カルテは基本的に医師個人の備忘録だけの機能を有するものではない。
各スタッフと共同で治療・看護・検査にあたる際の有効な情報源としても機能し、特に看護婦においては日常の診察結果や医師が指示した検査結果を元に看護カンファレンスなどを開き、今後の看護方針を検討する資料としても参照される。さらに退院日早朝のような急変を訴えたケースの場合、日頃より治療を担当していない当直医師などが対応を余儀なくされたとき、全く治療方針や状況がわからず、本来患者もしくは家族が望む治療内容とは大きく逸脱する可能性が大きい。現に対応した当直医の医療内容もどちらかというとターミナルステージの患者に対する姑息的対応に徹していることもカルテ不備に基づくものである可能性が高い。
(看護婦の当初の看護計画記録には当然のごとく「血ガスチェック(動脈血酸素濃度、電解質等チェックのこと)」があげられているが、実際には一回も医師により実施されることなく、そのターミナル的な対応・記録が担当する看護婦にも影響したことで看護計画から見過ごされていった経緯がみてとれる。)
また指示簿の不備については論外であり、通常記録に残らない指示を看護婦が継続して行うこと自体、大問題である(臨時口頭指示の場合は必ず後日、大概は翌日までに追記されるのが一般的)。
また主治医は取締役(現在株式会社としての病院は非常に珍しく、一般的には法人・理事役員と同様と考えるが)の一員とされ、病院の経営、医療の管理を中心となって行うべき職責と考えられ、通常は他の勤務医、看護婦等職員に対して確実なる医療指導を行うべき立場でもある。このようなカルテ不備が「忙しくて・」で済まされるようでは役員としての責務をまっとうしていない。
なおほとんど書かれていないとはいえ、カルテ内容を見ると医学部の学生が初期に覚えるような簡単な医学英単語が多用され、長期の経験を有する医師のカルテ内容としてはあまりにもボキャブラリー不足・幼稚な内容であるとの印象を強く持った。
また医師指示簿に基づかない医療内容が実施され、それが医療請求としてレセプト提出されていること自体不思議な現象である。逆に考えれば、この病棟における看護職員の管理対応体制もどのようになっているのか興味深い。
少なくとも小病院とは言えず主任や婦長といった看護管理職がいたはずである。それにも関わらず指示に基づかない日常医療の実施を見過ごしていたことは如何なる管理体制にあったのか大きな疑問を感じる。