(2)気管切開患者の看護

 長期に呼吸管理を必要とする場合,また,自力で痰をだすのが困難な場合に気管切開を行います.
気管切開患者に対しては,下記のような注意が必要です.

  1. 気管カニューレの交換・固定について
     気管カニューレは,感染予防のため,2週間毎に交換します.交換時には吸引器,アンビューパックを用意しておきます.ボーカレイト付カニューレの場合は,気道内に唾液等の垂れ込みを予防するために,ボーカレイトより吸引をした後にカフを抜き抜去します.切開部をイソジン液で消毒後,カニューレを挿入し,切り込みガーゼをあてヒモで固定するが,咳などで気管カニューレが抜けると気道閉塞をおこすことがありますので,しっかりと固定します.

  2. カフについて
     カフ付きのカニューレを用いる場合は,カフ圧には充分注意をしなければなりません.気管壁の圧迫からくる障害を防止するために,カフは常に膨らんだ状態にしておくのではなく,1日に何回かカフ圧を抜き取ることが必要です.

  3. 吸引について
     気管内吸引は,清潔に取り扱います.吸引は粗雑な扱いをすると出血させたり,気管粘膜を損傷したりするので注意します.吸引チューブを閉塞し,吸引チューブを気管内の抵抗がない所(10p)まで挿入し,少し引いてから吸引チューブを開き,ゆっくりと回しながら吸引をする.1回の吸引時間は,10〜20秒以内とします.吸引時の痰の性状にも注意します.食物や唾液のようなものが混入していれば,誤嚥を意味しカフが十分に働いていないことになります.

  4. 肉芽について
     気管カニューレを長期にわたって使用する場合に,気管壁に肉芽が生じることがある.肉芽はカニューレの先端が気管壁に接触し刺激を与えることで大きくなるので,時には,痛みや出血の原因となったり,カニューレの先端部分を閉塞してしまうことがあります.硝酸銀での焼却や切除が必要となります.

  5. 加湿について
     人工呼吸器使用の場合,加湿器は細菌の繁殖しやすい温床となりやすいので,毎日蒸留水を交換します.温度をあげすぎると,熱い蒸気が流れ気道粘膜をいためることになるので,加湿器の温度は33度位とします.

  6. 発声について
     カフなしのカニューレに移行できれば,発声ができるようになるので安心感をもたせます.

 

参考文献
豊岡秀訓:人工呼吸器の使い方. エキスパートナース

(押方真理)

   

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