近年,難病を含む要長期療養疾患に対してQOL向上の面から在宅療養・ケアの重要性が唱えられている.関係者の努力によりその在宅療養環境整備・ケアネットワークづくりが少しずつ前進しつつあることは喜ばしいことだ.
 ところで,進行性呼吸不全をきたすためターミナル期に人工呼吸療法が必要となる筋ジストロフィー(筋ジス)については,その在宅療養の手引きが厚生省筋ジス研究第4班によって1987年と1996年に作成されるなど比較的早期から取り組みがなされてきた.しかし,筋ジスの在宅療養・ケアで最も重要なことは,在宅人工呼吸療法の患者・家族をいかに支援するかであった.
 この度,厚生省精神・神経疾患研究委託費「筋ジストロフィー患者のQOLの向上に関する総合的研究」班在宅ケア分科会リーダー・姜進博士(国立療養所刀根山病院神経内科医長)を中心として,「筋ジストロフィーの在宅人工呼吸疵法文扱マニュアル」が作成された.在宅人工呼吸療法(HMV)の意義,必要性,実際,緊急時対応,診療点数,患者への注意,外出,航空旅行などHMVに関わる問題点が詳しく,分かり易く,具体的に述べられている.その他,HMVを受けている患者さんや家族が検査結果や呼吸器条件を記入するHMV記録,人工呼吸器条件記録,筋ジス施設所在地一覧なども収載されている.このように,筋ジスのHMVに関する極めて実用的な支援マニュアルとなっている.
 改めて,姜博士初め分担執筆者各位へ深く感謝するとともに,本
マニュアルが筋ジス患者のHMVの正レい普及ひいては筋ジス患者・
家族のQOL向上に繋がることを期待している.

平成11年3月31日

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