「木の文化に憧れて」


−うるわしの森を謳う−

    『縄文から未来を見つめて』

            来るべき春の動きに思いを馳せ、
            木々のざわめきに心を寄せる詩

縄文時代に森の文明の始まりを見る
 海流にのって島伝いに南から伝えられた言葉
 長江から来たと言われる民と知恵 モノそして遊び
 北の森から伝えられたまつり・祭・祀り
遙か数千年 縄文の昔からウルシは使われてきたと言う
   「美と優しさの国日本」
ウルシが彼の国々でジャパンと呼ばても それを
 何故育てようとしなくなったのか  「万年の漆」に期す

緑と水を育む森
 いま健やかなるを願い地球に優しい暮しを営む人がいる
欲に従って壊した地球は
 身を粉にしないとその優しさを分けてくれなくなった
 自ら手を使い汗を流さないと安心な食を与えてくれない

その手仕事はスローなのに忙しい
手技は身の丈に合ったモノをつくり
 ある人はこれをビューティフルと賞した
農を忘れた日本人 森を放棄したのも同じひと達
 食を全て他人に委ねる人は命を粗末にしていないか
 いのちの営みは命を愛で 命あるものを黙って受け入れる

白州の里山に太陽の恵みが尊い
 風も時にはうれしく感じる
縄文に遡る文化に新しい恵みをもたらす自然と情報
 皮肉にも時代の風は人が動物であることを忘れさせる
 人類が営々と培った知恵をいとも簡単に吹き飛ばす情報
 情報を知恵に織り込む工夫が欲しいものだ

文明とはひとが命を受け継いできたことに目をつぶり
 耳を塞がせるものになってしまった様相を呈す
文化とは他人の言い分に耳を傾けさせ
 目の前の出来事だけに目を向けさせるように思えるこの頃
情報とは純な心を欺くべく仕組まれたワナとは思いたくない
信頼でつながるスマートな人達に日の光が当たるのを願う
 価値を生み出す者に幸多かれと祈る
生き物は自らを守る そして種を受け継ごうとする
自然は厳しいが自ら助けるモノを助けるという
 松・榊・令法 木々は勝手に生えているかに見える
 しかし一本一本しぶとく生きている そしてそこに在る
 そこにあって形を主張する木々 桜・栃・栗・欅・朴・漆
 形を主張するが決して媚びない 巧まない風景

使って育てるスタイル 再生が価値を生むエコの時代
 里山とはその様なものかもしれない
長続きするスタイル 共生は自律に始まる
 里山ではそのように言い伝えられて来た気がする
美しい森は人を包む 多様な命を育み ときには守る
 命はそれぞれ自ら背負った定めに従う

美は用と結び 命にいのちを与える
 ウルシは"うるわし"に源を発すると言う
 艶があり温かな響きがある
 伝統を未来につなぐのはデザインの力
うるわしの森 それは縄文から新しい日本の未来を拓く窓
美しく見えても何事にも表と裏があるのが世の常
 裏に隠れた秘密は人を賢くさせる
美はひとの心に輝きを呼び起こさせる
デザインは縁をつなぐ力でもある
 器に託すのは森の魅力を凝縮させた一滴(ひとしずく)の受け皿

うるわしの森 そこには人とひとを紡ぐ力が隠れている
 文化を醸す力に充ちている
うるわしの森に何を見出すのか
 人はひとを呼び 魂はたましいを求め心を解き放つ

変化は無から生じるという教えが思い起される
若い力はそれだけで意味がある
 老いに習いやがて追い越していく 世代を受け継ぐもの
 一人ひとりの力が組み合わさって新しい力となる
 力には進むべき そして変化すべき方向がある

うるわしの森 それは新しい力が向かい 通り過ぎる処
 受け継がれる暮し 「里山アイランド」を求めて

(平成十八年一月二十日 春に向かう日 漆楽園の主)

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