ベンジャミン・フランクリンは、
雷が電気であることを凧を用いて証明した、立志伝中の人物です。かれは優れた政治家であり、発明家、哲学者、有能な作家でもありました。彼の全生涯は、自己訓練の賜物が、いかなるものであるかを示す生きた手本であったのです。彼は、自分の才能を最高に発揮し駆使しました。
彼は、人間の持つ十三の本質的な美徳を書き出しそれでもって自分の行動を測りました。「私は、いつでも、私が想像していたい上に難しい仕事を引き受けたことに、すぐ気がついた。一つの欠点を直そうと注意を払っている間に、もう一つの欠点が出てきて、よく驚いたものだ。慣れは、不注意を招いた。ときには好みが強すぎて理性で判断できなかった」といってます。
けれども、決してくじけることはなく、「私は自分をテストする計画を実行しはじめた。ときどき休みを入れながら、それを続けた。自分で想像していた以上に欠点が多いのに驚いた。
しかし、それがだんだん減っていくのを見て満足した」といってます。
その仕事を続けるためにいくつかやらなければならないこととは、
- 時間の使い方を習得しなさい。時間に使われるのでなく、時間を使いなさい。
人生の計画表を作りなさい。一日分の計画表を作りなさい。一日の終わりに、つぎの日の仕事の計画を、できるだけ細かく立てなさい。そしてそれに専念し成し遂げなさい。
- あなたに科せられた責任を遂行できるよう、他人を利用しなさい。他の人に任されたたやすい仕事には手を出してはいけない。不必要に細かい仕事に囚われない創造的な人としてとどまりなさい。
- 厳格に訓練する人になりなさい。最高の仕事をしなさい。また仕事の能率を下げるような衝動を征服しなさい。
- 組織の目標と同様、あなた自信の目標を達成するために一貫した仕事をしなさい。あなたがしようと計画したことを成就するために、何者にも邪魔されてはならない。
- 熱心な行動力を身につけなさい。これはまずい仕事を吹き飛ばしてしまうジェット噴射器である。
以上のフランクリンの測定項目を一通り見回しますと、即座に一流の板前さんのイメージが湧いてきます。
当たり前のことを当たり前にやるのが料理人の心得だとききます。腕が一流でも腐った鯛ではおいしい料理は出来ません。料理の質を決めるのは、原材料の品種、産地、収穫時期、形態です。ビジネス用語の表現を借りると、客観的な、データの量と、参考資料引用の豊富さ、表現の的確さです。
しかも、調理スピードを決めるのは、事前の準備、材料の予備的な仕分け、前処理加工など、項目別の見出しに相当する分類別処理です。調理ツール、什器、道具類など収納具のハンドリングのしやすさ、情報処理と、調理人の共通点が沢山あります。この関係は、医者、ジャーナリスト、工芸名人と称される技能的な全ての仕事に通じます。
もし、このような仕事ぶりのワーカーであるならば、ファイリングは必要ないかもしれません。
しかし、ファイリングは人間のもつ創造性を意義のあるところに向けようとします。ファイリングを定型化することによって、技能を必要としないで即座に情報を価値化させるところに意義があります。
また、一流の板前さんは、料理が終わったときは、周囲がきちんと片づいているといいます。
どうして難しいかという理由は、原材料を出したり入れたりする場合、出し入れする材料には価値の同等性がなくなるからです。つまり、出すものと入れるものでは価値体系が変わってしまうからです。そのため思考が複雑になり分類や整理の判断に、時間がかかるからです。
ペーパーファイルについて述べますと、収納箇所(アドレス)が動いたり、一部が失われたりするような事故があると、ファイルの体系は、たちまち機能しなくなります。同じように入りと出の価値変化があれば、アドレスの選択に至難をきたし、処理に技術を要することになります。しかし、知的レベルの底上げとして、ファイリングはないよりは、あった方が遙かに増しであることはいうまでもないでしょう。
註 参考文献=How toSucceed in Your Life's Work by Mack R.Douglas。仕事の上手な処理法/林一郎訳。仕事上手なチェックリスト/桜井著。ファイリングがわかる辞典/野口著
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