岐阜県人事委員会における
    
第3回公開口頭審理のあらまし
               
(1998年10月8日)

10月8日、県人事委員会において第3回公開口頭審理開催される!
申立人側申請の岩田義孝氏への証人尋問が始まりました!

 証人は処分当時県教委教職員課教育主管の岩田義孝氏(現、西濃教育事務所長)。審理会場である県庁3階の3北−1会議室では、29名の傍聴に来て下さった皆さんが見つめる中、約2時間半にわたって尋問が行われました。速記録が届いていないため、傍聴者のメモから皆さんに当日の模様をお知らせいたします。

 以下に紹介する記録は、傍聴席でノートにとった審理メモです。正式な速記録を基にしたものでないことをお断りします(M.K.)。

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申立人弁護士「申立人は県教育委員会からセンターに派遣されたが、これが行われた平成4〜5年度の地位はどのようか。」
証人「県教委事務局教職員課、総括課長補佐兼小中学校係長。」
申立人弁護士「教職員課はどういう事務を取り扱うのか。」
証人「市町村教育委員会の教育行政に対する指導、助言。各種教育団体との折衝、他に教職員の人事管理、いわゆる学校関係の教育推進の指導、助言など。法令に明記されているが充分には答えられない。」
申立人弁護士「岐阜の小中学校教員の人事に関することを行っているのか。」
証人「そうです。昨年は3000を越える。」
申立人弁護士「教職員課は人事を行っているが、その素案を作っているか。」
証人「小中と高校で二分され、手順が若干異なる。」
申立人弁護士「小中の定期異動についてはどうか」
証人「はっきりは覚えていないが、具体的には11月には定期異動方針、実施要項の作成、教育委員会の議決をへて関係機関所属長あてに通知。」
申立人弁護士「素案作りはすると?」
証人「根幹について示し、市町村教委と連絡を取り、具体的な仕事は進んでいく。」
申立人弁護士「その後は教職員課を中心に行うのか。」
証人「1人、1人についてどうこうということは事務的にできない。市町村教育委員会、教育事務所というルートで行う。」
申立人弁護士「教育事務所が素案を作り、(教職員課に)持ち込まれるのか。」
証人「そうである。」
申立人弁護士「教職員課から教育委員会に持ち込まれるまでに、途中で発言するポストはあるか。」
証人「教職員課が担当するのではなく、教育委員会が任命権者なので、その素案に対して必要に応じ、事務局の幹部が指導、助言、検討する。」
申立人弁護士「当時、教職員課の総括課長補佐は、仕事との関係でどういう権限があるか。」
証人「補職名を見た通り、特別権限はない。」
申立人弁護士「権限といわなくとも、どういう人事を担当するのか。」
証人「教職員課には総務の総括、高等学校担当の総括、小中学校担当の総括の3人がいるが、異動方針の策定作業を行う。」
申立人弁護士「平成5年2月頃、教育委員会事務局職員登用のための選考試験があり、申立人があなたの面接を受けていることは覚えているか。」
証人「そういう作業があり、会場に同席した記憶があるが、数が多いのではっきりしない。」
申立人弁護士「藤橋中から突然事務局に登用され、センターに出向させられた。出向にあたっての背景はどうだったのか。声がかかったのか。」
証人「私にはわからない。」
申立人弁護士「センターの職員は文化課に属しているが、誰に尋ねれば一番わかるか。」
証人「特定される一人の推薦によるものではなく、多くの関係者の情報が集約された。」
申立人弁護士「誰に聞けば全貌に近い事が聞けるのか。ポスト名でも良いから教えてほしい。必ず誰かが知っているはず。」
証人「答えができかねる。」
申立人弁護士「あなたの考えでよい。」
証人「その学校の教職員を理解している校長先生ではないか。他にも市町村教育委員会、西濃教育事務所。」
申立人弁護士「文化課の課長は。」
証人「センターの担当する仕事は課長からの情報も双方向から出して、具体的に固まる。」
申立人弁護士「文化課長が双方から多くの情報が入るのでは。」
証人「****」
申立人弁護士「両方の接点は教職員課か。」
証人「ではないか。」
申立人弁護士「派遣されるにあたって、センター側から名指しがあったのか。」
証人「私のレベルではわからない。」
申立人弁護士「あったとすればどのポストへ情報は行くか。」
証人「主管と課長のところへ行くと思われる。」
申立人弁護士「平成5年2月の面接を行ったが、センターに派遣する人事の内定方針があったと見てよいか。」
証人「なかったと思う。」
申立人弁護士「2月の段階ではない。」
証人「はい。」
申立人弁護士「とにかく事務局に入れるためか。」
証人「それで、選考が行われた。」
申立人弁護士「能力、実績が評価され、試験を受けたのでは。」
証人「先程説明したように、校長、教育委員会、教育事務所の情報をもとに選考の対象となった。」
申立人弁護士「昭和59年に当時県教育長であった吉田豊氏の、県議会における徳山村埋蔵文化財に関する発言は知っているか。」
証人「県議会の動きなどは勉強不足で知らなかった。」
申立人弁護士「申立人が派遣された時期は吉田氏が理事長にいたが、知っているか。」
証人「意識していなかった。」
申立人弁護士「センターから申立人を出して欲しいという要望はなかったか。」
証人「*****」
申立人弁護士「派遣された県職員は、教育委員会に仕事ぶりの情報が入るのか。」
証人「そういうものはわからない。」
申立人弁護士「勤務評定の結果はどのセクションに入るのか。」
証人「わからない。」
申立人弁護士「センター職員に関する話し合いの窓口は文化課か。」
証人「そうです。」
申立人弁護士「申立人のセンターでの仕事ぶりや実績は情報として知っていたか。」
証人「詳しくは知らなかった。」
申立人弁護士「平成8年11月中旬に文化課がセンターに人事の通知をしたのを知っていたか。」
証人「文化課のことで知らなかった。」
申立人弁護士「当時、あなたはどういう地位にいたか。」
証人「教育主管です。」
申立人弁護士「総括課長補佐の1つ上のポストか。」
証人「そうです。」
申立人弁護士「今までいったのは、その地位の権限で言っているのか。」
証人「特別の権限は県教育委員会にある。」
申立人弁護士「処分者は平成8年11月下旬にセンター理事長に対して、人事意向聴取を行っているが、知っているか。」
証人「そういう対応をされたことは課長と私は聞いている。」
申立人弁護士「どういうやりとりがされるのか。」
証人「文化課の次年度の事業、来年度の方向、中・長期的整備、拡充、それぞれの組織について話す。」
申立人弁護士「処分者の書面には人事に関する意向を調査したとあるが、平成8年11月にどういうやりとりがあったか。」
証人「一般的には言えるが、文化課の課長がどういう話であったか、記憶がない。」
申立人弁護士「11月の意向聴取の席にいたか。」
証人「いない。」
申立人弁護士「誰がいたのか。」
証人「センターか文化課の人しか知らない。」
申立人弁護士「センターと文化課の中間で、人事の話し合いの内容が教職員課に報告されるのか。」
証人「同席した。」
申立人弁護士「この段階ではどの位個人的な話が出るのか。」
証人「ケース・バイ・ケースで一概には言えない。」
申立人弁護士「個人的な名前を挙げて行う事もあるのか。」
証人「はい。」
申立人弁護士「センターから申立人を出す構想が出てきたのはいつですか。」
証人「さあ。ちょっと記憶がない。定かではないが、12月か1月に入ってからか。2月の時点で選考があるので異動の対象者を定めている。」
申立人弁護士「あなたの記憶によれば申立人の異動の話が出たのはいつか。」
証人「*****」
申立人弁護士「誰に聞けばわかるのか。」
証人「*****」
申立人弁護士「一番事情のわかる人はだれか。」
証人「規定みたいなものがイメージできないので。」
申立人弁護士「だいたいでよい。」
証人「年を越してからか。」
申立人弁護士「申立人をセンターから戻すというのはセンターから出た話か、教育委員会から出た話か。」
証人「どちらかは特定できない。」
申立人弁護士「申立人に関するセンターの意向は文化課とあなたに届くのか。センターが出したいと言っていたか。」
証人「そうではなかった。」
申立人弁護士「申立人は来年度の業務の希望を聞かれた時、寺屋敷の発掘をしたいという意向を文章で出している。その意向はあなたに伝わっているか。」
証人「数が多いので。特定の方の記憶はない。関係者の事情聴衆は本人の将来、教員のライフスタイル、全体の異動の対象****逆に異動したい方も全体のバランスの中で引き続きやってもらう こともある。」
申立人弁護士「本人の異動希望は必ずあなたが聞き取るのか。」
証人「1人1人について必ずしもそうではない。」
申立人弁護士「所属長から報告はあるか。」
証人「主だったところについては説明ということになる。」
申立人弁護士「甲22号証、平成9年3月に申立人が希望をセンターに出したものだ。先だって11月にも同じものを出したが、これを見たか。」
証人「見ていない。」
申立人弁護士「申立人のセンターからの出向を解くについて、申立人のセンターでの仕事内容について教育委員会は調査したか。」
証人「文化課長との間に話が出たこともあったが、具体的には記憶はない。」
申立人弁護士「センター側から直接聞いたか。」
証人「いいえ。あくまで文化課が窓口である。」
申立人弁護士「では文化課から聞いたのは。」
証人「記憶が曖昧で申し訳ない。」
申立人弁護士「文化課長は必ず聞いているか。」
証人「憶測で言うことはできない。」
申立人弁護士「平成9年3月に塚遺跡発掘報告書作成途中であり、寺屋敷遺跡発掘報告書には未着手ということを具体的に知った上で人事を行ったか。」
証人「そこまでは出来なかった。」
申立人弁護士「なぜか。」
証人「ちょっと記憶が・・・。数が多いので。」
申立人弁護士「知っていたとすれば、文化課課長ということか。」
証人「恐らくそうではないかと思う。」
申立人弁護士「申立人が埋蔵文化財の重要なプロセスである発掘報告書作成の途中、寺屋敷遺跡についてはまだ未着手の状態で池田小に配置換えする行政上の目的はなんですか。」
証人「人事異動方針。教育の活性化などを総合的に考慮し、経歴、経験をふまえて適材適所****。引き続きか異動になるのかは、教育行政全体の一環として異動が行われた。」

申立人弁護士「平成9年度の教育委員会の通達文書の趣旨、目的、ねらいのどの部分に申立人の人事が該当するのか。」
証人「基本的には本県の教育振興****大前提*****その他職歴、その他一般職員****年齢、健康条件が関係するかと思う。」
申立人弁護士「それ以外に具体的な事は。」
証人「直接ではないが、事務局から学校であるが、逆に****活力ある学校にするために、適材適所が関係するかと思う。」
申立人弁護士「派遣を解く場合、センターにおける仕事の実績、継続の仕事の有無を考えて行政目的に適うのか、動かした方がよいか比較衡量はするか。誰かがしているのではないか。」
証人「されると思う。」
申立人弁護士「申立人の事は誰に聞けばわかるか。」
証人「最終的には私かと。」
申立人弁護士「最終的にあなたの決断と申し上げていいか。」
証人「私は素案であり、決定権は上司に。」
申立人弁護士「素案を作ったのはあなたか。」
証人「はい。」
申立人弁護士「センターでのやりかけている仕事を決断の際に考慮したか。」
証人「したと思っている。」
申立人弁護士「途中であることを重要だと評価したか。」
証人「大切だとは思った。」
申立人弁護士「センターの意向を教えて欲しい。」
証人「直接話は聞いていないが、文化課長からのヒアリングにおいて異動の対象にしてもらってよいと話された。私については、仕事の重要さには十分理解はなかった。」
申立人弁護士「センター、文化課は何を言ったのか。」
証人「本人のため、県下全域のためにという漠然としたことである。」
申立人弁護士「埋蔵文化財の処理は発掘から報告書まで一貫して行うのが合理的であるが、それについて当時はどう考えていたのか。」
証人「勉強不足で十分認識していないので申し上げられない。どの課長からも異動の対象にしてもらってよいという言葉を聞いた。一応センターの仕事を進める上で大きく害することはにはならないと判断した。」
申立人弁護士「多少は影響するかもしれないと思ったか。」
証人「はい。」
申立人弁護士「池田小に配置した意図は何か。」
証人「本人の活躍、力量、年齢を考えて、近い将来を考えて、中堅的立場で活躍した後に期待があったのでは。具体的には市町村教育委員会が関わっている。」
申立人弁護士「申立人作成の準備書面(六)に添付した資料を見たのは初めてか。」
証人「昨年度見たような記憶が若干ある。」
申立人弁護士「大体、そこに書かれている通りでよいか。」
証人「誤りはない。」
申立人弁護士「教育委員会、文化課で満42歳の年度の当初に補職名が一格上昇するとい扱いを受けることが多いということは承知しているか。」
証人「勤続20年というか、経験年数に決まりがあるような・・・。昇格は総務課が担当だと思う。」
申立人弁護士「在職20年を考えているのか。」
証人「*****」(聞き取れず)
申立人弁護士「当初申立人は2年間講師という扱いであるが、県教委の賞詞に関する通知が出ていて、これには常勤講師も通算して経験年数に含めるとあるが、表彰に関わる場合とは取り扱いが違うのか。」
証人「担当は総務課であるためよくわからない。違いがあるのでは。」
申立人「センターに職務専念義務を免除して派遣の辞令が出るのは、センターがどのような目的を持ち、どのような事をしているのか熟知していると考えてよいか。」
証人「センターだけが重要な組織でなく、学校など、どこも重要である。」
申立人「処分者側の乙第22号証添付資料に『仕様書』が提出されているが、これには発掘後は発掘報告書を刊行するものとするとあることを知っているか。」
証人「深くは知らない。総括的な言葉であり、裏返すと業務上差し支えない。」
申立人「教育委員会事務局職員の異動方針の中に同一所属に比較的長く勤務した者を異動の対象とするとあるが、在職年数の短い申立人を、在職年数の長い職員を差し置いてなぜ異動対象としたのか。」
証人「方針は4000件を総括した形で述べたもので、すべて合致することはできない。年齢的なことを考えて、将来の活躍を考えて、主任的な立場を考えて、将来をにらんだ異動である。」
申立人「まだ尋問事項があり、次回審理に回すようお願いしたい。」

     これで審理をうち切ってはならない
              第3回審理を傍聴して
                                     桐 生 正 市

 10月8日の岩田義孝氏の証人尋問は、これといった重大な証言はなかった。
 予想通り、記憶にない、わからないを繰り返され、いたずらに時が流れていった。ところが、水谷博昭弁護士が「それは誰に聞くとわかるのか」と何度も追及すると、自分のところで止めないとまずいと思ったのか、答えるようになった。
 尋問の最後に、申立人の篠田氏本人が質問すると、弁護士の方を向かずに証言していた岩田氏が篠田氏の方を向いて話し始めた。その態度の変貌ぶりはいかにも「お役人」らしくて象徴的だった。

 教育委員会に説明責任はないのか

 尋問は初めに、人事委員長の人定質問から始まった。それに続き、宣誓。裁判と同じように進められる。
 申立人側の質問は、水谷弁護士によって行われた。初めは篠田氏が教育員会からセンターへ派遣されたときの地位と、教員の異動を決めるプロセスについて。しかし、肝心なことになると、岩田氏は答弁を避ける。例えば、藤橋中学校から教育委員会への異動と同時にセンターへ派遣させられたことについて。
 水谷弁護士「出向にあたっての背景はどうだったのか。声がかかったのか」
 岩田証人「私にはわからない」
 水谷弁護士「誰に聞けば全貌に近いことが聞けるのか。ポストだけでも良いから教えてほしい。必ず誰かが知っているはず」
 岩田証人「答えができかねる」
 下っ端の役人なら、知らないと答えるのも当然だが、教育委員会教職員課主管という立場にいて曖昧な答弁しかできないのか不思議でしょうがない。いや、嘘は言わないと宣誓した上での証言なので、岩田氏は本当にわからなくて、記憶がないのだろう。ならば、岐阜県の教員の配置転換は、担当部署の主管ですらわからないままに決定されるのだろうか。
 これでお咎めなしとはならない。かえって、わからなかったり曖昧な答えの方が問題である。
 準備書面(8)では、今年4月の最高裁判決について述べられている。詳しくは、『きばらまいか通信』(第13号)を読んでいただきたいが、それによると、地方公務員の職務専念義務を解いて自治体関連の外郭団体に派遣させるためには、それ相応の理由が必要であるということだ。それならば、逆に外郭団体から自治体に戻すにも合理的な理由が必要となる。これは、最近日本でも言われているアカウンタビリティ(説明責任)の考え方からも、重要なことである。
 岩田氏の証言では、センターへの派遣もそこから学校へ異動させたことについても合理的な理由が聞けなかった。それだけでも、この配置転換に問題がある。

 この証人尋問だけでは不十分

 水谷弁護士に追及されて思い出したのか、センターや文化課側が篠田氏の異動についてどのような意向だったか岩田氏は証言している。
 水谷弁護士「(篠田氏が)センターでやりかけている仕事を、決断の際に考慮したか」
 岩田証人「したと思っている」
 水谷弁護士「途中であることを重要だと評価したか」
 岩田証人「大切だとは思った」
 水谷弁護士「センターの意向を教えてほしい」
 岩田証人「直接は聞いていないが、文化課長からのヒヤリングにおいて異動の対象にしてもらってよいと話された。私については、仕事の重要さには十分理解はなかった」
 水谷弁護士「センター、文化課は何を言ったのか」
 岩田証人「本人のため、県下全域のためにという漠然としたことである」
 この証言によると、篠田氏を寺屋敷遺跡発掘の途中で異動させることにセンターが了解したと文化課が言っていたことになる。岩田氏はそれをセンター側から直接聞いたわけではない。
 では、センターはどう言っていたのか。本当に了解していたのか、篠田氏を異動させようと誰が言ったのかなどをセンターの理事長に聞かなくてはならない。
 また、寺屋敷遺跡が考古学上どれだけの価値を持つのかも重大なポイントである。その価値をセンターが知っていて担当の篠田氏を異動させたなら、共有財産である埋蔵文化財の保護の観点からも大問題である。知らなかったらセンターの能力が問われる。
 とにかく、岩田氏への尋問だけでは不十分である。これで審理を打ち切ってはならない。


        第3回公開口頭審理傍聴記
                                        M.K.

 すっかり、年中行事に刷り込まれてしまった感のある公開口頭審理。ふと、気がつくと長袖を着ていたりもする。時が経つのは早いものである。               
 さて、今回の審理はいよいよ証人を喚問しての尋問となる。直接異動に関わった証人により、その内情が公にされるという、今回の審理の1つの山場とも考えられるものである。 前日、電話で先生に秘策はあるのかと聞いたら、「ない。」と力強く断言された。

 いつものように2時をやや回った頃に、第3回公開口頭審理が始まった。提出書類をめぐって若干やりとりが行われた後に、証人である岩田義孝氏が緊張のためか、厳しげな表情で入場。審理長(人事委委員長)から申立人側、処分者側、傍聴人全員が起立しての尋問開始の宣言がなされ、岩田氏に改めて名前、住所、職業、生年月日を確認される。あー、これって何かテレビや映画で見たことがあるぞと思っていたら、実際の水谷弁護士の岩田氏への尋問もテレビや映画で見たのと一緒だった。
 水谷弁護士の質問が核心に触れると、とにかく岩田氏の答えは「わかりません。」「知らなかった。」「記憶がない。」ばかり・・・ 。尋問の冒頭に審理長からあったように「虚偽や嘘は懲役3か月か、罰金」であり、証人が嘘をつくはずはないのであろう。ましてや証人は教育に関わる仕事を務めておられる方ではないか。毎年何千という教員が異動するのだから、例え異動の素案を作ったとしても、いちいち細かいことまで把握できるはずがない。その一方では教員の将来を考え、異動させた・・・という逃げの一手。極論かもしれないが、もし、この論理を教育現場にそのまま当てはめるなら、生徒不在の教育。学校も荒れるはずである・・・なんてね。
 そんな戯言の1つも言いたくなるほど、消化不良な証言内容だったし、あえて、問題の本質に触れずに一般論を盾にガードの堅かった証人の証言と言っておく。
 ただ、そんな岩田氏も篠田先生からの質問には態度を豹変して、攻撃的に。岩田氏が西濃教育事務所長という要職にあり、この職が西濃1市5郡14町5村の教育行政のトップに立ち、小中学校だけでも117校、教職員2064名の頂点に立つ地位であることを考えると、この豹変ぶりが何を物語るかは自ずと明らかではないか。

 その後、場所をフジ会館に移しての報告会。水谷弁護士の今日の総括と今後の展望の後に、恒例の出席者の自己紹介兼激励兼戦術会議兼近況報告兼雑談に入る。恒例の傍聴者に加えて、新幹線で遠方より駆けつけてくださった先生や、初めて傍聴に参加された人など、どんどん新しい顔ぶれも増えている。職種や年齢を越えて、ざっくばらんな中にも真剣に考えたり、笑ったりしながら自分なりの視点で支援の方法も含めて篠田問題を考えていこうという雰囲気であった。前途は決して楽観できるものではないが、今回の訴えの目的の1つでもある、この問題を少しでも多くの人に考えてもらうということについては少しずつ、そして確実に輪が拡がっている、そんな気もした第3回公開口頭審理でした。