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ミュニケーション技法

 ■ 概要
 コミュニケーションは、通常、「言語」というシンボルを使って行われます。けれどもそれはす べてではありません。人間のコミュニケーションの主要な部分は、話し言葉というシンボルによる ものですが、他にも絵画・写真・ジェスチャーのような非言語系のシンボルもあり、言葉に劣らず 重要なものです。

 いずれにしても、同じシンボルの話し言葉を使った場合、伝える側と受け取る側とでは、そ の解釈と語感などの論理性や感情に食い違っていることが少なくありません。正確にコミュニ ケーションを行うには、「言葉」以外の、コミュニケーション動作がつたえる「態度あるいは 表情などのジェスチャー」と「声の調子」が、言葉の信頼性に大きく作用しているとみる理由 がここにあります。

シンボルは、遺伝によって伝承されるものではありません。後天的学習によってはじめて獲得 されるものです。学習の内容は、一定の社会で共通に理解されている話し言葉の意味であっ て、社会が異なれば、意味も異なることも多くあります。また、おなじような社会でも年齢差 があれば、意味が異なることもすくなくありません。

ようするに、コミュニケーションは、文化の中心にあってそれぞれの役目を果たす人間には、 切り離すことの出来ない取り扱いの難しい道具になります。
 コミュニケーションにおいては、こちらが伝えた通りに相手に伝わりません。大声で話をす ると、大声で返事をするように、相手の認識で受け取られます。つまり、相手の知能で理解さ れるように伝わるものと考えられます。

 コミュニケーション技法とは、このように複雑な仕組みによってなりたっているコミュニ ケーションを、効果的に実施できるような技能・技術・態度を総称するものとして捉えられま す。

 ■ 特徴と効果
 コミュニケーションは、意志、感情や事実を結合させて、情報の伝達(指示、命令、報告、連 絡、相談)として価値化したメッセージであり、生活環境を同じくするときに相互理解の促進に用 います。また、人間関係の改善は、価値観、態度、文化といった高次のコミュニケーション過程 の、コントロールによってすすめられます。

ビジネス企業においては、合理的な組織行動を求めるため、コミュニケーションは、コミュニ ケーション・ネットワークをコントロールします。しかも、ビジネス環境のコミュニケーショ ン行動には、ビジネス環境や競争環境など、コントロールの可能な環境と不可能な環境があり ます。

 一般的に、組織の内部環境と業務環境のコミュニケーションのコントロールは可能ですが、 組織外の外部環境は、コントロールは困難になります。組織内であれば、自分の責務を果たす ために、他部門との協調行動をとることが可能になります。しかし、外部の競争環境や公衆環 境は、不透明な組織であり、それぞれの立場上協調行動は不可能になります。

職場環境においての発言行為は上司、部下、さらには関係する人たちの人間関係に大きく左右 されます。発言行為や身体行為などのパフォーマンスが低下している時には、よくこの人間関 係にも何か問題があることが推察できます。

人間関係の多くの問題は、コミュニケーションの 不足に起因しています。

コミュニケーションにおける意味の伝わり方を研究したアメリカの行動科学者アルバート・メ ラビアンは、言葉、声の調子および態度が意志の疎通に関わる率を[言動の3要素]として次 のように発表しています。

  • 意志の疎通(言動の3要素)
    @ 言葉 7%
    A 声の調子 38%
    B 態度 55%
  • いかに言葉以外の非言語コミュニケーションの要素、つまり、外見、表情などの態度や姿勢 は、相手の目を見つめながら、補助的な形容言語を併用、身振り手振りのメッセージが大きく 関わっているかがわかります。

    言葉によるシンボルは、年齢教養・興味経験・専門知識の開きが大きすぎるほど言葉では埋め 尽くすことは出来ません。一方の知らないことが多すぎると、言葉を交わしても心は通じにく くなります。次元の高い問題を扱うと、言葉はたちまち不自由になります。心の働きには限り はありませんが、言葉の働きには限りがあります。

     コミュニケーション技法の目指すものは、このようなコミュニケーション能力の開発であ り、ゲームやロールプレイングなどの実習を通してコミュニケーション能力の習熟(スキル) を実感的に体験させようとするものです。

     ■ 実施上の注目点
     職場の融合雰囲気を促進させるためには、コミュニケーションに必要な技法を身につけるだけで はなく、コミュニケーション・スキルを持とうとする積極的な姿勢を持つことが大切です。

    コミュニケーションの能力を持っているという事実と、その能力を使おうという気持ちになる ことは、まったく違うことであることを認識して取りかかるべきでしょう。

    下記は効果的なコミュニケーションの障害となるような言動の例です。この例は相手の怒りを 誘う怒りの心理です。ちょっとした言動の違いで相手の感情に与える影響に大きい違いがある ことがわかります。まず、このような話法は相手に喧嘩を知らず知らずに売っていることを、 理解させることが、その能力の開発を図る上で重要です。

    1. 相手の話をさえぎる。
    2. 相手の言うことを批判する。
    3. 相手の考えを見下す。
    4. 声を高める − 感情的になりすぎる。
    5. 話を聞く前から心を決めていて、相手の 言うことに耳を貸さない。
    6. 相手が言い終わらないうちに、判断を下してしまう。
    7. 自分の聞きたい話題にしか耳を貸さな い。
    8. 相手の話は重要でないと思い込む。
    9. 否定的な表情を見せる(しぶい顔、眉を ひそめる)。

     コミュニケーションは、人間の社会生活に関わる活動の全てに欠かせない要素です。コミュ ニケーションの機能を大きく分けると、伝達したり主張したりする能力と、傾聴し理解する能 力とに分けられます。

     しかし、前提条件としてコミュニケーションの場に、入れることを受容しなければコミュニ ケーションはなり立たなくなります。とくに、前項の1〜6迄の項目は、生活圏内においての コミュニケーションを否定するジェスチャーですから、相手の怒りを引き起こす行動に捉えら れます。

     ■ トレーニングの手順  メッセージが正確に伝わらないで、イライラした経験はどなたにもあることです。コミュニケー ションが何段階かの過程を経ながら伝えられていくとき、伝達内容(メッセージ)には、とかく脱 落(肝心のことが抜ける)、体着(尾ヒレが付く)、歪曲(よかれと思ったことが悪意に受け取ら れる)などの現象が生じやすく、ここから誤解やデマが発生したりすることになりやすいもので す。

    このようなコミュニケーションの難しさや、注意事項などを体験的実感的に習得させるため に、様々なゲーム的な訓練技法が考案されています。

    たとえば、ごく簡単なものとしては、「伝言ゲーム」などもその一例です。

      [伝言ゲーム]

      何人かの受講者がタテ一列に並び、1番前列の人から2番目の人へ、2番目の人から 3番目の人へ・・・というように、順々に、多少の複雑さを伴った次のような伝言を 伝えていきます。

      <伝言メッセージの例>
      「昨日の午後3時半頃、山中さんと村山さんと田中さんが、銀座6丁目の喫茶店 「ロワジール」で、アイスコーヒーとレモンジュースとトマトジュースをうれしそう に飲んでいた」

      このようなメッセージが次々と伝えられていくに従って、次第に脱落や付着、歪曲な どが生じていく有様を体験的に学習することができます。

      コミュニケーション上の間違いを防ぐためには、次のような点に注意することが肝要 です。

        1. 又聞きはなるべく避ける。

        2. 伝達の段階の数を減らす。

        3. 正確にゆっくり話す。

        4. 順序立てて話す。

        5. ときどき質問をはさむ。

        6. 復唱して確認する。

        7. 要点や数字はメモを取る。

       ビジネスゲームにはこの他に、
      1. [ツー・ウェイ]  話し手側が一方的に“ワン・ウェイ”で伝達しただけでは、メッセージは正確 には伝わりにくい。聞き手側からの質問などを入れて双方通行(ツー・ウェイ) で話し合った方が、間違いが少ないといえるでしょう。このことを学習させるた めの研修技法。

      2. [傾聴訓練]

        相手の言わんとする事を、相手の身になって真剣に傾聴し理解しようとする 態度や姿勢のことを「積極的傾聴(アクティブ・リスニング)」といいま す。

      3. [マーク合わせ]

        このゲーム(マーク合わせ)は、職場の疑似形態(シュミレーション)をつ くり、作業(ゲーム)をする中で、組織の中の役割意識と、効果的なコミュ ニケーションのあり方を学ぶものです。
        ゲームの方法は、トレーナーの指示する指示書に従って、組織内において立 場上の職務におけるコミュニケーションを消化するものです。このゲームに よって、職場の活性化、目的意識、チームワーク、及びリーダーシップなど 多くのことを学び取ります。

      こうした態度や技能・技術を習得するために、提唱者のカール・ロジャースは、次のよう なやり方を推奨しています(嘉味田朝功『問題解決の話し合い』(産能大学出版部)より 引用)。
      「意見が対立して、人と激論を戦わすようなハメになったとき、ちょっと議論をやめて、 これからの議論では次のような基本ルールを採用しようと提案してみてください。

      つまり、『議論の当事者は、どちらも自分の主張や意見を述べる前に、まず相手が今 述べた論点や立場を、もう一度はっきりと声に出して言い直してみなければならな い』というルールです。

      この言い直しは、自分自身の言葉でなければなりません(相手の言葉をただオウム返 ししただけでは、言葉を聞いたという証拠にはなりますが、理解したという証拠には なりません)。この言い直しが、話し手を満足させるほど十分正確であったならば、 そこで初めて聞き手が自分の考えを話すことが許されるわけです」