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〜ま〜


◆もののけ姫◆
原作・脚本・監督/宮崎駿
声の出演/松田洋治/石田ゆり子/田中裕子/小林薫/西村雅彦/上條恒彦/美輪明宏/森光子/森繁久弥/島本須美/佐藤充/名古屋章
徳間書店 日本テレビ放送網 電通 スタジオジブリ/1997年/2時間13分

いやはや、やっと観た……この時期の方がいろいろな情報(あるいは束縛)から自由になって曇りのない視点でものを言える……と思うから。
まず主人公のアシタカを見て、かなり宮崎作品のヒーローとしては変わったという印象を受けた。……いや、変わったというのは正確ではなくて、これまでの宮崎作品のヒーローをきちんと踏襲しているけど、それをバックアップする脇やら背景やら、すべて主人公をかっこ悪くさせようという要素……批判したり馬鹿にしたり「かっこいいってことはなんてかっこ悪いんだろう」という位置づけに追い込んでいる。
たまたまこの映画を観る一ヶ月前に、学生運動盛んな頃の青春ものの映画を観たんだけど、この時期の学生の「一歩まちがえばかっこ悪い」次元に生きているのだよ、アシタカは。1960〜70年代に生きていれば絶対学生運動に参加してたよこの人は、いやマジで。
だってアシタカの発言は一から十まで「理想」しか述べてなくて、おまけにいったい誰の味方しているの、と作中の人物にまで指摘されている始末。サンにふられるぞ(笑)
特に80年代に青春を送ってきた人間は(笑)真っ正面から問題に立ち向かう姿を左手にニヒリスム、右手に「悪魔の辞典」を持って茶化して馬鹿にして笑い者にしようと(同じようなもんか)いう傾向があるし(その中で宮崎作品がきちおんと評価され売れたというのは奇跡的なものがあるが)それこそ現実をちゃんと見据えていて、それが眼に入らずにただ理想をふりおかざして行動したら、ただの馬鹿なんだよね、今の世の中。あらゆる正義とか純粋とかいうお題目だけでやっていけないという危機にさらされている。宮崎駿までそのタブーを破らざるを得なかった。
でも、これまで「ユートピア」志向と思われてきた宮崎作品のイメージを大部分で(全部ではない、というところを指摘する人もいるだろう)壊しているところではいいと思ったし、偶然だけど同時期に上映された「エヴァ」とだぶっているのね。シンジとアシタカは「陰と陽」だけど、性格が違っても理想主義というかドン=キホーテ方向性は、おんなじ根っこからきている。なんだかアシタカのことばっかり書いたけど、「馬鹿にはかなわん」と言わせてみたいよね。
(1997/12/01)
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