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松本隆「成層圏紳士」
 バリバリの作詞家時代であった八十年代から、西暦2000年の「僕は微熱少年を経て成層圏紳士となった」と実感できた五十代までの、エッセイ文集大成。
 八十年代の文には、大瀧詠一から細野晴臣までのかつての同胞や、松田聖子・薬師丸ひろ子・斉藤由貴などの担当するアイドルまで、世間から憧憬の目で見られる人物の真実の姿を描く、といった気配りの向こうで、段落の最後の一文に、世の中の事物や人物に対する辛辣な批判という形式が多かった。これが「作詞家だと思ってちゃらちゃらとした人間だと思うなよ」という反骨精神が現れていると思うのですが。
それが八十年代後半から自分で小説を書き、他のジャンルの芸術に大きくかかわることによって、「芸能人ご用達の作詞家」の呪縛から逃れられたようだ。元は、初めて日本語でロックをやった「はっぴいえんどの作詞家」なんだし。
 年齢を経ることによって、再び世間に対する小言が増えているような文章が多めなのは気のせいか。
 ところで、この人はPCの自作マシンにまで手を出しているのですね。自作マシンにうんざりしている身からすれば、遊び心を失わないでいられるのは尊敬に値します。
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