第78話(07.10.08)
10号機も順調に仕上がり、エージングも進んで、満足度が高いアンプになってきた。
次は、構想的にはアンプの秘密のアクセサリを作成しようと思っていた矢先、突然一台のアンプが送り付けられた。
しかも、後日、非常に我侭なメールが・・・
「今回送ったアンプの中身は全て入れ替えで、Dumble ODSに変更!さらに、そこから進化させて、これと、あれと、それと・・・
という機能を付けるべし!」
内容はかなりマニアックな、そしてちょっと危険な内容である。
しばらく頭をクルクル回してその仕様が実現できるか考えたが、何とか実現できるかな・・・という構想ができた。
回答しようかな?という矢先、今度は電話攻撃で、
「いや〜、できそうかね!」
「な、何とかできるかもですね、、、」
「じゃ、よろしくね、製作過程はHPに掲載してね。あっ、でも、元のアンプの正体ばらさないで・・・ガチャ」
どこかで、聞いた声であるが、、、、
というわけで、へんてこりんなスタートではあるが、11台目のアンプ製作(作り変え)のスタートである。
まずは、敵を知るためにも、中身をばらしてみる。なかなか、合理的な作り、なかなかの名機であると思う。しかし、丸々入れ替えなので、中身は参考程度です。
それでは、回路検討の始まります。
まずは、プリアンプ。これは、70年代のDumble Over Drive Specialに準ずるが、オーナーはドクリーンも重視したいとのことで、私のODSにも搭載したSWEEPを付けて、更にFOOT SWでMIDは固定になるようにとの事。(ちょっと、ブチッ!といってしまうかも・・・)
パワーアンプ段。EL84のパラレルで、自己バイアスと固定バイアスの切り替え付。
電源。本当は真空管整流と、ダイオード整流の切り替えも!といわれたのだが、さすがにスペースが厳しく、許してもらった。
この仕様で、回路図、実体配線図を描いて、何度と無くメールを送る・・返答はかなりマニアックでヘロヘロになってきた。
進捗が遅れていたが、ここまでの進捗をまとめておく。
まずは、我侭依頼主であるMr.Xと綿密な仕様構想を行い、回路が出来上がってきたので、基板の作成に取り掛かる。
今回も目指す音はDumbleの進化系なので、ベーク基板に信号系の抵抗類はA&Bがメイン、コンデンサはOrangeDropをメインでチョイスした。
基板はボール板を使用し穴あけをしてゆく。ドリルの歯を新しくしたのだが、切れ味が良くて気分が良い。やはり道具はきちんとしていたほうが良いと思う。
また、電源系は前回初めて使用したF&T、Daleの抵抗(これはエージングになかなか時間がかかったが、信頼性もよく気に入っている)を使用する。
やはり、見た目が真っ黒でブラックビューティだ・・・
次に、制御系
フットスイッチと信号を切り替えるリレー部である。制御系とはいえ、信号の切り替えの基板は音の通り道なので、コンデンサにはオレンジドロップ、抵抗にはA&Bを使用した。
ラッチ回路としてトランジスタを使用することにした。
フットスイッチの筐体は、前回のOverDriveSpecialと同じ物を使用。
加工もしやすく、見た目もかっこいい。この筐体に回路を組み込んで行く。
フットスイッチ完成。この後、フットスイッチに電源を入れて、テスターチェックで動作を確認。
文字入れはこの段階ではまだ行っていない。選んだスイッチの上にLEDを設けてインジケーターが光るようにしている。これはOverDriveSpecialでも行ったのだが、使っていると非常に気分が良い。
さていよいよ、アンプ本体の解体に取り掛かる。
左は元々のアンプの様子。元の回路は面白い仕掛けがあった。まずはフロントパネルの部品を外してゆく。
改造後使用するものに関しては、分からなくならないように、ラベルを貼ってゆく。
なんとか、元の臓物が全て取り外し完了。(左)
作成した基板を上に載せてみたところ(右)
それにしても、このシャーシはスチール製なので、これから穴あけをするのだが、なかなか大変そう・・・
今回一番苦労したのは、実はプレートの作成だったように思う。
まずはアルミプレートに穴あけと塗装。(左側)
シルク印刷を施したものが右側(命名はMr.Xです・・笑)
プレートが無いとスイッチやポッド類が取り付けできないので配線が先へ進めません。
何とかプレートを取り付けてスイッチ類などのパーツを取り付け、配線を進めてゆきます。ブロック毎完成する度に電源を入れてチェックを行い進めてゆきます。
このとき、スライダックで入力電圧を下げて運転すると、失敗してもパーツを壊すことが無く安心です。特に今回は電源トランスの素性が分からなかったため、この作業は不可欠です。
左側の写真のおくあるのがスライダック、交流電源電圧を可変することができますので、たとえ電源トランスの素性が分からなくても、入力電圧を数点プロットすれば100V入力したときに+Bが何Vになるか推測でき、コンデンサをパンクさせることがありません。
結論的には真空管を全て抜いた状態ではコンデンサ耐圧を上回り、パンクしても文句が言えない状態でしたので、電源回路は変更しました。
こうすると、最後にドキドキしながら電源を入れる恐怖心から開放され、精神的には非常に楽です。
ほぼ配線が終了し、通電、音出しです。
通電に関しては、上記作業のおかげで手に汗握ることはありませんでした。
プリの2段目の配線が1箇所間違って音が出ませんでした・・・
オーディオアナライザーとオシロスコープがあれば、こういうトラブルにもばっちり対応できます。
間違いを修正し、音出し完了。まだ録音していませんが、音の第一印象は10号機とそっくりな感じがします。
OPTのせいか、ちょっと、このアンプの方が低音が出ており、BOOST状態ではブーミーな感じがするので、修正の必要がありそうです。
でも、意外とLarry Carltonなんか聞いてみると複弦の音はブーミーだったりしますね。バランスを考えて追い込んでいきましょう。
今後は、フットスイッチとあわせて機能のチェックを行った後、音質を追い込んでゆきます。