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▼J.D.サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」(白水社)
精神病院の患者の独白、というと日本では芥川龍之介の「河童」がある。これは質問者が独白者にとって、まったく見ず知らずの人間だったのに比べて、ホールデンは「気心知れている人」に話すことのできる幸福を得られている、と類推できる。ひょっとしたら薄弱な精神状態が進行して、相手の立場すら明確にできずに幼稚化した人間として独白しているのかもしれないけど。
読み進めればわかるが、ホールデンは実年齢にふさわしい、もしくは実年齢よりはるかに無垢な人間の感性を持って生きている。世の中をLOVE&HATEで見つめている。好きか嫌いかの二元論をところ構わずふりかざすのは子どもの証拠であって、そこに中庸の精神がないと、現実にぶつかるのは疲れすぎる。疲れるのは子どもであって大人なら疲れない、ということではないのだろうが、この無垢さが、ホールデンに感情移入した人間が世界中にいた、という事実に結びつけられるのだろうが。
そのLOVE&HATEの中のひとつ、売春婦サニーの緑ドレスの中身は猥雑で、女友だちサリーのスケート用の短いスカートとお尻は可愛い、という二元論は、子どもの心にセクシャルはどう写るかというサンプルになるのではないかと――なんつうて大学の卒論に出してみればよかった。(当方、英文科卒。しかもアメリカ文学専攻)
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