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「メルキュール骨董店」(短編、「八点鐘」第8編)
<<AU DIEU MERCURE>>
初出:1922年7月「メトロポリタンマガジン」誌に英訳発表 1923年1月「エクセルシオール」紙に仏文発表
他の邦題:「マーキュリーの像」(保篠訳)「マーキュリー骨董店」(新潮)「メリクリウス屋」(創元)「マーキュリー像の秘密」「男神像の秘密」(ポプラ)など
◎内容◎
レニーヌから逃れるようにバシクールにとどまったオルタンスのもとに、レニーヌから手紙が来た。最初の冒険の時の約束、「コルサージュの留め
金」のありかに迫ったがあと一歩で失敗した、オルタンス自身がそれを取り戻してほしいという内容で、不思議な指示がこまごまと書かれていた。「行くもんで
すか」とつぶやいたオルタンスだったが、12月5日になると指示の通りの格好をしてセーヌのサン・ルイ島へと向かう。老婆に導かれたオルタンスが一軒の骨
董屋に入ると、店長は驚愕した…
◎登場人物◎(アイウエオ順)
☆オルタンス=ダニエル
26歳の赤髪の美女。バシクール村に滞在。
☆黒服の老婆サン・ルイ島でオルタンスを案内する老婆。
☆セルジュ=レニーヌ公爵謎の青年貴族。今回はオルタンスに指示を与え、一人で冒険させる。
☆パンカルディメルキュール骨董店の
☆リュシエンヌパンカルディの妻。オルタンスの少女時代の小間使い。
◎盗品一覧◎
◇オルタンスの唇
<ネタばれ雑談>
☆『八点鐘』、いよいよゴールイン!
ついに『八点鐘』をしめくくる、8つ目の冒険だ。第1話「塔のてっぺんで」のラストで
レニーヌに出された
オルタンスの難題、
「昔なくした幸運のをもたらすコルサージュの留め金」の
ありかが突き止められることになる。いつ失くしたかもはっきりしない、誰かが盗んだのかもわからない、それもいたって小さなもので、とてもじゃないが見つ
かるとは思えない――そんなつもりでオルタンスが冗談半分で口にした依頼だが、これがちゃんと最後の8番目の冒険のテーマとなる。連作短編『八点鐘』全体
を貫く、ロマンティックで見事なプロットだ。
分かってしまえば大した探索ではないのだが、レニーヌおよび作者
ルブランは、
オルタンスおよび読者に対して巧妙な導入を仕掛ける。灯心草で鞭を編み、75個の黒玉の首飾りを持ち、青いドレスに縁なし帽…といういでたちを指定、教会
で謎の老婆と密会して暗号を確認し、怪しげな骨董店へ…という展開には、オルタンスならずともワクワクしてしまうではないか。まさに子供の時の宝探し遊び
みたいなワクワク感だ。
この最終話の前半は連作で初めてオルタンス単独の冒険
(実際には踊らされてるわけだが)というのもポイント。
「テレーズとジェルメーヌ」で夫婦の複雑な愛憎を見て、
「秘密をあばく映画」「ジャン=ルイの場合」で恋人たちのキューピット役をつとめ、
「斧をもつ奥方」で生命の危険から救いだされて信頼感を増し、
「雪の上の足あと」で
もまた恋人たちの手助けをすることになるが、レニーヌへの感情が高まってくるとかえって怖くなって遠ざけてしまう…という心の変遷をたどったうえで、この
最終話でレニーヌはそんな気持ちをくすぐるかのようにオルタンス自身に冒険をさせるのだ。まぁ全部レニーヌの書いたシナリオの通りに進んでいるわけで、彼
のズル賢さも感じてしまうのだが。
9月5日に始まる冒険は、3か月がタイムリミットになっていた。その最後の日である12月5日に
「マーキュリー骨董店」の冒険がなされる。この中でレニーヌが
「今日は木曜日です」と口にしているのだが、12月5日が木曜日になるのは
1907年。
さぁ困ったことになった(汗)。ここまで1908年説を押してきた僕だが、「斧をもつ奥方」でも1907年の可能性があったし「雪の上の足跡」も1907
年のほうが都合がよい部分があった。デュドゥイの件も合わせると1907年のほうがぐっと有力になるのだが、『奇岩城』よりあとなのが明白なのでこれも取
れない。ルブラン自身はあまり深く考えず、1907年のカレンダーを見ながら書いたのかなぁ…?という気もする。
☆「メルキュールのご加護のもとに」 「ゆくもんですか」と口走ったくせに、当日になるとレニーヌの指示通りの格好でオルタンスがやって来るのがパリ左岸にある
「サン・エティエンヌ・ドゥ・モン(Saint-Etienne-du-Mont)教会」。もちろん実在する教会で、パンテオンの近くにあり、15世紀末から17世紀にかけて建設されたゴシック調の教会だ。下にその写真を掲げよう。
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サン・エティエンヌ・ドゥ・モン教会正面 | サン・エティエンヌ・ドゥ・モン教会の内部 | サン・ルイ島周辺 |
この教会、2004年製作の映画
「ルパン」(ジャン=ポール=サロメ監督、ロマン=デュリス主演)でもヒロインのクラリスとセル二―ヌ公爵
(もちろんルパン)が出会う場面でも使われている。内部・周辺ともにロケで撮影されているので、鑑賞時によーく見ていただきたい。
この教会の聖水盤のところで祈りを捧げている老婆に、オルタンスは黒玉の首飾りを渡す。「聖水盤」というのはカトリックの教会では入口に必ずあるもので、信徒は教会に入る時にここにある聖水に指を浸して十字を切る「お清め」をしてから教会内に入る。
この老婆に導かれて、オルタンスはセーヌ川にかかる
トルネル橋を渡り、セーヌの川中島、
サン=ルイ島に入る。ルパン・シリーズでは裁判所や警視庁でおなじみの
シテ島のすぐ上流
(橋でつながっている)にある島だ。シテ島が古くからパリの中心部として発達したのに対して、このサン=ルイ島は広さが小さいこともあってか都市としての発達はあまりしなかったらしく、この
「マーキュリー骨董店」でも人影もなくやや場末な雰囲気が描かれている。
『虎の牙』でも
フロランス=ルバッスールがこの島の小さなホテルに身を隠していた。現在はどちらかというと高級住宅街になっているらしいのだが。
ところでオルタンスを導いた不思議な老婆、もちろんレニーヌがオルタンスの気を引くために仕掛けたものなのだが、その辺の人を連れてきて買収したにしては
なかなかの演技ぶり。「ジャン=ルイの場合」のブシニョル婆さんも相当なものだったが、レニーヌって演技指導にも才能があるんだろうか。僕などはこのお婆
さん、もしかしてルパンの乳母のあの人ではないかと思ったりしていたのだが(笑)、最近になって
南洋一郎版『八つの犯罪』を読んだら、そこではまさにその設定が明記されていて驚いた。南洋一郎もおんなじことを考えたのかも知れない。
店の名前の由来であり、店中に置いてあるのが
メルキュール像。英語ならマーキュリー、ラテン語でメルクリウスとなるので日本語訳もいろいろだ。ローマ神話の神で、羽根のついた帽子とサンダル
(「メルキュール骨董店」で足首から羽根が生えていると書いてあるのがこれ)を身に着けて、たいてい走るポーズをとっている。惑星では「水星」、曜日だと「水曜日」になるのだが、なぜか
商業の神様ということになっていて、これがこの骨董屋にやたらにその像がある理由、「守護神」と位置づけられる理由になっている。
さて本作の原題は
<<AU DIEU MERCURE>>となっている。日本語の全訳版ではいずれも店の名前の題名にしてあるが、厳密に訳すとこれは「メルキュールのご加護のもとに」ぐらいの意味。原文でもこれがセリフであることを示すカッコがついている。ちなみに英語版では「AT THE SIGN OF MERCURY」だ。
☆幸運のお守り
この話でついにオルタンスの手に戻る「コルサージュの留め金(agrafe de corsage)」だ
が、いったいどのようなものなのか。まず「コルサージュ(コサージュ)」とは要するにブラウスのことで、問題は「留め金」。南版の訳だと「コサージュのバ
ンドの留め金」としているのだが、実物を見てみないとピンとこない。ブローチ状のものではないかという気もするのだが。メルキュール像の重心を移してしま
うぐらいだから結構重いものなんじゃないかと。
この留め金は1830年ごろのもので、金線細工の台座に「カーネリアン(cornaline)」がはめこんであるもの。いまわざわざカタカナ表記したのは、この宝石が何であるか訳によってまちまちだからだ。偕成社版(長島良三訳)では「ルビー」、新潮文庫版(堀口大學訳)は「紅瑪瑙(べにめのう)」、東京創元社版(井上勇訳)は「紅玉髄」、ポプラ社版(南洋一郎文)では「赤い宝石」あるいは「コルネリアン(紅玉髄)」と
なっている。「カーネリアン」とは石英の結晶からなる「玉髄」という宝石の中の赤い色のものを指し、「紅玉髄」が一番正確だ。ただ長島訳、堀口訳
は「玉髄」なんて硬い名前だと優雅さがないと、あえて分かった上でルビーだの瑪瑙だの赤い宝石の名前を選んでいるのではないかとも思える。
留め金を盗み出した二人はコルシカ島出身という設定だ。コルシカ島はフランスの南の地中海、どうみてもイタリアにしか思えない位置に浮かぶ島だが、ここは18世紀後半以来フランスに併合されている。この島の出身者の一番の有名人といえば問答無用でナポレオン1世だ
が、ナポレオンも幼年学校時代に強烈なコルシカ訛りがあってからかわれたし、ナポレオンの軍人生活初期にもコルシカ独立戦争が起こってこれに巻き込まれて
いる。その後も現在に至るまでフランス領でありながら独自の文化を持ち、政治的にも独立性が強く、ときおり独立騒ぎを起こす島だ。
レニーヌはオルタンスの家に仕えていた使用人を調べるうちにコルシカ人がいることに気付き、目星をつけた。コルシカ人が本当に迷信深いのかどうかは知らないが、『三十棺桶島』のブルターニュ人の例もあるし、地方ではまだまだ迷信深い人は多かったのだろう。
「メルキュール骨董店」のどこかに留め金があるに違いないとふんだレニーヌは、二か月前から上の階の部屋を借りて探索をしていた。あのルパンにして2か月
も、それもあらゆる家具を調べ、床板の下まで探したという徹底ぶりなのだが、とうとう見つからない。ではどこにあるか?それは持ち主の心理的動揺を誘って
図らずも白状させる作戦で…ということになるのだが、2か月の間に気づかないかなあ?と思うような答えだ。これも「盗まれた手紙」パターンといえそうだ
が。
迷信深いパンカルディが、盗みをしたその時に見た「もとの持ち主」の姿の記述がレニーヌの利用するところとなるのだが(それにしてもわざわざ書くか、と思っちゃう話ではある)、
これがオルタンスのことなのか、オルタンスの母親のことなのかちょっと分からない。この部分、南版ではオルタンスの母親の姿としているのだが、この時点で
の持ち主はオルタンスになっていたはず。しかし9年前とするとオルタンスが17歳、こんな格好をする年齢なのかどうか…?
☆で、その後二人は?
ついに大団円、オルタンスが言い訳に使おうとした「アラングル屋敷の時計」もレニーヌが忘れるわけもなく(笑)、八点鐘が鳴り響いてめでたく二人は…となるわけなのだが、オルタンスが「パリから400キロも離れたアラングル屋敷にある」と言ってるのはちょっとひっかかる。地図で見るとアラングル屋敷があると思われるサルト県とオルヌ県の県境付近はパリからせいぜい200kmしか離れていない。
レニーヌ公爵がルパンその人であることは「まえがき」にほのめかされるほか「斧をもつ奥方」本文中に明記があるが、最後まで「正体」は明かさないし、別に
レニーヌ公爵という別人でも十分に成り立つお話だ。本来べつの話として書いたのに出版側の要請でルパンシリーズにさせられちゃったのではないかという推測
があるのだが、この『八点鐘』でルパンが一切盗みなど悪事をしないことも根拠の一つとなっている(錠前を軽々と開けちゃう場面はあったけど)。
だが最後にルパンが盗んだものは、大変なお宝、そう、「オルタンスの唇」なのだ。以上はあくまで僕の勝手な解釈だが、某アニメ映画で「お孫さん」が盗んだ「とんでもないもの」のルーツはこれなんじゃないかと以前からひそかににらんでいる。
(追記:なんてことを書いておいたら、1951年の保篠龍緒訳「八点鐘」を確認したところ、その序文で保篠氏がばっちり「彼が狙っていたのは「物」ではなくて、一人の美しい女性の「心」だったのである」と記していた。某アニメの元ネタはこの序文なのかもしれない)
ただ
「その後二人はどうなったんだ?」と
首をかしげるシリーズ読者も多いだろう。オルタンスは経済的には独立できたが、精神病院に入っている夫が健在である以上、離婚もできないからレニーヌとの
結婚もできない。そして1908年だか1907年だかのこの冒険以後、オルタンスは一切姿を現さず、ルパンは物語ごとに新たな恋人との恋愛を繰り広げてゆ
く。だからこの物語のハッピーエンドも、あくまで二人の関係に絞ると現実にはその後長くは続かなかった…ということになるだろう。
だいだいルパンと結婚した女性はみんな不幸な最期を遂げてしまう。
『ルパンの冒険』の
ソニア、
『奇岩城』の
レーモンドがその例だが
(あ、結婚したけどすぐ修道院に入った例があったな)、結婚しないまでも恋愛関係になって悲惨なことになった女性がほかにもいる。危険を察して逃げた例(笑)としてはシリーズ最初のヒロイン・
ネリーや
『水晶の栓』の
クラリスがいる。楽屋オチ的にいえば各物語ごとにヒロインを変えて彩りをつけようという作者の意図がはたらいているわけだが、オルタンスももしかして危険を察して逃げたクチだろうか。
一方で第一次大戦後に書かれたオルタンス以後のヒロインは結婚を必然のゴールとは考えず、ルパンとの恋愛を一時のことと割り切ってるような描かれ方が目立つ気がする。
『緑の目の令嬢』『二つの微笑をもつ女』『カリオストロの復讐』『ルパン最後の事件(ルパンの大財産)』に登場するヒロインがそれで、いずれも職業を持ち自立性が高いという共通点がある。これも第一次大戦を経過したフランス社会における女性の地位の変化を反映しているとみることも可能だろう。
☆『八点鐘』もいろいろ
南洋一郎の児童向けリライト版ではオルタンスの年齢を意図的に下げて「探偵助手」「少女探偵」のおもむきに変えている。したがってレニーヌとオルタンスの
関係は恋愛なんてことはまったくなく、この最後の話も不幸だった少女にルパンが幸運を取り戻してあげるだけの話になった。オルタンスがパンカルディの罠に
はまって一時危機に陥り、レニーヌが銃で撃たれそうになるなどスリリングな改変があるほか、レニーヌが
「レニーヌ公爵一名アルセーヌ・ルパンだ」とパンカルディに「正体」を明かしてしまっている。
現行のポプラ社版「シリーズ怪盗ルパン」の『八つの犯罪』巻末にある
新保博久さ
んの解説に詳しいが、現行版だとレニーヌが最後にいきなりルパンと正体を明かしてパンカルディはビックリするのにオルタンスは全く驚かない。これは
1958年(昭和33)に刊行された南版「怪盗ルパン」初バージョンの『八つの犯罪』では最終話に先立つ話でレニーヌがオルタンスに「自分がルパンだ」と
正体を明かしてしまっていたなごりで、その後現在の形に変えられてもこの部分が修正されなかったためだ。
「先立つ話」といっても『八点鐘』原作の話ではないからややこしい。実はこの最初の『八つの犯罪』では
「映画スターの脱走」(秘密をあばく映画)「実の母が二人ある男」(ジャン=ルイ事件)がはずされ、
「皇后のネックレス」(女王の首飾り)「さまよう死霊」(うろつく死神)の
2話がレニーヌとオルタンスの話に改変して収録されていて、この「皇后のネックレス」の中でレニーヌがオルタンスに自身の少年時代を語るという形で、ルパ
ンの正体を明かしてしまっていたのだ。「さまよう死霊」もレニーヌとオルタンスがドライブにでかけた途中で遭遇する話に変えられていて、これはこれで和製
オリジナルの『八点鐘』として楽しむこともできる。
和製オリジナルの『八点鐘』ということでは、これまでもたびたび触れた
永井豪・安田達矢とダイナミックプロ「劇画怪盗ルパン」の
『八点鐘』も凄い。「塔のてっぺんで」「斧をもつ奥方」については多くの改変を加えつつも大筋で原作どおりだが、「水びん」はほとんど別の話になっている
し、「テレーズとジェルメーヌ」「秘密をあばく映画」「ジャン=ルイ事件」「雪の上の足あと」はまとめて「こんな冒険もあった」と見開き2ページの回想で
片付けられ、「メルキュール骨董店」にいたっては影も形もなく「斧をもつ奥方」事件で入院したオルタンスのもとにいきなりアラングル屋敷の時計が贈られ八
点鐘が鳴るという唐突な終わり方で
(ルパンがパリ上空に飛び去ってしまったりする)、あくまで「エピローグ」として八つの冒険にはカウントされていない。
あれ?だとすると「八つの冒険」にならないんじゃ…?と気づく方もいるだろう。なんとこの「劇画怪盗ルパン」版『八点鐘』には
まったくオリジナルの冒険が1話加わっているのだ。
「PARTIII」に収録された
「消えた死体」がそれで、ルパンの元部下で今は堅気となり資産家になった
ベルモンドと
いうオリジナルキャラクターが登場する。そのベルモンドは莫大な財産を我がものにしようとする自身の息子・娘とその夫に命を狙われているとレニーヌ(ルパ
ン)に相談、遺言状を預ける。しかし異変の知らせがレニーヌのもとに届き、豪雨の中オルタンスと共に馬車でベルモンドの屋敷にかけつけたレニーヌは壮絶な
格闘の痕跡とベルモンドの惨殺死体を発見。復讐を誓い、警察に届けるレニーヌだったが、なぜか警察は「屋敷を調べたが何事もなかった」と言ってくる。驚い
たレニーヌが屋敷にかけつけると確かに死体も格闘のあともまったく残っておらず、ベルモンドの息子たちは「父親はどこかへ旅行に出た」とうそぶくばかり。
困惑するレニーヌだったが、豪雨の中馬車で駆けつける途中でオルタンスが落としたハンカチを再発見することでトリックに気づく。ルパンシリーズの読者は察しがついてしまうが、トリックは
『謎の家』の流用だ。レニーヌはベルモンドに変装して息子たちを驚かせたりしたうえで、ついに彼らの陰謀を暴く。なぜか
『金三角』の
パトリス=ベルバル大尉が協力者としてゲスト出演するオマケつき。とすると、この『八点鐘』は『金三角』より後の年代の話ということになっちゃうんだが。ともあれ、オリジナル話としては面白い方だと思う。
このダイナミックプロ版の「劇画怪盗ルパン」シリーズは
保篠龍緒版
を原作としたものだが、『八点鐘』に関してはむしろ南洋一郎版に近く、オルタンスの年齢も下げられて人妻設定もなくなり、あくまでレニーヌの助手の少女探
偵の雰囲気に描かれ、恋愛要素はゼロとなっている。永井豪流にヌードやベッドシーンもしょっちゅう出てくるこのシリーズだが、『八点鐘』に関しては遠慮し
たようだ。
漫画版『八点鐘』といえば2008年現在「ネムキ」誌に連載中の
JET版もある。新潮文庫版がベースらしく、おおむね原作に忠実に、少女漫画というよりはレディコミに近いロマンチックムードあふれる漫画化がなされている。オリジナル要素としてルパンの宿敵
ガニマール警部が何度も登場するのがファンには嬉しいところだ。
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