部屋の窓を開けておくか、閉じておくか、と、いうような小さい事柄でも人々の意見が分かれて、円満な仕事の進行に支障を来す恐れが生じやすいものです。
20人足らずの人間からなるある課の部屋で、窓近くに席を持つ人は、風が当たりすぎるから窓を閉めようと言えば、奥に座を占めている人々は、むしむしするから、窓は開けろと主張します。
やがて両者の間に深刻な感情が芽生えてきます。ついに、一人の社員が窓を開けて席につくや否や、別の一人がこれ見よがしにピシャリと窓を締めてしまうというような状態になってしまいました。これを見た課長は、何らかの手を打って課内の対立を解決しなければならない、と、心に決めたのです。
彼は、全課員を集めて、各人の言い分を聞きました。その後で、
● 終業時間までは、すべての窓を開けておくこと、
● 窓に近いもののために、終業時間中は窓に覆いをおろしておくこと、
● 責任者を一人さだめて午前中と午後に一回ずつ換気をはかること、なとが決められた。さらに、万全を期して、
◆ 数個の温度計を購入、窓から近いところと遠いところにおくことにした。
皆、この会議の根底に、各自の満足への十分な考慮が働いていることを認めて、課内の摩擦は落着したのです。
これはごく小数のつまらない問題にすぎませんが、それでも、不和をうむのに十分だったのです。
もっとも問題が深刻で、もっとグループが大きければ、リーダーがグループの感情をよく考慮して先導し、障害を調整しなければならない場合が、どれほど多いか、用意に察しがつきます。
経営者会議、重役会、理事会、幹部会、執行委員会、職場会合など、あらゆる会議では、異なった主義、主張が示されます。
公開討論会など、宗教や科学について討議されるような場合などは、必ず両立しがたいような意見の相違が現れます。
こうした状況は、あらゆるグループの会合にも起きます。
その場合、リーダーは、単に名目的な議長の地位から、一歩進み出て、グループの統一的、創造的な審議を誘導する義務を持つものです。
各組織の抱える問題は、こと民主主義社会において、個人の力で解決するには余りにも複雑です。
自分一人で、グループ内の意見や、確信の相違から生じる問題を、正しく解決するにたる要素を、すべてにわたって考慮することは、如何に優れたリーダーであっても無理になってくると言うものです。
これは、広く認められているところです。誰でも合議することは、健全な処置であると、しないものはありません。お互いの考えを刺激しあって正しい解決案に到達します。
あるいは、個人の意見をあつめて、新しく、より優れたアイデアを展開させることが必要になります。さまざまな分野でのエキスパートの意見は、こうした結果を生むための参考とされるべきでしょう。
現在、どのような職場にあっても、協調の精神、明確かつ統一のとれた目標、実際的な執務手段などを得るために、共同して考えることは絶対不可欠です。
その際の神秘的な”潜在意識”のおかげで、一瞬の妙案がひらめくというなどのことは大して関係ではありません。好ましい結果が得られるために必要なのは、明快な周知の要素を、慎重に合議して、実を結ぶように導く賢明なリーダーシップです。
会議は、単にリーダーにとって良い手段であるばかりでなく、会議は、問題点の性質を完全に理解し、論争の原因を知り、”空気を入れ換え”新しくえられた解決案が、直ちに全員に受け入れられることを保証するのに、欠くことの出来ないものです。
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