第76話(07.03.31)
ギター用真空管アンプ製作もいよいよ10台目になる。自分でも、よくもこんなに作るものだと思う。それだけ奥が深く、面白いからしょうがない。
さて、今回は自分にとって記念すべき10号機である。どんなアンプを製作しようか・・・アイディアは色々ある。しかし欲張ると、製作不可能になっていくので、目標は絞ってみる。
今まで、私が、真空管アンプを製作し続けた大きな理由のひとつがDUMBLE OVER DRIVE SPECIALとの出会いであった。それならば、ODSに敬意を表して今回の目標は、ODSの製作としたい。
部品にいとめは付けないで製作したい。完全に自分専用、我侭し放題のワンオフ物である。
手始めに、パワー管はビンテージGEの6L64本、アウトプットトランスにFENDER
THE TWINのトランス、スピーカーはEVM12Lを入手した。ラッキーなことに、あるルートでシャーシを入手できた。
しかし、問題はいくつかある。
まずは、通常ギターアンプで100Wというと、6L6をパラレルプッシュプルで使用するアンプが大半であるが、パラレルプッシュプルにはいくつか問題がある。
まずは、BIASの調整方法である。
QUADペアという4本を選別して売っている真空管もあるが、あるプレート電圧の時のある電流値が合っているだけである。(バラバラよりはまし)バイアス電圧を変えると、電流値が合う保障は無い。しかも、貴重なビンテージ管を使いたいということになると、バイアス調整は絶望的である。
いくつもの、ギターアンプの回路図を引っ張り出してきて、BIAS調整回路について色々眺めてみるが、パラレルプッシュプルの場合、4本の管に対してBIAS調整が取れるものはない。
また、上記に絡むのであるが、フェーズインバーターの出力から、パワー段のGRIDに入力する際、独立してBIAS調整をする前提で、12AX7の出力インピーダンスでは、パワー管4本をドライブしきれない。フェーズインバーターのPLATEの100kと、パラレルプッシュプルの場合はパワー管のGRIDに入る220kが合成抵抗に見えて、110kとなる。すなわち、フェーズインバーター出力が分圧されて半分(6dB落ち)となってしまう。(下の回路図で赤で囲った箇所である)
通常、ギターアンプの場合は2本ずつ束ねて、使用しているようで、(すなわちGRIDの220kは共通)この方法だと、ドライブはできる。しかし、上記のように独立したBIAS調整が不可能となる。(FenderのTWIN REVERBをブラックパネルから順に回路図を追ってゆくと、この辺で苦労した跡が伺えた)
解決方法としては、フェーズインバーターに12AT7を使用して、プレート抵抗を思い切り小さくして、パワー管4本を独立してドライブしようと思う。シミュレーションをしてみたが、なかなか良好である。
ついでに、フェーズインバーターにはスイッチを付けて、12AX7にも差し替えられるようにしたい。
これで、パワー部の問題は解決したと思われる。
次にプリ部であるが、前回のSOUL BREAKERのプリアンプが最高に気に入っているので、そのまま踏襲する。
ただし、前回のSOUL BREAKERでは、FOOT SWでOVER DRIVEの切り替えしかできなかったので、今回は、SOUL BREAKERでの使用頻度を考えて、OVER DRIVEとJAZZ/ROCK、BOOSTの3つをコントロール可能する。後期のOVER DRIVE SPECIALに搭載されているSKYLINER(POST EQ)は私的には使い道が無いので、省く。
SWEEP CONTROL:オリジナルのODSには無いが、MIDDLEの周波数を変化させるためのSWEEP CONTROLは私的には、もはや必須となっているので、取り付ける。
Bright SW:これはGainの位置で効き方がまったく違うし、ギターの種類、演奏する曲によっても意外と微妙なスイッチ。これに対する回答は2段階のスイッチでBrightの効き方を選べるようにする。すなわち、OFF/弱/強のように効くBrightSWである(SOUL BREAKERでも実験済み)
Deep SW:これも、ぶっとい中域を演出するには欠かせないが、Deepを入れると、当然のことながら太くなりすぎて、Fenderアンプのようなベルトーンが作りにくくなる。このため、Deep SWも2段階のスイッチにして、太さ加減を選べるようにする。
電源部は6L6を4本、もしくは5881を4本使用するため、かなり大型の電源になる。
前回のSOUL BREAKERでは整流方式を真空管、ダイオードで切り替え可能なようにスイッチを取り付けたが、今回は、実験的に電源のフィルターを切り替えられるようにする。整流方式はダイオードのみとする。
まずは、あまり、失敗の無く、他に影響が無いところで、フットスイッチの製作から開始である。
これは気が楽であるが、見栄えの良いケースを探して、作りたい。タカチのケースでそれらしい物があったので、購入し、製作するが、フットスイッチなので、補強を入れておく。
こんな感じである。インレタも入れて、なかなか、雰囲気が良く、製作意欲が向上している。(向上しているときに作り上げるのが、もっとも良いのだが、急ぎすぎても、失敗する。この辺のコントロールがまた難しい・・)
次は基板の製作である。
大まかに、メイン基板、電源基板、負電源とリレー用電源基板、リレー基板の4種類を製作する。
毎回、基板の製作は決まっていないが、今回はまた、新たな方法で製作する。
まずは電源基板、今回オリジナルのODSと同様にオレンジ色のSPRAGUEも入手してあったのだが、スペースが厳しかったのと、前からかなり気になっていたのでF&T社製のコンデンサを使用する。抵抗はDALEで配置すると、真っ黒で見ているだけでも美しい。
右はメイン基板。部品をケチるのはやめて、抵抗はA&B、コンデンサは旧オレンジドロップ社製を使用。オレンジドロップのくすんだ橙色がA&Bと並べてみると、非常に美しい。
次に負電源、リレー用電源基板。(実はこれは仕様変更をして、使用しないことにした。)抵抗はXICON、コンデンサはATOMを使用。
右は、リレー基板。蛇の目基板に組んだので、見た目は悪いが、部品、線材は吟味した。
並べてみるとこんな感じ。早く通電してみたい。
オーダーしていた電源トランスが到着したので、仮組みした。
THE TWINのトランスも大きいのだが、それにもまして、電源トランスの馬鹿でかさが目に付く。実際、電源トランスだけでもかなりの重量がある。パワー管が電源トランスに当たりそうである。
今回のシャーシは2mm厚のアルミでなかなかてごわく、トランスとACコンセントを取り付けるための角穴を楽にあけるため、フライス盤を購入して加工した。
仕様変更をした「負電源、リレー用電源」を製作しなおした。シャーシに取り付けて、通電試験ができる程度に電源、ヒーターの配線を済ませる。ヒーターは電圧が低いとはいえ交流なので、線を拠って配線する。
まずは、テスト用の真空管を取り付けて、第1回目の通電試験。何回作っても、ここが一番緊張する瞬間。
とりあえず、ヒーター、+B電源など順調な様子。手早く各電源の電圧を測定、狙い通りの電圧に収まった。ひとまず電源関係は問題なさそうである。
ここから先は配線を行ってゆく。半分位終了したところ。大分アンプらしくなってきた。実体配線図を事前に描いておいたので、配線自体は楽。
Larry CarltonとRobben Fordを聞きながらじっくり配線してゆく。
ようやく実体配線図に描いた配線が全て終了した。
長かったが、ようやくアンプとして形になったばかりである。今までの経験上、ここから更に困難を極めることが多いのであるが、今回はどうなることやら・・・
まずは、無入力状態で通電試験を行う。今回のアンプの場合はフットスイッチ、切り替えスイッチが多いので、各機能がうまく動いているかチェックする。
前回電源関係に関しては一度火入れを行っているので、ビクビクしながら電源スイッチを入れることは無い。電源を入れたら、今回は負荷があるので、まずは+B電源を観測する。そして今回のテーマでもある4本別々のバイアス調整である。結果としては当初バイアス電流が流れず、この方法ではだめか?とも思ったが、POWER管の各部電圧をモニターして、SGの配線をし忘れていたことが判明し、無事調整ができることを確認した。
このように、1本の管につき、調整用のボリュームと測定用のモニターピンを持つ。これで、高価な管を挿しても、アイドルバイアスでPOWER管に無理をかけることも無くなる。
バイアスを調整している最中も、初めは+Bをモニターしている。これは、負荷変動で電源が極端に落ちない事を確認するためでもある。
隣のMT9管は12AT7でフェーズインバーター用の管である。見えにくいが、この奥にスイッチがあり、12AX7と12AT7を差し替え可能にした。
ここまできたら、大事に至る失敗はなさそうなので、ギターと、SP BOXを接続し、スイッチON!
しばらく待ってみる・・・・ん?・・・音が出ない、、、
仕方ないので、ダミー抵抗を繋ぎオーディオアナライザーを接続し、オシロスコープで信号をモニターする。今回はトーン回路、オーバードライブ、クリーンの切り替えにリレーを使用していて、プリ段が、なかなか複雑である。
結果として、リレー回路の設計段階でのミスが1点あった。また、見つけるのに苦労したが、シールド線のショートがあった。(これは、オシロスコープと発信機が無ければ検出不可能な不良だった)
スイッチ類の動きを確かめる・・・どうも、ROCK
MODEにならないようである。設計段階に立ち戻って色々検証してみたり、組み上げた基板を再度外して接続を確認したり、、色々やったがどうも動きがおかしい。
ガラエポの両面スルー基板で作成したせいもあり、光ってよく見えない。止むを得ず、ここは基板を再製作する事にした。やはり、ベークで組み上げる。
以前の基板とツーショット。かなり悩ませてくれました。そして右が新しく製作した基板。これで、今回のOVER DRIVE SPECIALは全てベーク基板になる。
かなり苦労した部分。ようやく正常動作をしてくれた。ここから、音質評価、チューニングのスタートである。
これからチューニングであるが、その前に現状の特性を確認しておく。代表的な特性を紹介する。
上はJAZZ MODE時、下はROCK MODE時の歪率特性。JAZZ MODEの方がクリーンな特性であり、歪みだしてからも比較的MAXPOWERまで穏やかに上昇するソフトディストーションタイプである。
ROCK MODEn時はクリップしてからMAX POWERまで一揆に上昇するハードディストーションタイプである。
GAIN、VOL、TONEとも5の状態で測定、この状態で90Wはクリアしている。ダミー抵抗から音が聞こえる位のパワー。恐るべし、パラレルプッシュプル。
周波数特性:低域がうるさく感じるが、特性を取ってみるとそれほど現れてこない。30Hz〜40Hzの感じがうるさく感じるポイントなのであろうか?この辺は要調整ポイント。
無帰還状態でのダンピングファクター、結構低音のボンツキは感じる。
今回も、NFBのOFF/弱/強のスイッチを付けている。左は弱の場合、このときでも低音はグッと引き締まって、低音弦のミュート奏法はきれいに決まる。右は更に強の時。ノイズも無くなり、非常にクリーンで、今回、NFBを見直した。しばらく弾いてみた感じとしては、DFが2程度の値で、ある程度ボンツキが抑えられ、ロングサスティーンも得られるポイントだと感じた。理想的には、低音のDFだけ2〜3、高域側は0.5程度に納めればアンプの反応としては理想かもしれない。
若干の高域と低域のチューニングを施す。かなりいい線いっている。
100Wアンプを試してみて、思うのは、高い音圧でのコントロールのしやすさだろう。なにせ、60Wクラスならとっくに歪んでいるくらいの音量で平気でパッキーンとクリーンサウンドが出るし、オーバードライブをかけても、クランチでも、トーンコントロールが余裕で生きている。18Wのアンプフルアップの良さは確かにある。しかしその状態では、完全にアンプ自体はコントロールを失っている状態であるが、ビッグパワーのアンプは、そんな音量でも、コントローラブルである。大音量に酔いしれて弾かされているが、アンプ自体は非常に冷静な状態でコントロールをいじっていて「まだまだ、いけるんだぜ」とアンプが言っているようである。
たとえば、大音量ドライブサウンドでちょっと高域が耳につくと思っても、トレブル、もしくはプレゼンスをちょっと下げると、スッと気持ちよいところに持っていってくれる。また、GAINもそれほどあがっていないので、なんと、まだBRIGHTスイッチが効く領域である。これは弾いていて非常に気持ちよいし大音量に対してずいぶん冷静な音の判断ができる感じがする。アンプ自体はアイドルの状態と殆ど発熱の状態も変わっていない。(アイドルでも結構発熱するのだが・・)SOUL
BREAKERは気持ちよい音量で弾いていると、発熱はアイドル状態よりも上がっていた。
しかし、部屋でちょっと電源を入れて軽く弾いてみようか、というようなアンプではないことは確かだ。うるさいと文句を言われるような音量でも、ぜんぜんGAINもMASTERも上がっていない。このため本来の良い音が生かしきれないことになる。この辺の事情を考えるとやはり18Wクラスが使いやすいかもしれない。
BOOST MODEはクリーンでONにすると音量が上がりすぎでNGかな?と思っていたが、DRIVE MODEで使用すると、これがいい具合。DRIVE
MODEの設定をチョイクランチ位にしておきBOOSTを入れると、ご機嫌クランチとか、クランチからサスティーンが欲しい場合にはかなり使える。この設定はこのままで良しとする。
リレー基板を新規に製作しなおし、動作に関しては正常になったので、ここからは、アンプの命である音色に関してのチューニングを行う。
これまでオリジナル回路で9台のアンプを製作してきて、出音に対して処置すれば良いポイント、回路等は取得しているつもりではあるが、それにしてもやはりカット・アンド・トライでこなしてゆかなければならない事は事実であり、一番時間のかかる工程である。あるところでやめなければ、本当にいつまでたっても終わらないのがチューニングである。一度完成されたアンプがあり、それを製作するだけならば非常に簡単な事なのであるが、、
チューニングに対して、時間がかかることは確かなのであるが、あまり一気にやらない方が良いと私は思う。例えば定数を1点替えたら一日弾いてから結論を出す。その位の進め具合でなければ、結果として「どこで、こんなに音が変わってしまったのだろう?」ということになってしまうであろうし、良いチョイスがあったとしても見逃してしまうこともある。録音しながら弾いて見て、後でゆっくり客観的に判断するのも良い方法であると思う。
さてさて、今回のアンプはいかがなものか?
一発目、弾いて見ると、非常にブーミー、反応はものすごく良いが、ドライブさせてもバリバリ感があり、おもしろみが無い・・・
録音して見ても、その傾向があり、とてもアップできるような音ではなかった。
まずは、周波数特性に関してチューニングをする必要がある。
低域を削るのは簡単であるが、ギターらしさを殺さないよう、あまりスカスカになってもおもしろみが無いのでやり過ぎは厳禁である。
数点フィルターの定数を替えると、なかなか良い感じになって、ドライブさせても低音が邪魔をすることがなくなった。ドライブサウンドに関してはこのままでも十分合格である。芯が残っていて輪郭が崩れていない。なかなか魅力的なサウンドである。弾いていて、我を忘れ、つい汗をかくまで弾いてしまった。
クリーンに関しては高音とか低音のバランスは問題な訳ではないのであるが、弾いていておもしろみが無い。もっと弾きたいと言う気にならない。
恐らくダンピングが良すぎるのが起因していると思われる。このためダンピングファクターを少しいじる。
この辺のサジ加減も難しいところである。
かなり改善してきたが、やはり弾いていてそれほど熱くなれない。気分転換にクリーントーンの曲をあれこれ聞いて見る。
クリーンの時はちょっとは固さが欲しい、一番欲しいのは粘り気である。そうするとゲイン配分かな。
いつも悩むことであるが、やはり低音がギターのおいしいところを邪魔をしているような感じがまだ残っているので、トーンの定数を少しいじる。チョリ〜ンというようなクリーンが段々出はじめる。かなりいい線来た。f特はベストなところだと思う。後は、アンプの反応に関係するが、DFを少し調整する必要がある。
これは、かなりシビアな値が要求されるある部分の回路をロータリーSWとボリュームを用いて音だしを行いながら定数を決める治具である。
実際にギターを弾きつつ、録音し、最適な定数を決めることができる。この辺はやはり測定器の出番ではなく、弾き手のインスピレーションである。
ある程度のチューニングを終わったので、私なりのインプレッションを、、
まだ、手放しで喜べはしないが、かなりGREAT
SOUNDだ。
OVER DRIVE:OVER DRIVEの音がちょっとショボイかな?と思っていたのだが、VOL3以上にもすると、音圧も凄まじく、エフェクターを通したようなレンジが狭まった歪みではなく、ワイドレンジな心地く弾き手に反応する歪みだ。
BOOST MODE:ブーストモードは、クリーンでもOVER DRIVEでもその威力は凄い。SOUL BREAKERより効きが良く、音量が違いすぎるが、上記したようにこれはクリーントーンでの弾き分けというより、使い方的にはDRIVE MODEでBOOSTするとかなり良い結果が得られる。トーン自体も高域が出るようになるので、DRIVE SOUNDでも音の輪郭を壊さない。
CLEAN TONE:JAZZ MODEではトーン回路が効きまくる。特にMIDを絞ってSWEEPを気持ちよいポイントに合わせると、クリーントーンが爽やかで心地よい。ROCK MODEにすると、トーンが殆ど効かなくなるのであるが、男らしいが、やわらかいサウンド。
クリーントーンに関しては、今使っているSOUL BREAKERより音が硬い感じがするが、これは、部品がなじんでいない為でもあるので、少し様子をみて、それでもだめなら、少し定数を調整する。基本的にはSOUL BREAKERで実績のある定数なので、大きく外してはいないのであるが、トランスの違い、パワー部の違いによって、若干の回路定数の手入れは必要かもしれない。それにしても100Wの威力は凄い。VOL3でも部屋中がびりつく。ある程度の完成度になったら、スタジオに行かなければ、評価ができなさそうである。
また、当初フェーズインバーター段の真空管を12AT7と12AX7に切り替えられるようにしたと述べたが、テストしていて、やはり12AT7は硬めに感じた。パワー管を4本独立してドライブするので、内部インピーダンスが低い管の方が有利なのではあるが、高域が劣化しないため少しハイファイなイメージを受ける。この辺はオーディオアンプと考え方が根本的に異なるところである。
12AX7は波形を見ているとつぶれやすく、ダイナミックレンジが狭く感じるのであるが、それこそがコンプレッション感であり、ギターアンプである所以である。やはり、なんだかんだいってもギターアンプには12AX7ということか・・
結局、エッセイ75話で回路のシミュレーションをした事がそのまま言えているということである。
ここまでで、自分的には90%満足である。この先、このアンプのキャラクターをガラッと変えるようなチューニングは施さないつもりである。なので、この先ちょっと時間にチューニングを任せることにして、一度アッセンブリしてしまう。
ここからは少し楽しもうと思う。キャビネットはアンプが増えてきたこともあり、セパレート。この重いOver Drive Specialもセパレートなら持ち運び可能である。外装はトーレックスではなく、アッシュの木目がそのままである。SPは例によってEVM-12Lを使った。100WクラスはSPのチョイスが非常に少ない。
なかなか良い雰囲気ではないか。半田コテをギターに持ち替えてしばしエージング。
隣に写っているのは前回作のSOUL
BREAKER(自作9号機)である。この先SOUL
BREAKERとの弾き比べ等も行って冷静にチューニングを行ってゆく。
ここまでのサンプル音源
※73年製 ES335をアンプ直に接続。GAIN5
MASTER VOL2前半はROCK MODE、途中からOVERDRIVE
MODE+BOOST
大分自分のイメージするDumble Over Drive Specialの味が出てきているとおもう。録音された音はちょっと輪郭がぼけているかな?実際聞いた音はもっとレンジが広くもうちょっと芯のある音。
更にチューニングは続く・・・
この状態のまま、エージングをかねて毎日弾いていた。贔屓目もあるので、友人等に弾いてみてもらったりして、感想をもらったり、できるだけ冷静に評価してゆく。
大分良い感じであるが、問題点が何点か見つかる。
1、 大音量でGAINをあげるとオーバードライブ段の発振が確認された。
2、 クリーンでの音が硬い。f特ではなく、どちらかというと、反応が良すぎる。逆にこれだけの反応があるなら、それに見合ったサスティーンが欲しくなる。
上記の問題点はかなり難題である。しばし頭を悩ませていたが、連休に入り、HRLさんが東京から、自作アンプを持って新幹線で遊びに来てくれた。酒を飲みつつ、弾き比べ、議論をしていた。その中で、解決案が生まれた。
基板を剥がす大手術になりそうであるが、このアンプは一生物にする予定で、手間隙を惜しまないつもりで製作を開始したので、ここが踏ん張りどころである。
今回のアウトプット・トランス。これはFENDERのTHE TWINのトランスである。一度分解して、内部を確認。
そして、配線を外して、基板をリフトアップ。(また、バラバラだ・・)この作業はちょっと、げんなりする作業だった。
何とか元通りの姿に戻った。ちょっとパワー段の配線が変わっている。ここから、また、しばしチューニングが始まる。
まずはパワー管を6L6GCから5881へ変更した。好みもあるが、ワイルドな感じが出てくる。ビンテージ管ではないので、少々無理をさせてバイアスは結構浅めにした。
SPは録音した音を聞いても良く聞き取れないが、反応が良すぎるため、少しマイルドな感じが欲しい。
しばらくエージングをしていたが、なにやら、ガサガサ音が出始めた。場所の特定を行ったが、今回ビンテージのマイラコンデンサを使ったのだが、そこが原因であった。これを交換し、ガサガサ音は無くなった。(やはり、コンデンサは新しいものが信頼性が高い)
また、当初、バイアス電流を70mA程度流していたが、やはり、夏なので、1時間も使っているとかなり熱くなってきて、だんだん音も変わっていてしまう。OFF会もあるので、半分の35mAに調整した。音の差はわからない程度である。波形を確認したが、クロスオーバー歪も出ていないので、無難なバイアス電流であろう。
また、低域の出方については結構抑え目にしていたのだが、やはり弾いているうちに物足りなさを感じてきて、ブーミーになる手前まで上げてみた。これによって低域だけではなく、高域のきらびやかさも増したような気がする。こういう思いがけない特性の変化もまたアンプ製作の面白いところである。
これで、完成!最終的な音はOFF会の報告にて。