- 11月21日
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てなわけで京フェス明けである。普段なら、ひかりでとっとと帰って寝てしまうところなのだが、今日はそうも行かない。東洋大御一行様の名大SF研見学ツアーの案内があるのだ。そりゃまあ、現役組に「後は任せた」と言い放って一人東京に戻ることも可能なわけだが、人として、甘口抹茶を食う田中香織嬢などという面白そうなものを見逃すわけにはいかない。残り少ない体力を振り絞って名古屋に向う。向かうのは良いがせめて新幹線に乗りたかったよ。
とはいえ多数が在来線を主張するのだから仕方が無い。岐阜に戻る加藤@異次元を覗くホームページさんと共に、2時間かけて名古屋に向かう。車内でも蜿蜒喋り続けるたぁ、何をどうやったらそんなに元気なんだ、山川(15)。
名古屋についたら、とりあえず観光地……などということはなく、いきなり東山線に乗り込んで一路、本山の名古屋大学へ。道すがらの雑談で、彼方といえば、時野彼方という話になったりするのはご愛敬というものだろう。しかし、田中さんが<緑野原>シリーズを知っていたのには驚いた。星野架名があれを描いていたのって、僕が中学生になるかならないかの頃のような気がするんだけど違ったっけ?
程なく名大SF研の部室到着。数ヶ月ぶりに見た部室はえらく片付いていた。窓から光が射しているというのだから驚きだ。聞けば、この日のために名古屋残留組で掃除をしていたとの事。やはり、外の人は呼んでみるもんだね。量はともかく質は高い東洋大BOXの蔵書を拝んではいたので、うちの部室の蔵書なんぞ見てもたいして驚いては貰えないかと思っていたのだが、思いの外感心して貰えたのは喜ばしい。やはり、質より量で勝負という名大のキーコンセプトは間違っていなかったようだ。しかし、80年代前半のSFMを見るたびに「懐かしい」と言い続けるのは年齢的にどうかと思うぞ。>鈴木力氏
ざっと1、2時間も和んだあたりで、腹が空いてしまったので覚悟を決めて怪奇喫茶マウンテンに移動する。名大から杁中まで、山道を数分歩く事は覚悟していたのだが、山田さん(8)が師勝までわざわざ車を取りに行ってくれたので、ありがたいことに歩かずに済んだ。しかし、空いているシートが後一つだというのに、OB一人含む年長者3人を押しのけて座席についてしまう野呂(17)の貫禄はどこに由来するのだろう。
マウンテンでは、田中さんが甘口抹茶小倉スパを頼んだのは当然だが、なんと鈴木力氏がイタリアン・トマトパフェを注文。そのチャレンジャー精神を遺憾無く見せ付けた。僕が明太子ピラフなどという中途半端な代物を頼んだり、山田さんがコーヒーだけという暴挙に出たのとは大きな違いだ。このあたりが、90年代前半の、東洋大と名大のパワーの差の一因となったのだろう。しかし、名大も若者たちは負けてはいない。野呂のイカスミピラフはともかくとしても、保母さん(18)は正体のわからないカントリースパを。こなす水野さん(18)は痺れる辛さのピカンテを。そして田村(16)に至っては甘口三部作最凶の呼び声高い甘口バナナスパを注文し、地元の底力を見せ付けていた。これでこそ若者である。この活力さえあれば、名大の未来は約束されたも同然だ。
とはいえ、恐怖喫茶の壁は相変らず厚かった。立ち上るバナナの香りの前にこれまでの人生を回想し始めた田村。「今日は辛くない」の言葉もどこへやら、ピカンテの傍若無人な唐辛子に圧倒される水野。早々に戦線を放棄し、人としての尊厳を守りぬいた保母。その単調な味と、無駄な油、そして何より圧倒的なまでの量の前に、若者たちが次々と散ってゆく。焼き肉3人前を平らげた後にケーキ10ホールも夢ではないという都市伝説(注:三つくらいの噂が合成されているという説もある)が流れた某嬢すら、生クリームの尽きた抹茶の前には、空しい抵抗を見せるのみとなった。そんな敗北感漂う状況の中、目覚しい戦果を挙げたのが誰あろう、東洋大中興の祖、鈴木力氏である。彼は、イタリアン・トマトパフェの暴虐的なまでの不味さに圧倒されながらも、「ミムラミイニカツンダ」とうわごとのように言いながら、スプーンを口に運んでいった。そして、小1時間も経過した頃、ついにパフェの器を空にした。その瞬間、居合わせた全員が感動の余り涙をこぼしながら彼に祝福の拍手を贈ったのは言うまでもあるまい。
リッキーの勝利を全員で祝福しつつ店を出て、次なる目的地に向かう。鈴木氏の勝利を祝うため、行く先はもちろん、1/1フィギュアのメッカ、ペーパームーンである。車での移動となるため、大多数のメンバーとはここで別れる事となった。車に乗り込んだのは、山田さん(ドライバー)と、東京に向かう3人と、野呂。ここで神奈川に向かう住田(11)ではなく、野呂が乗ってしまうというあたりが彼の隠然たる力を物語っているのだろう。
マウンテンからは歩いた方が早いような場所だけに、数分でペーパームーンに到着。以前は、商品を「まるぺ」と書いた紙袋に入れられてしまうことを除けばごく普通のアニメショップだったこの店も、数年来ないうちにすっかり様変わりしていた。やはり10数体の1/1フィギュアが店頭に並ぶ姿は壮観である。綾波レイ、藤崎詩織、蒼龍アスカ・ラングレー、星野ルリ、e.t.c.が無表情に立ち並ぶ様子は、およそ恐怖以外のどんな感情も呼び起こさなかった。
ペーパームーンに敗北した我々は最後の観光地、ヴィレッジ・ヴァンガード1号店に向かった。せめて最後に名古屋の印象を良くして貰おうという狙いだったのだが、これが失敗。確かに、大筋の商品層は昔と変わらないのだが、どうも雑貨が多くなり過ぎているようだ。勢い、文芸書やマンガにしわ寄せが来てしまい、なんだか間の抜けた棚になってしまっている。昔は、もう少し筋の通った棚だったように思うのだが。こんなことなら店のど真ん中に外車が置いてあるというインパクトだけが売りの、港店の方が良かったか。これだけは残念だった。
ヴァンガードを出た後はそのまま名駅へ。普通車の指定がほとんど埋まっているという状況に焦った我々は、思わずグリーン車の指定を取ってしまうという暴挙に出たのだが、これは明らかに失敗であった。良く考えてみれば、名古屋始発のこだまなら自由席に座る事も可能だったはずなのだ。不用意な行動による数千円の出費を嘆きつつ、かわりに得たグリーン席の快適さに驚きつつ、午後8時名古屋をあとにした。
追記:田中さんは、マウンテンでの無理が祟りずっと体調を崩していた。完全状態でも3割も食えないのが普通の抹茶をほぼ徹夜明けで食えるわけが無い、とどうして止めなかったのか。もし、田中さんに万が一の事があれば、トレードでの来期以降の獲得を決めた京大にも、FA後(卒業後とも言う)の獲得を明言するお茶大にも申し訳が立たないところであった。己の不明を恥じるのみである。
- 11月22日
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ふと気がつくと、先日の高野史緒の作品に対する感想に対して、有里日記で突っ込みが入っている。なるほど、ティプトリーとは気づかなかった。確かに、高野史緒は、読者に一段深い読みを要請するタイプの作家なので(SFMのインタビュー記事など参照)、そういう意図が込められているというのは説得力がある。どうも、作者の罠に見事にはまっていたという事らしい。
でも、それに気づいたから評価が変わるというものでもないな。
- 11月23日
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風邪が治らず、一日中寝たり、床についたり、また寝たり。
安田均『夢幻年代記』(Login Books)読了。84年から88年にかけての雑誌連載をまとめた本だけに、現在のゲーム環境とは大きな隔たりがあるわけだが、逆にその辺が面白い。
今の目から見ると、80年代のゲームがいかにゲームシステムとゲームバランスに重きを置いていたかが良くわかる。マシンパワーの問題で画像や音声に頼るわけにはいかない。だからこそ、システムを磨き、バランスを追求するエネルギーが生まれたのだろう。
もちろん、だから画像や音声がしっかりしているゲームは駄目だなどという頭の悪い事をいうつもりはないが、ここで紹介されているゲームが、マシンパワーに頼った表現力とは別の方向の魅力を発散している事だけは確かだ。M.U.L.E.の楽しさ、Wizardry #1の緊迫感、Shanghaiの中毒性。その魅力はただ懐かしいだけのものではないはずだ。
- 11月24日
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定時間日だったのでとっとと帰る。帰ったついでに、やっと店頭に出てきた「ジャッカー電撃隊」(ガシャポン)を回してしまったのは、不可抗力なので仕方が無い。宮内洋コンプリートを目指す僕にとって、ビッグ1が入っているジャッカーを回さないことなど出来るわけが無いのだ。
で、出てきたのはクローバーK。また、見事に嬉しくないところを突かれてしまったが、これも運命というものだろう。残念ながら小銭がもう無かったので、近日中の復讐を誓いその場を離れる。
早く帰ったので、「One Peace」を途中から見る。断片しか見ていないわけだが、その範囲内では丁寧に作っている。さすが水曜フジのジャンプ枠。モブシーンなどの手の抜きかたも好感の持てる方法で、安心してみていられた。いや、多分、次は見ないんだけど。
つい油断して「セラフィム・コール」を見てしまう。サンダーバードかあ。なんか細々とした部分が見事に苛つかせてくれる作りで、どうにも気になった。パロディとしての仁義の切り方も正当なものだし、原典への擦り寄りかたもまあまあ妥当と思うのに、何がこんなに気色悪いのか。ブレインズがいなかったのが悪いのかなあ。< それかい
- 11月25日
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ふらっとモーニング連載の「蒼天航路」を読む。官渡編で袁家が滅亡した(ように見えた)ときには絶対無くなったと思っていた北伐編だが、普通の三国志ではなかなか描かれない部分なので割と楽しめる。ただ気になる点が少し。いままで碌な書き方をされてこなかった郭嘉が大々的に取り上げられているのは嬉しいのだが、あまりにも優等生なのがちょっとね。郭嘉はストイックな秀才というよりは、放埓な天才というイメージなんだけど。荀イク、程イク、郭嘉、荀攸、賈クを描き分けているのは素晴らしいのだが、史実のイメージを保っているのが荀攸と賈クだけというのはなあ。とりあえず、司馬懿の登場に期待するか。
ふらっとSFマガジン2000年1月号を眺める。イーガンの新作が載る本号も然る事ながら、来月号予告の魅力はどうだ。『ショートショート1001』にも載っていないという星新一単行本未収録短篇に、そろそろ常連の域に達してきた(一人は本誌初登場だが)90年代日本人作家7人の読切り、天下の名作60年代SF5本の再録に、本邦初訳のエリスン、オールディス、ムアコックにディッシュと来たもんだ。これで済むと思うなお立ち会い、あまつさえラファティの初訳が載るってんだから、期待するなという方が無理って言うもの。ああ、今から年末が待ち遠しいぞ。
しかし、本当にここ1、2年のSFは充実している。特に今年は、イーガン2作に、<ハイペリオン/エンディミオン>の完結、<キリンヤガ>の単行本化と秀作、話題作が目白押し。SFMの方も充実した特集が続く上に、あまつさえ増刊号まで出てしまうし、国内SFも『クリスタルサイレンス』に『ペリペティアの福音』と強力な作品が並んで、旧作もハルキ文庫が復刊するっていうんだから、これ以上何を望むのかという状況にある。少なくとも、僕が意識してSFを読み始めた1988年以降では、最良の出版状況だったのでは。
断言してもいいね。今、SFはインディアン・サマーを迎えたと。
# それじゃ、駄目だろう。
- 11月26日
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給料日明けの金曜日、ってわけで色々とお買い物。
まずは、とりあえずガシャポンから。例によってジャッカーを回すと、再びクローバーKが出た。初回からダブるというのは、20%という高率でおきる事象なので腹を立てるにはあたらないと頭ではわかっちゃいるが、それがクローバーKというあたりがちょっと許せない。とりあえず、もう一度回して、ささやかな反撃を試みる。でたのは、ダイヤJ。……まあ、よしとしよう。
帰りがけに、山下書店でお買い物。買ったのは、『エンディミオンの覚醒』、SFマガジン00年1月号、『宇宙家族カールビンソン SC完全版』5、6巻、『ALICE』2巻。
小説を読む気力はないし、何十回読んだかわからない『カールビンソン』をいまさら読むのもなんなので、十羽織ましゅまろ『ALICE』(エンジェルコミックス)を読む。ポルノ版不思議の国のアリスというこれ以上無いほどベタな設定の上、アリスが少女じゃないという困った作品なのだが、前巻は十羽織ましゅまろの無駄な画力と、楽しげに描かれた性的ファンタジーのおかげでかなり楽しめた。が、完結を急ぎ過ぎたためか、今回収録のエピソードには前巻の余裕が無く、全体としては今一つの出来に終わっている。あと1、2巻で完結するペースが妥当だったと思うんだが残念。
- 11月27日
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例によってだらだらと過ごす。日も傾いてから起きだして、まず最初にしたのは当然、ガシャポン。ビッグ1の姿だけを心に描いて回した結果出てきたものは……、クローバーK。馬鹿にしとんのかぁ!とりあえず怒りを抑えてもう一度回す。結果は、ダイヤJ。ポーカーなら結構強いよな、などという何の慰めにもならない言葉が浮かんできたりもするが、クラブのKが3枚もあっちゃあフルハウスとは認めてもらえないだろう。こうなりゃやけだとばかりに回したもう1回でハートQを引き当てたので、今回のところは許してやる事にする。
気分転換のため、レンタル屋で無茶な量の恥ずかしいシングルを借りてくる。「アポロ」「なぜ…」「あの紙ヒコーキくもり空わって」「サニー・デイ・サンデー」「ラストチャンス」「ピンクスパイダー」「本能」って、ほら、どうしようもなく時期外れで恥ずかしいでしょ?この見事にタイミングを外したラインナップはかなり気に入ってしまったのだが、MD1枚には足りないので、あと10曲前後欲しいところ。誰か、この曲を入れるべきというものがあったら教えて下さい。
CDを返しに行くついでに、もう1度ガシャポンを回す。ダイヤJ……。
- 11月28日
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夜中にふとMILK SOFT(名大SF研の会報)を眺めていて、自分が最後に寄稿した号が、139号であることに気づく。卒業してから原稿を送るなどという殊勝な事はした記憶が無いので、139号が出たのは3年前という事になる。それに対して京フェスで後輩から買ってきたMILK SOFTは145〜147号。うーむ、3年で8冊か……。いやまあしかし、今年は3冊も出てるんだし、147号は力をかけている事だけはわかるんで、それで良しとすべきか。
MILK SOFT編集回数1回の僕に発言権はないという気もするし。
昼過ぎに外に出て「回す」。経過は書きたくないので省くが結果、都合ダイヤJ5体、ハートQ3体、クローバーK3体となった。多分、ディープなガシャの人にとっては日常的な事なのだろうが、僕は目的のものが5回以内に出なかった事はなかったので、かなりショックである。まあ、金銭的にはたかだか2000円強の事であり、TCGの被害に比べれば何程の事でもないわけだが、それでも不要な人形が部屋に8体もあるというのは気になるところだ。どこかに欲しいという奇特なジャッカーファンはいないか。
- 11月29日
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昼休みにユリイカの殊能将之インタビューを読む。うむ、こんなにわかりやすい本格ミステリ論を読んだのははじめてである。SFに言及している部分は逆にわかりやすすぎて、どうかとも思ったが、全体としては実に面白い。とりあえずこの「ユリイカ」と「鳩よ。」は買っとこう。
夕方休みに例によって例のごとく「回す」。ハートQ……。
腹いせに、古書ワタナベで『宇宙飛行士ピルクスの冒険』なぞ購入したりしつつ、もうしばらく仕事をしてから帰宅。不調だったので、そのまま寝てしまう。うーむ、京フェス以来読書が全く進んでないような。
- 11月30日
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名古屋市博物館員の兄という方から、先日の草薙の剣問題について新情報を頂く。なんでも、「正史では」草薙は海から引き揚げられたという事になっているらしい。レプリカ云々というのはあくまで噂なんだとか。いや、もう何がなんだかわかりませんわ。
山川(15)の「炎のヤングアダルト戦記」(MILK SOFT 145号)で登場する抑圧された先輩(なんとなく匿名)の一人に話を聞いてみる。こちらはさほど気にしていなかったが、本人は意外と抑圧を感じていたらしいことが分かって興味深い。僕が入会した頃(91年)には、海外SF至上主義的雰囲気はすっかり鳴りを潜めていて、火浦功だろうが、神坂一だろうが、吉岡平だろうが、どんと来いって雰囲気だったのに、いつのまにそんな閉塞した環境になっていたのか。って、彼の世代だと、抑圧していたのは僕らの世代って事になるんだが。うーむ。
正確に言えば、私の場合私が非常に好きな90年代以降のアニメ、主にジャンプ系の漫画、YAと呼称される小説群が本当につまらないものであるかのように扱われていたという印象があり、皆が何故そこまで低く扱うのか、感覚にギャップが生じていたとは思います
という彼の言からすれば、体系的にYA差別が行われていたというよりは、世代差に伴う趣味の相違が無意識のうちに抑圧装置として働いていたということなのだろう。自身、あまり正統的ではない趣味をしているからこそ、他者の趣味をスポイルすることはないようにしようと考えていたのに、実行が伴っていなかったようだ。反省せねばなるまい。
うーむ、そうか、そうだったかなあ。確かにあかほりさとるとか水野良とかは身も蓋も無いくらいに罵倒していたような記憶はあるなあ。でも栗本薫とか高千穂遙も同じくらい罵倒していたぞ。それどころか、アシモフとかハインラインとかベスターとかも否定的に言及したことが多かったような。自分では、全方位を否定していたように思うんだが、まだまだ偏りがあったか。これからはもっと万遍なく貶そう。< そうやって否定的言辞でしか物を語れないから、人に嫌われるのだ
しかし、一つだけ疑問なのは、「「世代間の趣味の相違」という割には彼と僕は一つ違いでしかない」ということだな。彼が若すぎるのか、僕が……いや、何でもない。