星の王子さま



原作:『星の王子さま』 サン=テクジュペリ 作 池澤夏樹 訳 発行:集英社

音楽:『ずっと・・・』 押尾コータローのインディーズCD 『LOVE STRINGS』より



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炎天下の砂漠
N「・・それはぼくが故障のために砂漠に降りてから8日目のことで、その商人の話を聞きながら、ぼくは最後の一滴の水を飲み干した」
飛行兵、最後の水を飲んだあと、
飛行兵「あのねえ・・、きみの話はとても面白いけど、ぼくはまだ飛行機の修理ができていないし、もう飲む水もなくなった。できることならぼくもその薬を買わずに泉の方にゆっくり歩いていけたら嬉しいよ」
王子さま「ぼくのキツネがいうにはね」
飛行兵「(王子さまに顔を近づけ)あのさ、いまぼくはキツネの話を聞いている場合じゃないんだよ」
王子さま「どうして?」
飛行兵「もうすぐ喉の渇きで死ぬことになる!」
王子さま「もうすぐ死ぬことになっても、友だちがいたっていうのはいいことだよ。ぼくにはキツネという友だちがいて本当によかった!」
飛行兵、その隣で「あ〜〜〜っ!」と天を仰いで頭を抱えている。
飛行兵「わかった。これがどれだけぎりぎりの事態か、きみには理解できないんだね。別の星からやって来たきみにとっては飢えも渇きも関係ない事柄だ」
王子さま「・・(その飛行兵をじっと見る)」
飛行兵「・・何?どうした?」
王子さま「そういえばぼくも喉が渇いたよ。一緒に井戸を探しにいこう!」
飛行兵、ガクンとなって泣き出すふりをして、
飛行兵「こんな砂漠の中で、行き当たりばったりで井戸を探しにいくなんてとんでもないことだろーっ!!」
王子さま「ほら、水の匂いがする」
と王子さま、勝手に歩き出していく。
飛行兵「水の匂い・・?(はっとなって)!おい、待てよ、ぼくを置いていかないでくれーっ!」
飛行兵、慌てて王子さまのあとを追い駆けていく。

砂漠を歩く二人
二人、黙ったまま歩いている。
飛行兵、まるで夢遊病者のようにぼんやりと前を見つめ、
飛行兵「本当に、これをずっとまっすぐ歩いていけばいいんだね?」
王子さま「うん、たぶんね」
飛行兵「たぶんって・・、ま、このまま死ぬよりはマシか」
王子さま「水は、心にもいいんだよ」
飛行兵「・・。まったく、きみは喉が渇くということを知らないのかい?」

夕暮れの砂漠
歩いている二人。
王子さま「砂漠がきれいになってきた」
砂漠、夜の静寂の中で光を放ちはじめる。
飛行兵「・・(意識も朦朧と)本当だ」
王子さま「星がきれいなのは、見えないけどどこかに花が一輪あるからなんだ」
飛行兵「そうだね」
王子さま「砂漠がきれいなのも、どこかに井戸を1つ隠しているからだよ」
飛行兵「・・(朦朧と)そうか。そういえば、ぼくがまだ小さかった頃、とても古い家に住んでいて、どこかに宝物が埋められているという言い伝えがあったよ。もちろん、だれもそれを見つけていなかったし、ひょっとすると誰も探していなかったかもしれない。でもそのおかげで、家全体が素敵になっていたな・・」
王子さま「・・・」
飛行兵「家でも、星でも、砂漠でも、きれいに見えるのは、大切な何かを隠しているからなんだね・・」
王子さま「(飛行兵を見てにっこり笑い)きみが今いったことは、キツネがいったこととおんなじだ!」
飛行兵、そんな王子さまを見てフフと笑う。

夜の砂漠
飛行兵、眠った王子さまをおぶって歩いている。
飛行兵「ぼくはいま、とても壊れやすい宝物をおぶっているのかな?もしかしたらこの地球の上には、これ以上壊れやすいものはないんじゃないか・・。(と王子さまの寝顔を見て)そう、ぼくが見ているきみは、ただの殻なんだ!いちばん大事なものは、目に見えない・・」
歩く飛行兵。
飛行兵「きみがぼくの心をこんなに揺さぶるのは、きみが一輪の花にとっても忠実だからだよ。きみはその花を照らすランプかい?ならぼくは、ランプを消さないように、守らなくちゃいけないね。ランプの火は、ほんの少しの風でも消えてしまうから・・」
N「そうして歩き続けて、ぼくたちは明け方に井戸を見つけた」

滑車のある井戸
王子さまが井戸の中をのぞいている。
飛行兵、疲れて腰を落としている。
N「そこにあったのは、まるで村にあるような井戸だった。滑車も、桶も、綱も、ぜんぶ揃っている。ぼくは、これは間違いなく夢だと思った・・」
王子さま、綱を手繰り寄せると滑車がカラカラと音を立てる。
王子さま「ね、聞いた?僕たちが起こしちゃったから、井戸が歌い始めた」
飛行兵「(笑って)本当だ」
王子さま「人間はね、急行列車で走り回っているけれど、何を探しているのか、本当は自分でもわからないんだ。ただ忙しそうにぐるぐる回るばかりで・・(綱を重そうに引っ張る)」
飛行兵「(笑って)そうさ、無駄な苦労ばかりしているんだ」
と飛行兵、立ち上がって、
飛行兵「かして。ぼくがやるよ。きみには重すぎる」
飛行兵、水の入った桶を引き上げる。
N「揺れている水の中では、太陽も揺れていた。ぼくはとても喉が渇いていたけれど、何故かこの水をまず王子さまに飲ませてあげたいと思った・・」
飛行兵「さあ、飲んでごらん」
王子さま「?」
飛行兵「ここには水も時間も、たくさんあるだろう?」
王子さま「(うれしそうに)ありがとう!」
桶の水を飲む王子さま。
N「小さな子供のころ、クリスマスプレゼントが輝いていたのは、きらきら光るクリスマス・ツリーと、真夜中のミサの音楽、そしてにこにこしているみんなの優しい顔があったから。どうして大人は、それを忘れていくんだろう・・」
今度は飛行兵が水を飲む。
N「たった一つの庭で5000本のバラを育てている。それでも人間は自分たちが探しているものを見つけられない。探しているのは、たった1本のバラやほんの少しの水の中に見つかるのに・・」
王子さま、飛行兵を見てにっこり笑う。
飛行兵も微笑んで。

井戸に寄りかかっている二人
王子さま「約束を忘れないでよ」
飛行兵「?何の約束だっけ?」
王子さま「ほら、ぼくのひつじのための口輪。ぼくはあの花に責任があるからね!」
飛行兵「そうか、忘れてた」
とポケットからスケッチ帳を取り出す。

パラパラとめくれるそのスケッチ帳・バオバブの絵
王子さま「アハハ!このバオバブ、なんだかキャベツみたいだ」
飛行兵「え?これはぼくの中では一番うまくかけた自信の絵なのに!」

キツネの絵
王子さま「アハハ!このキツネの耳ってまるでつのみたい!」
飛行兵「仕方ないだろう、なにしろぼくは、ボアの外側と内側しか描いたことがなかったんだからっ!」

口輪の絵
「さあ、これがひつじにつける口輪だよ」

井戸の二人
王子さま、それを隣で覗きこんで、
王子さま「これちゃんとはまるかな?」
飛行兵「大丈夫。絵は下手でも調整するところはつけておいたから。さあ!」
と飛行兵、やぶって王子さまに差し出す。
王子さま、それを受け取り、下を向く。
王子さま「・・・」
飛行兵「どうしたの?」
王子さま「ぼくが地球に落ちてきたの、知ってるよね。明日がちょうどその記念日なんだ」
飛行兵「(何をいっているのかわからず唖然として)・・」
王子さま「場所もね、ちょうどここのすぐ近くなの・・」
飛行兵、しばらく考えていたが、突然驚いたように、
飛行兵「・・じゃあ、8日前の夜、きみがぼくのところに来たとき、人が住んでいるところから1000マイルも離れたところをたった1人で歩いていたのは、偶然じゃなかったっていうの?」
王子さま「(少し悲しそうに)うん」
飛行兵「なら・・、なら記念日というのは、ひょっとして何か意味があるってこと?」
王子さま「・・(下を向いたまま答えない)」
飛行兵「・・ああ!王子さま、ぼくは何だか恐くなってきたよ!」
王子さま「今のあなたには、仕事があるでしょ?エンジンを直さないと。ぼくはここで待っているから、明日の晩、ここに帰ってきて」
飛行兵「・・(目を見開き)!」
N「ぼくには納得できなかった。そして、急にキツネのことを思い出した。飼い慣らされると、泣かなくっちゃいけないこともある・・!!!」

壊れた古い石の壁
N「次の日の夕方、ぼくがエンジンを修理して、急いで戻ってきてみると、王子さまがその途中の石の壁の上に座って何かと話をしているのが聞こえた・・」
王子さま「(下の何かに向かって)きみは覚えていないの?あの場所はここじゃぜんぜんなかったよ」
距離を置いた飛行兵には下の何かがまだ見えない。
王子さま「そうだよ。日付は今日だけど、場所は違う」
飛行兵、ゆっくりとその方へ歩いていく。
王子さま「(少し青ざめた表情で)・・もちろん。ぼくが歩きはじめたところが砂の上に見つかるはずだよ。そこで待っていて。夜になったら行くから」
飛行兵、近づいていく。
王子さま「(青ざめて)ねえ、きみの毒は強い?ぼくは苦しまないよね?」
近づく飛行兵。
N「ぼくの心臓はどきどきして、いいようのない不安がぼくを襲っていた」
王子さま「さあ、行って!ぼくはここから降りたいんだから!」
そのとき、飛行兵は王子さまが話していたのが、黄色い毒ヘビであることがわかる。
飛行兵「気をつけて、王子さま!それは猛毒のヘビだ!」
王子さまの方に頭を持ち上げていたヘビ、飛行兵を振り返る。
飛行兵「こいつめっ!何をしていたっ!」
飛行兵、慌ててポケットの中からピストルを取り出す。
と、ヘビはシューという音とともに、石の下に滑り込んで消える。
飛行兵、急いで王子さまのところに駆け寄って、
飛行兵「これはどういうことなの?きみがいま話をしていたのはあのヘビだったの?」
王子さま、顔面が蒼白になっている。
立っていられず、飛行兵に抱きかかえられ、
王子さま「あなたの飛行機が直って嬉しいよ・・」
飛行兵「(驚いて)どうしてそれを知っているの?」
王子さま「(弱々しく)・・ぼくにはわかるんだ。これで自分の家に帰れるね。・・ぼくも今夜、これから自分の星へ帰る」
飛行兵「どういうこと?ね、ぼくには何もわからないよ!」
王子さま「・・すごく遠いから、その分とてもむつかしいんだ。・・だから、話したろう?最初にヘビと約束をして、力を借りることにしたの・・」
飛行兵「・・・」
N「ぼくはとにかく王子さまを座らせた。普通でないことが起ころうとしていることはよくわかった。もう取り戻しようもない、悲しい何かが・・」
飛行兵、石の壁にもたれさせるように王子さまを座らせ、
飛行兵「大丈夫?」
王子さま「・・。(胸のポケットを手で押さえて)ここにひつじがいるよ。ひつじのための箱もある。口輪だってあるし・・」
王子さま、そういって少し微笑む。
王子さま「今晩でちょうど1年なんだ。1年まえにぼくが落ちてきたところの真上をぼくの星が通る・・」
飛行兵「・・ねえ、王子さま、星を待つとか、ヘビとか、そんな話はみんな悪い夢だよね?」
王子さま「・・・」
飛行兵「ぼくはもっと、きみの笑う声をきいていたいよ・・」
王子さま「きのうの水は、とてもおいしかったよ。覚えている?あのときあなたが滑車を鳴らしてくれたおかげで、とても素敵な水になったこと・・」
飛行兵「(悲しそうに)・・ああ」
王子さま「花のときも同じだよ。どこかの星に咲いている花が好きになったら、すべての星を見ることが嬉しくなる」
飛行兵「(悲しそうに)・・ああ!」
王子さま「ねえ、もしも、これからぼくのことを思い出したくなったら、その時はお願い、夜、星を見てよ。ぼくの星はとっても小さいからどこを探せばいいのかわからない。でもその方がいいんだ。ぼくの星はたくさんの星にまじっている。だから、あなたはどの星を見ても同じように思うことができる。わかる?ぜんぶの星と友だちになれるんだ。これがぼくの、最後のお別れの贈り物・・」
飛行兵「(ボロボロ泣き出しながら)王子さま・・ぼくはきみの笑う声を、ずっと聞いていたいんだよ!」
王子さま、今度は精一杯明るく飛行兵に笑いかけて、
王子さま「あなたの悲しみが消えたとき、あなたはぼくと出会った、その思い出に満足するようになるよ、きっと。ぼくたちはこれからもずっと友だちだよ。それでまた一緒に笑っていたくなった時は・・、その時は窓を開けて空を見て笑えばいい!でも、そうしたら・・きみの友だちたちはそんなきみを見てびっくりしてきっとこういうね。『きみは頭がおかしくなったのか!』」
飛行兵「・・(楽しそうに話す王子さまをみている)」
王子さま「ねえ、ぼくがなにを言おうとしているかわかる?」
飛行兵「・・(涙顔でいいやと首を振る)」
王子さま「これはぼくが最後に仕掛けていくいたずらってこと!」
にっこり飛行兵に笑いかける王子さま。
飛行兵「(も同じようににっこり笑い返し)・・そうだ。ぼくはきみにとんでもないいたずらを残された!」
王子さま、おかしそうにフッと笑う。
飛行兵も涙顔で笑い返す。
と、王子さま、今度は真顔になって下を向きながら、
王子さま「お願い。今晩、あなたには、ぼくの帰る場所まで来て欲しくない・・」
飛行兵「なぜ?」
王子さま「ぼくの星はとっても遠いんだ。この体はぼくにはたぶん持っていけない。きっと、ここに置いていくことになる。古い殻を脱ぎ捨てるようなものなんだ」
飛行兵「・・・」
王子さま「ぼくは病気みたいに見えるかもしれない・・。死んだようになるかも知れない。・・だから」
飛行兵「ぼくたちは、ずっと一緒だ!」
王子さま「・・それから、ヘビのこともあるんだ。ヘビは性格が悪いからね。いたずら半分にあとであなたをかんだりする・・」
飛行兵「2度目に噛むときは毒はもうないさ」
王子さま「・・お願い。とにかくぼくを、一人で行かせて」

夜の砂漠〜石の壁
N「その夜、王子さまがいなくなったのに、ぼくは本当に気がつかなかった」
ふとうたた寝から目覚める飛行兵。

石の壁
飛行兵、びっくりして辺りを見回す。

砂漠を歩いていく王子さまの後ろ姿
N「慌てて駆け出して周りを見ると、向こうに王子さまの小さな影が見えた。ぼくは気づかれないように、音を立てないように走って追いかけていった・・」
飛行兵、王子さまの後を追っていく。

砂漠
歩いている王子さま。
N「そして、王子さまが立ち止まったとき・・」
後をつけて来た飛行兵、立ち止まった王子さまの下に黄色いヘビが現れるのを見る。
飛行兵「・・!」

王子さまとヘビ
ヘビ「よくきたね」
王子さま「うん。ぼくはどうすればいいの?」
ヘビ「何も。黙って立っていればいい」
王子さま、目を閉じる。
ヘビ「いくよ。用意はいいかい?」
王子さま「うん、お願い」
ヘビ、王子さまの足にブレスレットのように巻きつく。
と、その時、それを後ろで見ていた飛行兵が悲壮な面持ちで走り寄ってきて、
飛行兵「王子さま!行っちゃいけないっ!」

砂漠の王子さまと飛行兵とヘビ
王子さま「・・(静かに振り返る)」
王子さまに近づいてくる飛行兵。
飛行兵「行っちゃダメだよ、王子さま。ここに一緒にいよう!」
王子さま「(叫ぶ)お願い、ぼくを一人にしてっ!」
飛行兵「(今にも泣き出しそうな表情で)王子さま、それは毒ヘビなんだよ!かまれたら一瞬で死んじゃうよ!ぼくと一緒に戻ろう!」
王子さま「(も目に涙をため)今までいろいろしてくれて、本当にありがとう!でも、お願い、わかって!ぼくには責任があるんだ!」
飛行兵「(叫んで聞きかえす)責任?何の責任?」
王子さま「ぼくの花!わかるでしょ?あの子はとっても弱い子だから!ぜんぜん世間しらずだし、世界に立ち向かうのにたった4本のトゲしかもっていないんだ!」
飛行兵、立ち止まり、ただボロボロ泣いている。
王子さま「あの子は、ぼくの帰りを待っているから!」
飛行兵「・・・」
王子さま「お願い!ぼくは、あの子のことが、本当に好きだから!」
飛行兵「・・・」
泣いている王子さま。
ヘビ「(無表情に)・・」
飛行兵、ようやく決心がついたように、
飛行兵「ありがとう・・王子さま!」
王子さま、にっこり微笑む。
飛行兵「ぼくは、きみのことを忘れないよ!」
王子さま、何もいわずにその分の笑顔で飛行兵にさよならをいう。
飛行兵「(も泣きながら笑い)そうだね。大事なことは、目に見えない・・。心で見る」
王子さま、静かに目を閉じ、
ヘビが王子さまの足首にガッと噛み付く。
飛行兵「!」
王子さま「・・(少し苦しそうな表情となって薄く目を見開き)」
そうやって王子さまの体がくずれて砂の上に落ちそうになったとき、それが美しい光の泡粒になって、星空に上っていく。
飛行兵「・・・」

星空に昇っていく光の泡粒
N「それが、6年前の、ぼくと王子さまとの別れだった・・」

同僚たちの中で働く飛行兵
N「それからぼくは、この話を一度も人に伝えたことがない。生還した時、同僚たちはぼくが生還しただけで満足しているようだった。みんなには「疲れた・・」、とだけいった」

その飛行兵
N「今ではぼくの悲しみは少しずつ消えている。つまり、まだぜんぶは消えていないということ・・」

星空
N「以来ぼくは夜になると、星を見るのが好きになった。それはまるで、5億のキラキラした鈴が鳴っているようで・・」

それを楽しそうに見上げる飛行兵
N「ただ・・、ぼくには1つだけ、どうしても気になっていることがある。それは口輪の絵を描いたとき、ぼくはそれに革ひもを付けるのを忘れてしまったのだ!あれではひつじの口に結んでやることができない!・・だからぼくはいつも自答するのだ。ひつじは花を食べてしまったろうか?」

楽しそうに花に水をやる王子さま
N「そんなはずはない!王子さまはあの花にガラスの鉢をかぶせるし、ひつじのすることを見張っているから・・。ぼくはそう考えると嬉しくなる。・・でも、誰だってうっかりするときはあるぞ。ある晩、王子さまがガラスの鉢を忘れて、夜中にひつじが音も立てずに歩き回ったら・・、そこで鈴の音は涙にかわる!」

星空
N「これはなかなかの謎だ。ぼくにとっても、王子さまが好きなあなたにとっても。まだ見たこともないひつじが1本のバラを食べてしまったか否かで、宇宙がすっかり変わってしまう!」

その中で王子さまが楽しそうに笑っている

N「これから夜空を見て欲しい。そしてあなた自身に聞いてみて欲しい。どっちだろう?ひつじは花を食べたか?その答えによってすべてが変わる・・。でも、地球の20億人の大人たちには、これがどんなに大事なことなのか、(本当に悲しいことなのだが)、理解することはできないだろう!」


砂漠に1つの星が輝く絵〜エピローグ
『これはぼくにとって世界でいちばん美しくて、いちばん悲しい風景だ。
王子さまは地球のここに到着して、そしてここから星に帰っていった。
あなたがいつかアフリカの砂漠を旅する日のために、この風景をよく覚えておいて欲しい。
そして、もしここを通ることになったら、どうか先を急がず、この星の下で少し待っていて欲しい。
そして、髪が金色で、よく笑って、あなたに何か絵を描いてとねだる子供が現れたら・・そのときはどうかぼくを思い出して。ぼくの悲しみを思い出して。そして、すぐに心で伝えて。王子さまが、また遊びにきたよと・・・』

〜終〜


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