検証!PC−FX論

○その三・メーカー論○

目次

序論

FX関連各メーカー論
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
ら行
メーカー論総括−−及び提言−−
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★ご注意★本文は1997年夏に執筆されたものです。
序論

PC−FXは、その市場の狭さ(コンシューマーゲーム市場全体の1%に行くか行かないかというあたりらしい)ゆえに、参入しているソフトメーカーが他機種に比べ著しく少ない。まず断って置くが、これをユーザーは責めてはいけない。メーカーだって商売であり、その中にはそれで生計を立て、家族を養っている人がたくさんいるのである。制作費が高く、リスクの高いコンシューマー市場では、ソフトを大量に売ることは絶対の目標である。よく「ハイリスク、ハイリターン」とこの商売は呼ばれるが、市場におけるシェアが圧倒的に少ないFXでは「ハイリスク」でありながら「ハイリターン」のほうは望むべくもない状況だ。正直言ってFXでソフトを出しているメーカーは趣味でやってるとしか思えない(それを言っちゃおしまいか)。
そこで本家NECHEとしては販売・プロデュース方面を負担しリスクを下げた上で、ソフトメーカーにソフト制作を委託するという方法でソフトを製作・発売している。FXソフトの大半がNECHE発売となっているのはこのためである。それでも他機種がそれぞれかなりのシェアを占めている現在、どのソフトメーカーもそちらで手一杯という状況のようだ。
ここではFXソフトを制作した(あるいは関係した)ソフトメーカーを集めて、それぞれについて論証してみたい。一部ちょっと辛口な事を言うかもしれないが、別に企業批判をしているわけではないので、「FX愛好者のたわごと」と思って、関係者の方は笑って許していただきたい。

FX関連各メーカー論

あ行

アートディンク(ルナティックドーンFX)
言わずと知れた日本を代表するパソコンゲームメーカー。あの「A列車で行こう」シリーズをはじめ斬新なセンスのゲームで世界的な評価を得ている。コンシューマー市場にはPCエンジン・スーパーCD−ROM2から参入し、「AV」「ジ・アトラス」「栄冠は君に」の3作をパソコンから移植し、そのレベルの高さを見せつけた。当初「ルナティックドーン」はPCエンジンで発売の予定であったが少々開発が難航していたらしく、FXでの発売に変更、何度かの延期の後95年11月にようやく発売にこぎつけた。仕上がりはさすがというべきレベルであったが、FXゆえに売り上げは爆発的とは言えず、その後FXでは姿を見せない(NECとはPowerVRで「A5」を出しているので関係は絶っていないが)。コンシューマーではPSを中心に意欲作を発表している。しかし最近のPSは一般化し、斬新なゲームを受け付けない観もある。FXでもう一度奮起して欲しいが…。

アスク講談社(上海・万里の長城、ボイスパラダイス)
このメーカーについては何も知らないので大したことは書けない。しかし2本というのは意外と作っているほう。「ボイスパラダイス」(開発はフェルインカフェ)はPSへと移植されている。

NECアベニュー(同級生2、ドラゴンナイト4)
このメーカーの位置というのは次の「インターチャネル」と並んで部外者にはさっぱり分からない。NECの子会社でソフト販売を中心とし、ゲームだけでなくCD、ビデオの制作・販売も取り扱っている。PCエンジンでは主力のメーカーで、主にアーケードやパソコンの移植を行っていた。次世代機が発売されるとゲームソフト部門は新会社インターチャネルへ吸収されたと聞いていたのだが、なぜかFXで出るソフトは「NECアベニュー制作」と銘打たれている。どうも売り上げが芳しくないソフトを「アベニュー」が担当する、という事になっているのだろうか。NECHEのコメントで「今後インターチャネルからソフトは出ないが、アベニューからは出る」という謎の文言もあった。とにかくソフト制作の遅さでは定評がある(笑)。

NECインターチャネル(天地無用!魎皇鬼FX)
NECの子会社「NEC−HE」「アベニュー」などのソフト部門を統合し、コンピュータソフト総合メーカーとして95年秋に華々しく登場。以後、パソコンでソフトを出すかたわらSSを中心にギャルゲーばかり売りまくっている妙なメーカー(近頃じゃSSの主力メーカーである)。アベニュー以来の伝統で移植が中心で制作が遅い(笑)。業界の名物男(らしい)多部田氏がプロデュースで活躍している。この人のコメントで「人材的には90%を注いでいる」と言っていたFXでは「天地無用!」の一本のみで、あとは「アベニュー」ブランドでソフトが出ている。今後ここからソフトが出ることはNECHEのコメントから考えても期待できないだろう。ところで最近のSS専門誌に見る多部田氏のSS応援コメントは、かつてPCエンジン、FXに関して言っていたコメントとそっくりである。この調子だと同社がSSを離れる(見限る)日も案外遠くないかも知れない(あ、私情入ってますね)。

NECホームエレクトロニクス(FX発売のソフトのほとんど)
NECの子会社の一つで、と言っても規模的にはもう子会社とは呼べない。とにかくいろんなことをやっているが、このうち「ホームサーバ事業部」というところがコンシューマーゲーム関連を取り扱っている。同社がコンシューマー市場に参入したのは「PCエンジン」の発売からである。94年に後継機種PC−FXを発売、ソフトも自ら制作するようになった。
とにもかくにもFXの販売元、親分である。だがSCEなんかと比べると分かるが、どうも牽引力に乏しい。と言って、3DOのようにはさっさと見限らず、なかなかしぶといところも見せている。今さらだが、FX発売当時、NEC発売のあるパソコン解説書でFXに触れ、「日本ではアニメの人気が凄く、昨年では「紅の豚」が邦画のトップを占め…」てな文があり、だからFXは期待される「マルチメディアマシン」だ、と売り込んでいた。これを見た時点で「分かって無いなあ」とつぶやいたものである。どうも首脳部がどこまでゲームというものを理解しているのか疑問である。「うちにはCD−ROMを長くやってきたノウハウがある」とも言っていたが、ソフト面は素人同然だった、と敢えて言わせてもらおう。最近は少しは成長したように思うが。
「FXのパソコンとのリンク」というのもNECHEらしい発想で、これ自体は私は評価している(やはりハードメーカーなんだよね)。とくにFXGAは業界のためにも意義のある画期的な商品だった、と言っていい。これがあまり成功していない事に関しては、むしろ世の中の風潮(ゲーム作りに関する雑誌も軒並み苦戦してるしね)が災いしているように思う。ま、NECHEも「んーにゅー」あたりまでは頑張っていたが、後はユーザーへのサポートが無かったのは痛かった。こういう商品の成果が現れるのには時間がかかる。その意義を大きさを考えてもう「文化事業」と開き直ってGAの存続を希望したい。
最近はパソコンのPowerVRに力を入れる同社だが、FXもしっかり継続してもらいたいものだ。そういう努力は必ず報われる。長期的に育てるぐらいの構えでいて欲しい。どうもこのところのラインナップでは安易な企画が多いので、「FXならでは」という思い切った企画(18禁やギャルゲーだけじゃなくね)が出てほしい。
つけたしだが、もし次世代のハードを発売する予定があるなら、それこそFXとの互換性を持たせて欲しい。少ないながらもしっかりつかんだコアなファンを切り捨てないでもらいたいのだ。(なんかここは希望ばかりになってしまった)。

エルフ
パソコン美少女ソフトメーカーの老舗にして大御所。念のため言っておくと、エルフはFXに参入しているわけではない。ただFXのヒットソフトである「同級生2」「ドラゴンナイト4」の製作元であり、FX参入の噂が上がった事もあるメーカーなので取り上げてみた(「ドラゴンナイト4」がアベニューとの共同開発との話も聞いたが詳細は不明)。コンシューマー市場には96年にSSの18禁枠で参入し、「下級生」等ですっかりSSのヒットメーカーとなってしまった。今後もSSへの移植を進めるようだが、なんだかパソコンのほうも今後の移植を考慮したような作品が目に付く(他の美少女ソフトメーカーも追随しているが)のがちょっと悲しい。

か行

カクテル・ソフト(きゃんきゃんバニーエクストラDX、Piaキャロットへようこそ!)
パソコンアダルトソフトメーカーの老舗エフアンドシー(旧アイデス。今年改名)のブランドの一つ。「フェアリーテール」も同社のブランドである。一貫してパソコンでソフトを発売してきたがコンシューマーへの移植に手を出し、まずPCエンジンから進出することとなっていた(「デッド・オブ・ブレイン」…果たして日の目を見るのだろうか…)。そしてFXで大物ソフト「きゃんきゃんバニー」を自ら移植。かなりのヒットとなった(SSでも移植作が出ているが「ビング」なるメーカーが出している)。出来については賛否両論あったが18禁ソフトとしてかなりの表現を維持していた。そしてただちに「Piaキャロット」を移植。これはかなりタイムリーで(開発の早さは驚くばかりであった)、出来も格段に進歩し、FXとしては大ヒット作となった。今後の展開は不明だが、FX市場のカンフル剤として(また一部に広がる妙な規制の動きに対抗して)、さらなる18禁ソフトの発表を期待したい(別にオリジナルな一般向けソフトの制作も歓迎)。

カスタム(チップちゃんキィーック!)
こちらもパソコンで美少女ソフトを作っていたメーカー。キャラのかわいさの割に過激な表現で妙にバランスを取ったソフトを製作していたが、マスコットキャラクター「チップちゃん」を擁して突然のFX参入。しかもパズル性のあるアクションと、思い切った事をやってくれた。今後は不明。

ギミックハウス(アルバレアの乙女)
パソコンで一般向けゲームソフトを製作・販売していたソフトハウス。最近ではSSで「ドラゴンマスターSilk」をパソコンから移植している。97年初頭に「アルバレアの乙女」の製作元として名前が挙がった(開発はマジカルクラフト)。「Silk」なんかは現在のFXユーザーにはかなり向いていると思うので頑張って移植してくれると嬉しいのだが。

グレイト=GEM(スパークリングフェザー)
これまたパソコン美少女ソフトの老舗。「レッスルエンジェルス」「DOKIDOKIプリティリーグ」のヒットで知られる。もともと一般向けに近い良質ソフトを製作しており、「レッスルエンジェルス」PCエンジン版でコンシューマーへと進出した。ついでFXオリジナルSLG「スパークリングフェザー」の製作にとりかかったが、残念ながらうわさに聞くと倒産(言われてみれば確かに著作権明記がなかった)。同ソフトは仕上がりもよく評価も高かったので、製作したスタッフの今後の復活と新たな傑作の誕生を期待したい。

光栄(アンジェリークシリーズ)
正直言って参入に誰もが驚いたメーカー。「三国志」「信長の野望」であまりにも有名なパソコンソフトメーカーだが、かなり早い段階からファミコンなどコンシューマーに移植を開始していた。PCエンジンでもソフトを出していたが末期には撤退し、PS、SSで活動していたが、95年夏に突然女性向けソフトとして人気を博していた「アンジェリーク」のPC−FXへの移植を発表、さらに1も出ないうちから「2」のFXからの発売を発表し、FXユーザーを驚かせた。以後次々とシリーズをリリースし「アンジェリークはFXから」という構図を定着させた。一番元気なサードパーティーだが、ほかの作品を出す気は無いらしい。まあFXの特殊性をよく理解してソフトを開発してくれているのは結構なことだ。

工画堂スタジオ(パワードールFX)
パソコンのシミュレーションでは定評のあるソフトハウスで、PCエンジンでも末期まで積極的にソフトを発売していた。FXにもかなり早い段階で看板の「パワードール」をひっさげて参入、それなりに好調な売り上げを見せた。今のところ音沙汰なし(「パワードール」Win版や9821版「シュバルツシルト」新作に追われていた)だが、NECとの関係は浅からぬようなので次回作を期待したい(個人的に「シュバルツシルト」希望。しかし最近パソコンでギャルゲー製作を発表していたので、あのへんがどうも臭い)。

ココナッツジャパン(パチ夫くんFX・幻の島大決戦)
ファミコン以来のパチンコゲーム「パチ夫くん」シリーズで知られるメーカー。PCエンジン、さらにFXでもこのシリーズを出している。

さ行

シャノアール(麻雀悟空・天竺)
定番麻雀ソフト「麻雀悟空」の開発元。とにかくコンピュータと名の付くものでこれがないマシンは皆無に近い。これがFXでも出てるってのは驚異的といえる。

素芸屋(超神兵器ゼロイガー)
「すげえや」と読む。残念ながらここについては何も知らない。デザイナーANO清水さんのいる会社って事なのか?「ゼロイガー」で著作権表記がされている。しかしスタッフを見るとゲーム開発をしたわけでは無いように見えるが。

スタジオOX(みにまむなのにっく)
ここも詳しいことが分からないが、基本的にデザイン会社らしい。PCエンジンで出ていた「雀偵物語」などのキャラクターデザインで知られる鈴木典孝氏がいることで有名。FXに初期段階から参入しており当初RPG「ガールズ・オン・パームトップ」を発表、のち「みにまむなのにっく」に改題した。時間がかかったが無事発売。今後は不明。

ソネット・コンピュータエンタテイメント(ときめきカードパラダイス・恋のロイヤルストレートフラッシュ)
ここについては全く無知である。とにかく3DOからSSからFXまで、あらゆるマシンでこの「ときめき」シリーズを出していた。PCエンジン末期に参入していた「フジコム」の関連会社らしいが。

た行

TGL=テイジイエル販売(ファーランドストーリーFX)
パソコンの一般向けゲームの製作販売が中心だが、別ブランドでアダルトソフトでも秀作を発表しているメーカー。PCエンジンで「ヴァリアブル・ジオ」「スチームハーツ」を移植し、積極的にコンシューマー市場へ進出した。FXでは同社の看板ソフト「ファーランドストーリー」の移植という無難な所で来た。一度「ヴァリアブル・ジオ」のFX移植を発表したが、残念ながら中止。どこかの雑誌で「FXでは原価がバカ高で2万本でヒットという市場ではやってられない」と、正直なところを披露していた。今後の予定は不明だが、実力はあるだけにFXソフトの開発を続けて欲しいものだ。

データウェスト(リターン・トゥ・ゾーク、キューティーハニーFX)
詳しいことはよく知らないが、PCエンジンのころから動画を使った秀作を発表していたメーカー。FXにも早くから参入し目立たないものの2作を製作している。しばらく音沙汰がなかったが、最近「ああっ女神さま」のFX移植を担当していることが発表された。現在状況は不明。

徳間インターメディア=TIM(ファイヤーウーマン纏組、続発恋物語・修学旅行)
出版社・徳間書店の系列会社。雑誌、書籍だけでなくゲームソフトの販売も手がける。何といっても「PCエンジンファン」誌で最後までPCエンジン、PC−FXを応援し続けてくれた会社である。PCエンジンからソフトを供給し、PC−FXでも「纏組(開発はヒューネックス)」「続初恋」の二作でヒットを飛ばしている(PS、SSでもソフトを出している)。「PCエンジンファン」のほうは月刊からムック形式の不定期となり、付録でFXのCD−ROMを付けてくれている。ただ、上記二作も発売された今、今後の動向は不明。「PCエンジンファン」も次回予告もなく、このまま消えゆく可能性が高い。

な行

ナグザット(スーパーリアル麻雀PWFX)
PCエンジン最盛期は硬派なシューティングゲームの秀作を出していたが、後半はもっぱら「スーパーリアル麻雀」シリーズを初めをする脱衣麻雀ばかり出すようになってしまった。FXで「麻雀」というタイトルを早期に挙げていたので絶対これだと思った(笑)。このソフト、めずらしくNECロゴがなく、ナグザット製品である。その後音沙汰なし。

日本アプリケーション(ラスト・インペリアル・プリンス)
パソコンの「ザナドゥ」「ソーサリアン」、PCエンジンの「風の伝説ザナドゥ」など数々の名作を送り出してきた日本ファルコムの天才クリエイター・木屋善夫氏を中心に設立されたソフトメーカー(ファルコムと関係があるのかどうかは不明)。パソコンで「大逆鱗」などを発売している。FXには本体発売前から参入し、アクションRPG大作「ラスト・インペリアル・プリンス」を製作した。作品の賛否は分かれる所だが、FXで比較的硬派で一般的なソフトを出してくれたことで評価したい。そもそも木屋氏は「FXがこんなアニメ系のマシンになるとは当時予想もしなかった」と語っており、FXというハードが軟派なわけではまったくないのである(そうとられたのは周囲が勝手にそう思いこんでいたからだと思う)。例によって今後の動向は不明だが、FXの可能性を見抜く目を持つ木屋氏のFXでの次回作を期待したい。

日本物産(レーシング、麻雀)
かつて(もうそう言っても良いような気も)アーケードゲームの老舗にして名門。PCエンジンでは「F1サーカス」シリーズで同ハードの最高売り上げを記録している。PCエンジン末期にはやたらアダルト系のソフトが目立ち、FX参入を早期に決めてやはりレーシングと脱衣麻雀の発売を予定していた。当時某誌の取材でによるとFX18禁枠を利用したアダルトソフトの展開を予定していたが、FX市場の先行きの暗さに音を上げてソフトも出さずに事実上撤退した。

は行

パック・イン・ビデオ(バウンダリーゲート・ドーター・オブ・キングダム)
総合ソフトメーカーで、ゲームだけでなくビデオの発売もやっている(逆かな?)。PCエンジンでもゲームを出していたが、どうも記憶に残るような作品は無かったような気がする。FXでは早期に3DRPG「バウンダリーゲート」の製作を発表、やたら時間がかかったが(一度決まった発売日も半年以上延びた)、97年1月に何とか発売した。だがただちに同ソフトのPS移植を発表、こちらほうはばかに早かった。ちなみにこのソフト、当初三部作と発表されていたのだが、今のところ不透明である(結末ケリがついてるし)。何か続編が出てもPSの線が濃厚である。

ハドソン(バトルヒート、チームイノセント、天外魔境・電脳絡操格闘伝、鬼神童子ZENKIヴァジュラファイトFX、銀河お嬢様伝説ユナFX、スーパーパワーリーグFX)
PCエンジン及びPC−FXの事実上の生みの親メーカー。NHK「新電子立国」がこの会社の歴史を詳細につづったぐらいで、日本のソフトメーカーの草分け的存在である。現会長の工藤氏の趣味(SLマニアでもある。とくにC62に異様な愛着を持ち「ハドソン」はC62の動軸のタイプ。同社開発のICの名前は全て「C62」で始まる)で始まったこのメーカーは、相変わらず趣味で仕事をする傾向があり(誉め言葉だよ、これ)、ハード面ではPCエンジンの開発(これCPUもハドソン製だったんですよ)、さらに世界初のCD−ROMゲームの開発(当時としては暴挙に近いことであった)と、なかなか面白いことをやってくれるメーカーである。ソフトのほうは「ボンバーマン」「桃鉄」など子供向けの多人数ソフトを得意とし、妙に東洋的な世界観が目に付く傾向がある。最たるものは「天外魔境」シリーズだろう。

ハード論でも触れたが、FXの主要ICはハドソン製であり、ソフトの開発環境も(GAを見る限りは)ハドソンが提供している。従ってFXのソフト作りのノウハウはハドソンが一番握っているのである。実際、評価はどうあれ「バトルヒート」「チームイノセント」はFXというマシンの可能性を示したソフトには違いない。ハドソンは今まで不可能だった表現を可能にしたくて、自らマシンを設計したと言って良いだろう。しかし「パワーリーグ」を出した後、すでに1年以上同社はFXでソフトを出さず、唯一の予定ソフトである「天外魔境V」についても沈黙を続けている。どうしてこうなってしまったのか。

理由の一つはFXに本腰を入れるのは、まだまだ先の事と思っていたのだろう。実際FX発売当時のハドソン首脳部(主にあの中本伸一氏)のコメントを見ていると「まだPCエンジンで十分やれる」という空気が濃厚である。アーケードカードも出たばかりでPCエンジンの可能性はまだまだ残っていた。中本氏も「PCエンジンは21世紀まで持つ」と豪語している(わずか3年ばかり早かった訳だが)。マシンの性能としてはこれは事実である。しかしその後の熾烈な次世代機戦争はPCエンジンをあっという間に市場から抹殺してしまった。「FXでは実験的なソフトをこつこつと出して…」という気でいたのだろうが、そんな余裕は無くなってしまった。その結果が「天外V」の急なFX移行であったのだろう。「FXで本格的なソフトが出るには2年はかかる」と語ったハドソンのスタッフもいた。よく言えば腰をすえて気長にやるつもりだったのが、状況の変化に対応しきれなかったのでは無いかと思う。

ハドソンのもう一つの計算違いはPSの大成功であろう。ハドソンに限った事ではないが、PSが任天堂のシェアをああもあっさりと奪取してしまうとは予想していなかった。ハドソンはSSには参入していたが、新参のPS、3DOに関してはそれほど伸びるとは思っていなかったフシがある。スクウェアのPS参入、さらに「ドラクエ」のPS発売決定を見てようやくPS参入を決めたことがそれを裏付けている。「PSユーザーはライトユーザーだから・・・」とか言っていたような記憶があるが、そもそも最近のゲーム人口の大半がライトユーザーであることに気がつかなかったのだろうか。他の大手メーカーにこの点では大きく遅れを取ってしまい、FXのソフト開発どころではなくなってしまった、というあたりが真相だろう。

FXユーザーの恨み節が多数聞かれるハドソンだが、私はむしろ同情している。「好きなことをやってる」という印象の強いメーカーであり、そこが大変気に入っているのだ。商売はうまくないかも知れないが、志は高いメーカーであると信じたい。FXGA開発の動機がまた凄かった。「現在個人ではゲーム作りが困難になった。次の世代のクリエーターを生み出さねばならない」「ゲームを作ってきて、何か業界のために還元できることをしなければならない」…はっきり言って、あれは商売抜きでやっている。まあ資本主義社会である以上限度というものがあるが。

とにかく、創立当初からの「冒険精神」を忘れないでもらいたいものだ。いくら遅れてもいいから「天外V」は執念で、もちろんFXで実現して欲しい。会社生命を懸ける気持ちで取り組んでもらいたいものだ。

ヒューネックス(全日本女子プロレス・クィーンオブクィーンズ、アニメフリークシリーズ、女神天国U、ブルーブレーカー・剣よりも微笑みを、ファイヤーウーマン纏組、Piaキャロットへようこそ!)
NECHEとヒューマンの合弁ソフト会社。PCエンジンでも後期のヒューマンブランドのソフトはここが開発していたらしい。半分はNECの子会社なわけで、FXにも初期からソフトを供給している。「女子プロレス」のほうはちょっと評価に困るソフトだったが、その他では「纏組」をはじめ上質ソフトを開発している(「女神天国U」もここが手伝っていたらしい。あと「Piaキャロット」でも噂がある。自社ブランドでなく開発のみを担当しているわけ)。ハドソンを除けば一番FXソフトのノウハウを持っている会社と言っていい。何といってもここの代表作は「ブルーブレーカー」だろう(この作品で初めてヒューネックスのクレジットが明記された)。コナミにいたはずの「ときメモのパパ」立石流牙氏がなんでここのグラフィック担当なんかやっていたのか今から考えると不思議な気もする。この「ブルーブレーカー」は最近SSへ移植が決まり、FXユーザー間では賛否をめぐる大論争を巻き起こしたが、私はクレジットで「著作」をヒューネックスが握っているのを見た時点で予想はしていた。まああんまり面白くはない事態だが、売り上げを考えればやむを得ない所であろう。半分はヒューマンの子会社なんだし。現在アニメフリークのみがラインナップに上がっているが、そろそろオリジナル新作の発表を期待したい(「ブルーブレーカー」続編の検討もされているというが…)。とか言っていたら「ファーストKiss(仮)」が発表された。よかった、よかった。

ヒューマン
けっこう老舗のゲームメーカー。PCエンジンでもかなりのソフトを出していた。FXには一応参入しているのだがソフトは出ていない。逆に「ブルーブレーカー」をSSへ移植し、FXユーザーの恨みを買ってしまった(笑)。前項のとおりヒューネックスの半分の親会社。ゲームクリエイターの養成にも熱心で専門学校もやっており、FXGAを教材として導入していた。

ファミリーソフト(惑星攻機隊りとるキャッツ)
すいません。今現在ここに関しては何も書けることがありません。よくご存じの方は教えてください。

フェルインカフェ(お嬢様捜査網、ボイスパラダイス、負けるな!魔剣道)
詳しいことは知らないが、「お嬢様捜査網」「ボイスパラダイス」のゲーム開発はここが担当しており、意外に多い。またRPG「魔剣道」をかなり早くからラインナップに挙げており、ぼちぼち発売にこぎつけるらしい。

ヘッドルーム(卒業U、お嬢様捜査網)
パソコンで「卒業」シリーズをヒットさせたソフトハウス。後述の「マーカス」とどういう関係なのかよく分からない。なお「卒業U」のほうは著作権表記のみで開発はリバーヒルソフトがやっている。

ま行

マーカス(卒業U、お嬢様捜査網)
パソコンで「卒業」シリーズをヒットさせたソフトハウス。先述の「ヘッドルーム」とどういう関係なのかよく分からない。なお「卒業U」のほうは著作権表記のみで開発はリバーヒルソフトがやっている。

マイクロキャビン(紺碧の艦隊、虚空漂流ニルゲンツ)
パソコンを中心に「サーク」のようなRPGから「紺碧」のようなSLGまで幅広い秀作を送ってきたメーカー。PCエンジンでもいくつか移植作を出していた。いわゆる次世代機には一通り参入しており、それぞれに評価の高いソフトを出している。FXでは現在二作のみ。「紺碧」の出来にはちょっと疑問もあったが(アニメはなかなか綺麗なんですが)、次作「虚空漂流ニルゲンツ」は大変な傑作であった。FX完全オリジナルの本作は初回売り上げこそ大したことはなかったが(なんせ知名度ゼロだもん)、プレイした人の多くが絶賛し(私もそのクチだ)口コミで評価が高まった作品だ。この「ニルゲンツ」のかわりに予定にあった「英雄志願」を他機種に変更したが、FX独自の機能を生かして「パソコンの安易な移植はしない」という方針自体は支持したい。現在「ニルゲンツ」のパソコン版(PowerVR専用)の開発を行っているが、それがすんだらぜひ再びFXユーザーを驚かせるような上質のソフトを作ってもらいたいものだ。

マジカルクラフト(アルバレアの乙女)
詳しいことはいっさい知らないが、「ギミックハウス」の関連会社かブランドなのだろうか?「ポスト・アンジェリーク」とも評された女性向けソフト「アルバレアの乙女」を開発した。

メサイア(デアラングリッサーFX)
パソコンソフトを開発していた「日本コンピューターシステム」が、PCエンジンに参入するに当たって作ったブランド名。「ラングリッサー」「超兄貴」で知られる。PCエンジンで大きくなったメーカーだそうで、FXにも看板の「デアラングリッサー」を移植して参入。出来も上々で評価も高かった。現在SSやPSでやはり「ラングリッサー」のシリーズを続々発売している。FXでは長らくご無沙汰だが、そろそろ戻ってきて欲しいものである。FXなら他機種の「ラングリッサー」も高画質のアニメで出来ますぜ!

ら行

リバーヒルソフト(卒業U、ブルーシカゴブルース)
九州は福岡に存在するソフトメーカーで、パソコンソフトからスタートしたらしい(「J.B.ハロルド」シリーズが有名)。PCエンジンでもかなりの数のソフトを出していた。FXにも参入し、本体同時発売ソフトの一翼を担った。その後ほとんどすべての機種で出ていた「ブルーシカゴブルース」をFXにも移植。その後やはり音沙汰がない。

レイ・フォース(ミラークルム)
RPG製作専門のソフトハウス。PCエンジンで「スタートリング・オデッセイ」を初めとするRPGをいくつか出している。FXではかなり早くから「大作RPG」を製作しているとして名が挙がっていた。その結果が「ミラークルム」。実にオーソドックスなRPGを作る会社だが、システム面では結構高度なものを作る。現在はSSで「スタートリング・オデッセイ」の旧作及び新作を開発している。RPGは開発に時間がかかるだけにFXソフトを開発する余裕は無いのかも。

レッドカンパニー
あの広井王子氏を総帥とする企画者集団。「ビックリマン」から始まってPCエンジンの「天外魔境」「ガリバーボーイ」「ユナ」、最近ではSSのヒット作「サクラ大戦」まで、とにかく様々な企画を成功させている。いまのところ直接FXと関わる訳ではないのだが、ここの広井氏は次世代機発売前「FXにもっとも期待している」とコメントしていた。今さらだが、少しは発言に責任を持って欲しい。PCエンジンで「天外V」をあれほど出すと宣言し、FX移行に際しても何か凄い事を言っていたのだから。

メーカー論総括−−及び提言−−

以上がFXに関係するソフトメーカーの全てである。NECHEのコメントによるとFX参入メーカーは38社。上に挙げたのはちょっと足りないのであと何社かあるのだろう。もっとも参入した、というだけで何もしていないソフトハウスも多い。またソフトを一度か二度出したきり音沙汰の無いところが圧倒的に多い。
実のところ、ここに挙げたメーカーのいくつかはあまり景気が良くない。これがFXソフトを開発したせいでないと断言することは残念ながら出来ない。序論でも言ったがFXは「ハイリスク」なだけで「ハイリターン」が実のところ難しいのだ。裏返せばそれでもFXでソフトを出すメーカーは大変な勇気があるわけで、惜しみない拍手を贈りたい。もともとFXソフトを作るのは難しいと言われ、高い技術とセンスが要求される。また、なまじアニメなんか作るから制作費がバカにならない。本家NECが面倒を見てあげないと、現在のシェアでは新たに参入するのは考えてしまうところだろう。本来ハドソンのような大手がFXソフトを作るべきなのだが、大手と名の付くメーカーはほとんどFXに参入していない。一時行くかと言われたアダルト系も、端から問題にしていない様子である。
いっそのことFXは中小ソフトハウスをNECの力で取り込んで、オリジナリティの高いソフトを作ってもらうしか独自に生き残る道は無いのではないだろうか。最近の市場は成熟しすぎ、有名メーカーの人気シリーズばかりが売り上げを上げる、と言う状態にある。恵まれない中小ソフトハウスにソフト発表の機会としてFXを提案する、というのはどうだろう(当然NECHEは自腹を切る覚悟が必要である)。このままでは状況に何の変化も現れないだろう。
また、FXでソフトを作ろうというソフトハウスはどこにでもあるような当たり前のソフトを作っていては意味がない。もともと「変なマシン」なのである。安易なソフトは必要とされていないマシンなのだから、一風変わった、面白い(これだけは絶対条件)ソフト作りを心がけて欲しいものだ。