検証!PC−FX論

○その一・ハード論○

目次
序論−−その定義−−
その形状
外部構造
その内部−−ハードの性能−−
画像表示能力−−ゲーム機としての特徴−−
周辺機器
ハード論総括

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★ご注意★本文は1997年夏ごろ執筆されたものです。
◎序論−−その定義−−
PC−FXを一言で説明するなら、「32ビットCD−ROMゲームマシン」と言うことになるだろう。これだけの説明なら他の32ビットマシンであるPS、SSとなんら変わりはない。ではFX独自の個性とは何なのか。
言い古されていることだが「フルアニメーション・ゲームマシン」という売り文句がある。FXは秒間30コマの映像を高画質で、かつほとんどアクセスなしで表示するという特異な機能を持っている。
また、その拡張性、ことにパソコンとの接続が意識されたマシンでる。これは発売しているのがNECである事が大きな要因であろう。
さらに、マシンが縦型である(笑)。CD−ROMマシンのデザインをPCエンジンで決定づけたNECが、その殻をうち破るデザインを敢行しているわけである。
はっきり言ってしまうと、FXのハード的独自性は上記の三点しかない。しかしPSとSSとの間よりは明確な独自性を持っていることは確かである。
では、以下にそれぞれのポイントについて各論を行おう。

◎その形状
序論で述べたように、PC−FXは縦型という、特異な形状をしている。俗に「白い巨塔」とも呼ばれるこの形状はデザインとしては斬新であり、発売当初、某デザイナーの高い評価や、秋葉原で初期の次世代機を物色する女性が「これいい!」とか言っていたのをどっかの雑誌で見たことがある。事実、PC−FXはその年の通産省グッドデザイン賞を受賞している。
さて、この縦型デザインであるが、明らかにパソコンとの接続を意識したデザインである。どう考えてもTVの前に置く代物ではない。TVやパソコンの横に置くと安定し、しっくりくる。パッドのコードが異様に長いのも、初めからそのつもりであったことを裏付けている。当初NECHEは「98のCD−ROMドライブに使える」ことを強調しており、その意図がそのままデザインに反映したのだろう。なお、正確なサイズは幅132o、高240o、奥行き267oとなっており、他のマシンを大きくしのいでいる(笑)。

◎外部構造
上部
FXを初めて手にする人を悩ませるのが「どこにCDを入れるの?」という問題であろう。答えは上部。ボタンを押しフタを開けると、CD−ROMドライブが現れる(ま、ほかの場所に置きようがないが)。
前部
前部に回ると、2つのパッド端子とバックアップメモリー用スロット(EXIT1)、そして電源ボタンがある。パッド端子はがっちりはめこめるので、まずはずれる心配はない(PCエンジンの反省か?)。またPOWERインジケーターとCDドライブのBUSYインジケーターもここにある。CDからデータを順調に読みとっていると、ここが赤く点滅し、プレイヤーに安堵を与えてくれる。逆にここが点灯したままならCD読み込みにつかえていると分かり、多大な不安を与えてくれる。
後部
後部に回ろう。ここにはAV出力端子(S端子も装備)と電源コードが存在する。以前はよくゲーム機の電源は何やらでっかいアダプターを抱えていたが、FXでは内蔵にしたのだろうか。普通のコンセントであり、手軽で助かる。また後部上方にはカバーが存在し、開けると大きな拡張スロット(EXIT2)が出現する。現在の所、ここを利用するのはFXをパソコンのCD−ROMドライブ化する「SCSIアダプタ」のみである。
下部
ひっくり返して下部を見よう(ほんとにやる人は十分注意しよう)。何もないと思いきや、何とここにも拡張スロット(EXIT3)がある。予定では将来のメモリ増強の際に利用することになっているが(PCエンジンのCD−ROM2>スーパーCD−ROM2>アーケードカードの歴史を知る人には分かりやすい)、このままだと誰にも知られずに、ひっそりと最下層に消えていく運命のようだ(笑)。

◎その内部−−ハードの性能−−
CPU
まず心臓ともいえるCPUはNEC製32ビットRISCプロセッサ「V810」である。このCPUはあの任天堂のバーチャルボーイにも使用されていた。クロック周波数は21.5MHzである。
各IC
CPUが心臓なら、その他の内臓器官にあたるのは、その周囲に配置され様々の仕事をこなす5つのチップたちである。これらはすべて「HuC62」シリーズと呼ばれ、ハドソン製である。言うまでもなく「C62」はSLの形式で、ハドソン会長工藤氏の趣味が出てしまったものらしい(ついでに社名「ハドソン」もC62に由来する。NHK「新電子立国」をご覧になった人はご存じであろう)。
FXを分解した事はないのでFXGAの構成から推測すると、それぞれ「HuC6230(ADPCM、サウンドミキシング)」「HuC6261(パレット・セロファン・プライオリティ)」「HuC6270(スプライト・BG)」「HuC6271(圧縮画像復元)」「HuC6272(BG・データ転送)」となっているらしい。なおGAには「HuC6273(スプライト・ポリゴン)」というチップが追加されている。
メモリ
ICの次はメモリ構成について。ゲームデータが置かれ、CPUが直接読み書きするメインRAMは2Mバイト。これ、PCエンジンアーケードカードと同等(と言うよりやや少ない)である。画像関係を扱うVRAMが1.25Mバイト。CDバッファに256Kバイト。ROM(FXにあらかじめ仕込まれているプログラムが記述されている。日本語の文字もここ)に1Mバイト。データを保存するバックアップRAMはたったの32Kバイトである。
CD−ROMドライブ
当然、倍速である。まあ他機種も同じなので文句は言えないが、FXを98の外付けCD−ROMドライブにするつもりだったにしては力不足だった。なお、FXは音楽CDはもちろん、CD−G(カラオケなどでソフトがある)、フォトCDに対応している。中でも本体のみでフォトCDを使えるのは今は亡き3DOとFXだけで、結構使い勝手も良い。当初ビデオCDの構想もあったらしいが中止されている。
音源
ADPCMに2チャンネル(再生レート3.9〜31.9KHZ)、波形メモリ音源(いわゆるPSG、内蔵音源)が最大6音、さらにCD−DA(いわゆるCD音源)という構成になっている。私は音源関係はよく知らないので詳しいことは分からないが、これは他機種に比べて結構貧弱(PCエンジンCD−ROM2と大差なし)との声が多い。

◎画像表示能力−−ゲーム機としての特徴−−
なんだかんだ言ってもゲームの命は画面である。これは「TVゲーム」「ビデオゲーム」と言われている以上、常識的な事と言わざるを得ない。ではFXの能力をこの画像表示を中心にまとめてみよう。
最大発色数
公表されているスペックによれば、FXの最大発色数は1677万色、いわゆるフルカラー表示が可能となっている。ただしこれ、時と場合による。フルカラー表示が行えるのは映像表示と自然画表示のみ。映像に関してはアニメよりも実写を表示した時に、その美しさが分かる(例の女子プロレスゲームぐらいしかないが)。静止自然画のフルカラーは「ルナテッィクドーン」の町の背景や「チームイノセント」の背景に、その威力を発揮している。残念ながら、スプライト画面は256色が限界である。
BG・スプライト
BGはいわゆる背景でスペック表では最大7面を表示するとある。これに関しても詳しいことは言えないが、お世辞にも多いとは言えないと言う話を聞いている。また、画面内を動き回り、事実上ゲームの命とも言うべきスプライトの表示であるが、1画面最大128個だけである。色数を減らせばある程度融通がきくらしいが、他機種に比べると貧弱としか言いようがない(これもPCエンジンと大差ないと聞いている)。FXにアクションゲームが極端に少ないのも、このため。その中で最高峰といえるのが「ZENKI」であるが、これはスプライトとBG、動画処理を巧みに組み合わせた成果である。要するにプログラマーの力量次第というわけ。
解像度
解像度とは簡単に言えば絵の細かさ、画面上を線が何本走っているか、という数値である。これはパソコンとTVでは基本的に雲泥の差が存在する(通常でも縦横それぞれ倍。2×2で4倍)。そこでゲーム機ではそこを無理して画面を縮め、高解像度を達成したりする。最近話題のSS高解像度モードは横の解像度をパソコン並にして、美少女ゲーム乱発に成功している。FXはというと256×240の通常モードに加え、320×240の高解像度モードが一応存在する。ただどこで使っているのかは私には分からない。なお静止自然画をフルカラーで表示するぶんには解像度はさほど気にならない(「ニルゲンツ」のアドベンチャー画面はたぶんこれだと思う)。
エフェクト
いわゆる「効果」である(訳しただけ)。スペックによると「BG1面に対して拡大、縮小、回転、半透明機能。画面のフェードイン、アウト」とある。これもどこでどう使っているかよく分からないが、「チームイノセント」の移動するスプライトキャラ、「卒業U」の生徒の拡大なんかに使ってるんでしょ、たぶん。
自然画・動画
なんだかFXの評価をおとしめるような文章が続いたが、ここでは胸を張ろう、FXファンの諸君。FXが他機種を大きく凌ぐのがこの性能である。というか、このために他の機能を削ってしまったような気もしないではないが。
FXの動画及び自然画はJPEGという圧縮技術を使用している。インターネットではおなじみの画像圧縮技術で、高い画質を誇る。動画は毎秒30フレーム(ディズニーなんかのフルアニメだって楽々表示)。おまけにほとんどアクセス時間を感じさせない。ボタンの入力などの命令に従って任意の画像(X枚目)へ瞬時に飛べる。これでビデオを出せばビデオCDより便利だろうに…。この機能は「アニメフリーク」シリーズの操作系、「ニルゲンツ」の空戦シーン、そして何といっても「バトルヒート」のゲームシステムにいかんなく発揮されている(私もGA使ってパソコンのCD−ROMドライブで「バトルヒート」が動いたときは正直驚いた。どうやってCDから読み込んでいるのかまるで分からない)。最近ではPS、SSも技術向上により動画の画質はかなりアップしているが、「動画をリアルタイムに操作する」という領域には到底到達できないだろう。ただ、問題なのはこの機能を生かしたソフトが少なすぎることである。
付け加えると、動画は何もアニメ=ビジュアルシーンばかりに使用されているわけではない。「ミラークルム」の魔法効果、「ZENKI」のボス、「ファーランドストーリー」の戦闘場面といったゲーム中の画面効果にも使用されている。「パチ夫くん」なんかだとパチンコ台に半透明状態で技アニメが重ねて表示される(だからどうしたって感じもするが)。

◎周辺機器
パッド
家庭用ゲーム機、最近ではパソコンでも無くてはならないのが、このパッドという入力装置である。FXのパッドは6ボタンと十字ボタンで構成された実にオーソドックスなものである。これがPCエンジンDuoRXが標準装備していたパッドとうり二つ。もう一工夫欲しいデザインである。十字ボタンは指を痛めない設計ではあるものの、斜めコマンドが入れにくく「ZENKI」「バトルヒート」の技コマンド入力は辛い。パッド中央にモード切替スイッチがA・B2つあるが、使用するソフトはほとんどない。PCエンジンの連写機能みたいなものを狙っていたのだろうか(と、思っていたら「ゼロイガー」でちゃんと連射モードが用意されていた。結構便利なものである)。
FXは最初からパッド端子を2つ用意してあるので、現在のところ、マルチタップのような増設機器の必要性はない。FXGAのマニュアルには予定が無くもないようなことが書いてある。
マウス
これはパッドと逆にパソコンから家庭用に広まった入力装置である。PCエンジンなどではかなり威力を発揮していた印象があるが(特にアートディンクのソフト群)、残念ながらFXでは現在のところマウスのありがたみを感じるソフトはほとんどない。「デアラングリッサー」「スパークリングフェザー」といったSLGがそろって対応してないのが痛い。それにしてもPCエンジンでは存在していたはずのRUNとSELECTボタンがなぜ無いのか?RUNは左右ボタンを同時に押せばよいのだが、これが難しい。これも残念な点である。
バックアップメモリパック(BMP)
とにかく貧弱なFXの内蔵バックップメモリは、いくつかのソフトを同時にやっているとすぐにいっぱいになってしまう。とくに人気作「デアラングリッサー」はこれ一作で内蔵メモリをほとんど使い切ってしまうため、ゲーム売場の店員がこのBMPを一緒に買うよう勧めていた。BMPは内蔵データの4倍は入るようなので容量は申し分ない。ただ、あくまで外部記憶装置であり、データの避難場所として使用する。「ミラークルム」「バウンダリーゲート」など一部のソフトはBMP内のデータを直接アクセスできるが、たいていはいちいち内蔵メモリとBMPの間でデータのコピーやら移動やら行わなければならない。BMPは価格もかなりのものなので、フロッピーディスクで代用できるFXGAはこの点かなり得である。
SCSIアダプタ
繰り返しになるが、FXは当初から「パソコンとの親和性」を売り文句にしていた。それで実際に発売されたのがこれ。一応機種は問わないものの、98との接続を念頭に置いている。これを使ってパソコンと接続すればFXを外付けCD−ROMドライブとして使える。ただし、それだけ。たったこれだけのためにFXを4万円もする倍速CD−ROMドライブとして買う人が、当時でもどれだけいたか疑問である。どうせ接続するのならパソコン側からFXに自作のプログラムを送りこめる、とか考えつかなかったのだろうか?うまくやればFXGAより良い商品だと思うのだが。
PC−FXボード(PC−FXIF)
周辺機器と言えるのかどうかやや迷ったが、とりあえず紹介しておこう。PC−9821CanBeのみ対応のCバス用拡張ボードで、パソコンでFXソフトを動かせるようになる商品。前項同様「パソコンとの親和性」の売り文句のもと発売された商品で、FXGAの前身である。FXGAとの決定的な違いは、単にFXのソフトがCanBeで出来るというだけで、ゲーム製作など出来ないと言う点。ポリゴン機能も搭載されていない。アイデア自体は悪くはなかったが、CanBeのみ対応、というのがまずかったようで、ほとんど売れなかったようだ。半年後のFXGA登場で完全に意味を失った。中古売場でたまに見かけるが、FXGAと勘違いして買わないよう注意しよう。

◎ハード論総括
長々と書いたが、この辺でまとめよう(FXGAについてはGAのコーナーで論じます)。
まず、PC−FXというハードはPCエンジンの後継機として、あくまで「CD−ROMマシン」の魅力を追求したマシンであることだけは確かである。今でこそ当たり前のようにゲームに使われるCD−ROMだが、PCエンジンにこれをつけたのは、当時としては暴挙に近かったといわれている(やはり言い出しっぺはハドソンだった)。しかしPCエンジンCD−ROMは、肉声、音楽、ビジュアル、大容量といったCD−ROMゲームの魅力を提供し、高価にもかかわらず多数の支持者を獲得した。従って後継機FXはこうしたCD−ROMの特性を最大限に生かすべく、「動画機能」を持ち込んだのである。
当時人々の目を奪っていたのはポリゴンゲームであったが、FXは「見た目には動画処理で何とかなる」という構想から、ついにポリゴンには手を出さなかった。これは商売としては大失敗だった訳だが、振り返ってみよう。果たして巷のCD−ROMゲームで「CD−ROMである必然性」を持っているゲームがどれだけあるだろう?何もCDだからポリゴンができるわけではない。そう考えるとFXの設計というのはあくまで「CD−ROMマシン」という「思想」を背負っていると言っても過言ではない。それは詰まるところ、CD−ROMゲームの事実上の生みの親、ハドソンのスタッフの思想でもあったわけで、最近ハドソンがFXソフトをリリースしてくれないのは、こうした意味でも寂しい事である(出したくても出せないってのが本音だろうけど)。

まあそれもあってFXはかなり風変わりな設計となった。おまけに製造元のNECの思惑もあり、「パソコンの周辺機器」という変な役割まで担わされ、ますます風変わりさを増した。おかげで次世代機中、もっともソフト開発の難しいマシンとなってしまった。いみじくも生みの親であるハドソンのスタッフは言っていた。「FXはどんなものでも見せることができるキャパシティを持っているけれども、作り手に要求されるものも大きい」「無難なソフト、平均的なゲームなんてものは、このマシンには必要ない」(いずれも「電撃PCエンジン」1994年9月号の記事より引用)・・・要は作り手がよほどしっかり作らないと、ほとんど「クソゲー」化してしまう宿命を背負っているわけだ。ソフトメーカーの参入がまるでなかった理由の一部がここにある。実際、FX独自の機能を生かし切った傑作ソフトは数えるほどしかない(まあもともとソフトの数自体が少ないので傑作の確率は案外高いのだが)。

総じて言えることは「FXって変なマシン」の一言につきる。これはハドソン自身も認識していることである。また、これ自体は決して悪いこととは思えない。「変」で「特殊」であるものを評価もせずに排除するのが日本人の悪い癖だ。そうした環境でこんな変なマシンを提案したことは大冒険であったはずだ。また、その特殊性ゆえにソフト開発者には相当のセンスが要求される。逆にこれはクリエイター根性を刺激するに十分な状況ではないだろうか。しっかり作れば、相当に高水準の作品ができあがる。そのかわり手抜きはすぐバレる。昨今巷にあふれる、話題づくりに成功しただけでそこそこ売れてしまう「クソゲー」の山を見ていると、この業界の将来を憂えてしまう私なぞは、FXの存在がクリエイターたちへの警告に見えてしまうのだ(その意味でもFXGAは凄い提案だったんだけどね)。
もはやシェアの大幅な拡大も見込めず、FXは存在すること自体に意味があるような気もする。しかし最近の他機種のヒット作を見ていると、その大半がFXが当初目指していた路線を確実に取っている。それを見ても、FXって結構先見性のある設計だったんじゃ無かろうか、と思える今日この頃だ。