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萬葉集 卷第一


(佐伯常麿 校註『萬葉集』全
校註國歌大系2〕 國民圖書株式會社 1931.1.30
※ 歌番を施したほか、検索のため原本での読み方を別個に記した。
※ 清濁は原本のまま。句の読み方の相違は原歌中に仮名で注記した。
その際、澤瀉久孝『萬葉集注釋』(1957- 中央公論社)を参照した。
(* )は、入力者の注記。

 巻1  巻2  巻3  巻4  巻5  巻6  巻7  巻8  巻9  巻10  巻11  巻12  巻13  巻14  巻15  巻16  巻17  巻18  巻19  巻20
 〈TOP〉  雑歌  泊瀬朝倉宮御宇天皇代  高市崗本宮御宇天皇代  明日香川原宮御宇天皇代  後崗本宮御宇天皇代  近江大津宮御宇天皇代  明日香清御原宮御宇天皇代  藤原宮御宇天皇代  寧楽宮御宇天皇代
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雜歌くさ\〃/のうた〔ざふか〕

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泊瀬朝倉宮御宇あめのしたしろしめしし〔みよしらしめしし〕天皇代すめらみことのみよ (雄畧天皇〔大泊瀬稚武(わかたけの)天皇〕

天皇御製歌みよみませるおほみうた〔すめらみことのおほみうた〕
 
0001
籠もよ(*「もよ」は係助詞「も」+間投助詞「よ」。詠嘆の意を表す。) み籠持ち(*「み」は美称として用いる接頭語。) 堀串もよ み堀串持ち この岳に 菜摘ます兒(*「す」は、軽い尊敬の助動詞。次の「告らせ」「告らさね」の「せ」「さ」も同じ。)(*【生活・人事】菜摘:若菜摘) 家告らせ 名告らさね 虚みつ[枕詞] 大和の國は おしなべて 吾これ(*こそ)居れ〔われこそをれ〕 敷きなべて 吾こそ座せ(*自敬表現) 我をこそ 背とは告らめ〔わにこそはのらめ〕 家をも名をも(*【生活・人事】名告:)
こもよ みこもち ふぐしもよ みふぐしもち このをかに なつますこ いへのらせ なのらさね そらみつ やまとのくには おしなべて あれこそをれ しきなべて あれこそませ あをこそ せとのらめ いへをもなをも

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高市崗本宮〔高市岡本宮〕御宇天皇代 (舒明天皇〔息長足日廣額(おきながたらしひひろぬかの)天皇〕

天皇の香具山に登りまして國見〔望國(くにみ)〕し給へる時に御製歌
 
0002
大和には 羣山あれど 取りよろふ(*「美しく装う・すべて備わる・都に近寄って位置する」等の解あり。) 天の香具山 登り立ち 國見をすれば(*【生活・人事】国見:) 國原は 煙立ち立つ(*強調表現) 海原は 鴎立ち立つ(*【鳥獣虫魚】鴎(かまめ):かもめ) ■(立心偏+可::〈国字〉おもしろい:大漢和65167)怜し國ぞ(*「うまし」は形容詞〔シク活用〕の語幹とも終止形ともいう。「怜■(立心偏+可::〈国字〉おもしろい:大漢和65167)し国」は「よい国・立派な国」の意。)(*「ぞ」は多く清音。指定・強調の終助詞。) 秋津島[枕詞] 大和の國は
やまとには むらやまあれど とりよろふ あめのかぐやま のぼりたち くにみをすれば くにはらは けぶりたちたつ うなばらは かまめたちたつ うましくにぞ あきづしま やまとのくには
天皇の内野うちのぬ〔うちの〕御遊獵みかり〔遊■(獣偏+葛:かつ::大漢和20723)〕し給へる時、中皇命なかちひめみこ〔なかつすめらみこと〕の間人連老をして獻らせ給ふ歌
 
0003
八隅知し[枕詞] わが大王の 朝には とり撫でたまひ 夕には い倚り立たしし(*「い」は接頭語。「倚る」は「寄りかかる」意。) 御執らしの(*「す」は、軽い尊敬の助動詞。) 梓の弓の(*【植物】梓(あづさ):夜糞峰榛) 鳴り弭の〔なかはずの〕 音すなり(*「中弭」は矢の筈を入れる弦の部分。「鳴り弭」は針金で音を出す仕組み。「金弭」(金属製の弭)とも。) 朝獵に 今立たすらし(*根拠推定の助動詞「らし」) 夕獵に 今立たすらし(*【生活・人事】狩猟:) 御執らしの 梓の弓の 鳴り弭の〔なかはずの〕 音すなり
やすみしし わがおほぎみの あしたには とりなでたまひ ゆふべには いよりたたしし みとらしの あづさのゆみの なりはずの おとすなり あさがりに いまたたすらし ゆふがりに いまたたすらし みとらしの あづさのゆみの なりはずの おとすなり
反歌かへしうた〔はんか〕
 
0004
たまきはる[枕詞] 宇智の大野に〔うちのおほのに〕 馬列めて(*【鳥獣虫魚】馬(うま):馬) 朝蹈ますらむ その草深野〔そのくさふかの〕
たまきはる うちのおほぬに うまなめて あさふますらむ そのくさふかぬ
讚岐國安益郡あやのこほりいでませる時、軍王いくさのおほぎみの山を見て詠み給へる歌
 
0005
霞立つ 長き春日の 暮れにける 分(*語義未詳。区別・状態とも。)もしらず むらぎもの[枕詞] 心を痛み 奴要子鳥(*【鳥獣虫魚】■(空+鳥:こう::47034)子鳥(ぬえこどり):虎鶫)[枕詞] うら歎居れば〔うらなきをれば〕 玉襷[枕詞] 懸けのよろしく(*言葉に表すにふさわしく) 遠つ神[枕詞] わが大王の 行幸の(*【生活・人事】行幸:) 山越しの風の〔やまこすかぜの〕(*【天象・気象】山越しの風:) 獨り居る 吾が衣手に〔わがころもでに〕 朝夕に 還らひ(*袖が翻る)ぬれば 丈夫と 思へる吾も〔おもへるわれも〕 草枕[枕詞] 旅にしあれば 思ひ遣る 爲方を知らに(*上代の打消の助動詞。主に連用修飾法で用いる。) 綱の浦の〔あみのうらの〕 海處女らが 燒く鹽の(*【生活・人事】塩焼:) 念ひぞ(*係助詞「ぞ」は上代には多く清音で用いる。)燒くる 吾が下ごゝろ
かすみたつ ながきはるびの くれにける わづきもしらず むらぎもの こころをいたみ ぬえこどり うらなげをれば たまだすき かけのよろしく とほつかみ わがおほぎみの いでましの やまこしのかぜの ひとりをる あがころもでに あさよひに かへらひぬれば ますらをと おもへるあれも くさまくら たびにしあれば おもひやる たづきをしらに つなのうらの あまをとめらが やくしほの おもひぞやくる わがしたごころ
反歌
 
0006
山越しの 風を時じみ(*形容詞・形容動詞の語幹に付いて原因・理由を表す。接尾語や助詞などという。) 寐る夜おちず 家なる妹を かけて慕びつ〔かけてしのひつ〕
やまこしの かぜをときじみ ぬるよおちず いへなるいもを かけてしぬびつ
〔右檢日本書紀無幸於讃岐國。亦軍王未詳也。但山上憶良大夫類聚歌林曰、記曰、天皇十一年己亥冬十二月己巳朔壬午、幸伊豫温湯宮云々、一書云、是時宮前在二樹木、此之二樹斑鳩比米二鳥大集、時勅多挂稻穗而養之、仍作歌云々。若疑從此便幸之歟。〕

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明日香川原宮御宇天皇代 (皇極天皇〔天豐財重日足姫(あめとよたからいかしひたらしひめの)天皇〕

額田王ぬかたのおほぎみの歌 〔未詳〕
 
0007
秋の野の〔あきののの〕 み草刈り葺き(*「御草」は薄・萱の類=「真草」) 宿れりし 兎道の宮所の 假廬し思ほゆ(*【生活・人事】仮廬:)
あきのぬの みくさかりふき やどれりし うぢのみやこの かりいほしおもほゆ
〔右檢山上憶良大夫類聚歌林曰、一書戊申年幸比良宮大御歌、但紀曰、五年春正月己卯朔辛巳天皇至自紀温湯、三月戊寅天皇幸吉野宮而肆宴焉(とよのあかりきこしめす)、庚辰日天皇幸近江之平之浦。〕

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後崗本宮〔後岡本宮〕御宇天皇代 (齋明天皇〔天豐財重日足姫天皇位後即位後岡本宮〕

額田王の歌
 
0008
(就/火:::大漢和に無し)田津に 船乘りせむと(*【生活・人事】船乗り:) 月待てば 潮もかなひぬ 今は榜ぎてな〔いまはこぎいでな(*「な」は意志・願望を表す上代の終助詞。「てな」の用例は、10を参照。)
にぎたづに ふなのりせむと つきまてば しほもかなひぬ いまはこぎてな
〔右檢山上憶良大夫類聚歌林曰、飛鳥岡本宮御宇天皇(*舒明天皇)元年己丑九年丁酉十二月己巳朔壬午、天皇・大后幸于伊豫湯宮、後岡本宮馭宇天皇七年辛酉春正月丁酉朔丙寅、御船西征始就于海路、庚戌御船泊于伊豫熟田津石湯行宮、天皇御覽昔日猶存之物當時忽起感愛之情、所以因製歌詠爲之哀傷也。即此歌者天皇御製焉。但額田王歌者別有四首。〕
紀の温泉いでませる時、額田王の作れる歌
 
0009
御室の 山見つゝ行け〔しづまりし(莫囂圓隣之) うらなみさわく(大相七兄爪湯氣) 〕 吾が背子が い立たしけむ〔いたたせりけむ〕 嚴橿が本(*「いつ」は、忌み清められた、神聖なこと。=「斎(ゆ)つ」)(*【植物】橿(かし):樫=アラカシ・シラカシの類)
みもろの やまみつつゆけ わがせこが いたたしけむ いづかしがもと
中皇命の紀伊温泉ませる時の
 
0010
君が代も 我が代も知らむ〔わがよもしるや〕 磐代の 岡の草根を(*「草根」は「萱」の意。)(*【植物】萱(かや):薄・茅・菅の類) いざ結びてな(*完了の助動詞「つ」+意志・願望の終助詞「な」)(*【生活・人事】草結び:)
きみがよも わがよもしらむ いはしろの おかのかやねを いざむすびてな
 
 
0011
吾が背子は 假廬作らす(*【生活・人事】仮廬:) 草なくば 小松が下の〔こまつがしたの〕(*【植物】小松:若松) 草を刈らさね(*誂えの意を表す上代の終助詞。)
わがせこは かりほつくらす かやなくば こまつがもとの かやをからさね
 
 
0012
吾が欲りし〔わがほりし〕 子島は見しを〔のじまはみせつ〕 底ふかき 阿胡禰の浦の 珠ぞ拾はぬ(*「ひりふ」は「拾ふ」の古形。)(*【鳥獣虫魚】珠(たま):真珠) 〔或頭云 吾欲 子嶋羽見遠(わがほりし こしまはみしを)〕
あがほりし こじまはみしを そこふかき あこねのうらの たまぞひりはぬ
〔右檢山上憶良大夫類聚歌林曰、天皇御製歌云々。〕
中大兄なかちおほえ〔なかつおほえ〕〔近江宮御宇天皇〕三山みつやまの御歌
 
0013
香具山は 畝火を愛しと〔うねびををし(雄々し)と〕 耳梨と 相爭ひき(*「き」は過去の事実について確定的に表現する助動詞。擬人法。) 神代より 斯くなるらし いにしへも 然なれこそ 現身も 嬬を 相爭ふらしき(*根拠推定の助動詞「らし」)(*【生活・人事】妻争い:)
かぐやまは うねびをえしと みみなしと あひあらそひき かみよより かくなるらし いにしへも しかなれこそ うつせみも つまを あらそふらしき
反歌
 
0014
香具山と 耳梨山と 會戰し(*「あふ」は争う・戦う意。)時 立ちて見に來し(*「き」は過去の事実について確定的に表現する助動詞。) 印南國原(*【生活・人事】神話・伝説:)
かぐやまと みみなしやまと あひしとき たちてみにこし いなみくにはら
 
 
0015
渡津海の 豐旗雲に(*【天象・気象】豊旗雲:美しく、旗のように靡く雲) 入日さし 今夜の月夜 清く照りこそ〔まさやかにこそ(清明己曾)〕(*「こそ」は誂えの意を表す上代の終助詞。連用形に接続。)
わたつみの とよはたぐもに いりひさし こよひのつくよ きよくてりこそ
〔右一首歌今案不似反歌。但舊本以此歌載於反歌。故今猶載此次。亦紀曰、天豐財重日足姫天皇、先四年乙巳、立天皇爲皇太子。〕

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近江大津宮御宇天皇代 (天智天皇〔天命開別(あめのみことひらかすわけ)天皇〕

天皇の内大臣うちのおほまへつぎみ藤原朝臣あそみ(鎌足)に詔して、春山の萬花のいろ、秋山の黄葉もみぢにほひあらそはしめ給ふ〔競ひて…憐む〕時、額田王の歌を以ちてことわり給へる其の歌
 
0016
冬ごもり[枕詞] 春さり來れば(*「さる」はその時節になる意。) 鳴かざりし 鳥も來鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど(*「れ」は完了の助動詞「り」。) 山を茂み 入りても聞かず〔いりてもとらず〕 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉づ(*古くは「黄葉つ」。四段活用。)をば〔もみちをば〕 取りてぞ賞ぶ〔とりてぞしのふ〕 青きをば 置きてぞ歎く そこし怜し〔そこしうらめし(*感慨が深い。) 秋山吾は〔あきやまわれは〕(*【生活・人事】紅葉狩:)
ふゆごもり はるさりくれば なかざりし とりもきなきぬ さかざりし はなもさけれど やまをしげみ いりてもきかず くさふかみ とりてもみず あきやまの このはをみては もみづをば とりてぞしぬぶ あをきをば おきてぞなげく そこしたぬし あきやまあれは
額田王の近江國に下り給へる時詠み給へる歌〔作歌〕 〔井戸王即和歌〕
 
0017
味酒[枕詞] 三輪の山 青丹よし[枕詞] 奈良の山の 山の際ゆ〔やまのまに〕(*「ゆ」は場所・経由点を表す上代の格助詞。) い隱るまで(*「い」は接頭語。) 道の隈 い積るまでに つばらかに〔つばらにも〕 見つゝ行かむを しば\〃/も 見放かむ山を〔みさけむやまを〕(*「見放く」は「見はるかす」意。下二段活用。) 情なく 雲の 隱さふ(*「ふ」は継続・反復・進行を表す上代の助動詞。)べしや
うまさけ みわのやま あをによし ならのやまの やまのまゆ いかくるまで みちのくま いつもるまでに つばらかに みつつゆかむを しばしばも みさかむやまを こころなく くもの かくさふべしや
反歌
 
0018
三輪山を しかも隱すか 雲だにも 情あらなむ〔こころあらなも〕 隱さふべしや
みわやまを しかもかくすか くもだにも こころあらなむ かくさふべしや
〔右二首歌山上憶良大夫類聚歌林曰、遷都近江國時、御覽三輪山御歌焉。日本書紀曰、六年丙寅春三月辛酉朔乙卯、遷都于近江。〕
井戸王ゐとのおほぎみの即ち和へ給へる歌 〔−〕
 
0019
綜麻形の 林の岬の さ野榛の〔さのはりの〕(*【植物】さ野榛:野の榛、野萩とも。) 衣に著くなす(*「なす」は比況を表す接尾語。体言・連体形に接続。) 眼に著くわが背
へそがたの はやしのさきの さぬはりの きぬにつくなす めにつくわがせ
〔右一首歌、今按〔案〕不似和歌。但舊本載于此次。故以猶載焉。〕
天皇の蒲生野に御遊獵〔遊■(獣偏+葛:かつ::大漢和20723)〕し給へる時、額田王の詠み給へる歌〔作歌〕
 
0020
あかねさす[枕詞] 紫野行き〔むらさきのゆき〕(*【植物】紫:紫) 標野行き〔しめのゆき〕 野守は見ずや〔のもりはみずや〕(*【生活・人事】野守:野の番人) 君が袖振る
あかねさす むらさきぬゆき しめぬゆき ぬもりはみずや きみがそでふる
皇太子ひつぎのみこ(大海人皇子)の答へませる御歌 〔皇太子答御歌 明日香宮御宇天皇〕
 
0021
紫草の(*【植物】紫草:紫)[枕詞] 艷へる妹を(*「を」は格助詞とも間投助詞ともいう。) 惡くあらば 人嬬ゆゑに(*「ゆゑに」は順接・逆接を表す連語。) 吾戀ひめやも〔われこひめやも〕
むらさきの にほへるいもを にくくあらば ひとづまゆゑに あれこひめやも
〔紀曰、天皇七年丁卯夏五月五日縱■(獣偏+葛:かつ::大漢和20723)於蒲生野、于時大皇弟諸王内臣及群臣皆悉從焉。〕

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明日香清御原宮御宇天皇代〔明日香清御原宮天皇代 天渟中原瀛眞人(あまのぬなはらおきまひと)天皇(*天武天皇)

十市とほち〔とをち〕皇女の伊勢神宮いせのおほみかみのみやまゐ(*「まゐづ」は出かける・参上する意。)給へる時、波多の横山のいはほを見て吹黄ふきの刀自が詠める歌
 
0022
河の上の 五百箇磐羣に(*「斎つ」は、忌み清められた、神聖なこと。=「いつ」) 草生さず(*序詞的用法) 常にもがもな 常處女にて(*「にて」の「に」は断定の助動詞。)
かはのへの ゆついはむらに くさむさず つねにもがもな とこをとめにて
〔吹黄刀自未詳也。但紀曰、天皇四年乙亥春二月乙亥朔丁亥十市皇女・阿閇皇女參赴於伊勢神宮。〕
麻續王をみのおほぎみ(*麻績王)の伊勢國伊良虞いらごの島にはなたへ給ひし時、時人よのひと哀傷かなしみ詠める歌〔哀傷作歌〕
 
0023
うつそを〔うちそを〕[枕詞] 麻續王 白水郎なれや(*「なれや」は「なれば(に)や」の意。「・・・だから〜なのか(・・・ではないのに)」の意。)(*【生活・人事】白水郎:漁夫) 伊良虞が島の〔いらごのしまの〕 珠藻刈ります(*「ます」は継続の意を含む尊敬の補助動詞。)(*【植物】珠藻:美しい海草)
うつそを をみのおほぎみ あまなれや いらごがしまの たまもかります
麻續王の此の歌を聞かし(*「す」は、軽い尊敬の助動詞。)感傷かなしみ和へ給へる歌
 
0024
うつせみの[枕詞] 命を惜しみ(*形容詞・形容動詞の語幹に付いて原因・理由を表す。接尾語や助詞などという。)〔なみにぬれ〕 伊良虞の島の 玉藻刈り食む(*【植物】玉藻:美しい海草)
うつせみの いのちををしみ なみにひで いらごのしまの たまもかりはむ
〔右案日本紀曰、天皇四年乙亥夏四月戊戌朔乙卯、三品麻續王、右罪〔有罪〕流于因幡、一子流伊豆島一子流血鹿島也。是云配于伊勢國伊良虞島者、若疑後人縁歌辭、而誤記乎。〕
天皇御製歌
 
0025
み吉野の 御金の嶺に〔みみがのみねに〕 時なくぞ(*係助詞「ぞ」は上代には多く清音で用いる。) 雪は降りける 間なくぞ 雨は零りける その雪の 時なきが如 その雨の 間なきが如 隈もおちず 思ひつゝぞ來る その山道を
みよしのの みかねのたけに ときなくぞ ゆきはふりける まなくぞ あめはふりける そのゆきの ときなきがごと そのあめの まなきがごと くまもおちず おもひつつぞくる そのやまみちを
〔或本歌。み芳野の 御金の山に〔みみがのやまに〕 非時ときじくぞ 雪は降るちふ〔ゆきはふるといふ〕 間なくぞ 雨は降るちふ〔あめはふるといふ〕 その雪の 非時が如〔ときじきがごと〕 その雨の 間なきが如 隈もおちず(*曲がり角ごとに) 思ひつゝぞ來る その山道を(*「を」は間投助詞。) (*澤瀉注記では、これに通し番号を振るため、以下の番号にずれがある。)
〔右句々相換、因此重載焉。〕
天皇の吉野宮よしぬのみやに幸せる時御製歌
 
0026
淑人の よしとよく見て よしと言ひし 芳野よく見よ〔よしのよくみよ〕 よき人よく見(*「見る」の古い命令形という。)(*頭韻によることば遊びの歌。)
よきひとの よしとよくみて よしといひし よしぬよくみよ よきひとよくみ
〔紀曰、八年乙卯五月庚辰朔甲申幸于吉野宮。〕

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藤原宮御宇天皇代 (持統天皇 文武天皇 〔高天原廣野姫(たかまのはらひろのひめ)天皇〕

天皇御製歌
 
0027
春過ぎて 夏來るらし(*根拠推定の助動詞「らし」) 白妙の(*【生活・人事】白妙:梶の木の皮などで作った白布)[枕詞] 衣ほしたり(*【生活・人事】更衣:) 天の香具山
はるすぎて なつきたるらし しろたへの ころもほしたり あめのかぐやま
近江の荒都あれたるみやこく時、柿本朝臣人麿〔人麻呂〕が詠める歌〔作歌〕
 
0028
玉襷[枕詞] 畝火の山の 橿原の 日知(*天皇。「橿原の日知」は神武天皇。)の御代ゆ(*「ゆ」は起点を表す上代の格助詞。) 〔或云自宮〕 生れましし 神のこと\〃/(*すべて) 樛の木の(*【植物】樛の木:栂)[枕詞] いやつぎ\/に 天の下〔あめのした〕 知ろしめししを〔しらしめししを〕 〔或云食來(めしける)〕 虚みつ〔そらにみつ〕[枕詞] 大和を置きて 青丹よし[枕詞] 奈良山越えて〔ならやまをこえ〕 〔或云虚見倭乎置青丹吉平山超而(そらみつ やまとをおき あをによし ならやまこえて)〕 いかさまに 思ほしけめか〔おもほしめせか(*「思ほしめせばか」の意。後の「知ろしめしけむ」に係る。)〔或云所念計米可(おもほしけめか)〕 天離る[枕詞] 夷にはあらねど〔ひなにはあれど〕 石走る[枕詞] 淡海の國の さゞなみの[枕詞] 大津の宮に 天の下 知ろしめしけむ〔しらしめしけむ〕(*【生活・人事】遷都:) 天皇の 神の尊の 大宮は 此間と聞けども 大殿は こゝと云へども 霞立つ[枕詞] 春日か霧れる 夏草か(*【植物】夏草:)[枕詞] 繁くなりぬる〔はるくさの しげくおひたる かすみたつ はるひのきれる〕 〔或云霞立春日香霧流夏草香繁成奴留(かすみたつ はるひかきれる なつくさか しげくなりぬる)〕 百磯城の[枕詞] 大宮どころ 見れば悲しも 〔或云見者左夫思母(みればさぶしも)〕
たまだすき うねびのやまの かしはらの ひしりのみよゆ あれましし かみのことごと つがのきの いやつぎつぎに あまのした しろしめししを そらみつ やまとをおきて あをによし ならやまこえて いかさまに おもほしけめか あまさかる ひなにはあらねど いはばしる あふみのくにの さざなみの おほつのみやに あめのした しろしめしけむ すめろぎの かみのみことの おほみやは ここときけども おほとのは ここといへども かすみたつ はるびかきれる なつくさか しげくなりぬる ももしきの おほみやどころ みればかなしも
反歌
 
0029
さゞなみの[枕詞](*古い地名という。) 志賀の辛崎 幸く(*変わらずに。副詞。)あれど 大宮人の 船待ちかねつ(*【生活・人事】舟遊:)
さざなみの しがのからさき さきくあれど おほみやびとの ふねまちかねつ
 
 
0030
さゞなみの[枕詞] 志賀の〔一云比良之〕大曲 淀むとも 昔の人に またも逢はめやも 〔一云將會跡母戸八(あはむともへや)〕
さざなみの しがのおほわだ よどむとも むかしのひとに またもあはめやも
高市連K人〔高市古人〕が近江の舊堵みやこの荒れたるを感傷かなしみ詠める歌〔作歌〕 〔或書云高市連K人〕
 
0031
古の 人に吾あれや(*=「あれば(に)や」。反語の含意がある。) さゞなみの[枕詞](*地名という。) 古き京を 見れば悲しき
いにしへの ひとにわれあれや さざなみの ふるきみやこを みればかなしき
 
 
0032
さゞなみの[枕詞](*地名という。) 國つ御神の うらさびて(*心が荒んで) 荒れたる京 見れば悲しも
さざなみの くにつみかみの うらさびて あれたるみやこ みればかなしも
紀伊きの國に幸せる時、川島皇子の詠みませる御歌〔川島皇子御作歌〕 〔或云山上臣憶良作。〕
 
0033
白波の[枕詞] 濱松が枝の(*【植物】浜松:海松) 手向草 幾代までにか 年の經ぬらむ 〔一云年者經尓計武(としはへにけむ)〕
しらなみの はままつがえの たむけぐさ いくよまでにか としのへぬらむ
〔日本紀曰、朱鳥四年庚寅秋九月天皇幸紀伊國也。〕
勢能せの山を越え給ふ時、阿閇あべ皇女の御作歌みよみませるみうた
 
0034
これやこの(*結句を体言止めにすることが多い。) 大和にしては 我が戀ふる 紀路にありちふ〔きぢにありといふ〕 名に負ふ勢能山
これやこの やまとにしては わがこふる きぢにありちふ なにおふせのやま
吉野宮に幸せる時、柿本朝臣人麿が詠める歌〔作歌〕
 
0035
八隅知し[枕詞] 吾が大王の 聞し食す〔きこしめす〕 天の下に 國はしも 多にあれども 山川の 清き河内と 御心を 吉野の國の〔よしののくにの〕(*「寄し」と「吉野」との掛詞。) 花散らふ(*枕詞的用法) 秋津の野邊に〔あきつののべに〕 宮柱 太敷きませば(*【生活・人事】行幸:) 百磯城の[枕詞] 大宮人は 船竝めて 朝川渡り(*「朝川」「夕川」は造語か。) 舟競ひ 夕川わたる この川の 絶ゆることなく この山の いや高からし〔いやたかしらす〕 落ちたぎつ〔みなぎらふ〕 瀧の宮所は 見れど飽かぬかも(*「かも」は詠嘆の終助詞。)
やすみしし わがおほぎみの きこしをす あめのしたに くにはしも さはにあれども やまがはの きよきかふちと みこころを よしぬのくにの はなちらふ あきづのぬべに みやばしら ふとしきませば ももしきの おほみやびとは ふねなめて あさがはわたり ふなきほひ ゆふがはわたる このかはの たゆることなく このやまの いやたかからし おちたぎつ たきのみやこは みれどあかぬかも
反歌
 
0036
見れど飽かぬ 吉野の河の〔よしののかはの〕 常滑の(*【植物】常滑:水苔)(*序詞的用法) 絶ゆることなく また還り見む
みれどあかぬ よしぬのかはの とこなめの たゆることなく またかへりみむ
 
 
0037
八隅知し[枕詞] 吾が大王 神ながら 神さびせすと(*「せす」は「なさる」意。) 芳野川〔よしのかは〕 たぎつ河内に 高殿を 高知りまして(*「高知る」は立派に造る・治める意。)(*【生活・人事】行幸:) 登り立ち 國見をすれば〔くにみをせせば〕(*【生活・人事】国見:) 疊づく〔たたなはる〕[枕詞] 青垣山 山神の 奉る御調と 春べは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉かざし〔もみちかざせり〕 〔一云黄葉加射之(もみちばかざし)〕 遊副川の 神も〔ゆきそふ かはのかみも〕 大御食に 仕へ奉ると 上つ瀬に 鵜川を立て〔うかはをたち〕(*「鵜川」は「鵜飼」の意。)(*【生活・人事】鵜飼:) 下つ瀬に 小網さし渡し〔さでさしわたす〕(*【生活・人事】川漁:) 山川も 依りて仕ふる(*「依る」は「従う」意。) 神の御代かも
やすみしし わがおほぎみ かむながら かむさびせすと よしぬがは たぎつかふちに たかどのを たかしりまして のぼりたち くにみをすれば たたなづく あをがきやま やまつみの まつるみつぎと はるべは はなかざしもち あきたてば もみぢばかざし ゆふがはの かみも おほみけに つかへまつると かみつせに うがはをたて しもつせに さでさしわたし やまがはも よりてつかふる かみのみよかも
反歌
 
0038
山川も〔やまかはも〕 よりて仕ふる 神ながら 激つ河内に 船出せすかも(*【生活・人事】舟遊:)
やまがはも よりてつかふる かむながら たぎつかふちに ふなでせすかも
〔右日本紀曰、三年己丑正月天皇幸吉野宮、八月幸吉野宮、四年庚寅二月幸吉野宮、五月幸吉野宮、五年辛卯正月幸吉野宮、四月幸吉野宮者、未詳知何月從駕作歌。〕
伊勢國に幸せる時の歌〔幸于伊勢國時留京柿本朝臣人麻呂作歌〕
 
0039
安胡の浦に〔あみのうらに〕 船乘りすらむ(*【生活・人事】舟遊:) をとめ等が 珠裳の裾に 潮滿つらむか
あごのうらに ふなのりすらむ をとめらが たまものすそに しほみつらむか
 
 
0040
釵卷く〔くしろつく〕[枕詞] 答志の崎に 今もかも〔けふもかも〕(*「か」は疑問の係助詞。) 大宮人の 玉藻刈るらむ(*【生活・人事】磯遊:)
くしろまく たふしのさきに いまもかも おほみやびとの たまもかるらむ
 
 
0041
潮騷に(*【天象・気象】潮騒:) 伊良虞の島邊 榜ぐ船に 妹乘るらむか 荒き島囘を(*「島廻」は「島の周り」の意。)
しほざゐに いらごのしまべ こぐふねに いものるらむか あらきしまみを
右の三首みうたは柿本朝臣人麿がみやこに留まりて詠める 〔−〕
〔當麻眞人麻呂妻作歌〕
 
0042
吾が背子は いづく行くらむ 奧つ藻の〔おくつもの〕(*【植物】奥つ藻:沖の海草)[枕詞] 名張の山を 今日か越ゆらむ
わがせこは いづくゆくらむ おきつもの なばりのやまを けふかこゆらむ
右の一首は當麻たぎまの眞人麻呂が 〔−〕
〔石上大臣從駕作歌〕
 
0043
吾妹子を[枕詞] い佐見の山を 高みかも 大和の見えぬ 國遠みかも
わぎもこを いざみのやまを たかみかも やまとのみえぬ くにとほみかも
右の一首は石上大臣おほまへつぎみ(麻呂)の從駕おほみともつかへまつりて詠める 〔−〕
〔右日本紀曰、朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰、以淨廣肆瀬王等爲留守官、於是中納言三輪朝臣高市麿脱其冠位フ上於朝、重諫曰、農作之前、車駕未可以動、辛未天皇不從諫、遂幸伊勢、五月乙丑朔庚午、御阿胡行宮。〕
輕皇子の安騎野あきのぬに宿りませる時、柿本朝臣人麿の詠める歌〔作歌〕
 
0044
八隅知し[枕詞] 吾が大王 高照る〔たかてらす[枕詞] 日の皇子 神ながら 神さびせすと 太敷かす 京を置きて 隱口の[枕詞] 泊瀬の山は 眞木立つ(*【植物】真木:杉・檜等) 荒山道を 石が根の〔いはがね〕 ■(木偏+若:じゃく::大漢和15111)枝おしなべ〔さへきおしなべ〕(*若い枝の張った木立を押し靡かせ) 坂鳥の[枕詞] 朝越えまして かぎろひの〔たまかぎる〕[枕詞] 夕さりくれば み雪降る 阿騎の大野に〔あきのおほのに〕 旗芒(*【植物】旗芒:穂の靡いた薄) しぬにおし靡べ〔しのをおしなべ〕 草枕[枕詞] 旅宿りせす(*【生活・人事】狩猟:) 古思ほして〔いにしへおもひて〕
やすみしし わがおほぎみ たかひかる ひのみこ かむながら かむさびせすと ふとしかす みやこをおきて こもりくの はつせのやまは まきたつ あらやまみちを いはがねの しもとおしなべ さかとりの あさこえまして かぎろひの ゆふさりくれば みゆきふる あきのおほぬに はたすすき しぬにおしなべ くさまくら たびやどりせす いにしへおもほして
短歌みじかうた
 
0045
阿騎の野に〔あきののに〕 宿れる旅人〔やどるたびびと〕 うち靡き(*横たわって) 寐も寢らめやも(*「らめ」は現在推量の助動詞「らむ」。) 古おもふに
あきのぬに やどれるたびと うちなびき いもぬらめやも いにしへおもふに
 
 
0046
眞草刈る(*【植物】真草:薄・萱等)(*枕詞的用法) 荒野にはあれど〔あらのにはあれど〕 黄葉の[枕詞] 過ぎにし君が 形見とぞ來し
まくさかる あらぬにはあれど もみぢばの すぎにしきみが かたみとぞこし
 
 
0047
東の 野に陽炎の(*【天象・気象】陽炎:曙光) 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ
ひむがしの〔ひむかしの〕 ぬにかぎろひの〔のにかぎろひの〕 たつみえて かへりみすれば つきかたぶきぬ
 
 
0048
日竝の〔ひなみしの〕 皇子の尊の 馬竝めて 御獵立たしし 時は來向ふ(*【生活・人事】御獵:狩猟)
ひなみの みこのみことの うまなめて みかりたたしし ときはきむかふ
藤原宮つくりに役民たてるたみ〔えだちのたみ〕の詠める歌〔藤原宮之役民作歌〕
 
0049
八隅知し[枕詞] わが大王 高照る〔たかてらす[枕詞] 日の皇子 あらたへの[枕詞] 藤原が上に 食す國を 見し給はむと(*「食す国を見す」は「天下を支配なさる」意。) 大宮は〔みあらかは〕 高知らさむと 神ながら 思ほすなべに(*「なへに」は「・・・と同時に、・・・とともに」の意。)(*【生活・人事】遷都:) 天地も 依りてあれこそ(*「あれこそ」は「あればこそ」の意。) 磐走る[枕詞] 淡海の國の 衣手の[枕詞] 田上山の 眞木さく(*【植物】真木:杉・檜等)[枕詞] 檜の嬬手を(*「つまで(柧手)」は角材の意。)(*【植物】檜:檜) ものゝふの[枕詞] 八十氏山に〔やそうぢがはに〕 玉藻なす[枕詞] 浮べ流せれ(*「浮べ流せれば」の意。) 其を取ると 働ぐ御民も(*「さわく」は「立ち働く」意。) 家忘れ 身もたな知らに〔みもたなしらず〕(*「たな知る」は「十分に弁え知る」意。) 鴨じもの(*「鴨のように」の意。「浮く」に係る比喩。枕詞的用法。)(*【鳥獣虫魚】鴨:鴨) 水に浮きゐて 吾が作る〔わがつくる〕 日の御門に(*「日の御門」は「皇居・御所」の意。) 知らぬ國 依り巨勢道より〔よしこせぢより〕(*掛詞による枕詞的用法。) 我が國は 常世にならむ 圖負へる 神龜も〔くすしきかめも〕 新代と 泉の河に(*「出づ」と「泉川」の掛詞。「吾が作る」からここまでは序詞。) 持ち越せる 眞木の嬬手を 百足らず[枕詞] 筏に作り(*【生活・人事】筏:) 上すらむ 勤はく見れば(*「勤はく」は、先を争って努めること。ク語法。) 神ながらならし(*「ならし」は「なるらし」に同じ。)
やすみしし わがおほぎみ たかひかる ひのみこ あらたへの ふじはらがうへに をすくにを めしたまはむと おほみやは たかしらさむと かむながら おもほすなべに あめつちも よりてあれこそ いはばしる あふみのくにの ころもでの たなかみやまの まきさく ひのつまでを もののふの やそうじやまに たまもなす うかべながせれ そをとると さわぐみたみも いへわすれ みもたなしらに かもじもの みづにうきゐて あがつくる ひのみかどに しらぬくに よりこせぢより わがくには とこよにならむ ふみおへる あやしきかめも あらたよと いづみのかはに もちこせる まきのつまでを ももたらず いかだにつくり のぼすらむ いそはくみれば かむながらならし
〔右日本紀曰、朱鳥七年癸巳秋八月幸藤原宮地、八年甲午春正月幸藤原宮、冬十二月庚戌乙卯遷居藤原宮。〕
明日香宮より藤原宮に遷りましし後、志貴皇子の詠みませる御歌〔御作歌〕
 
0050
をとめの〔うねめの〕 袖吹きかへす 明日香風 京都を遠み いたづらに吹く
をとめの そでふきかへす あすかかぜ みやこをとほみ いたづらにふく
藤原宮の御井の歌
 
0051
やすみしし[枕詞] 吾大王 高照る〔たかてらす[枕詞] 日の皇子 あらたへの[枕詞] 藤井が原に 大御門 始め給ひて(*【生活・人事】遷都:) 埴安の 堤の上に 在り立たし(*「在り立つ」は「いつも立つ・いつも出かける」意。) 見し給へば 大和の 青香具山は 日の經の(*「日の経」は「東」の意。) 大御門に 青山と 繁みさび立てり(*「繁みさぶ」は「いかにも繁茂する」意。) 畝火の この瑞山は(*「瑞山」は草木が繁茂して美しい山の意。) 日の緯の(*「日の緯」は「西」の意。) 大御門に 瑞山と 山さびいます(*「さぶ」は「いかにもそれらしい」意の接尾語。) 耳梨の 青清山は(*「青清山」は青々と菅の茂った山とも、青々と清々しい山ともいう。) 背面の(*「背面」は「後ろ側・北側・外側」の意。) 大御門に 宜しなべ(*「よろしなへ」は「ちょうどよいぐあいに」の意。) 神さび立てり 名細し〔なくはしき〕(*「名細し」は「よい名前を持っている」意。)(*枕詞的用法) 吉野の山は〔よしののやまは〕 影面の(*「影面」は「南側」の意。) 大御門よ〔おほみかどゆ〕(*「よ」は動作の起点を表す格助詞。) 雲居にぞ 遠くありける 高知るや[枕詞] 天の御蔭(*壮大な宮殿) 天知るや[枕詞] 日の御影の(*「天の御蔭」に同じ。) 水こそは 常磐にあらめ〔とこしへならめ〕(*「む」は、「・・・こそ〜め」の呼応で勧誘・命令を表すことがある。) 御井の眞清水(*【生活・人事】井戸:)
やすみしし わごおほぎみ たかひかる ひのみこ あらたへの ふじゐがはらに おほみかど はじめたまひて はにやすの つつみのうへに ありたたし めしたまへば やまとの あをかぐやまは ひのたての おほみかどに あをやまと しみさびたてり うねびの このみづやまは ひのよこの おほみかどに みづやまと やまさびいます みみなしの あをすがやまは そともの おほみかどに よろしなべ かむさびたてり なぐはし よしぬのやまは かげともの おほみかどよ くもゐにぞ とほくありける たかしるや あめのみかげ あめしるや ひのみかげの みづこそは ときはにあらめ みゐのましみづ
短歌
 
0052
藤原の 大宮仕へ(*【生活・人事】大宮仕へ:宮仕え) 顯齋くや〔あれつぐや〕(*「あれつく」は「潔斎して仕える」等の意というが未詳。) 處女がともは(*「とも」は「輩」の意。) ともしきろかも(*「ろ」は語調を整えたり親愛の意を表したりする接尾語。上代東国方言か。)
ふじはらの おほみやづかへ あれつくや をとめがともは ともしきろかも
右の歌作者未詳よみびとしらず
(*以下、澤瀉注釋本では58・61・58或本歌・62-66・59・60・67・68・53-57と続いて、69から同じ配列となる。58の或本歌にも通し番号を付すために巻1最終歌は84となる。)
太上天皇おほきすめらみこと(持統)の難波宮に幸せる時の歌
 
0053
大伴の[枕詞] 高師の濱の 松が根を(*【植物】松:松) 枕きて寢る夜は〔まくらきぬれど〕(*「枕く(まく)」は「枕にする」意。) 家し偲ばゆ〔いへししのはゆ〕
おほともの たかしのはまの まつがねを まきてぬるよは いへししぬばゆ
右の一首は置始東人おきそめのあづまびと
 
 
0054
旅にして 物戀しきに(*「こほし」は「こひし」の古形。) 家言も〔たづがねも〕 聞えざりせば 戀ひて死なまし
たびにして ものこほしきに いへごとも きこえざりせば こひてしなまし
右の一首は高安大島。
 
 
0055
大伴の[枕詞] 美津の濱なる 忘貝(*「忘れ」に係る序詞。)(*【鳥獣虫魚】忘貝:貝) 家なる妹を 忘れて念へや(*「や」は反語の係助詞。)
おほともの みつのはまなる わすれがい いへなるいもを わすれておもへや
右の一首は身人部王むとべのおほぎみ
 
 
0056
草枕[枕詞] 旅行く君と 知らませば 岸の埴生に(*「岸」は「切り岸・崖」の意。「埴生」は「丹を産する土地・丹」の意。) 染はさましを(*「・・・ませば〜まし」は反実仮想の表現。「にほはす」は「美しく染める」意。丹摺の衣を作ること。)(*【生活・人事】丹摺:丹で染色すること)
くさまくら たびゆくきみと しらませば きしのはにふに にほはさましを
右の一首は清江娘子すみのえ〔の〕をとめが長皇子にたてまつれる歌〔姓氏未詳〕。
大寶元年はじめのとし辛丑かのとうし〔秋九月〕太上天皇の吉野宮に幸せる時の歌(*澤瀉本では、58の前書)
 
0057
大和には 鳴きてか來らむ 喚子鳥(*【鳥獣虫魚】喚子鳥:郭公(かっこう)・時鳥等) 象の中山 呼びぞ越ゆなる
やまとには なきてかくらむ よぶこどり きさのなかやま よびぞこゆなる
右の一首は高市連K人。
〔太上天皇幸于吉野宮時高市連K人作歌(*澤瀉本では、57の前書)
 
0058
巨勢山の つら\/椿(*茂って連なり合った椿。ここまで「つらつらに」の序詞。)(*【植物】つらつら椿:連なった椿) つら\/に 見つゝ偲ばな〔みつつしのはな〕(*「な」は意志・願望を表す上代の終助詞。) 巨勢の春野を〔こせのはるのを〕
こせやまの つらつらつばき つらつらに みつつしぬばな こせのはるぬを
右の一首は坂門人足さかどのひとたり
或本歌。河上の つら\/椿 つら\/に 見れども飽かず 巨勢の春野は。
〔右一首、春日藏首〔くらびと〕老。〕
三野連みぬのむらじ〔みののむらじ〕 〔名闕〕 が唐に遣はさるゝ時〔入唐時〕、春日藏首くらびとおゆる詠める歌〔作歌〕
 
0059
大船の〔ありねよし〕[枕詞] 對馬の渡り 海なかに 幣取り向けて(*「取り向く」は「取って手向ける」意。)(*【生活・人事】奉幣:) はや還り來ね(*誂えの意を表す上代の終助詞。)
おほぶねの つしまのわたり わたなかに ぬさとりむけて はやかへりこね
山上臣憶良が大唐もろこしに在りし時、本郷くにしぬびて詠める歌〔憶本郷歌〕
 
0060
いざ子ども(*「子ども」は「皆の者」の意。) はや日本やまとべに〔はやくやまとへ〕 大伴の[枕詞] 御津の濱松(*【植物】浜松:海松) 待ち戀ひぬらむ(*擬人法)
いざこども はややまとべに おほともの みつのはままつ まちこひぬらむ
太上天皇の紀伊國きのくにに幸せる時、調つきの首淡海が詠める歌〔−〕
 
0061
朝裳よし[枕詞] 紀人ともしも(*「も」は詠嘆の終助詞。) 眞土山 行き來と見らむ(*「見らむ」=「見るらむ」。「見」は連用形とも、終止形ともいう。ここの「らむ」は伝聞・婉曲の意味。「行き来と」は「往来するとともに」の意。) 紀人ともしも
あさもよし きひとともしも まつちやま ゆきくとみらむ きひとともしも
〔右一首調首淡海。〕
二年ふたとせといふとし壬寅みづのえのとら太上天皇の參河國に幸せる時の歌
 
0062
引馬野に〔ひくまのに〕 にほふ榛原(*【植物】榛原:榛の原) 入り亂り〔いりみだれ〕(*「乱る」は「入り交じるようにする」意。) 衣にほはせ(*「にほはす」は「美しく染める」意。) 旅のしるしに(*【生活・人事】染色:)
ひくまぬに にほふはりはら いりみだり ころもにほはせ たびのしるしに
右の一首は長忌寸奧麻呂。
 
 
0063
何所にか 船泊て(*碇泊)すらむ 安禮の崎 こぎ囘み行きし(*「漕ぎ回む」は「漕いでめぐる」意(=「漕ぎ回(み)る」)。上二段動詞。) 棚無し小舟(*舷側板の無い小さな舟)(*【生活・人事】舟運:)
いづくにか ふなはてすらむ あれのさき こぎたみゆきし たななしをぶね
右の一首は高市連K人。
〔譽謝女王作歌〕
 
0064
流らふる 雪吹く風の 寒き夜に 吾が背の君は ひとりか寢らむ
ながらふる ゆきふくかぜの さむきよに わがせのきみは ひとりかぬらむ
右の一首は譽謝女王よさのおほぎみ〔−〕
〔長皇子御歌〕
 
0065
暮に逢ひて 朝面無み(*「隠(なば)る」=「名張」に係る序詞。) 名張にか 來經長き(*「日長し」は「日数が経っている(ように感じられる)」意。)妹が〔けながくいもが〕 廬せりけむ
よひにあひて あしたおもなみ なばりにか けながきいもが いほりせりけむ
右の一首は長皇子。〔−〕
〔舍人娘子(をとめ)從駕作歌〕
 
0066
丈夫が 得物矢手插み(*「得物矢」は「猟矢(さつや)」) 立ち向ひ 射る的形は(*「的」と「的方(円方)」との掛詞。「丈夫が…射る」までが「的形」に係る序詞。) 見るに清けし
ますらをが さつやたばさみ たちむかひ いるまとがたは みるにさやけし
右の一首は舍人娘子いらつめ從駕おほみともつかへまつりて詠める。 〔−〕
慶雲きやううむ三年みとせといふとし丙午難波宮に幸せる時の(歌)〔志貴皇子御作歌〕
 
0067
葦邊ゆく 鴨の羽交に(*「羽交」は翼の交わる所・羽の意。)(*【鳥獣虫魚】鴨:鴨) 霜零りて(*序詞的用法。) 寒き夕は 大和し思ほゆ
あしべゆく かものはがひに しもふりて さむきゆふべは やまとしおもほゆ
右の一首は志貴皇子。〔−〕
〔長皇子御歌〕
 
0068
霰うち〔あられうつ〕[枕詞] 安良禮松原 住吉の 弟日娘と(*「弟日」は兄弟の下の方を指す。「弟日娘」は「若い娘」の意。) 見れど飽かぬも
あられうち あられまつばら すみのえの をとひをとめと みれどあかぬも
右の一首は長皇子。〔−〕
大行天皇さきのすめらみこと(文武)の難波宮に幸せる時の歌
 
0069
大和戀ひ 寐の寢らえぬに 情なく この渚の崎に〔このすさきみに〕 鶴鳴くべしや(*「や」は反語の係助詞。)(*【鳥獣虫魚】鶴:鶴)
やまとこひ いのねらえぬに こころなく このすのさきに たづなくべしや
右の一首は忍坂部おさかべの乙麻呂。
 
 
0070
玉藻刈る[枕詞] 奧方は榜がじ 敷妙の[枕詞] 枕のほとり 忘れかねつも
たまもかる おきべはこがじ しきたへの まくらのほとり〔まくらへのひと〕 わすれかねつも
右の一首は式部卿のりのつかさのかみ藤原宇合。
〔長皇子御歌〕
 
0071
吾妹子を 早見濱風(*「早見む(見よ)」と「早み浜風(浜風早み)」との掛詞。) 大和なる 吾を松の木に(*掛詞) 吹かざるな勤(*「吹けよ」の意。)
わぎもこを はやみはまかぜ やまとなる あをまつのきに〔わをまつつばき〕 ふかざるなゆめ
右の一首は長皇子。〔−〕
大行天皇の吉野宮に幸せる時の歌
 
0072
み吉野の〔みよしのの〕 山の嵐の 寒けくに(*「寒けく」は「寒いこと・寒い時」の意。ク語法。) はたや今夜も(*「はたや」は「もしかしたら・やはり〜なあ」の意。) 我がひとり寢む〔わがひとりねむ〕
みよしぬの やまのあらしの さむけくに はたやこよひも あがひとりねむ
右の一首はあるひとの云く、天皇御製歌。
 
 
0073
宇治間山 朝風さむし 旅にして 衣借すべき 妹もあらなくに(*「なくに」は「ないのに・ないのだなあ」の意。)
うぢまやま あさかぜさむし たびにして ころもかすべき いももあらなくに
右の一首は長屋王ながやのおほぎみ

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(寧樂宮御宇天皇代) (元明天皇−)

和銅元年はじめのとし戊申つちのえさる、天皇(元明)御製歌
 
0074
丈夫の 鞆の音すなり〔とものおとすなり〕(*「鞆」は「弦受け」の意。) ものゝふの(*「もののふ」は文武百官の意。字義通りか、又は「多い」の意で枕詞か。) 大臣(*「おほまへつぎみ」=「おほおみ」) 楯立つらしも(*【生活・人事】調練:)
ますらをの とものとすなり もののふの おほまへつぎみ たてたつらしも
御名部みなべの皇女の和へまつれる御歌
 
0075
吾が大王 ものな思ほし(*「な+連用形(+そ・そね)」で禁止の表現。) 皇神の(*「すめかみ」は「神・皇祖神」の意。枕詞的用法か。) 嗣ぎて賜へる 君無けなくに〔わがなけなくに〕(*「嗣ぎて賜へる君」は「後嗣」の意か。「無けなくに」は「無いことはないのに・あるのに」の意。)
わがおほぎみ ものなおもほし すめがみの つぎてたまへる きみなけなくに
三年庚戌かのえいぬ三月やよひ〔二月〕、藤原宮より寧樂宮に遷りませる時、長屋原に御輿停めて〔御輿停長屋原〕古郷をかへり見し給ひて御作歌みよみませるみうた〔一書云、(從飛鳥宮遷于藤原宮時)太上天皇(持統)御製〕 〔−〕
 
0076
飛鳥の[枕詞] 明日香の里を 置きて去なば 君があたりは 見えずかもあらむ 〔一云君之當乎不見而香毛安良牟(きみがあたりを みずてかもあらむ)〕
とぶとりの あすかのさとを おきていなば きみがあたりは みえずかもあらむ(*「か」は疑問の係助詞。)
藤原みやこより寧樂宮に遷りませる時の歌〔或本從藤原京遷于寧樂宮時歌〕
 
0077
天皇の 御命かしこみ(*恐れ多いので) 柔びにし(*「柔ぶ(和ぶ)」は「慣れ親しむ」意。)(*枕詞的用法) 家を置き 隱國の[枕詞] 泊瀬の川に 船浮けて 吾が行く河の〔わがゆくかはの〕 川隈の 八十隈おちず よろづ度 かへりみしつゝ 玉桙の[枕詞] 道行き暮し 青丹よし[枕詞] 奈良の京師の 佐保川に い行き至りて 我が寢たる〔わがねたる〕 衣の上ゆ 朝月夜(*【天象・気象】朝月夜:有明の月・明け方) 清かに見れば 栲の穗に(*真っ白に) 夜の霜降り 磐牀と(*岩盤のように) 川の氷凝り〔かはのひこごり〕 冷ゆる夜を〔さむきよを〕(*「冷ゆ」は「冷え込む」意。) 息むことなく〔いこふことなく〕 通ひつゝ 作れる家に(*【生活・人事】遷都:) 千代までに(*「までに」は「まで」と同じ。) 座さむ君と〔いませおほきみよ〕 吾も通はむ〔われもかよはむ〕
おほぎみの みことかしこみ にきびにし いへをおき こもりくの はつせのかはに ふねうけて あがゆくかはの かはくまの やそくまおちず よろづたび かへりみしつつ たまぼこの みちゆきくらし あをによし ならのみやこの さほがはに いゆきいたりて あがねたる ころものうへゆ あさづくよ さやかにみれば たへのほに よるのしもふり いはとこと かはのひこほり さゆるよを やすむことなく かよひつつ つくれるいへに ちよまでに いまさむきみと あれもかよはむ
反歌
 
0078
青丹よし[枕詞] 寧樂の家には 萬代に 吾も通はむ〔われもかよはむ〕 忘ると思ふな〔わするとおもふな〕(*「もふ」は「おもふ」の変化した語。)
あをによし ならのいへには よろづよに あれもかよはむ わするともふな
右の歌は作主未詳よみびとしらず
〔和銅〕五年壬子みづのえね四月うづき、長田王を伊勢齋宮いつきのみやに遣はさるゝ時、山邊の御井にて詠める歌〔作歌〕
 
0079
山邊の〔やまのべの〕 御井を見がてり(*「見がてり」は「見がてら」の古い語。)(*【生活・人事】井戸:) 神風の[枕詞] 伊勢處女ども 相見つるかも
やまべの みいをみがてり かむかぜの いせをとめども あひみつるかも
 
 
0080
心さぶる(*「心さぶ」は「心寂しく感じる」意。) 情さまねし(*「さまねし」は「数多い・あまねく行き渡る」意。) 久堅の[枕詞] 天の時雨の 流らふ見れば(*「流らふ」は「流れるように落ち続く・静かに降り続く」意。)
うらさぶる こころさまねし ひさかたの あめのしぐれの ながらふみれば
 
 
0081
海の底(*「海(わた)」は海の意。) 奧つ白浪(*ここまで「立つ」の序詞。) 立田山 いつか越えなむ(*「か」は疑問の係助詞。) 妹があたり見む
わたのそこ おきつしらなみ たつたやま いつかこえなむ いもがあたりみむ
〔右二首、今案、不似御井所作。若疑當時誦之古歌歟。〕。
〔寧樂宮〕(*原本では74の前で区切る。)
長皇子と志貴皇子と佐紀宮にて倶宴うたげし給ふ時の歌〔倶宴歌〕
 
0082
秋さらば 今も見る如 妻戀ひに 鹿鳴かむ山ぞ(*【鳥獣虫魚】鹿(か):鹿) 高野原の上〔たかのはらのうへ〕
あきさらば いまもみるごと つまごひに かなかむやまぞ たかぬはらのへ
右の一首は長皇子。
萬葉集 卷第一 


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