「里山文化」


−安定化社会系としての里山−
   @時間軸(持続可能性);再生可能エネルギーの供給、CO2のコントロール
   A空間軸;発散・衰退の防止...受容と棲み分けの学習、暮しに組み込む情報
        *棲み分け=競創(競い合う)と調和(皆が勝者;Win Win)
        *土地生産性の向上
   B関係性強化;エコデザイン(自然と人)、信頼の輪(人と人)、受容(人と社会)

−「生きる力」を身につける空間としての里山−
   ・「自分の命」を維持する力の強化;生命力
   ・愛する人、大切な人を支える力の涵養;受容力
   ・仕事を見つけ出し生きることを楽しめる力;生活力
   ・やりたいことにチャレンジする力;自律性
   ・社会に貢献する力(良い社会を創り出す力);公共心

TOP


−里山システム論−
  ;里山活動の意義を再認識するための枠組み

 里山は純然たる自然ではなく、人間が手を加えながら維持してきた生活・生産システムであるという。いわゆる手を加えない「保護」は里山の荒廃・衰退を招き、再生を念頭において多面的な活用を適切に行うことこそが里山を救うと考えられている。自然と人為のバランスが重要であり、有用な植物を育てるなど自然環境を維持・発展させる工夫が必要になってくる。

 近年、野生動物の里山への進出が目覚ましく、獣害が目立って来た。1世代前まではかなり山奥まで人が畑を耕やしながら入り込み、周辺の山も木材、薪炭、肥料、山菜・昆虫・鳥の食料源など暮しの資源として活用してきた。これら全体の営みが人工的二次林の繁栄を支え、そこに居住し生業を持って暮らすことで、里山に対する人間の権利を主張し、野生との間の最前線を築いて来たのである。これこそが共生と言える。
 しかし、自給を中心に暮らしてきた人も加齢に勝てずに山を下りる傾向にあり、市街に近い所でも過疎化に見舞われている。里山の利用に関する権利放棄は野生動物との前線の後退を意味することを考えると、これを獣害と言うのはいささか見当違いというものである。野生動物から見ると"これまでご苦労様でした"と言うもので、一度後退した前線を共生の形に戻すには、意思の力と大きな努力が必要になる。

   里山は人の暮しを内包したシステムである。システムは、的確に制御しないと、暴走するか衰退するかのどちらかに向かうものである。制御しないで安定して動くことはない。獣害による衰退に加え、農薬による土壌の薬害や過剰な開発を招いた人害などは荒廃の方向といえる。グローバルな経済中心システムが崩壊に向かっているのも、資本の論理で成長を目指した正のフィードバックが勝る余り、適切な制御を自然環境を含めた人間優先の論理で行うことを放棄してきた結果である。経済社会の崩壊と里山システムの荒廃・衰退は同根であると考えられる。
 成長指向の「行き過ぎ」から引き返し、負のフィードバックが掛った新しいシステムに乗り換えるべき環境革命の時代である。これを可能にする道の一つが"里山システム"である。そこでは節度を保ち、成長優先ではなく「達成」をキーワードにして、一歩一歩着実に安定成長することが重要になってくる。保護から保全へ、保全から活用へと里山への人間の関与を増やし、より良い生活環境と生産性を改善した生産活動の達成を図ることが、"持続可能な社会"構築の糸口になると信じるものである。

   自然と人間活動の共生的なバランスを要求する"里山システム"は、また「文化と経済の融合」を必須とし、更に「環境・教育・福祉の融合的な活動と農業や手仕事中心の工芸など文化経済活動との連動」をも可能にする。もって「人間優先」の社会へと誘導するものと言える。更に、システムであることの特性から検討すべき重要な事柄がある。
   ・制御方程式の模索;自由さの実現・最大化と暴走・衰退の抑制
   ・各要素を効果的に確率する"共生社会技術"の発見と確立
   ・システム評価と里山認証制度の在り方の検討

   新しいシステムを確立し、古いシステムから円滑に乗り換えるには、経済活動の立ち上げが重要である。核になる人材の育成推進、1つの里山→地域全体(まちづくりとしての手法化)→広域地方(例えば道州)のような"場"への展開、システムのパフォーマンス評価手法の確立、その過程における"小さな公共投資"の促進など課題は山積みである。

TOP

−国際貢献の文化−

 「里山アイランド」構想は、「木の文化」と相俟って日本のアイデンティティとなるものである。縄文時代に始まる風土に根ざしたものを、海外に移植するのは簡単ではない。
 しかし、背景にある精神的な骨組みや自然に思いを馳せる心は、地球の今日的課題を解決に向かわせるヒントを提供するに違いない。国際貢献のチャンスである。得意の技術開発と高品質化を活かした取り組みが待たれる。

TOP