第69話(06.05.25)
SOUL BREAKER第2段 〜 自作アンプ7,8,9号機(3台)作成しなおし
前回、第66話で作成した3台のSOUL BREAKERですが、パワーの問題でかなり悩んでおりました。
というのも、2級の領域に入ると、どうしてもパワー管のプレート損失が大きくなり、電源のフィルターにチョークを使っていたのですが、観測すると、最大パワー時で100V近く電圧降下しています。
かなりの間悩み続けました。というのも、オーダーした電源トランスにちょうど良いタップがなく、固定バイアス用の電源を確保できなかったからです。
今回、固定バイアスではなく、各グリッドを定電流回路で独立して常時BIASを一定にできる回路を思い、思い切って製作に取り掛かることにしました。
プリ段もある情報筋からのODS情報が入りましたので、確認してみるつもりです。
パワー段は前述したとおり、グリッドを常に一定電流で制御します。したがってどんなアンバランスな管を持ってきてもバイアスの調整は不要となります。(なるはずです。プッシュプルのバランスはパワー管だけではないので、全体を見なければしょうがないのですが・・)
また、回路はハンドワイヤリングとし、基板は使用せず、ベークライトの切り出しです。
一部、
リレー回路、定電流の回路などはバラック基板に組むことにします。
こんな感じで基板を作成しだしました。
と同時に、せっかくくみ上げていたシャーシから、不要なパーツや、線材を引っ剥がし、トランス類、スイッチ類だけの状態にしてしまいました。(もう後戻りはできない・・・後戻りする気はさらさらありませんが・・・)
てな感じで左がBEFOREで右がAFTERです。
あーあー、やってしまった。また、一苦労始まります。
プリ段の構成はDumble ODSに独自のコントロールを追加しました。通常のFENDERのDELUXE REVERBのクリーンチャンネルのような初段があり、ドライブスイッチでドライブ回路が挿入される仕組みになっています。
これは、フットスイッチでも、裏についているスイッチでも可能になっており、パイロットランプが緑色の時はクリーンで、赤でドライブが選択されていることを示します。
ただ、独立2chアンプではないので、ドライブ回路の調整が大変です。
トーン回路は、かなり複雑です。
トーンのバイパススイッチと、DEEP SW、JAZZ/ROCKスイッチがつきます。
また、TREBLE、MIDDLE、BASSに加えて、前回から考案したSWEEPコントロール(MIDDLEを効かせる周波数を調整するVOLUME)がついています。
これによって、ギターのかなめである(と私は思っている)MIDDLEのコントロールがある程度思い通りにできるようになりますが、自由度がありすぎると、アンプのキャラクターが変わりすぎるのと、弾き手が戸惑ってしまうので、おいしい調整幅だけを残すように定数を決めてゆきます。
この辺は10台近く作成している中で、自分なりにデータを持っていますので、だんだん慣れてきました。
配線が大体終了しました。(アンプは自作のアンプ置き台に乗せて作業しています)
部屋の中で、音だしをできる範囲で行ってゆきますが、問題(大体出るものです・・・)が数点発生しました。
@
まずは、つき物のハム
A
リレー回路不具合
B
定電流回路発熱(やばいやばい)
C
BASS、MID、SWEEPの効きが悪い
等など、、、やることはとても多そうです。ひとつずつ解決してゆくことにします。
まず、ハムに関しては大体配線間違いか、GNDの取り方が多いです、、がしかし今回は色々やってみて違っていたようです。
これはAのリレー回路がおかしかったせいで、ハムを電源の方に戻していたようです。
ということで、リレー回路を設計しなおして@とAは一気に解決です。
Bは設計条件を再度見直し、損失を分散させることにしました。
Cは配線間違いもありますが、情報をすべて鵜呑みにしてはいけません。シミュレーターで確認するのと、実際に耳で確認するのが肝心です。
これらが直ると、一気にアンプとしての魅力が見えてきます。
弾いた感じは、粘るクリーンというのがピッタリです。(おそらく、この粘り方がDumble特有で歪んでいるのかクリーンなのか良くわからない、境目がないと感じるんだと思います。)
クリーントーンで弦が指に絡んでくる感じです。硬くなく、音が太い。
調整していてしばらく弾きいってしまうような感じです。
でも、ちょっとギターを置いて、客観的な目で(耳で)判断しなくてはならないのがつらいところです。
まずは音が太いのですが、勘違いしやすいのは、低音に音がよっているのが音が太いと勘違いしやすいことです。
これは私の経験ですが、低音によっていると、おいしい中域が殺されてしまいますので、中域を邪魔してはいけません。また低域に寄っている場合、ドライブさせた音がつぶれた感じとなり、好みでしょうが、私はあまり好きではありません。この辺のさじ加減は定数を追い込んで調整します。
また、粘ってよい感じですが、反対にレスポンスが悪くなっては意味がありませんので、この辺も追い込んでいきます。
それと、フルテンにしたときの挙動です。大体、発振がありますので、この辺も音に影響させずに調整し、追い込みます。
(・・・と簡単に書いているようですが、この症状はこの辺を治す・・というのがわかるまでには結構な苦労がいるんですよ)
また、このトーン回路は本当に音色が色々変化し、懐が深いプリアンプです。
JAZZ
MODEではバッキングに適した軽いコンプレッションの少ない音から、ゲインをあげてゆくとコンプレッションが出てきます。
ROCK
MODEではクリーンでも太く粘るリードトーン、小音量でも粘ります。そしてドライブも音が痩せないです。このプリアンプは私の標準回路にしたいと思います。
トーンバイパスは音量が上がりますが粘りの極致です。
また。オリジナルでつけているSWEEPは良い具合にMIDの効く周波数を移動してくれます。MIDをカットしてSWEEPで周波数を下げると、軽い音になるし、MIDもSWEEPもあげると、小音量でも部屋の何かがビリビリいい出すくらいの低音が出ます。
パイロットランプの色が変わっているのがわかるでしょうか?
緑はクリーンで赤はドライブです。なかなかいい感じになりました。
フロントのコントロールは左から
[INPUT],[GAIN],[BASS(TREBLE
SW)],[DEEP],[JAZZ/ROCK],[TREBLE],[MID],[SWEEP],[BASS],[MASTER(TONE
PYPASS=BOOST)],[MASTER]
となっています。リアは左から
[AC],[FUSE],[POWER],[STAND
BY],[BIAS測定ピン],[DRIVE SW],[NFB ON/OFF],[PRESENCE],[SP OUT],[FOOT SW]
です。
ちなみにPRESENCEをOFFにしたら、弦が指にまとわりつく感じがいっそう強くなります。
PRESENCEはNFB(負帰還)で実現しています。ギターマニア的な言い方をすれば、NFBは良くないというのでしょうが、ON/OFFで切り替えてみるとわかるのですが、OKかNGかの判断はできるものではありません。ノイズの低減や周波数特性の改善など、NFBには良いところもたくさんあります。
また、無帰還のアンプもコンプレッション豊かで良いところはあります。まあ、SWをつけておけばどちらも楽しめますので、この形が正解なのかな?
大出力アンプの場合は下手にNFBをいじらない方が良いでしょう。
手持ちの真空管の差し替えで相性の良いものを選びました。
今回のSOUL BREAKERのバイアス回路は、強制的にバイアスが決まってしまいますので、何の気兼ねもなく、次々パワー管を差し替えて行けます。
これは精神的にも楽でし、固定バイアスよりも安全性は高いです。
手持ちの中では、プリはGroove TUBE、パワーはRUBYの6L6GCが良い感じでした。
今度は5881あたりを試してみたいです。おそらくパワーもあがるでしょう。
調整が終了し、今度はゆっくりギターをつないで弾きこみます。ハムバッカーとシングルは両方試す必要があります。
いい感じですねえ・・・このアンプは大好きです。リバーブは搭載していませんが、まったく必要性を感じません。
ああ、フットスイッチを作るのを忘れていました・・・いちいちリアのスイッチをいじらなければならないのが大変・・今度作っておきます。
このキャビネットはいったいどのくらい開け閉めしたでしょうか??N澤名人良いキャビをありがとうございます。本当に頑丈なキャビネットです。
今回のアンプは楽しんで音の追い込みを行うことができました。FENDERでもない、MARSHALLでもない、DUMBLEの音に近いと思います。
次回は音のサンプルを録りたいと思います。
今回は、フットワークが非常に軽いのですが、、、スタジオに入って音だしを行ってきました。
実は、何回も通っていて、部屋でできる限り大きな音量で調整していても、スタジオに持ってゆくと不具合があったり、本当に大変です。
今回は、大分まとまってきたので、VanzantFreakさんを呼んで、スタジオ入りしました。
サンプルになったギターはVZFさんのテレキャスター(Vanzand製)と私の65年335チェリーで試してみることにしました。
(録音はRoland R-1で弾いている人の近くで録音しています。)
まず、このアンプは本当に多彩な音が出ますので、モードとギターを変えてサンプルを録りました。(すごく親切!)
エフェクターなどは一切使わず、アンプ直です。
ギター/モード |
テレキャスター |
335 |
Jazzモード(クリーン) |
||
Rockモード(クリーン) |
||
RockモードBoost(クリーン) |
||
RockモードOverDrive |
というわけで、サンプル録りのようなのりで、はじめたのですが、これがなんともいえぬすばらしい音に2人とも感激しだしました。
弾いた感想ですが、うまいならともかく、このアンプは私のような下手なギター弾きには、もてあましてしまいます。反応がよく、分離が良い。また、コンプレッション感がものすごいため、弦をはじき出した瞬間から、音が終わるまで、本当に自分の指が責任を持って音を処理しなくてはミスタッチが目立つし、ごまかしようがなく大変です。
でも、ものすごくコントローラブルで、オーバードライブの設定でも、ギターのボリュームを絞るとスーッとクリーンになって(音量は落ちません)ものすごく歪ませてもどの弦を弾いたかがわかるくらい、弦の分離がしっかりしています。なので、上手に扱うと、表情豊かな楽器です。(人の声に近いかな?)不思議と335で弾いていると、リバーブがかかって聞こえます。
これは、我ながら自分のアンプに惚れました。
ちょっと、乗ってきて、AKGのSLEEP WALK、VZFのバッキング(ジャズコ)です。
(下手だと、こんなになってしまうのですが、どこまでも伸びるコンプレッションサウンドと、コアーとフィードバックがナチュラルに来て、極楽ですWW)
私のイメージするダンブルの音はまさに、この音です。
やっているうちに、私のイメージはカールトン、ロベンフォードなのですが、VZFさんが弾いているとレイボーンみたいだな。。とおもって、やってもらいました。
そういえば、レイボーンもダンブルだったなあ。(テリーのリアでアンプ直ですよ)
パワー部の回路は6月から、またいじりました。
今回はエッセイ第66話の2005年の8月から実に1年間の製作期間でした。回路の構想がまとまると、製作は早いのですが、四苦八苦、再作成など、この間本当にスランプにも入ってしまいましたが、Mr.Billや、他の方からの助言、励ましなどがあり、ようやく3台完成することができて、感無量です。
今回も、Fender、Marshall等のコピーではなく、自分のオリジナル回路にこだわって作ってきました。
こうして3台完成した姿を並べてみると、苦労が一気に飛んでしまうようです。ここで、ストラト、テレキャスター、335とテストをしてそれぞれにどのギターをつないだかがきちんと分かり、このアンプの特徴でもあるミッドレンジの広さ、特にBOOST
MODEにしたときにはクリーンでも、ものすごい迫力があり、とても気に入っています。
オーダーいただいた方にもずいぶん待たせてしまい、ご迷惑をおかけしました。私もOFF会に間に合わせることができました。
久しぶりに、酒を飲みながらギターをアンプにつないでゆったりと安心した気分でギターが弾けた気がします。
今回は特に反省点は無いような気がします。学んだことは非常に大きいです。細かいところで色々あるのですが、いつまでたっても終わりませんので、自分のアンプでチマチマいじってゆきます。
左側はナチュラルメイプル仕上げです。真ん中はセパレート仕様で、SP BOXは私所有(次回アンプ用Www)、右側が自分用です。
自分用のアンプはダンブルのようにフロントパネルの下にアルミを貼ってしまいました。音のサンプルは川口OFFの模様をお知らせするときに一緒にアップしようと思います。
説明書を作りましたので、見たい方はどうぞ
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