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深沢七郎「月のアペニン山」
「楢山節考」(新潮文庫)と同じ本に収められていながら、並べるとずいぶん毛色のちがう短篇。
 妻を信じられなくなる。男の身勝手さも愁嘆の域も、これだけシュールで手堅く手短にまとめられると気持ち悪くて気持ちいい。
 作者の経歴って、今まで知らなかったんだけど、(旧版の新潮文庫には作者の紹介がなかったから、改めて買ったやつに出ていた)ちらっと読むと、おお、かっこいい、とだけ思った。思っただけ。

深沢七郎(1914-1987)
山梨県石和町生まれ。少年時代からギター演奏に熱中し、戦時中17回のリサイタルを開く。戦後、日劇ミュージック・ホールに出演したりしていたが、1956(昭和31年)年「楢山節考」で、第1回中央公論社新人賞を受賞し作家生活に入る。「東北の神武たち」『笛吹川』などを発表するが、'60年の「風流夢譚」がテロ事件を誘発し、放浪生活に。埼玉県菖蒲町でラブミー農場を営んだり、今川焼きの店を開いたりしながら『甲州子守唄』『庶民列伝』などを創作、'79年『みちのくの人形たち』で谷崎潤一郎賞を受賞。

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