相手にたちまち友情をいだかせる
「会う人をみな友人にする」人物にに会われたことはないでしょうか。
このような方々は、たちまちにして人と友達になります。バスや電車で隣り合わせた人とす
ぐ旧知の間柄のように話がはずみます。ビジネスで見込み客を訪問すると、すぐに客は彼を竹
馬の友のように扱うようになります。
一方で、知り合ってみるとよい人なのですが、はじめはとっつきにくい人々もいます。
前者のほうはなにか、とくべつなテクニックを持って、相手の胸中を自在に開閉できるよ
うに思います。これに対して、後者の取っつきにくい人々は、世間との折り合いが悪く、
彼らが、つきあうための準備運動をしている間に、取っつきやすい人々に仕事をさらわれ
てしまいます。
あるとき、自分はとっつきやすい彼に、とっつきやすいテクニックを教えて貰うことに
しました。彼曰くには「相手は自分を好きになると信じることだ」というのです。それ
で、それを手がかりに彼をさらに観察しました。
ビジネスマンの彼は、校内の男にも女にも同じような人気があります。彼は、ビジネス
コースの受講生ですが、誰もが彼を好きらしいようで、教授にも人気があります。自分な
ら、教室から放り出されるようなことをしても、教授達は笑うだけで、彼は、なかなかい
い奴だと思ってるようです。
注意してみると、彼はいつも相手の好意的な反応は既定の事実であるかのように振る舞
います。自分は、他の人々から好かれると信じる故に、彼は彼らが好いてくれるかのよう
に振る舞っているのです。つまり、
「彼は相手にとってほしい態度をとった」のです。しかも、受け身の守勢ではなく、相手
が好意を示してくれると完全に確信していたため、人を恐れませんでした。
恐れは、人と知り合い友情をいだかせようとする際に大きな障害になります。相手は自
分を好いてくれないのではないか――すると、攻撃を恐れるカタツムリのように殻に閉じ
こもってしまいます。こちらが守りの殻の奥深く引きこもってしまうと、人は近づけませ
ん。態度は相手に伝染しますから、相手も引き下がってしまうことになります。
人間関係においては、「他人を好いてくれないという基本的態度をとると、相手からそ
れを実証するような経験を与えられます」しかし、『たいていの人は友好的で自分と友人
になりいと思っている』という基本的な態度をとると、これも、経験によって実証される
という、何ごとにもまさる事実があるのです。
よき友人になるための要素
- 相手の立場、希望を理解する
- 相手の話をよく聞く
- 同情ばかりしてはならない
- 相手の利益になる情報を多くもっている
- たがいに信頼できる
相手に同情しているだけでは、なんの解決にもなりません。相手の気持ちを理解するだけで
なく、客観的に物事を掴み、適切なアドバイスをできるのが、真の友人であると思います。
また、友人同士には、情報の共有、約束を守る安請け合いしない、スピーディな行動などの
不文律があります。
友人をつくる
よい友人をもっているということは、その人にとって、大きな財産です。しかし、よき友人
を得たいのなら、その前に自分がよき友人になるよう努力しているか否か、問い直してみる必
要があります。
「徒然草」の作者兼好法師は、「悪しき友人」「よき友人」の条件を、つぎのように述べてい
ます。
「友とするにわろき者(わろ=悪い)、七つあり。一つには、高くやんことなき人(やん
ことなき=身分の高い)。二つには、若き人。三つには、病なく身強き人。四つには、酒
を好む人。五つには、たけく勇める人。六つには、虚言する人。七つには、欲深き人」
「よき友三つあり。一つには、物くるる友。二つには、くずし(医師)。三つには、知
恵ある友」と、いうように、限度や節度など友人の基準を設けています。
つまり、友人をもつためには、まず、自分も友人でなければならないことです。この相互
関係の意味を、考慮すると、そこから得られるものは大きいはずです。
しかし、友人というものは、自分を気に入ってる人物だと考えられるでしょうか?
もし、そのとおりだったなら、多くの友人をもつことはできないかもしれません。
友人にしてもよいと思う人にあったとき、その人から受けるかもしれない援助のことなど
を、全然考えないで、その人を、少しでも幸福にしてやれるいろいろなことを、考えなけ
ればなりません。そうすれば、すぐそこに新しい友情が築かれてゆくことを、理解するこ
とができます。
けれども、人によっては、「与える一方だけなら、何で友人などつくる必要があるのか」
こんな考え方をする人もいます。それは、友人という言葉の本当の意味がまだ理解されて
いないからです。
友人のためになにかをしてやるのは、彼らが友人であるからで、私たちは彼らが幸福に
なることに、喜びを感じるからです。
人を幸福にしてやることによって、自分達も幸福を感ずることをのぞけば、自分たちは、
決しておかえしを貰おうなどと考えて世話をするわけではありません。
しかし、驚くことに、自分たちが献身的に人の幸福をはかってやると、彼らもまた、その
機会があれば、私たちを、幸福にするためにつくしてくれます。
これを、ご存じのビジネス社会における経営組織に例えると、経営組織は、資産と、負
債をもっています。負債があまりにも多いと、どんなにすぐれた事業であっても、潰れて
しまいます。
人生においての友人は、資産であり、敵は負債です。あまり多くの負債があれば、事業
が潰れてしまうように、敵が多すぎれば、個人の幸福は破壊されてしまいます。
もし、何人かの敵をもっているようであれば、いまこそ、これらの敵の、友情を得るため
に、あらゆることをするよう考える最適の時期になります。このようなことをする度ごと
に、自分は、二重の得をします。つまり、負債を減じて資産を増やしていくことになりま
す。