マークトウェイン


本物の外輪駆動の蒸気船である。船の前の方にボイラーがあり、船尾のシリンダーに蒸気を送り、外輪を動かしている。
私の場合、夜に会社帰りに乗ることが多い。暗い中、滑るようにゆっくりと水面を進む船から木々の多い景色を見ていると癒される思いである。とても静かなのもよい。時折水面を水鳥がゆっくり動いてゆくのも見える。空の星や月をみなら進むのもまたよい。こんな船旅を会社帰りにできるのだから贅沢なものである。
私が好きな場所、1.階の前方左側である。進んでゆく水面が見えるし屋根がないので前方に加えて左右、更に空もよく見える。外輪の水音もここまでは聞こえない。とても静かである。
昼は、夜に比べるとややにぎやかである。水路の左右には動物やインディアンがいるが、これらの案内が入る。案内があるとつい見てしまう。人が多いこともまたにぎやかになる要因である。でも、これもまたよい。昼と夜、両方別の楽しみ方がある。

マークトウェインは、船着場で時々給水している。場所は船の前方左側で、係留のロープの少し後ろである。ホースを繋いで補給している。毎回ではないが、頻繁に給水している。これは、シリンダーを動かした後の蒸気を大気に放出しているためである。船の後方に煙突のようなものがあり、ここから出る水蒸気が冷えて白い煙のようになっているのが見える。通常の蒸気船はシリンダーやタービンを動かした後の蒸気は復水器を使って水に戻して再度使うのだが、マークトウェインは捨ててしまっている。このため頻繁に給水しなくてはならない。水道代も手間もかかる、と思うのだが復水器を使わない理由もあるのだろう。蒸気を出すことで蒸気船の雰囲気を高めているのかな、と思う。ひょっとしたら復水器が大きくて場所をとるのかもしれない。
水蒸気が冷えた湯気、冬の寒い時期は、相当大きく上がっている。煙のように見え、トムソーヤ島を越えて反対側からも見えるくらいになっている。
ところで喫水であるが、給水して出航したときと到着したときとでは結構上がっていることもある。数字で言うと0.8で出航して0.6くらいまで上がっている。給水すると0.8に戻っている。水、こんなに使うのかな? と不思議に思えるくらい違いがある。模型で見ると船底が特殊な形をしているようにも見える。




ここで操舵とエンジンルームである。マークトウェインはアメリカ川にガイドがある。しかし、船として舵輪で舵が効くそうだ。実際、最上階の操舵室では航行中動きに応じて舵を操作している。このためかもしれない。ガイドのためと思える不自然な揺れはあるが、比較的滑らかに動いているのは操舵のためかもしれない。
そして前後進の操作である。舵と違って操舵室ではなく、船尾で操作している、スチームのバルブで速度、レバーで前後進を切り替えている。操舵室からの指示はあるのかもしれないが、操作は船尾である。航行中は一定速度なので何もしていないけど、出港時などはレバーやバルブの操作が見られる。

つまらぬことだが、出航の掛け声、Engine room, full steam ahead.と声がかかった直後、実は後退している。船長の指示とは違うじゃないか、と突っ込みたくなる。なお、後退するのは係留のロープをはずすためである。
まあこういうことを詮索などしないで短い船旅を楽しむことにしよう。

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