ネコの狩り
注意:この記事には、多少ショッキングな内容と写真があります。配慮はしていますが、気になる方はご覧にならないようにお願いいたします。
ディズニーリゾートには、野良猫が何匹もいる。人前に出てくることはそんなにないのだが、それでも数匹を数回見ている。キャストさんが“触らないように”“餌をやらないように”注意しながら、ゲストから遠ざけていたりする。安全のためだろう。なので餌をやる人もほとんど見ない。だからだろうか、猫も人を無視するように悠然と歩いていたりする。今まで猫を多く見たのはディズニーランドのウェスタンランド付近である。もっとも、これは私が行くことが多いなどの理由もあるとは思う。ほかにも出るかもしれない。ディズニーシーでも見かけているけどディズニーランドより少ない。
ある日のディズニーランド、ワールドバザールのシンデレラ城側の広場付近でトラ猫を見かけた。このあたりで見たのは初めてである。珍しいな、と思って写真を撮っておこうかと追いかけた。このときはキャストさんもそばにいたけど、追うとかゲストに注意するとかはしていなかった。猫はまっすぐに歩いてゆく。ようやくトゥモローランドとの境目近くで追いついたとき、猫はしゃがんでいた。普段とは違う、ただならぬ雰囲気がある。身を伏せているのだけではなく、いつでも飛び出せる体制であり、また鋭い目つきである。その視線の先には鴨と鳩がいた。狙っているな、と感じはするが、私から猫まで距離があるためにどの鳥を狙っているかまではわからない。そんななか、猫に女の子が近づいて触ろうとしている。猫の気配が尋常ではないから止めた方が良いのでは、と思ったのだが、こんなことは初めてでもあり、どうするのが良いかわからない、というのが正直なところである。実際のところ、猫は女の子を完全に無視している。獲物に集中しているように見える。女の子の手も、木の枝が揺れて触れた程度にしか思っていないのかもしれない。
女の子に危険はなさそうなので、急いでカメラを構えて写真を撮る。そのときのレンズは超広角であるが、レンズを換えている暇はない。そのまま1枚撮る。撮ってからレンズを換える。この日用意していたレンズはほかに60㎜の単焦点のみである。
その直後? レンズ交換まえ? とにかく猫がダッシュした。その先にいるのは鴨である。鴨も気づいてすぐに飛び上がるが間に合わず、あっさりとジャンプした猫に首を噛まれて抑え込まれた。鳴き声も上がらなかったと思う。猫から鴨までは7,8m位だろうか? 鴨は飛んだといっても50㎝くらいだろう。大した高さではない。猫は苦も無く捕まえたようだ。ここまでの時間、おそらく1秒か2秒、あっという間でしかない。その後、猫は鴨を咥えたまま悠々と進み、茂みに消えた。女性キャストさんがそれを見ながらPHSでなにか話している。おそらく、対応を依頼しているのだろう。それもそうだ。素手で、獲物を咥えた猫に手を出すのは賢明ではない。猫にしてみれば自分で狩った獲物である。猛獣では自分の獲物、の意識があるそうだから、この猫も同じかもしれない。それに、感染症の危険もある。
鴨を咥えているところ、カメラを向けたがピント合わせが追い付かなかった。様子はわかるがぼけたままである。悠々と、とはいっても結構速い歩きだった。そのまま茂みの中に隠れていった。
猫が鴨をとらえた直後の周囲の様子である。“すごいものを見てしまった”と言う声は聞こえた。でも、それ以外は静まり返っていたようにも思える。周囲の人には、かなりのショックだったのだろう。特に鴨のすぐ近くにも人がいたはずで、相当なショックだったと思う。私自身、周囲の声が聞こえなくなっていたのかもしれない。
猫、トラやライオンと同類の肉食動物である。それを再認識した出来事である。
東京ディズニーリゾートには鴨が結構いる。池などにも多数いる。野生ではあるが、人への警戒心のない鴨もいて、ベンチで座っている人のすぐそばに寄ってくる。人の足元にも平気で歩いてきて、ポップコーンなどをもらって食べている。餌には不自由していないようだ。鴨は水鳥なので体も大きく、もともとスズメや鳩などに比べて素早く飛び上がることはできない。それに加えて肥満気味なのかもしれない。いずれにしても陸に上がり猫に狙われた時点で命はなかったようなものである。陸にのこのこ上がること自体が不用心、となるのかもしれない。逆に猫にすれば、陸の上にいるなら、ネズミなどより捕まえやすい獲物にも思える。もっとも、猫はそれほど多くはなく、だから鴨も油断してしまうのかな、と思う。
さて・・・このとき何かする手はあったのかな? たとえば猫と鴨の間に入ったら? 猫は苦々しげに位置を変えただろうか? でも、逆にいらついて私に襲い掛かることがないとは言えない。猫はただならぬ雰囲気であり、正直怖いと思った。
また、鴨をとらえた後は? 鴨を取り上げるのは危険だろう。それにどうせ死んでいる。ゲストにできることはない。キャストさんに任せるよりほかにないだろう。
その後別の場所で、あるカストーディアルさんにこのことを話してみると、あのあとは鴨の血の始末で手空きのカストーディアルさんに総動員が掛けられたそうだ。
大げさに思えたけど、もし鴨の血が残っているなら感染症対策もあって清掃は必須だろう。そして、それに対応できるのは教育を受けたカストーディアルさんだけなのである。私には血は見えなかったけど、よく見るとあったのかもしれない。
感染症対策の観点があるなら、総動員も当然かもしれない。
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