遠くて近い靖国神社

 三輪 ひとみ



 

 私が今、世界で一番訪れてみたい場所、それは靖国神社である。
 毎年、新緑が濃くなる初夏に差し掛かる頃になると決まって、総理の靖国神社参拝問題が勃発する。
 日本の歴史が苦手な私は勿論、外国の歴史も苦手で、漠然と「何で参拝があかんのやろ?参拝する総理の袴姿ステキやん」と、袴フェチの私は、一般ピープル以下の見方をしていた。そんな私もほんの少し、日本史を勉強した。
 今年に入り反日感情が一気にピークに達し、連日報道された。そして数珠つなぎのように靖国神社参拝の可否論議へと展開されて行った。
 さて私の中で幕末の三傑と言えば、坂本龍馬、天誅組の総裁・吉村虎太郎、そして大村益次郎である。その大村益次郎が1879年に戌辰戦争で戦死された人を奉るため、靖国神社の前身である東京招魂社を建立したとのこと。それから10年後、靖国神社と改め、以後、日露、日清、第二次世界大戦の戦死者を奉っている。その靖国神社正面に大村益次郎の銅像が建てられている。
 年が明けて早々の1月下旬、友人から東京に行こうと誘われた。行き先は皇居近くの帝国劇場。○ンキキッズのコーイチくん主演のミュージカルが毎年この帝国劇場で公演されている。かなり入手困難なチケットだが、友人が根性でゲットしてくれた。まさか取れるとは思ってなかったので、軽〜い気持ちで軽〜く返事をしていたのだ。しかし折角行くのだから、皇居、二重橋、桜田門外、東京タワー、国会議事堂そして靖国神社をまわりたい!と言う願望がフツフツと皇居周辺地図を眺めながら沸いてきた。はとバスツアー擬だが…
 当日、朝一番の飛行機に乗り、いざ東京へ!久しぶりの東京。芸能人がいないか思わずキョロキョロしてしまうこの心境がお上りさんなんだろうか?テンションが鰻登りになる友人と私。粉雪が舞い散るマイナス2℃の有楽町に下り立ったのは、まだ9時半。開演まで3時間。まずは帝国劇場の場所を確認した。道を挟んで皇居を取り巻くお堀が目前に確認出来た。
 とにかく広い!目茶苦茶広い!皇居の駐車場には既に数十台のはとバスが乗り込んでいた。楠木正成像に「すご〜い」、桜田門外では「ここで井伊直弼が〜」、遠くに見える国会議事堂には「じゅんじゅ〜ん(小泉総理のこと)」、二重橋では「♪久しぶりに手を引いて…」と歌い、はるか遠くに見える東京タワーにも「ほぉ〜」…と感嘆し堪能中だったが、ここでタイムリミット!あ〜れ〜靖国神社〜〜…目と鼻の先まで来ているのに…でも団体?行動だし、粉雪の中、ここまで何も言わず私の趣味に着いてきてくれた友人に感謝。
 ミュージカルは脚本も踊りも素晴らしく、笑いあり涙あり、美しい男子たちの躍動感と息吹が全身から伝わってきた。靖国神社は残念だったが、十二分に満喫した一日であった。
 月日は流れ初夏。剣道を習っている小学6年生の長男が、日本武道館での全国大会に補欠メンバーとして参加出来ることになった。2泊3日の東京の旅費は一人6万円。もし応援に行くなら次男は置いて行けないから…ざくっと計算しても18万円!ただでさえ物入りの夏休み、無理!絶対無理!焼き肉を交換条件に長男に一人行ってもらうこととなった。
 先日、道場で最終スケジュールの確認と説明会があった。1日目は始発の飛行機で、いざ!東京へ。そして空港警察で練習。宿泊するホテルは武道館からワンメーターの場所にあり、チェックインして武道館視察。フムフム。そして説明する会長の口から「ここには市内観光としか書いてませんが、決勝祈願に武道館隣りの靖国神社を参拝します」…!ええっ〜!!なんですと〜?それをもっと早く言え〜〜。それなら私のヘソクリから大枚はたいていたのに…と、心が叫んでいた。後悔先に立たず。
 冒頭にも述べたが、世界で一番行きたい場所…それは靖国神社。なのに2度に渡ってニアミス。2度あることは3度ある…もしくは、3度めの正直か。ますます靖国神社に対する思いが募る今日この頃である。

続き「母のぼやき・・」


同人誌「新・邂逅」通巻41号より