よかよか医者 続き

で、よかよか医者っていったい・・・

 ま、私の知り合いという事にしておきましょうか。ある先生が、外来で話をしている近くを通りかかると、「よかよか。大丈夫。」と、そんな話し声が聞くとはなしに聞こえて来るわけです。で、その後、その患者さんが自分の外来に来てみると、「なんだか分からない」ので抗生剤が処方してあったり、ステロイド剤が処方してあったりするわけだ。(あくまでも事実を元にしたフィクションです。)んんん・・・。「よかよか」かぁ?

 というわけで、なんでもとりあえず「よかよか」(博多弁で大丈夫大丈夫といった意味。若くして無くなった先輩が、いつも言っていた。)といってごまかしてしまう医者を勝手によかよか医者と命名させていただきます。よかよか医者は、インフォームドコンセントに逆行している医者です。なにも説明せずに、患者さんの疑問に答えることもせずに(答えられない)、ただ、大丈夫大丈夫といってごまかしている医者です。そして、患者さんがなにか希望を出すと、とりあえず「よかよか」といって処方でも治療でもしてしまう。医学的適応なんて二の次です。(そんな医者が結構多いんだ。世の中。しかもそんな医者ばっかり流行っているのがとても不思議。)

 

 いや、実際、開業医にはよかよか医者が多いのです。ひとつは忙しくて、十分に説明できないということ、ひとつは、余計なこと言うと患者さんが嫌がってこなくなってしまうのではないかと心配していること。などが理由です。結構、大學ではいい仕事をしていた先生でも,開業してしまうとよかよか医者に成り下がってしまうこともよくあるのです。(俺にいわれたくねぇーか。)例えば、ひどい妊娠中毒症の患者さんが、ある開業医から送られてきて、担当になった医師が「ずいぶん(患者の)体重が増えてますねぇ。」と開業医の先生に言ったら、「いやぁ,うちは開業医なので、そんなこと患者さんにとても言えませんよ。」と、言ったらしい。妊娠中毒症の予防には、体重コントロールが重要な意味を持つのだけれど、その開業医の先生は、患者が太ったというのを気にするのを恐れて、そのことを説明できなかったらしいのだ。んんん・・・いったい医者のサービスとは何?

 よかよか医者の方が、楽なのだ。ろくろく説明もしなくて良いし、何も考えなくて良い。かく言う私も、外来に出ると、そのあまりの忙しさから、風邪薬や、膀胱炎の薬など、ろくろく検査しないで、目の前にある約束処方のハンコをバンッと押して、はい、また来週。いうことが多くなってきた。反省しなくては。でも、その方が、薬をのまなくても治ることを説明するより何百倍も楽である。そして、患者さんもどれほど喜ぶことか。シビアに医学的適応を求めていくと、とても疲れるし、患者さんにも嫌われてしまう事が多いのだ。

invasion of YOKA-YOKA doctor

まったく、その手の医者、世の中に多いんです。いやいや、開業医だけでなくて、大学病院や、公立病院にも一人や二人はそういう医者がいるのですよ。まったく恐ろしい話しですが、事実です。

  そういう医者にかかると、患者さんはどうなるか?たいていは大丈夫なんですね。なぜなら、人間には自己治癒力が備わっている。だから、病院に自分で歩いて行って待合室で待たされて、また、自分で歩いて帰れるような人は、たいてい治ってしまうのです。良い例が、風邪です。あんなに熱が出てつらい病気なのに、病院に行かなくても、治ってしまう人が殆どでしょう。病院に行った人だって、別に病院に行って薬もらったから治った訳ではない。ただ、自分が治っただけです。

 結局、よかよか医者にかかろうが、葛根湯医者にかかろうが、(落ちこぼれ医者にかかろうが)結果は同じこと。ほとんどの場合は自然に治ってしまうのです。と、いうことは、どこの病院にかかろうが、結果はほとんど変わらないって事。本当かよぉ。本当です。

 ただし、重症の疾患になると、話しは別です。そうなると、本当に治療しないと治らない。で、よかよか医者にかかると、いつもの調子で、「よかよか」と、追い返されてしまうので、あとで、ますます重症になって、時にはとんでもないことになってしまうのです。

よかよか医者の恐怖

 上でも書いたように、大抵の日常の病気はよかよか医者だろうが、葛根湯医者だろうが、誰でも治せるのです。というか、治ってしまうのです。ただ、ほんの一握りの重症な病気になった場合に、よかよか医者にかかっていると、大変な事になってしまいます。じゃぁ、普通のときは別に何も弊害は無いじゃないかって?いえいえ、そう言う医者にかかったらいらない薬でも、いらない検査でも何でもかんでも出来る事はすべてやられてしまいます。まぁ、あなたが、それの方が病院に行った気がして安心感があるというのなら別ですが・・

 そして、よかよか医者はただ、自分の都合の良いようによかよかいっているだけですからもし、万が一自分の手におえないような病気でも、平気で引き伸ばせるところまで引き伸ばして自分の病院に通わせようとします。うっかりすれば、無用な処置をして、それから他院へ送るような事も平気でしますし、もっと能力が無ければ、そういうことをしているという事すら自分で気がついていません。(診断がつかない。)結局、患者離れの悪い医者(手に負えないと思っても他科や、他院に紹介しない医者)は、よかよかであるといえましょう。

 いづれにせよ、よかよか医者にかかっていれば、お金をかけるか、自分の命を賭けることになるのは必至です。

よかよか医者にご注意!!

よかよか医者の見分け方。

よかよか医者には以下のような特徴があります。

1.あなたが、要求すると、とにかく何もいわず、投薬や、検査を行う。

2.投薬や、検査について、説明しないか、もしくは、副作用や、合併症を言わない。

3.あなたの訴えに対して、きちんとした説明を行わない。診察所見の評価なども言わない。

4.治療方針について詳しく説明しない。いくつか考えられる治療があっても自分のやりた

 い治療の事しか説明しない。

5.治療法についても、副作用や、合併症についての説明が無い。

6.分からない事を分からないと認めない。

7.分からない事があっても調べてくれようとしない。

まぁ、医者だけでなく、どんな人に接するときもそうですけれど、都合の良い事ばかり言う人はいんちきだって事です。医学には、わからないことがたくさんあるし、薬には、副作用が、治療には合併症が必ずあるのです。それを隠しておこうとするなんざ、人を馬鹿にしているとしか考えられないでしょう。医者も万能ではないのですから、必ず分からない事もあるはずです。それを隠して知ったかぶりをしている医者なんて、いつかはぼろが出るものです。

 本当に、あなたの事を考えてくれる医者なら、分からない事は分からない事として、調べるなり、わかる先生に紹介してくれるなりしてくれるのが当然だと思いませんか?

 本当にあなたの事を考えてくれる先生なら、薬の副作用や、治療の合併症について、話してくれると思いませんか?

 あなたが、治療に不適切な事をしているならば、きちんと指摘してくれると思いませんか?

 やさしいだけの先生は、結局自分の人気だけを考えているのだという事をお忘れなく。

 あの、いんちき政治家だって、いんちき官僚だって、あの誘拐殺人犯だって、皆あんな良い人がねぇと、言われる時代なのです。やさしい事を言って、人をだますのは簡単な事なのですよ。もっとしっかり目を見開いて、本当にあなたの事を考えてくれる主治医を見つけて下さい。 

信言不美、美言不信

(真実の言葉は飾り気が無い。飾り立てた言葉は真実の言葉ではない。)

老子 第八十一章

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