<新入社員にささげる3ヶ条>
愛想よく
「笑顔、あいさつ惜しまず」
感情を操れ
「流されずまた押し殺さず」
視野を広く
「独りよがりに注意して」
(平成4年4月1日日経夕刊より)
「一番心配な事」
様々な企業の新人研修に出かけた折、「いまどんなことが心配?」と声をかけますと「対人関係です」という答が多く返ってきます。
学生から社会人になって、これから職場で働くという自分とは、個となる責任と権力を持った価値観と年齢で、それぞれの立場の人達と協力して働いていかなければなりません。
そのビジネスの場で、自分の能力と個性を、どのようにしたなら発揮する事が出来るでしょうか。
例えば、素晴らしい能力をもっていたとしても、それだけでは勝負できるビジネスの場は少ないのですから、日頃からの仕事場の土台ともいう基礎づくりが必要になります。
周りの上司先輩と日常の仕事を通して、信頼関係づくりを怠っていては何にも出来なくなります。
「仕事に手応えを感じたのはどういうときですか」と、ベテランのOLさん達に聞いてみると、「組織の一員としての自覚に目覚めたときです」と言う感想の答えが多数を占めます。
職場では自分一人の能力には限界がありますから、周囲の関係者と協力して、チーム全体の力で何かを仕上げる事が、会社で働く魅力の一つだと思います。自分がこのグループの中で、必要とされている存在だと自他ともに認められるようになってきます。と、そのときやる気もでてくると言うのは、働く人々に共通する気持ちのようです。
これは決して会社人間になると言う事ではありません。個人の「私的世界は当然大事にしたい」のです。けれども、その一方で、本格的ビジネスに参加するのなら、組織に対しても積極的に関わりたいといった強い意志が求められるのです。
社内外で通用する共通ルール、例えば、人とのつき合い方であるとか、話の聞き方や話し方、そして、上司へのアプローチの仕方などがあります。仕事を共同で行なうには、知らなくて損をすることが沢山ありますから、その要領を、諸先輩から真摯(しんし)に学びとらなければなりません。
「雑用にうんざり」
大手薬品会社の関連事業部に働く田中みきさん(仮名、22)は役職者ばかりの職場に配属されました。女性は彼女一人だけでした。
部長は「これからは女性もキャリアをつけてバリバリやってほしい。期待しているよ。君を育てる義務がある」と申しました。ところが、その話しの後すぐに、机の上にどんと原稿が置かれました。最初の仕事は、宛先三十件ほどのメールの発送代行業務だったのです。「御願いします」の一言もありません。
田中さんは思わず絶句しました。しかし、機嫌を取り直して、原稿のコピーをして発送の準備を終えたところ、いきなり「誰と誰にはまだ出さないでくれ」です。
しかも、その他の男性社員も自分でやりたくない雑用をすべて田中さんに回して来ます。
「今は新人の身であるし、上司との関係がうまくいかなければ、自分にあった仕事も与えられないと思って下積みに耐えています」。
大手メーカーの業務部に配属になった吉田ひろこさん(仮名20)は、苦手なタイプの上司にぶつかりました。直属の課長は自信過剰の完ぺき主義者です。いつもピリピリしていて、質問もできない雰囲気です。
仕事の失敗は結果だけを見て頭ごなしに怒鳴られます。回りの先輩が慰めてくれますが、独立した仕事なので、助け船はありません。そのうちに、頭痛や食欲不振がひどくなってしまい、とうとう四日も続けて会社を休みました。
心配した先輩や他の職場の同期が電話で励ましてくれたので何とか立ち直りました。そのとき苦手な人を多く作ったこれまでの事が思い出されます。
「これからは摩擦を避けているだけではやっていけません。とにかく、こんな対人関係の事で会社を辞めたくないといま思っています」。
「陰口ばっかり」
損保会社の地方支店で働く山田理恵さん(仮名22)は、先輩女性の問題で悩んでいます。
この支店は、勤続六年以上のベテラン先輩が五人、パート三人のの女性がおります。配属になってすぐ、顔と名前が一致しないうちに「誰はこうで」と蔭口を聞かされました。
また別の先輩から最初に親しくなった先輩のことを「あの人の言う事を聞いても何も良いことはない」と言われたのです。自分も蔭で何を言われるかわからないと考え人間不信に陥りました。
一人ひとりの機嫌を損なわないように気を使いすぎ、本来の自分でいられなくなりました。
「一体何のために会社にきているのかと悩んでいます。この支店は残業が多いため、ベテランの先輩達の負担が重く、ストレスが溜まっているために、思いやりの気持ちが持てないのではないかとも感じます」
これらは一般的によくみられるケースです。しかし一方で、対人関係に恵まれて仕事が楽しいという新人にも出会います。何れの場合においても、つぎの三点はぜひ心がけて欲しいと思います。(野原蓉子氏談)
@ 挨拶、笑顔、あいづち(反応)は、新人の必修科目です。
一度悪くしてしまった印象を取り戻すより第一印象をよくする努力のほうが少なくて楽です。
A 感情(気分)のコントロールをうまく行うようにします。
感情は押し殺さないようにします。しかし、感情のままに動く事を一時抑え、感情を一度かみしめてから必要な行動をとります。
B 狭い正しさに陥らないこと。
チームで仕事をするとき、自分一人が正しいと思っていることを、他のメンバーは必ずしも同じにみておりません。より大きい枠組みで物事を見ていく事で、成熟した職業人をめざします。
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