ジュ・セ・トゥ」誌94〜95号 単行本「ルパンの告白」所収
他の邦題:「アルセーヌ・ルパンの結婚」(多数あり)「ルパンの花嫁」(青い鳥文
庫)など
◎内容◎
名門貴族サルゾー=バンドーム公爵の娘・アンジェリクに突然ふってわいた結婚話。その相手はなんとアルセーヌ=ルパンだった!激怒する公爵を尻目に、ル
パンはマスコミを使って結婚話を大宣伝し、深夜公爵邸に忍び込んでアンジェリクに婚約指輪をはめていくなどやりたい放題。恐れた公爵はブルター
ニュの領地に入り、強引にアンジェリクと従兄弟の結婚式を挙げさせるのだったが…
◎登場人物◎(アイウエオ順)
☆アナトール=ド=カオル
シュ
アンジェリクのいとこの求婚者の一人。小柄でやせて病弱。
☆アルセーヌ=ルパン
怪盗紳士。
☆アンジェリク=ド=サル
ゾー=バンドーム
サルゾー=バンドーム公爵の一人娘。文学好きの夢見る女性で、33歳になってもまだ独身。
☆イヤサント
サルゾー=バンドーム公爵の召使。
☆警視総監
サルゾー=バンドーム公爵にルパンの手口について忠告。
☆ジャック=ダンボワーズ
アンジェリクのいとこで求婚者の一人。ひょっろとして赤ら顔で内気。
☆ジャン=ド=サルゾー=
バンドーム
ブルボン・コンデ公、サルゾー=バンドーム公爵という名門貴族。ルパンの娘への求婚に激怒する。
☆ショトワ
新聞記者。
☆ダンドレジー伯爵
社交界の有名人。アルジェリアでダンボワーズと知り合う。
☆ポール=ド=ミュッシー
アンジェリクのいとこで求婚者の一人。太っていて鈍重で顔色が悪い。
☆ルプティ
新聞記者。
◎盗品一覧◎
☆高価な骨董品数点
☆サルゾー=バンドーム公爵の
財布
☆ありったけの宝石
☆ネクタイピン
☆真珠のカフスボタン
☆時計
以上は全てパリ・バレンヌ通りのサルゾー=バンドーム公爵の館から盗み出された。
☆千百万フラン相当の証券類
アンジェリクの財産(持参金?)。
☆50万フラン相当の無記名債
券
サルゾー=バンドーム公爵からの個人的贈り物。
ただし、上記二つについては結局盗み出せなかった可能性が高い。
なお、ルパンが最後に50万フランを修道院に寄付している。
<ネタばれ雑談>
☆ルパンが大貴族令嬢と結婚!?
単行本
『ルパンの告白』の最後を飾るのがこの
『ルパンの結婚』だ。ただ執筆順からいうと
『麦わらのストロー』『白鳥の首のディス』より早く、これら
「告
白」シリーズ後期の最初の作品として発表されている
。『水晶の栓』
の新聞連載が1912年の11月9日まで続いており、それとほぼ同時といっていい11月15日号と12月15日号の「ジュ・セ・トゥ」に2回に分けて載っ
たこの作品は、内容的にも『水晶の栓』と密接に関わっている。『水晶の栓』のエピローグで、ルパンはヒロインのクラリスとの恋に破れ、クラリスとの間に越
えられない壁をつくるために「結婚」に踏み切ったと語っており、これが本作のエピソードなのだ。『水晶の栓』のジルベールの処刑執行日が1907年3月
12日と推定されることから、本作における結婚式予定の日付「5月4日」は
1907年5月4日と確定してよいと思われる。
ただ『水晶の栓』で語ったような失恋による動機は、『ルパンの結婚』そのものの中にはまったく描かれていない。それどころかどうみても財産目当ての偽装
結婚、ぶっちゃけた話
「結婚詐
欺」そのものといっていい計画だ。また作中でルパンがこの結婚をマスコミを使って大々的に宣伝していたはずなのに『水晶の栓』の「わたし」
は全くその事実を知らない様子。
こうした食い違いは、恐らく本作が『水晶の栓』以前、少なくともその終盤執筆以前に書かれていたもので、『水晶の栓』の結末を書く中で「二つの話をつな
げちゃえ」などとルブランが急に思いついたためではなかろうか。
さて、この話は面白いっちゃあ面白いのだが、倫理的にちょっとどうなのよ、と言いたくなる話でもある。もちろんルパンの「本業」自体が犯罪であるわけな
んだけど、今回の犯行はモノとカネを盗むだけでなく一人女性の人生をムチャクチャにしてしまうものだ
(あとで気づいて自分でそう言ってるけどね)。
『白鳥の首のエディス』でガニマールが言っていたように、ルパ
ンは自分が行う犯罪がどういう結果を招くかよく考えて行動するのではなかったか…?オールド・ミス状態のアンジェリク姫の容姿もよーくご承知であったた
め、美女のような扱いはしなくていいと思ってなかったでしょうか、ルパン君?
しかし…そんなことを書きつつ僕自身はどうもこの話が嫌いではない。一つにはこのアンジェリク姫のキャラクターがルパンシリーズ史上異例の設定であり、
それだけに独特の輝きを放っているせいである。騎士道小説や恋愛小説の世界にあこがれ、ある意味現実逃避なんだけど
「いつか白馬に乗った王子様が」と夢見る文学少女。天下の怪盗紳士
アルセーヌ=ルパン本人が深夜に忍んできて指輪をはめていったとき、「ときめいちゃう」のも無理はなかろう。ルパンの真意を知った上で彼を逃がしてやるの
も甘いと言えば甘いのだが
(創元推理文庫の中島河太郎さんの解説で
も「甘い」って言ってますね)、こういうキャラクターだけにその行動には説得力がある。
そしてこのアンジェリクの心に気づいた時、ルパンが純情少年のように慌ててしまうのがいいではないか!今ごろ気づくな、と言いたくなるところもあるが、
自分の行動が彼女にいかに迷惑をかけるかに気づいて大慌てし、本気で
「ロー
マ教皇に謁見を!」などと言い出すくだり、アンジェリクでなくても笑っちゃうだろう。そして明らかに不美人と思われるアンジェリクの瞳の美
しさに気づき、そして彼女の純粋な心に本気で惚れ込み、思わずこう叫びそうになる。
「いこう…!いっしょに逃げるんだ!あなたは僕の妻だ…伴侶だ…
ぼくの危険も、よろこびも、苦しみも分かちあいましょう…ふうがわりでスリルがあって、華麗な、そしてすばらしい生活ですよ…!」(偕成社版、長島良三訳)
ルパンにここまで言わせた女性キャラがいたか!?しかもこの出かかった叫びを、ルパンは顔を赤らめてグッとこらえる。そんな言葉をかけてはいけない女性
だ、と…ああ、言ってたらどうなってたかなぁ…まぁもともと同業のソニアならともかく、アンジェリクでは確かにルパンと一緒に冒険するのは不幸になるだけ
だろう。代わりに出たのは、
「いままでたくさんの悪事をかさねてきましたが、これほどつらい
思いをしたことがありません。ぼくははずべき人間です…あなたの一生をめちゃくちゃにしてしまった…」(同上)
という、実にルパンらしからぬセリフ。でもアンジェリクはルパンにこのささやかな冒険を感謝して、修道院に入っちゃうのである。現代人的にはいろいろ異
論も出そうな話ではあるが、当時のことで考えれば女性が「自立」して自らの人生を決めるという意味で、決して世を捨てるのではなく前向きな生き方なのだろ
う。このあまり美人ではないが夢見る純情な文学少女、という設定は、もしかすると毎度美女のヒロインばかり描いてきたルブランが「ルパンに結婚させるなら
こういう女性」と、実は自分の好み(?)も交えて創作したんじゃなかろうか…などと僕は勝手に想像してるんですけどね。
彼女に対する贖罪のつもりでもあるのだろう、ルパンが彼女のいる修道院に50万フランを寄付することでこの物語は終わっている。ルパンが寄付なんてした
のはもちろん初めてのこと。しかも50万フランといえば、『白鳥の首のエディス』の大仕事の稼ぎより多いのだ!
そんなこんなで異例づくめとも言える本作、読後感もあいまって僕は結構好きなのだ。またヒロインとの関係以外でも、ルパンならではのアッと驚くトリック
も読みどころ。またルパンお得意のマスコミ利用戦術が大々的に展開されるところもかなり笑える。
なお、やはり結婚詐欺ばなしはどう改造しても児童向けには「ふさわしくない」と判断したのだろう。
南洋一郎の「怪盗ルパン全集」では本作は最初から完全に無視されて
おり、当然現行のポプラ社版「シリーズ怪盗ルパン」でもこの話は読むことが出来ない。ただ、南版のルパンがやたらに孤児院など慈善事業に寄付するのは、こ
の一編のラストをヒントにしている可能性が高い。
☆名門中の名門だ!
ルパンの結婚相手となるアンジェリク姫は、ルパンが勝手に出した結婚式招待状によれば
「ブルボン=コンデ公女アンジェリク=ド=サルゾー=バンドーム」と
いうもの凄いものである。その父親である
ジャン=サルゾー=バンドーム
公爵について、本文ではいかに大変な名門一族であるか、また当人がその名門の地位をいかに誇っているかが詳しく書かれている。
まず
「サルゾー
(Sarzeau)」という姓だが、これは本文中にもあるように、ブルターニュ半島の南の付け根に実在する地名である。ここを支配していた
サルゾー男爵(ジャン公爵のひい祖父様)が
バンドーム公爵の娘と結婚してその地位を継承したため「サルゾー=
バンドーム公爵家」となったとされている。「バンドーム(ヴァンドーム)公」というのもフランス王室に連なる由緒ある名前なのだが、この両者を組み合わせ
た公爵家というのは、さすがに創作な
のではないだろうか。
この初代のサルゾー=バンドーム公爵について史実っぽいエピソードを紹介しているが、さすがに実在の人物ではなさそう
(未確認なだけかもしれないが…)。事情は良く分からないが十
年間もバスティーユ牢獄にぶちこまれて
(偕成社版のみなぜか「7
年」となっている)、その後ようやく
ルイ15世(在位1715-1774)に無理矢理称号を与えられた、とある。
原文でもここは意味がとりにくいのだが、バンドーム家との縁組をルイ15世に強いられた、と解釈するところなのか。
ルパンが「ご先祖」の肖像画を見て
「フランス元帥オラース=ド=
サルゾー=バンドーム閣下」と呼ぶシーンがあるが、調べた限りではやはり実在はしない模様。連想で余談を語ると、現時点で未発表の小説
『ルパン最後の恋』にはルパンの祖父がナポレオン1世のもとで
活躍した「ルパン将軍」である、なんて話が出てくるそうだ。
アンジェリクの父ジャン=サルゾー=バンドーム公爵については
「旧
体制(アンシャン・レジーム)のいかなる偏見も捨てていなかった」とか
「青年時代にシャンポール伯爵に亡命に付き従った」とか
「フランス下院に議席を得たが、身分が下の者とは同席できぬとことわった」と
か、凄い話がつらねられている。これらについても解説が必要だろう。
まず
「旧体制(アンシャン・レジーム)」について。高
校で世界史を習った人にはおなじみだろうが、フランス革命以前の、国王と貴族(第二身分)および聖職者(第一身分)といった特権階級による支配体制を指
す。これらの体制が市民(第三身分)によって打倒されたのが1789年から始まる「フランス革命」というわけ。しかしその後ナポレオン時代と「王政復古」
を経て、「七月革命(1830)」「二月革命(1848)」といった市民革命が続くが、「旧体制」の支配階層は少なくはなりながらもしぶとく生き残っても
いた。
「シャンポール伯爵」というのはブルボン家の最後の王
位継承者と言われた
アンリ=ダルトワ(1820-1883)のこと。フルネームを
「アンリ=シャルル=フェルディナン=マリー=デュードンネ=ダルトワ」と
いう魔法の呪文みたいなお名前のこの人は、ブルボン家最後の国王
シャルル10世(在位1824-1830)の孫に当たる人物。シャルル10世は
1830年に起こった七月革命で退位させらた際に王位をこの孫に譲っており、このためブルボン王家再興を目指す人々のあいだでは彼は「アンリ5世」と呼ば
れ
た。しかし七月革命後のフランス国王はオルレアン家の
ルイ=フィリップになって
しまい、アンリ=ダルトワ当人は国外へ亡命し、儀礼的に「シャンポール伯爵」を名乗っていた。その後1848年の二月革命でオルレアン王家が倒れ、その後
の
ナポレオン3世に
よる「第二帝政」が1870年の普仏戦争で倒れ…とブルボン王家復活のチャンスは何度かあったが、結局夢を果たせぬまま1883年にシャンポール伯アンリ
は亡命先のオーストリアでこの世を去っている。
小説中のサルゾー=バンドーム公爵の「青年時代」というのがいつごろか判然としないが、フランス下院議員になったことがあるというから、1870年代以
前にシャンポール伯爵のもとに付き従っていたことがあるのだろう。
「ブ
ルボン=コンデ公」という凄い肩書きは「シャルル10世に与えられた称号」とあるから、この時期に授けられた設定と思われる。「ブルボン」
とはもちろん
アンリ4世以
後フランス王家となった家系であり、「コンデ公」というのもその支流の名門。無理矢理日本で例えるなら
「徳川-松平公」みたいな響きなのではないかと。ブルボン王家が亡命後のことな
ので、実質的意味はあまりないと見ていいだろう。
『水晶の栓』でも触れたように、このフランス第三共和政の時代はブルボン王政再興、オルレアン王政再興、ボナパルト帝政再興、をそれぞれにはかる勢力が
ひしめき合う状況でもあったのだ。それらもさすがに「ルパンの時代」である20世紀初頭にはほぼ影をひそめていたようだが…。
☆アルセーヌ またも良く似た 人に化け
ネタばれの雑談だとしつこく断っているのでまさか未読の方は読んでいないだろうなぁ…と警告しつつ以下の話を。
この作品でルパンは久々に「実在の人物」に化けている。変装の大名人ルパンといったって、ルパン三世みたいに誰にでもホイホイ化けられるわけがない。あ
くまで俳優のメーキャップと演技レベルで他の人物に化けるのであり、良く知られた実在の人物に化けるなんて危険なことはしていない。本作で
ジャック=ダンボワーズにまんまと化けているが、それは本物の当人
が長くアルジェリアに出かけていて、公爵はじめ知人もしばらく会っていないという前提がちゃんとある。おまけにもともとダンボワーズはルパンと姿格好が似
ていたというのだ。
ルパンが過去に「実在人物」に変装した例を思い出してみよう。
『ル
パンの冒険』で
シャルムラース公爵に化け
たことがあるが
、これもやはり当人がルパンに良く似
ていたことが明記されている。さかのぼれば『
ルパンの脱獄』で
変装した
デジレ=ボードリュも、やはりもともとの見かけ
がルパンと似ていた。よくまぁそう都合よく似た人がいっぱいいるもんだ、と思うところもあるが(笑)、ルパン自身の姿かっこうがごくごく平均的なものであ
るということかもしれない
(「美男子」ではあるらしいが)。
似てない人としては
『奇岩城』で
マシバン博士に化けたことがあるが、これだってボートルレはじめ顔
をあわせる人々がマシバン氏本人を良くは知らない状況でのことだ。
『813』の
ルノルマンだってインドシナに行って長いこと留守だったからこそ、
なりすますことができたのだ。
ルパンが化けた偽者と分かった上で公爵が「ダンボワーズ」をじっと観察する描写がある。
公爵はつとめて平静にふるまった。ときどきこっそりと婿を見て
は、本物のダンボワーズにそっくりなのに驚いた。肌の色、顔つき、髪のかたちまで、いっしょなのだ。だが、目つきはちがっていた。こっちのほうがより鋭
く、より輝いている。(偕成社版、長島良三訳)
やはり「目は心の窓」なんですねぇ…どんなに風采の上がらない人物に化けてもルパンのギラギラした目の輝きは隠せなかったようだ。その上でさらによく観
察すると本物との相違点が次々見えてきたというから、そんなに完璧にそっくりというわけでもないようだ。アンジェリクに本物が現れたことを聞いたルパンは
化粧台に向かい、タオルをぬらして石鹸をつけ、すぐさまメーキャップを落としている。そういえば変装を解く場面も珍しい。
ところで本物のダンボワーズが語るところによると、ルパンは
「ダンド
レジー伯爵」として4年前にアルジェリアでダンボワーズと知り合ったことになっている。4年前といえば1903年のこととなり、ルパンが
『ユダヤのランプ』事件でホームズ(ショルメス)と再度の対決
をしていたころだ。アルジェリアならそう遠くはないと思えるが…。
「ダンドレジー」といえば、ルパンシリーズ第一作
『ルパン逮捕さ
れる』で名乗っていた姓。このとき使っていた
ベルナール
=ダンドレジーは後に
『カリオストロ伯爵夫人』で
語られるところによればルパンの母方の「いとこ」にあたる貴族で、1896年ごろにマケドニアで死亡していたところをルパンがその名を拝借してなりすまし
ていたものだ。逮捕によりもちろんその正体は暴かれたわけだが、1903年段階でもアルジェリアならそう怪しまれずにその名を使うことができたのではなか
ろうか
(ベルナール以外の名を使ったかもしれないが)。
「ダンドレジー伯爵」の名が新聞の社交欄やスポーツ欄によく出ていたという話が気になるが、アルジェリアで出ている新聞の話なのかもしれない。実際、本文
中
でもパリの情報がアルジェリアの新聞にはあまり流れないらしい記述がある。
最後に本作はじめルパンシリーズでときどき出てくる、その
「アル
ジェリア」についても触れておこう。
北アフリカ、地中海をはさんでフランスの向かい側にあるこの国は、もともと
ベルベル人の住む地域だった。そこを7世紀に
アラブ人が征服してこの地をイスラム化し、ベルベル人とアラブ
人の混血も進んだ。16世紀以降は
オスマン帝国の支配下
に入ったが、19世紀になってオスマン帝国の弱体化が進むと、フランスによる侵略が開始される。きっかけは王政が追い詰められていたシャルル10世が国民
の不満を外にそらそうと1830年にアルジェリアに軍隊を送ったことだったが、その年の七月革命でシャルルが王位を追われた後もフランスの侵略は進めら
れ、1834年にはアルジェリアは完全に併合されてしまった。
その後フランスからの移民も増加し、20世紀半ばにはその数は百万人にも達した。第一次世界大戦ではアルジェリア人の兵士もヨーロッパの戦場に動員され
(『金三角』で登場している)、その後アルジェリアからフラン
スに入ってくる移民も少なからずいた
(やや時代は下るがサッカー・
フランス代表の英雄ジダンがアルジェリア系2世であることは有名)。第二次世界大戦後にアルジェリアの独立闘争が始まり、アルジェリア側に
よる在住フランス人に対するテロ攻撃、フランス軍による凄まじい弾圧の応酬が繰り広げられたが
(この辺の事情は映画「アルジェの戦い」を参照されたい)、植
民地独立の流れには抗しきれず1962年にアルジェリアはおよそ130年ぶりに独立を達成、この地にいたフランス系移民は本国へと帰っていった。
ジャック=シラク・フランス大統領(当時)がフランス
の国家元首として初めてアルジェリアを訪問し、公式に過去の歴史の謝罪を表明する演説を行ったのは実に独立後40年が経った2003年のことである。それ
に対して右派系政治家らによりフランスの北アフリカ植民地支配を正当化するような学校教育を進める法律が制定されてアルジェリアの反発を呼んだこともあ
る。2007年に選出された中道右派の
サルコジ大統領も
就任後最初の訪問国はアルジェリアにしており、何かと気を使わねばならない両国関係であることを改めて示している。
この辺り、日本と朝鮮半島の関係に良く似たところがあるから日本人にも分かりやすいが、支配期間の長さと独立にいたる衝突の激しさではこちらのほうが深
刻だろう。ルブランはごく平均的なフランス人といっていい作家だったから
(大衆作家になってからはなおさらそうならざるをえなかっただろうが)、
ルパンシリーズでも植民地支配に疑問の影すらないどころか大いに肯定してる部分すらあるのだが、現代の我々が読む時はそういうところもちゃんと意識した上
で読むことにしたいものだ。
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