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「http://www2s.biglobe.ne.jp/~NITE_DAY/200106nikki_1.htm#2001/06/XX」
と記述してください。

6月1日(金)晴れ
▼朝の有楽町線池袋駅の切符売り場が混雑している。幼げな顔と、デザインが簡素な制服から、地方の中学生が修学旅行で来ているらしいとわかる。ひとつの販売機の前に五、六人が並ぶので、朝の通勤のために切符を買おうとしている社会人がいらいらしながら、寸足らずの身長の集団の中にまぎれている。
 厨房たちのほとんどは、行き先をまったく決めていない者が多いらしく、頭上の地下鉄の路線図を睨んでいる。各地下鉄線の駅名を指でたどっている男の子、隣の女の子にどこへ行くのか相談している女の子、それぞれが自分たちの空間しか視界に入らず、通勤する社会人のことなどまるで意に介さない。販売機の目の前に来てから、誰か他の者に相談したり路線図で駅名を調べたりしているのはどうか。
 行き先などまったく決めないで、その場にぶつかったら思いつきで決めようとしても、どこへ行けばいいのかわからない年齢、などと取って付けたように言うのはマスコミくさいか。
 そうだよ、俺だって行き先なんてどこにしたらいいのかわかんないよ。彼らが生まれた時に中学生で、そして彼らの二倍くらい生きているというのに。
▼会社の飲み会の後に銀座へ。(55)

6月2日(土)曇り 午後から夕立
▼なんだかニュース系(モー娘。のメディア観察日記含めて)が続々と運営休止していますね。年度の切り替わりの時期に就職したり学校代わったりして、それまでのネット漬けの生活が維持できなくなったのでしょうか。世は世でADSLの時代になっているのに。
 とまあ、こちらもその手のニュースからおもしろいのを拾い集めてここの日記のネタにしたりしているので、皆様のご厚意かあるいは酔狂かに甘えているわけで、復活の日をゆるやかに待ち望んでいたりします。閉鎖だけは流行しないでほしいです。
▼夕方から床屋へ言ってその後に銀座へ。(56)
 池袋駅出口からパルコに通ずる辺りで、座り込んでいる男女の集団が二、三あり、よく見ると酒で酔いつぶれた者を介抱しているらしい。
 夏の勢いでこんなに早い時間から酔いつぶれているのかとごく単純な感想しか持たなかったが、銀座へ出てみたら旭屋書店でも同じような光景にぶつかった。仰向けになった優男の周りを銀座で浮きまくりのギャル風の女の子たちが取り囲んで面白がっていた。

6月3日(日)晴れ
▼渋谷シネパレスで『東京マリーゴールド』観る。感想はこちら
▼↑に書かなかったけど、寺尾聰が田中麗奈に向かって「見ることはある意味で暴力である」と教え諭すシーンがあります。しかしこの日の渋谷の街を歩くと、「見せることだって暴力」と思わざるを得なくて。みんなで肩を出して胸を出して腹を出して腿を出してパンツを出して……。
▼新着リンク1件追加。

SOME LIKE IT HOT! MOZUさん

 音楽や映画に、現場感覚で遠征しているお方。キャンギャルに賭ける情熱も素晴らしい。私は写真撮らない人間なものでこの辺を見習おうと思ってもできないんだよなあ……。

6月4日(月)晴れ 最高気温三十度
ボリス・ヴィアン『心臓抜き』
 数年前に「うたかたの日々」がシネマライズ渋谷でリバイバル上映されたのだが、作品を映像化するとかなりトリップした感覚が味わえた。ゴダールみたいなやたらめったら官能的なカットをはさんでいるなんてのとはまた別の不条理空間。
 この人の小説は、映像になんかしたら大幅に常識から逸脱していきそうな揺らめきを持っている。本作も例外でなく。
「栓抜き」に引っかけてタイトルが「心臓抜き」このように言葉遊びの多い本なので、やはり原著に当たるのがいいのだろうな。フランス語読めないけど。(今から井川遥の「フランス語会話」始めるか……)
 生の世界の上空に漂っている死の世界が、今にも心臓を引っこ抜きそうな退廃で埋め尽くされている。結果的に著者の最後の方の作品になったから、という後付けの理由も含めて、長雨の今ぐらいの季節にもっと鬱屈をたぐり寄せたくなる小説。

6月5日(火)晴れ 夜になって雨
シーナ・ヴィンチ『おとなは知らない』
 青い蕾の頃の男の子たちと女の子たちの性の目覚め――が書いてありながら、そこに萌え要素(ってイタリア語で相当する言葉はないでしょうね)はまったくなし。あるのは徹底して写実的な行為の連鎖、そしてどちらかと言えば、初めての体験に接したときの、どうしようもない嫌悪感を増幅するだけ増幅させた世界。そして大人たちの都合のいい性の世界に対する子どもたちなりの違和感が、残酷な結末を含めて迎えている。
 女性ならではのリアリズムってことで。

6月6日(水)曇りのち雨
J.D.サリンジャー『倒錯の森』(サリンジャー選書3)
・「マディソン街のはずれの小さな反抗」
「ライ麦畑」のデモテープバージョン。ここではホールデン少年がペンシー男子予備校の休暇中にサリーとスケートに行って身勝手な言動をとった、その一部始終が短編になっている。
・「大戦直前のウェストの細い女」
 第二次大戦直前の一女性の身の上。その生き方が何からしら教訓を導き出す一歩手前で止まっている。
・「ある少女の思い出」
 愛と死がからまっている。ユダヤ人の虐殺という歴史的背景を省いて読んだ方がいい。
・「ブルー・メロディー」
 本短編集の中でいちばんアメリカらしい背景を持つ。ラドフォードという少年とペギーという少女の乾いた関係も含めて。
・「倒錯の森」
 サリンジャーの数少ない中編の一つ。タイトルが何かしら淫靡な響きを持っているがまったく関係なし。「純粋」の本質を「大人であるべき」という思想が上書きしたらどうなるかという見本。「ライ麦畑」と有る意味対極にある。

6月7日(木)晴れのち雨
佐藤正午『女について』(光文社文庫)
 なんとなく似たり寄ったりの短編が並んでしまった印象になるのは残念。講談社文庫で出たときは表題作を『恋売ります』にしていたそうだけど、わざわざこのタイトルにすることなかったのに。
 次は『ジャンプ』読むぞ。

6月8日(金)曇り でも夜になって雨
▼添田さんと一緒に新宿へ。(23)
 今日が添田さんの誕生日だったので祝ってもらった。
 きっと添田さんは玲はる名さんの本の売り込みをしたいだろうと思っていて、ご本人に確認するとやっぱりそうだったのだが、そんな話をする間はまったくありませんでしたね。つうか文芸方面に関心ありそうな人がどれぐらいいるかでもあるのですが。とにかくありがとうございました。延長させてすいません。

6月9日(土)晴れ 
▼高橋源一郎が池袋リブロで17日に新作のサイン会をするそうだが、……いいのか? 週刊文春で離婚のために家出しているなどと書かれているというのに。
▼池袋タワーレコードでシャーベッツ「三輪バギー」買う。夜から銀座へ。(57)

6月10日(日)曇りのち雨 
▼小林紀晴「国道20号線」(河出書房新社)/吉田司「スター誕生 ひばり・錦之助・裕次郎・渥美清・そして新・復興期の精神」(講談社)/室井佑月「血い花」(集英社文庫)/中上健次全集1(集英社)

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