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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【士気を高める】

 命令をする人とは、権力を持っていますから、権力の母胎である組織の繁栄を、人間の福祉より優先して対処しがちになります。
 リーダーは、人間性の何かを知っているので、組織の繁栄と人の福祉を、表裏一体として考えています。
 組織は、常に目的をはたすための方法であり、人の求めるものを獲得するための母胎であるということも、また、リーダーは知っています。ですから人間こそが真の目標であるのです。

「命令者」は、人を指揮して、個人を組織の目的に服従させようとしていますが、リーダーは、個人を啓発しながら導いて、組織の目的を達成するだけでなく、その成果を個人にも配分するように心がけます。ここに、命令者とリーダーとの大きい違いが存在します。

 目標を成し遂げたときのリーダーの満足には、計り知れないものがあります。リーダーは、良い仕事を立派に果たしたという気持ちを心いくまで味合うことが出来ます。それには、栄誉感もあれば、道徳的使命感といった気分さえ感じます。しかし、忘れてならないのは、リーダーは人々に、その求めているものを提示することによって、リードするということです。

人々は、リーダー無しには、完全ではありえません。リーダーは、組織全体に、やる気を起こさせる推進力となったり、リーダーを通して始めて結集できる「ある力」を引き出すことになります。その力は、どんな名前で呼ばれようと、つまりは、真の人間の創造であり、人間のすることに関しては、全体は、部分の総計よりも、大であると言う心理学的事実の産物でなくてはなりません。

 組織は、恐怖や威圧によって、人に仕事をさせてはなりません。全員の要求と力を通して経営することが肝要です。メンバーの士気を高揚させ、積極的に、熱意を持って目的達成に当たるよう心がける必要があります。この心がけは、良きリーダーによってのみうみ出され、かつ維持されます。リーダーがいなければ、管理人不在の倉庫のようなもので士気も、熱意も容易に引き出されるものでありません。

 士気を高めるには、リードされる人の希望と動機を喚起し、表面に押し出すようにします。人間の作る組織は、一人の人物の映像(イメージ)であると言われますが、その実際の組織は、リーダーを助ける人々の熱意の影像である方が遥かに多いのです。この熱意は、命令や監督によって喚起されるものではありません。重要であると信じる何かを成し遂げたいという激しい欲求によって、生み出されるのです。

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