舞姫・語注
- ○舞姫―踊り子。言葉自体は「五節(ごせち)の舞姫」等の古語がある。舞を舞う少女の意。
- ○中等室―中等の客室
- ○熾熱灯―白熱電灯。「アーク灯」とも。
- ◎いたづらなり―むだである
- ○骨牌―かるた、カード。
- ○残れる―残っている(者)
- ◎余一人のみなれば―私一人だけなのだから。
- ◎洋行―欧米に渡航、留学すること。
- ◎官命―公命、政府の命令。
- ◎かうむる―受ける
- ○セイゴン―サイゴン(現・ホーチミン市)
- ○紀行文―旅の記録を綴った文章。
- ◎幾千言をかなしけむ―何千という言葉を成し(書き記し)たことだろうか。
- ○もてはやされしかど―賞賛・喝采(かっさい)を受けたけれど、
- ◎放言―言いたい放題に言うこと。
- ◎さらぬも―そうでないものも、
- ◎尋常―普通
- ◎いかにか見けむ―どのように思ったことだろうか。
- ○こたび―今度(帰路に就いたこと)
- ○途に上る―(旅に)出かける
- ◎日記ものせむ―日記を書こう。
- ◎物学び―学問
- ○ニル・アドミラリイ―冷淡、恬澹(てんたん)虚無の態度。
- ◎気象―性質、気立て。
- ◎故―理由、わけ。
- ◎げに―本当に
- ◎なほ―まだ、依然として。
- ◎多かれ―《上の「こそ」と呼応して逆接の表現》多いけれども
- ◎浮き世のうきふし―世間の辛く苦しいこと
- ◎頼み難き―頼り(当て)にならないこと
- ◎言ふも更なり―言うまでもない。勿論だ。
- ◎我と我が心―ほかならぬ自分自身の心
- ○きのふの是はけふの非なる―考え方がすっかり変わってしまうことの漢文的表現。
- ◎誰にか見せむ―誰に見せようもない。
- ◎縁故―理由、いわれ。
- ○嗚呼―ああ!
- ○ブリンジイシイ―イタリア半島南端の港
- ○生面の客―初対面の乗客。
- ○微恙―軽い病気
- ◎ことよす―かこつける、言を託す。
- ○房―小部屋、船室。
- ◎恨み―悔恨、悲しみ。白居易の譚詩「長恨歌」(長き恨みの歌)の例などが思い合わされる。
- ◎腸日ごとに九廻す―断腸の悲しみ、惨痛。
- ○惨痛―激しい痛み
- ○鏡に映る影、声に応ずる響きのごとく―即応する意と思われる。
- ◎懐旧の情―昔を偲(しの)ぶ気持ち。懐旧は懐古に同じ。
- ◎銷す―消し去る、発散する。
- ◎ほかの恨みなりせば―もしもほかの愁いであったならば
- ◎なりなむ―きっとなることだろう。
- ○彫りつけられたれば―刻み込まれているので、
- ◎さはあらじ―そういうこともあるまい。
- ○房奴―給仕、ボーイ。
- ○電気線の鍵―電気のスイッチ
- ◎程もあるべければ―きっと時間もありそうなので、
- ◎いで―さあ
- ◎庭の訓―家庭教育。庭訓(ていきん)。
- ○受けしかひに―受けた甲斐があって、
- ○喪ひつれど―亡くしたが、
- ○旧藩の学館―藩の学校、藩黌(はんこう)。
- ○予備黌―大学予備門。東京大学予科(現・東大教養学部)。
- ○大学―東京大学
- ○一級の首―首席
- ○力になして―頼りとして
- ◎慰みけらし―安心したようだ。
- ○学士―大学卒業時に得る称号。
- ◎またなき名誉―またとない名誉
- ○出仕―仕官。官庁に勤務すること。
- ◎官長―上司(の官僚)
- ◎覚え殊なりしかば―信任も格別だったので、
- ◎我が名を成さむも―名誉を獲得することも
- ◎家を興す―家運を盛り立てる(こと)
- ○今ぞ―今(が好機)だ。
- ○さまで―それほど
- ◎来ぬ(きぬ)―やってきた。
- ◎模糊たる―漠然とした、ぼんやりした
- ◎功名の念―手柄を挙げて名誉を獲るという考え。
- ◎検束―みずからを引き締めること。束縛。
- ◎勉強力―無理にも努力する能力
- ◎立てり―立った。
- ◎なんらの〜ぞ―なんという〜だ!《感嘆の表現》
- ○光彩―輝き
- ○色沢―色つや
- ○菩提樹下―次の「ウンテル・デン・リンデン」の訳語。
- ○幽静なる境なるべく―いかにもひっそりとした所であるらしく
- ○大道髪のごとき―大通りがまっすぐに延びている
- ◎両辺なる―両側にある
- ○隊々の士女―男女のグループ
- ○街に臨める窓に倚りたまふ―街路に面した宮殿に住まわれた(「窓にもたれかかる」は比喩。)
- ○かほよき―顔かたちの美しい
- ○巴里まねび―パリの風を真似た
- ○かれもこれも―あれもこれも、どれもが
- ○土瀝青―アスファルト
- ◎音もせで―音も立てないで
- ◎楼閣―ビル
- ○噴井―噴水
- ○ブランデンブルク門―ベルリンの市門。ベルリンの東西を分けていた。門の上に勝利の女神像を頂く。
- ○半天―なかぞら。大空の真ん中。
- ○凱旋塔―戦勝記念塔。普仏戦争の勝利とドイツ統一(一八七一)を記念して建てられた。
- ○神女の像―勝利の女神像。
- ◎あまた―たくさん
- ◎目睫の間に聚まる―すぐ近くに密集している。「目睫」は眼とまつ毛。極めて近いものの喩え。
- ◎応接にいとまなき―(とても対応しきれないほど)景色が目まぐるしく移り変わる意。ここでは原義「対応しきれない」で訳す。
- ◎うべなり―もっともだ、当然だ。
- ○境―土地、境遇。ここでは前者の意。
- ○遊ぶ―他の土地を訪れて学ぶ。遊歴、遊学。
- ◎あだなる―はかなく移ろいやすい
- ◎心をば動かさじ―心を動かすまい。
- ◎我を襲ふ外物―自分を圧倒しようとする外界の事物(の印象)。すばらしい美観を指す。
- ○鈴索―綱を引くとベルが鳴る仕掛けか。
- ◎謁を通ず―身分の高い人を訪れ、名刺を差し出して面会を求めること。「刺を通ず」とも。
- ○東来の意―東洋からやってきた趣意。
- ◎手つづきだに事なく済みたらましかば―手続きさえ問題なく通過したなら。ここでは《反実仮想》の意は無い。
- ◎故里―故国
- ○かくは―これほども。
- ○学び得つる―学ぶ機会があったのか。疑問語の結びなので、完了「つ」の連体形となっている。
- ○官事―公務
- ○かねて―前もって
- ○公の許し―公式の許可
- ○ところの大学―現地の大学。フリードリヒ・ヴィルヘルム大学(現・ベルリン大学)を指す。
- ○簿冊―帳簿。ここは学籍簿。
- ◎さらぬ―そうでない(もの)
- ◎幾巻をかなしけむ―何巻を成したことだろうか。数え切れないという含意。
- ○思ひ計る―考慮する、予期・計画する。
- ○政治家になるべき特科―政治家になるための特別の講座
- ◎あるべうもあらず―あるはずもない。「あるべくもあらず」の音便形。
- ○これかかれか―あれか、これか。
- ◎講筵―講席。講義。
- ○つらなる―列席する。
- ○謝金―礼金。授業料。
- ○包む―包み隠す。
- ○好尚―好み。嗜好。
- ◎〜なるらむ―〜なのであろう。
- ○神童―非常に優れた知恵をもつ子ども。
- ◎所動的―受動的
- ◎当たりたればにや―当たったからであろうか。「にや(あらむ、ありけむ等)」は推測の表現(〜なのだろうか)。
- ◎やうやう―だんだん
- ○我ならぬ我―本当の自分ではない自分。偽りの自己。
- ◎攻むるに似たり―攻撃するかのようである。「似たり」は「ごとし」の意。比況の表現。
- ○雄飛―勢いよく活躍すること。「雌伏」の対語。
- ○よろしからず―適当でなく。ふさわしくなく。
- ○諳じて―暗誦して
- ◎獄を断ずる―訴えを裁く。裁決を下す。
- ◎思ふやう―思う(こと)には
- ◎なさんとやしけん―なそうとしたのではないか。「や」は疑問の係助詞。「けん(けむ)」は過去の推量。
- ◎なほ―まだ(しも)。それでもなお。
- ◎堪ふべけれど―(やろうと思えば)可能であるけれど。「堪ふ」は負荷に堪えられる意。
- ◎瑣々たる―こまごました。些末な。
- ◎いらへ―返事。返答。
- ◎かかづらふ―こだわる。拘泥する。
- ◎だに―〜さえ
- ○得たらんには―会得したときには
- ◎紛々たる―ごたごたと入り乱れた
- ◎破竹のごとくなり(ごとし)―(竹を筋にそって割るように)物事が一気に(勢いよく、スムーズに)運ぶこと。
- ◎広言しつ―放言した。
- ○よそにして―ほったらかして。なおざりにして。
- ◎やうやく―前出「やうやう」と同じ。だんだん。徐々に。
- ◎蔗を嚼む境に入る―だんだんに面白くなる。
「蔗境に入る」ともいう。サトウキビをかみしめて甘みを感ずるようになるというのが原義。
- ◎器械をこそ作らんとしたりけめ。―器械を作ろうとしたのであろうが。逆接の関係を含んで以下に続く。
- ○面もち―顔つき
- ◎いかでか喜ぶべき―どうして喜ぶはずがあろうか。反語の表現。
- ○なりけり―なのであった。詠嘆の表現。
- ◎猜疑―妬み疑う。
- ◎讒誣―無実のことを非難・中傷する。
- ◎なくてやは―ないことがあろうか。(あるのだ。)反語の表現。
- ◎かたくななり―融通が利かない。
- ○かつは嘲りかつは嫉み―一方では嘲り他方では嫉み。嘲ったり嫉んだり。
- ◎知らねばなり―知らないからだ。
- ◎故よし―いわれ。由来。
- ○処女―乙女。未婚のうら若くおとなしい女性。
- ◎長者―年長者や目上の人。
- ○よくしたる―うまくできた。
- ○勉強―文字通り「強いて勉める」意。精を出す。
- ○棄てて顧みぬ―放棄して気にもしない。
- ◎自ら我が手足を縛せしのみ―自分で自分を束縛していた(だけな)のだ。
- ◎有為の人物―将来役に立つ(前途有望の)人物。
- ○あっぱれ―すばらしい、大(たい)した。
- ○せきあへぬ―せきとめられない。こらえられない。
- ◎怪し―不思議だ。
- ◎なかなかに―かえって。むしろ。
- ◎さることなり―もっともなことだ。
- ◎おろかならずや―愚かではないのか。
- ◎ふびんなる―憐れむべき。困った。
- ○面―顔
- ○赫然たる―真っ赤に輝いた
- ◎珈琲店―酒場
- ○就く―付き従う。
- ○レエベマン―道楽者。
- ◎なければ―ないので。
- ○やう―方法。すべ。
- ◎これぞ―これ(こそ)が。「ぞ」は強意の係助詞。「なりける」に係る。
- ◎冤罪―無実の罪。
- ◎暫時―しばらく。わずかの間。
- ○無量の艱難―はかりしれない苦難。
- ◎閲する―経る。経験する。
- ◎媒―間接的な原因。誘因。
- ○獣苑(Tiergarten)―動物公園という名前の大きな公園。
- ○モンビシュウ街(Monbijou Strasse)の僑居―「僑居」は「仮の宿・旅宿」の意。
- ○クロステル巷(Kloster Strasse)―文字通りには「修道院(僧院)通り」作者鴎外の下宿があった。
- ○古寺―モデルはクロスター教会ともマリア(聖母)教会ともいわれる。
- ○木欄―木の手すり
- ○襦袢―肌着
- ○猶太教徒―ユダヤ教徒
- ○窖―穴倉、地下室。
- ◎恍惚―うっとりすること。我を忘れて見入る状態。
- ○倚る―寄りかかる
- ○被りし巾―被っている布。スカーフの類。
- ○なければ―ないので
- ◎写すべくもあらず―書き写すことができない。
- ○清らにて―美しく(ここでは「澄んだ」の意もあるか。)
- ◎目の―この「の」は同格の格助詞。
- ○宿せる―宿している
- ◎徹す―貫き通る。
- ○はからぬ―予期せぬ
- ○前後を顧みるいとまなく―冷静に物事を判断する余裕もなく
- ◎泣くにや―泣いているのだろうか。
- ◎憐憫の情―憐れみの心。同情。
- ○ところに―当地に
- ◎係累―(煩わしい)妻子や親類。
- ○外人―よそ者
- ◎黄なる面―黄色い顔。白人に対する黄色人種としての自意識を表す語。
- ◎うち守りしが―じっと見つめていたが
- ◎真率なる―偽りのない。正直で真面目な。
- ○色―顔色。表情。
- ○見ゆ―見える。思われる。
- ○恥なき人―恥しらず。
- ◎従はねば―従わないから
- ◎打ちき―打った。
- ◎葬らではかなはぬ―葬らないわけにはいかない。
- ◎だに―(否定語とともに)〜さえ(…ない)
- ○欷歔―すすり泣き
- ◎送り行かんに―送って行くから
- ◎な〜そ―〜してはいけない(軽い禁止表現)
- ○梯―階段
- ○老媼―老婆
- ○あららかに─乱暴に
- ○悪しき相─悪い人相
- ○額に印す─額にきざみつける。あきらかに認められる、くらいの意。
- ○獣綿─ウール地とも、毛皮ともいう。
- ○たて切りつ─閉めきった。
- ○油灯─ランプ
- ○漆もて─漆で
- ○仕立物師─洋服縫製業、裁縫業
- ○すぎぬ─亡くなった
- ○名なるべし─名前なのであろう。
- ○慇懃に─丁重に
- ○廚─台所。厨房。
- ○臥床─ベッド
- ○マンサルド(Mansarde)─屋根裏部屋
- ○梁─柱の上に張りわたして屋根を支える横木。
- ○立たば─立ったならば。「未然形+ば」の形。
- ○中央なる机─中央にある机。「なる」は存在の意。
- ○氈─敷物。ここではテーブル掛けを指す。
- ○陶瓶─陶製の花瓶
- ○そが傍ら─それのそば
- ○羞を帯びて─恥らいを帯びて。きまりわるそうに。はにかんで。(含羞の表情)
- ○潮す―きざす。恥じらう顔色をも表す。
- ○たをやかなる―しなやかである。
- ◎訛る―言葉の間違いがある。上流・中流市民の正しい言葉遣いでないところがあることを指しているか。
- ○なるべし―であろう。であるにちがいない。
- ○よも〜じ―けっして〜まい。「きっと〜しないように。」くらいの懇願か。
- ○知らでやおはさん―知らないことでいらっしゃいましょう。ご存じないでしょう。
- ○「ヴィクトリア」座(Viktoria Theater)―ウンテルデンリンデンの南方二qほどにあった二流劇場。
- ○座頭―支配人。
- ○抱へ―雇い人。
- ○事なく―問題なく。すんなりと。
- ○憂ひ―嘆き。悲しみ。
- ○言ひかけ―言いがかり。
- ◎還し参らせん―お返し申し上げます。謙譲語。
- ○よし(や)〜とも―たとえ〜でも。
- ◎媚態―こびる表情。
- ○かくし―ふところ。
- ○急をしのぐ―急場を乗り越える。とりあえず間に合わせる。
- ○取らすべきに―取らせようから。
- ○辞別―暇乞い。
- ◎悪因―悪因縁。不幸な巡り合わせ。
- ○ショオペンハウエル―同時代のドイツの厭世主義哲学者。はじめ「ハルトマン」(美学者)とあったのを作者が改訂したもの。
- ○シルレル―ドイツの古典主義の詩人・劇作家。
- ○ひねもす―終日。朝から晩まで。
- ○兀座―きちんとすわる。
- ◎名花―美しく立派な花。女優・芸妓の比喩にも用いる。
- ○咲かせてけり―咲かせたことであった。
- ○やうやく―だんだん
- ○繁くなりもてゆきて―頻繁になっていって
- ○速了―早合点すること。
- ◎色を漁する―漁色・猟色。色事にふける。
- ◎痴蠶―無邪気な。たわいもない。原義は「痴愚」。
- ○斥す―指さす。指摘する。
- ○はばかり―遠慮。
- ◎事を好む人―何か事あれかしと願うたちの人。
- ○さらぬだに―そうでなくてさえ。ただでさえ。
- ◎すこぶる―相当
- ◎岐路に走る―枝道に走る。横道に逸れる。
- ○御身(おんみ)―あなた
- ○路用―路銀。旅費。
- ○公の助け―国の助成。
- ○とやかう―あれこれ
- ○またなく―二つとなく
- ○妨ぐればなり―妨げるからである。
- ○清白―清廉潔白。
- ○つのり―(生徒の)募集。
- ○クルズス(Kursus)―講習。
- ○ハックレンデル―ドイツの小説家。「ヨーロッパの奴隷生活」(1854)に宮廷劇場の踊り子を現代の奴隷に擬しているという。
- ○つながれ―拘束を受けて
- ○温習―おさらい。練習。
- ○紅粉―べにとおしろい。
- ○親はらから―親兄弟
- ○いかにぞや―どうであろうか。
- ○賎しきかぎりなる業―賎業婦。「小芝居の舞妓といふものは、巴里(パリ)の方でいふ『ドミモンド』即ち上等の私娼の類が多い」(森鴎外「自作小説の材料」)
- ○〜とぞいふなる―〜という話だ。
- ○剛気―強い気性。
- ◎さすがに―それでもやはり。
- ○コルポルタアジュ(Colportage)―行商
- ◎趣味―面白み、味わい。美を知る能力。
- ○文―手紙
- ◎かかれば―こういうわけであるから
- ○不時―不意。突然。
- ○免官―免職。罷免。
- ○色を失ひつ―顔がまっ青になった。
- ○身の―自身の
- ○学資―学費・生活費。留学資金のことをいう。
- ○要なし―無用だ。必要ない。
- ◎愛づ―愛する。かわいがる。
- ◎危急存亡の秋(とき)―一身の大事に関わる重大な決断の瀬戸際。原義は、滅びるか存続するかの大事な時の意。
- ○怪しむ―不思議に思う。
- ○誹る―非難する。
- ◎数奇―不運。不幸。
- ○鬢の毛―顔の両側面の髪。耳の上の髪。
- ○解けて―ほどけて
- ◎いぢらしき―可憐な。痛々しい。
- ◎感慨―身に染みて深く感じること。物事に感じて嘆くこと。
- ◎恍惚―我を忘れる様。前にクロスター街の寺院を見て「恍惚」となった描写があった。
- ○いかにせむ―どうしようもない。
- ○命―運命
- ◎学成らずして―学問が成就しないで
- ◎浮かぶ瀬あらじ―不運から抜け出るチャンスはあるまい。
- ○手だて―方法。手段。
- ○官報―政府発行のニュース(新聞)。ここではその中の人事異動の記事などを指す。
- ○報道せしむる―報道させる
- ○午餐―昼食
- ○とかう―あれこれ
- ◎寄寓―一時的に人の家に身を寄せること。
- ○憂きが中にも―つらいことの中にあっても
- ○果つれば―終わると
- ○キョオニヒ街(Koenig Strasse)―クロスター街に直交する旧市街の大通り。
- ○休息所(Ruhestaette)―新聞縦覧所を兼ねた休憩室(コーナー)。
- ○引き窓―スライド式の窓。
- ○取引所―証券取引所
- ○小をんな―ウェイトレス。給仕の少女。
- ○一盞―一杯。「盞」は小さな杯(カップ)。
- ◎あきたる新聞の―「の」は同格の格助詞。「はさみたる」まで係る。
- ○かたへ―傍ら。側。
- ○何とか見けん―何と見た(思った)ことだろう。
- ○よぎりて―立ち寄って
- ○常ならず―ひときわ
- ◎なし得つべき―(いかにも)することができそうな。「つ」は強意。
- ◎荒みぬ―棄ててしまった。放り出してしまった。
- ○倚りて―もたれかかる。すわる。
- ○殊にて―異なっていて
- ◎活発々たる―生気に溢れ、勢いがよい。活気ある。「活溌溌地」から。
- ◎ビョルネ(Ludwig Boerne)―ドイツの作家。官憲の弾圧を逃れ、パリで政府批判を展開した。
- ◎ハイネ(Heinrich Heine)―ドイツの詩人・評論家。同じくパリに逃れ、諷刺的な時局批判を行なった。
- ○思ひを構へ―構想を練り
- ○仏得力三世―フレデリック(フリードリヒ)三世。父帝ヴィルヘルム一世とともに一八八八(明二一)年中に病没。
- ○崩萪―崩御
- ○新帝―ヴィルヘルム二世。
- ○ビスマルク侯―ヴィルヘルム一世時代以来のドイツの宰相。
- ○つまびらかなる―詳細な
- ○忙はし―忙しい。
- ○ひもとく―書物を開く。書を読む。
- ○旧業をたづぬ―昔の調べ物を続行する、くらいの意。
- ○難ければ―困難なので
- ○見識―物事を正しく見通し、判断する力。
- ○長じき―伸ばした。
- ○いかに―どのようであるか。
- ◎民間学―官学アカデミズムに対して、ジャーナリズムによる批評・研究の学問。在野の研究者による学問。
- ○流布―世間に広まる。ゆきわたる。
- ○若く―優る。
- ○高尚なる―高尚な(議論)。「高尚」は高潔・立派なさま。上品で程度の高いさま。
- ○繁く―足繁く。しきりに。
- ○一隻の眼孔もて―物事の本質を見抜く鋭い眼力で。「一隻眼」ともいう。
- ○綜括的―総合的
- ○おほかた―だいたいの者。たいていの者。
- ◎よくはえ読まぬ―十分に読めない。
- ○失(すき)―鋤。ここはスコップ。
- ○凸凹坎膃―道がでこぼこしていること。
- ○うがつ(穿つ)―貫く。
- ◎なかなかに―(打消語と呼応して)とても。とうてい。
- ○卒倒―意識を失って倒れる。
- ◎おぼつかなし―心許ない。不安だ。
- ○いかにせまし―どうしたらよかろう。「(もし)〜せば〜まし」で反実仮想の表現。ここは仮定表現。
- ○日曜なれば―日曜はユダヤ教・キリスト教の安息日。
- ○鉄炉―ストーブか。
- ○庖廚―台所。
- ○相沢が手―相沢の手跡(筆跡)。
- ○いぶかる―不審に思う。
- ○とみの(頓の)―急の
- ○天方大臣―伯爵という言葉でも登場する。明治二一年、政情視察のため渡欧した内務大臣山県有朋がモデルに擬せられる。また、鴎外の同窓賀古鶴所が秘書官として同行した。
- ○見まほし―会いたい。
- ◎よも―まさか(〜ないだろう)。
- ○思ひしならん―思ったのだろう。
- ○心になかけそ―「な〜そ」の禁止構文。
- ◎今よりこそ(行かめ。参らめ。)―今からすぐに(出かけよう)。
- ◎かくは心を用ゐじ―ここまで配慮するまい。
- ◎まみえもやせん―拝謁することもあろうか。
- ○思へばならん―思ったからだろう。
- ○病をつとめて―病気を押して。
- ○上襦袢―シャツか。「襦袢」は肌着。
- ○ゲエロック(Gehrock)―フロックコート。男子の礼装。
- ○襟飾り―ネクタイか。
- ○手づから―自分の手で
- ○誰もえ言はじ―誰も言うことはできないでしょう。
- ◎不興なる―不機嫌な
- ◎容を改めて―改まった様子になって
- ◎よしや〜とも―たとえ〜でも(としても)
- ○幾年をか経ぬるを―何年か経ったことだろうに。
- ◎友にこそ逢ひには行け―ほかならぬ友人に逢いに行くのだ。
- ○ドロシュケ(Droschke)―一頭立ての辻馬車(二輪馬車)。
- ◎朔風―北風。後で太田の顔に吹きつける北風の働きにも注意する。
- ○カイゼルホオフ(Kaiserhof)―「王宮」。ベルリンの高級ホテル。
- ○門者―ドア・ボーイ。
- ○プリュッシュ(Pluesch)―ビロード状の綿・絹織物。
- ○ゾファ(Sofa)―ソファ
- ○前房(Nebenzimmer)―控えの間。
- ◎踟樶―躊躇。ためらうこと。
- ◎品行の方正なる―身持ちが正しく、きちんとしている。品行方正。
- ◎失行―不始末。過ち。
- ○さまで―それほど
- ○意に介せざりき―気にかけなかった
- ○情―事情。事実。
- ○細叙―詳しく述べる。
- ○謁する―拝謁(謁見)する。お目にかかる。
- ○委托―事務処理を依頼する。
- ○答へき―答えた。
- ○生路―人生行路。閲歴。
- ○平滑―平坦で順調。
- ◎轗軻数奇―不遇・不運。
- ◎胸臆を開く―胸襟を開く。心を開く。
- ◎閲歴―過去の経歴。過ぎ去ったことども。
- ○譴める―責任を問う。叱る。
- ○凡庸なる―平凡な
- ○諸生輩―留学生仲間のやつら
- ◎色を正す―厳しい顔つきになる。
- ○諫むるやう―忠告することには
- ○かひなし―しかたがない。むだである。
- ◎かかづらふ―かかわりあう。こだわる。
- ◎成心―先入観
- ◎曲庇―道理を曲げて人をかばう。
- ○朋友―友人
- ○薦む―推薦する。
- ◎情交―親しい交際。男女の交際。
- ○人材―才能(ある人物)。
- ◎慣習―慣れ親しむこと。ならわし。
- ○方鍼―方針。進路。
- ◎往きつきぬとも―必ず行き着くものとも。「ぬ」は強意(確述)の助動詞。
- ◎中心―衷心。本心。
- ○思ひ定む―決心する。
- ◎しばらく(姑く)―一時的に。仮に。とりあえず。
- ◎情縁―恋愛関係
- ○失はじ―失うまい。
- ○抗抵―抵抗。あらがうこと。
- ○え対へぬ―応答することができない。
- ○撲てり―たたきつけた。吹きつけた。
- ○玻璃―ガラス
- ○ことさらに―格別に
- ◎膚粟立つ―鳥肌が立つ。
- ◎故郷―ここでは故国(日本)。
- ○失錯―過ち。しくじり。
- ○来べきか―来るだろうか。
- ◎いかで―どうして。次の打消表現「従はざらむ」と呼応して、反語の意を表している。「どうして従わないことがあるだろうか。いや、必ず従う。」という意。
- ○頼む―頼る。頼りに思う。
- ○卒然―にわかに。
- ○答への範囲―答えの及ぶ範囲。
- ◎うべなふ―承諾する。
- ○代―代金
- ○賜りし―いただいた(もの)
- ○これにて―これ(この金)で
- ○費―費用。生活費。
- ◎支へつべし―きっと保つことができるにちがいない。
- ○常ならぬ身―身重であること。
- ◎心づかでありけん―気づかなかったというわけなのだろう。「けん」は、理由を表す言葉を伴って、原因推量を表す。
- ○籍を除きぬ―(劇団から)除名した。
- ◎言ひおこせつ―言ってきた。「言ひやりつ」の反意語。
- ○故あればなるべし―理由があるからであろう。
- ○いたく―甚しく。
- ○鉄路―鉄道
- ○用意とてもなし―用意というほどのものもない。
- ○ゴタ(Gotha)版―ゴタで出版された
- ○魯廷―ロシアの宮廷。
- ○貴族譜―貴紳録。縉紳録。
- ○物憂かるべく―つらい。苦しい。
- ○うしろめたかるべければ―気がかりだろうから。
- ◎知る人がり―(彼らの)知人のもとへ。
- ○何事をか叙すべき。―とくに書き記すべきほどのことは何もない。
- ○舌人―通訳。
- ○拉し去りて―連れ去って
- ◎青雲―名望。高い地位。出世街道。
- ○ペエテルブルク(Petersburug)―帝政ロシアの首都。レニングラード。
- ○囲繞―取り囲む。
- ○驕奢―おごりと贅沢。
- ○粧飾―美しい化粧と装い。
- ○黄蝋の燭―はぜ(黄櫨)から採った蝋で作る蝋燭。
- ○エポレット(Epaulette)―肩章。
- ○映射―照り映える。
- ○彫鏤の工―彫刻の技巧
- ○カミン(Kamin)―壁式暖炉。
- ○賓主―賓客と主人側。
- ○周旋―取り持つ。世話する。
- ○事を弁ずる―用を果たす。
- ○文―手紙
- ○え忘れざりき。―忘れることができなかった。
- ○心憂さ―つらさ
- ○物語し―世間話をして
- ○なほ―まだ。依然として。
- ○かかる思ひ―このような思い
- ○生計―生活手段。
- ○ほど経て―しばらくして
- ○今ぞ知りぬる。―今こそ思い知りました。
- ○族―親族。親戚。血縁者。
- ○〜ことやはある。―〜ことがあるだろうか(いや、決してない)。「やは」は反語を表す。
- ○我が愛もて―私の愛情で
- ○つなぎ留めではやまじ。―つなぎとめないではすまさない。
- ○かなはで―できずに
- ○かほどに―これほど
- ○路用―旅費。路銀。
- ○世に出づ―出世する。
- ○日をこそ待ため。―日を待つことにしよう。
- ○日にけに―日増しに。
- ○袂を分かつ―別れる。
- ○苦艱―つらさ。悩み。
- ◎迷ひなりけり。―心の迷いでなのあった。「けり」は〈気づき〉の用法。
- ○しるくなれる―著しく目立つようになった(こと)
- ○それさへあるに―それだけでもどうかと思うのに
- ◎ゆめ―決して。禁止・打消の語と呼応する。
- ○過ぎしころには似で―以前には似ないで
- ◎思ひ定む―決意する。
- ○心折れぬ。―我を折った。
- ○わが―私が
- ○ステッチン(Stettin)―ベルリン郊外の町。
- ○言ふなる―言うそうである。
- ◎ともかくもなりなん。―(きっと)どうにでもなるだろう。
- ○地位―ここでは「置かれた立場」の意。
- ○明視―はっきり見つめる。認識する。
- ◎順境・逆境―物事がうまく行っている境遇と不運で苦労の多い境遇。
- ◎胸中の鏡―心の中(判断力、知恵など)を指す比喩。「明鏡止水」などのたとえを踏まえる。
- ○厚し―手篤い。
- ◎職分―職務の役割。
- ○神も知るらむ―神もご照覧あれ。神に誓って。
- ○冷然たり―冷ややかである。
- ○屋上の禽―(Turmhahnか。)風見鶏のことか。
- ○ごとくなり―ようだ
- ○かくてあらば―こうしていられたならば
- ○かく―このように
- ○公事―公務
- ○告げやしけん。―告げてしまったのではないか。
- ◎本領―持ち前の特色。本来の特質。
- ◎解くに由なし―ほどくすべがない。
- ○あなあはれ―ああ悲しい。
- ○あたかもこれ―ちょうど(すなわち)
- ○旦―朝。明け方。
- ○駆りつ―走らせた。
- ○除夜に眠らず―大晦日を騒ぎ明かすヨーロッパの風習を指す。「除夜」は大晦日。
- ○習ひ―習慣。慣習。
- ○寂然たり―ひっそりと静まりかえっている。
- ○稜角―とがった角。
- ○馭丁―御者。
- ○カバン―鞄の読み方は中国語起原と言われるが、当時外来語の感覚であったか。
- ○何やらむ―なにやら(何であろうか)。
- ◎絶えなんを―必ず絶えてしまったことでしょう。「な(ぬ)」は強意の用法。
- ○ただ―ほんの
- ◎一刹那―一瞬の間。束の間。刹那は梵語。
- ◎低徊―元来、「うなだれて行きつ戻りつする」「考え事に耽りながらふらふらする」意。ここでは、迷いためらうことを指す。
- ○倚る―寄りかかる。もたれる。
- ○幾階か―何階へ。「か」は疑問の係助詞。
- ○鑼―どら(銅鑼)。
- ○いち早く―すばやく。さっさと。性急に。
- ○ねぎらふ―労苦に報う。
- ○伴ふ―連れて行く。
- ○一瞥―一目見る。
- ○レエス―レース編みの布。
- ○何とか見たまふ―何とご覧になりますか。
- ○心がまへ―用意。準備。
- ○襁褓―産着。おしめ。
- ○黒きひとみをや持ちたらん―黒い瞳をもっていることでしょうか。
- ◎正しき心にて―その正しい心で
- ◎あだし名―他の姓名。別れることに対するエリスの危惧を暗示する。
- ◎をさなし―幼稚だ。愚かだ。他愛ない。
- ◎寺に入らん日―洗礼を受けさせるために教会に行く日。
- ○いかに―どんなに
- ○嬉しからまし―嬉しいことでしょう。「まし」は推量。
- ○おはさん―おありだろう(か)。
- ○あへて―進んで。
- ○使ひして―使者をたてて
- ◎めでたく―立派で
- ◎わが測り知るところならね―(上の係助詞「こそ」と呼応して)私が推測できることではないが。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。逆接の関係で以下に続く。
- ○滞留―長く滞在する。
- ○さることなし―そういうことはない。
- ○落ち居たり―安心した。
- ◎気色―様子。顔色。
- ○辞む―断わる。否定する。
- ◎あなや―ああ、しまった。
- ○この手にしも―まさにこの手づるに。「しも」は強意。
- ○ひきかへさん道―取り戻す方法
- ○広漠たる―果てしなく広い
- ○念―思い
- ◎心頭を衝いて―心を突き上げて。衝動的に。
- ◎特操―他に左右されないしっかりした意志。独立不羈の精神。
- ◎承りはべり―かしこまりました。
- ○黒がね―鉄。「黒がねの額」で鉄面皮(厚顔無恥)の意。
- ○何とか言はん―何と言ったらいいのだろう。
- ○錯乱―乱れ。混乱。動揺。
- ○叱せられ―叱られ。どなられ。
- ○榻―長椅子。腰掛け。ベンチ。字音は「とう」。
- ◎灼く―真っ赤に焼く。焼けつく。本文は灼熱の解字。
- ○椎―木槌。
- ○もたす―もたせかける。寄りかからせる。
- ○骨に徹す―骨身にしみとおる。
- ○モハビット(Mohabit)―ベルリン西北の地名。
- ○カルル街(Karlstrasse)―ベルリン市内の街路。
- ○鉄道馬車―路面電車のレールのような軌道の上を走る馬車。
- ○ブランデンブルゲル門―前出「ブランデンブルク門」に同じ。
- ○瓦斯灯―ガス灯
- ○半夜―夜半。真夜中。
- ○酒家―酒場。
- ○賑はしかりしならめど―賑やかだったことであろうが。
- ○ふつに―まったく(〜ない)。
- ◎炯然たる―光り輝いている。
- ○一星の火―一点の火。
- ○鷺のごとき―白鷺の羽のような(真っ白な)
- ○いかにかしたまひし―どうなさったのですか。
- ◎うべなりけり―もっともなことだ。
- ○蒼然として―真っ青になって
- ○おどろと―乱れて(蓬髪の形容)。
- ○をののかれて―自然に震えがきて。「れ(る)」は自発の助動詞。
- ○立つに堪へねば―立つことができないので。
- ○人事を知る―意識を取り戻す。
- ○ねんごろに―心をこめて。手篤く。
- ○顛末―一部始終
- ○つばらに―詳しく
- ○侍する―そばに仕える。付き添う。
- ○いたく―たいへん
- ○頬は落ちたり―肉が落ちて頬がこけていた。
- ○窮せざりし―困らなかった
- ○聞こえあげし―申し上げた、の意か。
- ○一諾―ひとたび承知したこと。
- ○さながら―まるで
- ○豊太郎ぬし―豊太郎さん。豊太郎様。
- ◎かくまでに―これほどまでに
- ○なげうちしが―投げ捨てたが。放り出したが。
- ○探り見る―手で探って見る。
- ○廃して―廃止する。
- ○痴―愚か
- ○過劇なる―激しい
- ○心労―気苦労。心配。
- ◎パラノイア(Paranoia)―偏執症。分裂病の症状の一つで、「失神」「痴呆」などという訳語を当てられていた。初出(明二三・一「国民の友」)には「ブリヨードジン」(Bloedsinn 「白痴」)とある。
- ○治癒―病気が治ること。
- ○ダルドルフ(Dalldorf)―ベルリン北郊の町。
- ◎癲狂院―精神病院
- ○聴かず―言うことをきかない。聞き入れない。
- ○離れねど―離れないけれども
- ○これさへ―これとても
- ○癒えぬ―治った。
- ○千行の涙―幾筋にもなって流れ落ちる涙。涙にかきくれる様子を表す。
- ○はかりて(諮りて・議りて)―相談して
- ○また得難かるべし―二人とは得られないであろう。
- ○脳裡―脳裏。頭の中。心の中。
- ◎残れりけり―残っていることである。「けり」は詠嘆の意。