俺たちゃ海賊!
−激動の東アジア海上史−

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海上史事件簿
現在第十一回まで掲載!(2005/4/8)
海上史の主要な事件を詳細に解説します。「倭寇世界」の入り口としてご活用ください。

海上史年表
とりあえず「王直時代」のみ公開中
ここで全体の流れがつかめます。人物、事件の検索にも使用できます。

海上史人名録
海賊・女性・日本人など一挙増量して現在51名!(2005/4/10)
海上史を彩る人名目録。簡単な伝記が読めます。

海上史図書館・専門書室
海上史図書館・小説室
とりあえず「王直時代」のみ仮公開(〜98/10/19)
「海上世界」の歴史の手引きとなる書籍を紹介。専門書から小説まで網羅!

舞台「倭寇伝」について
その1/その2/その3
2004年9月21日公開
史上初?の倭寇世界をテーマにした舞台を紹介。
「歴史アドバイザー」として関与した裏話も。

海上史論文室
わたくし「徹夜城」自身が執筆した研究論文などを紹介。
論文「16世紀『嘉靖大倭寇』を構成する諸勢力について」を公開(2004/3/12)

海上史創作室
海洋歴史小説
「鳳」
16世紀後期の海賊群像を描く歴史小説。
ようやく「第一章・旅立ち」を公開!!(05/2/3)

海上史史料室
海上史を知る主な史料を原文からの翻訳で紹介。
『日本一鑑』から「流逋」の条現代語訳完成。(05/8/1)

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ご案内

まず言っておきましょう。このコーナーで扱っていることについて、少しでも知っている、と言える人は相当の通です。「歴史ファン」と称する方でも、一般にこの世界の事に詳しいという人はいません。では専門の歴史家なら知っている人が多いのかというと、これまたそうでもありません。とにかく目下マイナーの極地を行く、と言っても過言ではない分野を、このコーナーでは扱います。

ああ、そこまで読んでよそへ行かないように。「それだけマイナーと断言するからにはツマラン話なんだろ、どうせ」とお思いになるのももっともです。ですが、マイナーなのは決してツマラナイからじゃないんですよ。単に「海賊」というアウトローを主役としているために長い間歴史研究の王道と認識されてこなかったこと、また国境を越えた壮大な舞台設定のために各国史の研究者が結集されなかったこと、この二つがマイナーになった大きな原因です。ですが近年一部の学者の間では注目を浴びつつある分野です。

各コーナーで詳細を説明しますが、ここで簡単にこの「俺たちゃ海賊!」の世界のさわりだけ少し紹介しましょう。

時は16世紀から始まります。日本で言うと戦国時代のまっただ中。中国は明帝国が下り坂にさしかかり、半島では李氏朝鮮が平和を謳歌しています。海上に目をやると、琉球王国(現沖縄)が貿易国として栄え、ポルトガル人が大航海時代の波に乗ってヨーロッパ人初のアジア進出を果たしつつありました。こんな時期に東アジアの海上に貿易商人と海賊の性格をあわせもつ、多国籍の特殊な集団が現れました。いわゆる「倭寇」と呼ばれる集団です。この物語は彼ら「倭寇」の興亡を17世紀まで描くものです。

「海賊の歴史なんて・・・」とお思いの方は甘い。特にこの世紀の海賊達、倭寇の首領たちについてはかなり詳細な史料が残されており、彼らが織りなす人間ドラマは「三国志演義」「水滸伝」に勝るとも劣らない面白さを持っています。一番有名なのは「倭寇王」の別称もある王直ですが、彼が東アジア海上を制覇するまで李光頭、許棟、陳思盻、徐海といった群雄が海上にひしめき、「三国志」顔負けの闘争を繰り広げます。そしてこれを鎮圧しようとする明帝国には胡宗賢、兪大猷、戚継光といった明を代表する策士・名将が登場し華を添えます。彼らの闘争の背景では明の政界、日本の戦国大名やポルトガル勢力の思惑が絡み合い、無数の人間達が海上を舞台に各々の野望を燃やしていきます。この壮大なドラマの中で、「海上世界」のお膳立てが整う、ここまでが序盤戦です。

西暦1559年、東アジア海上の王者王直が死に、海上史は新たな段階に突入します。後継者たちによる闘争、明帝国への挑戦が林国顕、呉平、林鳳といった首領達により行われます。中でも林鳳は南海に進出、マニラまで攻略しスペイン勢力と戦います。そして日本を統一した豊臣秀吉により朝鮮・明征服戦争が開始され、李舜臣、沈惟敬といった英雄・策士を登場させつつ「海上世界」の歴史は、その中盤を終えます。

秀吉の死後、海上では再び海賊商人集団の群雄割拠状態が出現し、その闘争の中から一代の英雄、鄭芝龍が登場し、王直以来の大勢力を築き上げます。彼と日本人女性の間に生まれたのが名高い「国姓爺」こと鄭成功です。鄭父子は明清交代という歴史の激動の中で袂を分かち、とくに鄭成功は自らの海上集団を駆使して貿易に戦闘に活躍し、オランダから台湾を奪取して独立王国を築き上げます。彼はかつての林鳳同様マニラ攻略を計画しますが、惜しくも急死。以後「海上世界」は周辺各国の安定とともに、激動期を終息させていきます。

いかがでしょうか。この激動の約百年間の歴史が、「俺たちゃ海賊!」のテーマです。「海賊じゃないのもいたぞ」という野暮なツッコミはしないで、とにかくこの歴史(というか物語)の世界を存分に探索して下さい。これらがちゃんと統一されたテーマに基づいていることが次第にご理解いただけると思います。