狂牛病検査前の在庫牛肉を処分 東京・杉並区の精肉店[2001/11/06 12:37速報]
 東京都杉並区の精肉店14店が6日、狂牛病の全頭検査が始まった10月18日より前に仕入れた国産牛肉の焼却処分を始めた 。杉並区が無料で回収し、処分に当たる。国が安全宣言した後も、牛肉の売り上げは通常の2、3割に激減したまま。捨てるに捨てられずに在庫になった検査前の国産牛肉を店の冷蔵庫から無くすことで、「安心」をアピールするのが狙いだ。
 国は、卸売りの倉庫に残っている検査前の牛肉については買い取る方針を決めているが、小売店の牛肉については対策を示して いない。
 今回は、杉並区にある2つの食肉組合の支部が廃棄処分に参加。スーパーを除く86店のうち、在庫があった14店の計94キロ グラムを、区の清掃事務所が無料で回収し処分する。また、同支部は杉並保健所に依頼し、86店すべてに立ち入り調査に入って もらい、全頭検査前の国産牛肉が残っていないことを証明する。
 東京都食肉事業協同組合連合会の荻窪支部長、佐藤光明さんは「農水省や厚生労働省が安全宣言して牛肉を食べるパフォーマン スをしても、無意味だった。消費者が安心できるように、我々が真剣に取り組んでいる態度を、認めてもらいたい」と話している

雇用創出策に「狂牛病検査員」 獣医師に失業者いるの?[2001/11/04 12:04速報]
 9日に補正予算案や関連法案が国会提出される政府の雇用対策で、自治体が行う公的雇用の推奨事業例に「狂牛病の検査員と検査補助員」が含まれていることが分かった。先月から全頭検査が始まったが、各自治体の食肉衛生検査所では検査員不足が深刻で、食肉処理数にも影響が出ている。監督官庁の厚生労働省食品保健部は「公的雇用は渡りに船」としているが、検査には獣医師や臨床検査技師など専門家があたる必要があり、「獣医の失業者っているの」と実現性を疑問視する声も出ている。
 公的雇用は、3500億円の「緊急地域雇用特別交付金」を自治体に分配し、臨時に補助職員や検査員などを雇った場合に給料を全額助成するもの。各省庁で推奨事業例を検討したが、「教員補助者」「森林作業員」などとともに、厚労省が推した「狂牛病の検査員と検査補助員」も盛り込まれた。助成対象には、検査員を補助する職員も含まれるが、「それなりの素養は必要」(食品保健部)。食肉衛生検査所で深刻なのは検査員不足で、状況が改善される見込みは、あまりなさそうだ。

■《天声人語》 11月04日[2001/11/04 07:00速報]
 この欄を自宅で読んでいる方々の多くがちょっと前に、折り込みのチラシをどさっとはずしたのではないだろうか。新聞より先にチラシに目を通す主婦の方もおられるかもしれない。
 東京都中央区にある「チラシレポート」社の澤田求社長(66)は全国からスーパーのチラシを集め、データを分析している。食品や飲料メーカーは、消費者に実際に売られている価格を知りたい。ライバルの動きも気にかかる。そういった企業が澤田さんの顧客だ。かなり変わった商売といっていいだろう。
 初めて話を聞いたのは5年前だが、その時よりも仕事は大がかりになっている。対象地域が大都市から全国に広がり、アルバイトでチラシを集める主婦は倍の千人になった。週に1万枚のチラシが届く。
 「チラシは世の中の流れを映す」というのが澤田さんの見方だ。普段なら給料日にはすき焼き用の牛肉がチラシの一番目立つところに載った。少したつとコマ切れやカレー用が目玉商品になる。それが一時すべて消えた。
 テロの影響は狂牛病ほどではないそうだ。米国から輸入している大豆や小麦の加工品の価格には今のところ異状はない。一方中国の影は濃厚だ。貿易摩擦になったネギでは国産の一本売りも珍しくない。高くても少量ならというニーズにこたえるためだそうだ。
 大手スーパーの不振にもかかわらず、チラシの総数は減っていない。生き残り同士の競争が激しいからだ。「消費者はよけいなものを買わなくなった。メーカーもスーパーもより厳しい局面に入った」と澤田さんは言う。

なぞ多い病原体「プリオン」 治療に決め手なし たんぱく質が異常化 長い潜伏期間[2001/09/20]
 英国発の狂牛病パニックが世界を襲ってから5年。ついに日本でも疑いのある牛が見つかった。病原体はプリオンと呼ばれる。人に感染すれば、死に至る病気を招く恐れがある。発病のしくみや治療法の研究は、どこまで進んでいるのだろう。(浅井文和、瀬川茂子)
 〇たんぱく質が異常化
 細菌でもなければ、ウイルスでもない。もともと体内にあるたんぱく質が異常化し、病原体となったのがプリオンだ。
 「感染性をもつたんぱく粒子」という意味をこめて命名したのは、米カリフォルニア大サンフランシスコ校のスタンリー・プルジナー教授。プリオン発見の業績で97年にノーベル医学・生理学賞を受けている。
 プリオンには「正常型」と「異常型」がある。病原体となるのは「異常型」だ。健康な人や動物の体内に入ると、「正常型」が次々書き換えられるように「異常型」に変わっていく、と考えられている。
 羊の狂牛病にあたるスクレイピー、人がかかるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クールー病などがプリオン病とされる=表。いずれも感染から発症までに、数年から何十年という長い潜伏期間があり、主な症状として脳がスポンジ状になる。
 ヤコブ病は歩行困難から痴ほうへと進み、死亡する。60代以上の患者が多く、高齢者の病気と思われていた。
 ところが、90年代に英国で10代を含む若い患者があらわれた。脳波の特徴も、従来のヤコブ病とは違う。「変異型ヤコブ病」と呼ばれ、英国政府は96年、疫学的な研究をもとに「狂牛病の病原体が牛から人に感染した可能性がある」と発表。世界的なパニックに火がついた。
 英国の研究グループは97年、実験データから「二つの病気の病原体は同じ」と結論を出した。
 狂牛病の牛の脳からの抽出物と、変異型ヤコブ病患者の脳からの抽出物を、それぞれ別のマウスに注射したら、潜伏期間や脳組織の変化がほとんど同じだったのだ。
 感染の確定診断は生きているうちはできない。死後、脳細胞の切片を顕微鏡で見て、スポンジ状の穴(空胞)があるかどうかを調べる。さらに、抗原抗体反応を使ってプリオンを検査する。
 〇決め手の治療法なし
決め手となる治療法はまだ確立されていない。
 しかし、プルジナー教授はマウス実験で、抗マラリア薬と精神分裂病の薬を組み合わせると、異常型プリオンの増殖を抑えられることを確かめている。一人の患者が試験的にこの治療を受けたら効果があった、と今夏、報道された。
 スイスなどのグループは、正常型プリオンに対する抗体の一部をつくる遺伝子をマウスに組み込んだ。今月6日に発表された論文によると、このマウスの腹に異常型プリオンを注射したら、強い免疫反応が起こり、発病を防ぐことを確認したという。
 片峰茂・長崎大教授(ウイルス学)は「発病した人に応用するには、抗体が脳に届くように、抗体の構造を変化させたり、脳でこの抗体をつくるような遺伝子治療の方法を開発したりする必要がある」と話す。
 <主なプリオン病>
 人〜 クロイツフェルト・ヤコブ病
 人〜 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
 人〜 クールー病(ニューギニアで発生)
 牛〜 狂牛病(ウシ海綿状脳症)
 羊など〜スクレイピー
 猫など〜ネコ海綿状脳症
 ミンク〜伝達性ミンク脳症 .

狂牛病問題で、19日に調査検討委 農水、厚労両者[2001/11/06]
 狂牛病問題をめぐり、農水省と厚生労働省は6日、行政の対応などについて検証する調査検討委員会を19日に開く、と発表した。両大臣の私的諮問機関で、学識者や消費者代表など10人の委員で構成する。
 農水省によると、月に2、3回のペースで開き、2、3カ月後に報告をまとめる予定。問題発生後に二転三転した行政のあり方について、第三者の立場から意見を述べるほか、今後の畜産・食品衛生に関して話し合うという。
 第1回は、19日午後3時から東京都港区三田2丁目の三田共用会議所で。別室のモニターで傍聴できる。
 傍聴希望者は、農水省大臣官房企画評価課広報担当に申し込む。問い合わせは電話03・3502・8111(内線2083)。

牛の特定危険部位混入、9社が22品目回収・販売自粛[2001/11/02]
 厚生労働省は2日、狂牛病に感染する危険が高いとされる牛の特定危険部位(脳、眼球、せき髄、回腸遠位部)を原材料に使っているかどうかについて、食品加工メーカーが自社製品を点検した結果を公表した。危険部位の混入があったなどとして、9社が計22品目の商品を、自主回収または販売自粛していた。
 厚労省は全国の食品加工会社に対し、牛を原材料に使ったすべての商品について、危険部位が使われているかどうかを調査して、10月24日までに結果を保健所に報告するよう求めていた。
 報告したのは8980社。食品13万2645品目のうち、特定危険部位の使用・混入があったと報告してきたのが51品目、「不明」としたのは373品目で、合わせて424品目だった。このうち、22品目はメーカーが自発的に自主回収などの措置を取った。残りの402品目は、メーカーの調査で、「狂牛病の非発生国の牛が原料か、病原体を死滅させる処理をした」として、回収されていない。
 厚労省はメーカーの報告が事実かどうか確認するため、全国の保健所に立ち入り検査を指示した。
 22品目のうち、17品目は有機農産物の宅配をしている「大地」(東京都、会員5万3000世帯)が製造を委託した商品。同社の藤田和芳社長は2日、記者会見し、「10年前から狂牛病の原因とされる肉骨粉を与えない牛を使っている」と説明。「私たちは安全だと思っているが、消費者の不安をおさえるため回収した。しかし、自主回収が22品目しかなかったのは驚きだ」と話した。
 報告された食品に関する情報は、厚労省のHP(http://www.mhlw.go.jp)に掲載されている。

●自主回収や販売自粛をした企業と商品名 牛モツ煮込み(時兼畜販=北海道上磯町)▽牛もつ煮込み(ホクビー=石狩市)▽牛小腸スライス(スターゼンミートグループ三戸=青森県三戸町)▽牛一番(タカノ=新潟県長岡市)▽牛汁(アグリやんばる=沖縄県名護市)▽牛骨エキス(徳岡商会=東京都荒川区)▽オラッチェカレールウ辛口(大味研=大阪府枚方市)同中辛(同)同お子様(同)「大地」向けカレールウ辛口(同)同中辛(同)同お子様(同)オラッチェデミグラスソース(同)「大地」向けデミグラスソースルウ(同)▽生ラーメン用スープ醤油味(スター食品工業=茨城県猿島町)同味噌味(同)▽肉まん(飛鳥菜館=東京都江東区)水ギョウザ(同)シャービン(同)カレーまん(同)春巻き(同)しゅうまい(同)注・徳岡商会、大味研、スター食品工業、飛鳥菜館の商品はいずれも「大地」の製造委託分。

売り上げ半減、大阪の焼き肉店民再法申請 狂牛病で初[2001/10/30]
 大阪市内などで焼き肉レストランを経営しているスタミナ軒(本社・大阪府門真市、資本金1000万円、中村朝生社長)が29日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請して倒産した。設備投資による借入金の増大に加え、狂牛病騒動で焼き肉の売上高が3分の1になり、全体の売上高も半減したことが響いた。負債総額は約20億円。営業は継続する。帝国データバンクによると狂牛病騒動の影響による法的整理は全国で初めて。
 同社は焼き肉を中心にしたレストラン8店舗(1店舗は休店中)を経営。焼き肉の売上高が全体の8割を占めていた。

未発生国の牛原料の化粧品、在庫売ってよい 厚労省転換[2001/10/29]
 米国、豪州、インドなど狂牛病が発生していない国の牛が原料なら、その成分でつくった化粧品の在庫分だけは売ってもよい−−医薬品・化粧品の狂牛病対策に厳しい姿勢をとっていた厚生労働省が29日、こんな結論をまとめた。脳やせき髄などを使った製品すべてを「回収指導」とした今月上旬の方針から一転、「販売容認」となったのは約3060品目。「肌に塗るだけなら問題はない」と判断した。
 対象は、保湿剤などに使われる胎盤(プラセンタ)エキスやヒアルロン酸など。ヒアルロン酸は培養する時の栄養源・培地として脳を使うが、製造工程で100億分の1以下に薄められるという。プラセンタも成分が100倍以上薄まり、肌に塗るだけでは、感染の危険性は低いとした。
 ただし、新たな製造は今後も認めない。各企業は厚労省の指導で昨年暮れから今春までに、原料を豚などに切り替える対応をとっており、今回の「容認」はあくまで在庫分に限った措置だ。
 また、同じような成分でも、英国など狂牛病が多数発生している欧州産の牛が原料の約830品目は、引き続き回収を指導する。牛の腸からつくった手術用糸など44品目は、体内に直接入るため危険性が高い、と素早い回収を求め、すでに全品目の回収を終えた。
 厚労省は「早く回収すべきものと、そうでないものをめりはりをつけた」と話している。

農水省放置の文書に肉骨粉加工など詳細報告 狂牛病[2001/10/27]
 狂牛病に感染した牛が見つかった際、農水省が千葉県からのファクスを2日近く放置していた問題で、ファクスには問題の牛が肉骨粉に加工された手順などが詳細に報告されていたことがわかった。情報公開法にもとづく朝日新聞社の請求に、同省がファクスを開示した。
 それによると、千葉県は9月10日に問題の牛を肉骨粉に加工した業者が茨城県にあることを割り出し、同県に調査を依頼。これを受けて潮来保健所が業者から事情を聴き、11日付で千葉県に報告した。
 千葉県はこれらの報告をもとに12日に農水省に経緯をファクスで連絡した。
 さらに、ファクスには、狂牛病が確認された牛は、同じ処理場で8月6日に処理された牛35頭や、豚の骨、内臓などとともに茨城県波崎町の業者に持ち込まれたことが書かれていた。

せき髄を簡単除去、費用は2000円 大阪の業者考案[2001/10/28]
 大阪府の食肉処理業者が、狂牛病で特定危険部位となっているせき髄を、牛の解体時に圧縮空気で簡単に抜き取る方法を考案した。現在の除去方法では、食肉や器具類にせき髄片が付着するおそれが指摘されていた。新たな方法は付着の危険性が低く、費用も約2千円で済むという。
 開発したのは、松原食肉地方卸売市場(大阪府松原市)で解体作業をする松原ミートプラントの村上幸春社長(54)。
 現在多くの食肉処理場では、まず、背骨に沿って電気ノコギリで「背割り」をし、せき髄を金属器具でかき取る。
 村上さんは、皮はぎ用に使っているエアコンプレッサーの活用を思いついた。背割り前に、せき柱内に細いチューブを差し込み、圧縮空気を瞬間的に送り込んで、せき髄を飛び出させる。コンプレッサーは多くの食肉処理場にあるので、新たにかかる費用はチューブ代の約2千円だけだ。
 フランスでは、吸引装置で除去する方法を来年1月から実施する。厚生労働省は今月、すべての食肉処理場にせき髄の徹底除去を指導。フランス式の装置の導入も検討しているが、高価なため食肉処理の現場からは「対応しきれない」との声が出ている。
 村上さんは「一刻も早く多くの処理場で実施してほしいので、特許はとらない」と話す。

狂牛病「シロ」判断へ追加検査 提言受け厚労省[2001/10/27]
 狂牛病の全頭検査を始めた18日より前の在庫牛肉の取り扱いについて、農水省は26日、一時的に市場から隔離する従来の方針を撤回し、食肉としては市場に再流通させずに最終処分する方針を決めた。事実上の国による買い上げ措置で、必要経費は一時保管料として見込んでいた92億円に加え、肉の買い上げ資金として100億〜200億円が必要になる見通しだ。
 自民党のBSE(狂牛病)対策本部が26日午前の会合で、消費者の不安感を消すため、市場隔離する約1万3000トンの在庫牛肉を市場に戻さないとの確約を農水省に求めた。同省は「牛肉は安全」という見解を否定することになるとして、一時保管にとどめたい考えだったが、自民党に押し切られた。
 買い上げた在庫肉を最終的にどう処分するかは決まっていない。

全頭検査前の在庫牛肉、国が「買い上げ」 農水省方針[2001/10/26]
 狂牛病の全頭検査を始めた18日より前の在庫牛肉の取り扱いについて、農水省は26日、一時的に市場から隔離する従来の方針を撤回し、食肉としては市場に再流通させずに最終処分する方針を決めた。事実上の国による買い上げ措置で、必要経費は一時保管料として見込んでいた92億円に加え、肉の買い上げ資金として100億〜200億円が必要になる見通しだ。
 自民党のBSE(狂牛病)対策本部が26日午前の会合で、消費者の不安感を消すため、市場隔離する約1万3000トンの在庫牛肉を市場に戻さないとの確約を農水省に求めた。同省は「牛肉は安全」という見解を否定することになるとして、一時保管にとどめたい考えだったが、自民党に押し切られた。
 買い上げた在庫肉を最終的にどう処分するかは決まっていない。

全頭検査以前の在庫牛肉1万トン、農水相「全量隔離に」[2001/10/19]
 牛の全頭検査以前に処理された在庫牛肉の扱いについて武部勤農水相は19日、「消費者の理解が得られるまで、市場から隔離する」と発表した。
 同省によると、現在の在庫量は全国で約1万トン。全農など全国規模の生産者団体が精肉業者などから在庫を買い上げて凍結、保管することに対して、国が保管にかかる費用を助成する。期間は国が指示するが、「1カ月か2カ月か、半年になるかはわからない」という。
 武部農水相は、全頭検査前に出荷された牛肉について、「安全であることに変わりはない」と強調したうえで、「まだ消費者の狂牛病への不安が大きいことは否めない。一日も早く、牛肉離れを解決したいので、当分の間隔離することにした」と述べた。
 「消費者の理解が得られた時点」で流通させる方針。
 近く、生産者団体に通知する予定。ただ、隔離に強制力はない。また、すでにスーパーなどの小売店に出回っている牛肉に関しては「消費者の判断にまかせる」として、回収などはしない考えも明らかにした。

米、豪が「安全性」をPR 狂牛病騒ぎの日本に売り込み[2001/10/19]
 国内で消費される牛肉の7割近くは輸入もの。そのほとんどを占める米国とオーストラリアの関連団体は「わが国の肉は安全」と、売り込みに躍起だ。
 「米国ではBSE(狂牛病)は1例も発生していません」−−先週末から今週にかけて、米農務省と米国食肉輸出連合会は、日本の全国紙数紙に広告を出した。豪州食肉家畜生産者事業団も競い合うように広告を出し、インターネットで広報に努める。
 米政府は90年5月、食肉加工場で無作為に食用牛を選んで脳組織をとり、免疫組織化学検査を始めた。今年9月末までに計1万6803頭を調べた。「たんぱく飼料には大豆を使い、肉骨粉は米国ではまったくといっていいほど使われていない」と、同連合会の原田晋ディレクターはいう。
 欧州連合(EU)科学運営委員会は、畜産国の狂牛病汚染度を調べ、最も高い国をレベル4、低い国をレベル1とする4段階で評価している。
 米国はレベル2。「英国牛の輸入が禁止される89年以前に持ち込まれた3頭が、今も米国内で生きているのが原因。3頭は政府の監視下で、米国産牛とは隔離して飼育されている」と原田さん。
 一方、豪州食肉家畜生産者事業団は「うちはレベル1。安心して食べていただけます」。無作為抽出検査のほか、輸出向け食肉加工場には検疫検査局の獣医師が常駐し、一頭一頭、狂牛病の症状がみられないか検査しているという。
 財務省の貿易統計によると、日本が昨年度輸入した牛肉は約73万8000トン。うち49%が米国から、46%がオーストラリアからだ。

EUによる国別狂牛病汚染度[2001/10/19]
 ■EUによる狂牛病汚染度評価  【レベル1】(発生の可能性はほとんど考えられない)
 アルゼンチン、オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、チリ、コスタリカ、ナミビア、ニカラグア、ノルウェー、ニュージーランド、パラグアイ、シンガポール、スワジランド、ウルグアイ
 【レベル2】(発生の可能性は低いが、まったく危険性がないともいえない)
 スウェーデン、フィンランド、オーストリア、カナダ、コロンビア、インド、ケニア、モーリシャス、パキスタン、スロベニア、米国
 【レベル3】(発生が未確認もしくはわずかに確認され、汚染の危険性がある)
 ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、アルバニア、キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スイス
 【レベル4】(発生が確認され、高いレベルで汚染されている)
 英国、ポルトガル
 (日本はEUへの調査協力を断った)

全頭検査パスの牛肉初せり 都中央卸売市場[2001/10/19]
 狂牛病(BSE)の安全対策として18日から始まった「全頭検査」をパスした牛の枝肉が19日朝、各地の食肉市場でせりにかけられた。いわば安全のお墨付きを得た肉の登場となる。
 東京都港区の都中央卸売市場食肉市場ではこの朝、前日の検査を受けた牛200頭のうち198頭分の枝肉が上場された。通常のほぼ3分の1の頭数だ。
 午前8時30分すぎ、せりは緊張感が漂う中で始まった。1頭目、中の上クラスの枝肉はキロ当たり1333円をつけた。背中に「BSE安全」のスタンプが押してある。さらに1クラス上は、1500円前後から1800円台で取引された。
 せりの値段が表示されるボードをじっとみつめていた市場関係者は「ボードの数字が上がっていくのを見るのは久しぶりだ。安全宣言の効果かな」と、ほっとした表情。相場は狂牛病騒動の前とほぼ同じ水準に戻ったという。
 一方、仲買人の一人は「市場での相場が戻っても、小売り段階での需要が戻らなければ、意味がない」と、厳しい表情のままだった。

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