立体視用画像(3D画像)の見方と作り方

「どきどき科学探求東部教室」山崎自然科学教育振興会、 2006年8月5日の記録として作成

 3D画像は地形(活断層、火山、扇状地など)、建造物、結晶の成長、ウイルスの増殖、医療(臓器の立体視)など広い分野の研究に使われる。
 動物の目は左目と右目で見た2枚の画像を、目のレンズ(水晶体)が調節して、1枚のずれのない立体画像にする素晴らしい能力を持っている。
 次のA,Bが3D画像の基本である。
A、 左目に替わる画像と右目に替わる画像の2枚を作成する。
 (デジカメとパソコンを使う方法、色紙とハサミ、ノリを使う方法など)
B,  この2枚の画像を重ねて見れば立体的に見える。
 
不思議な3D画像が出来たり、新たな発見があったり、楽しい実験である。

 1、 3D画像の見方(仮称 3D Loupe法)
  立体視は訓練すれば裸眼で何も使わなくてもできる。しかしこつを覚えるのが難しく、遠近が逆(交差法)になってしまうこともある。
  高校生に裸眼で立体視する方法を教えて、直にできる生徒は約20%である。
  手元にあった老人用の拡大鏡2枚を使ったところ、簡単に立体視できることが分かった。
 立体視する方法はいろいろあるが、この方法は3D画像がプリントされた用紙でも、パソコンのディスプレイでも楽に立体視できる。
 高校1年生(40名)、小学6年生(40名)の実験で95%の生徒が立体視できた。また老眼が進んだ高齢者(私)でも立体視できる。
 


  沼津市小6 沼津市立高校にて(左)と高校生(右)の実験(2006年)




 
 2007年8月4日 どきどき科学探究教室 沼津市小6 沼津市立高校にて

@拡大鏡2個使う(仮称 3D ルーペ平行法)
 拡大鏡を2個使う。視野を広くするため、拡大鏡の直径は大きく (7.5cm以上)、倍率は小さいものがよい。(2.5倍以下)


 
写真1 拡大鏡

 写真左 直径7.5cm、倍率2.5、 100円ショップ( ダイソー)で購入できる、これで十分。
 写真右 直径10cm、倍率2.0  1250円 高価だがベターである。
 
 写真2のように両手で拡大鏡を持って、左目で左の画像、右目で右の画像を見るようにする。
 左目の拡大鏡で見える2枚の画像と、右目の拡大鏡で見える2枚の画像で4枚になるが、内側の2枚の画像をかさねて、3枚の画像になるように拡大鏡を動かして調節する。
3枚の真ん中の画像が3D画像になる。写真3の3D画像では黄色の文字3Dが近くに、緑の丸が遠くに見える。


注意
 ・老眼鏡などメガネは外した方が良い。
 ・拡大鏡は目に近づけた方が良い。
 ・目に拡大鏡を近づけたまま、顔を移動してピントを合わせる。
 ・画像にずれがある場合は2枚の拡大鏡を、それぞれ上下左右 に少し動かして、調節する。
 ・平行法用の立体視用の画像を使う。

                                        


写真2−1, 2枚の拡大鏡でプリントされた3D画像を立体視する。(平行法) 孫の万生香



写真2−2, 2枚の拡大鏡でパソコンの3D画像を立体視する。孫の裕




写真3 3D画像 平行法で見ると黄色の3Dが近くに、緑の丸が遠くに見える。
     交差法で見ると遠近が反対になる。


A拡大鏡1枚使う(仮称 3Dルーペ交差法)
 写真4のように拡大鏡を1枚使うと交差法で見ることが出来る。交差法で3D画像を見ると遠近が逆になる。
左目で右の画像を、右目で左の画像を見ている事になる。
写真3の3D画像を見ると、緑の丸が近くに、黄色の3Dが遠くに見える。
注意
  ・老眼鏡などメガネは外した方が良い。
 ・拡大鏡は1枚使う。直径の大きい方が良い。
 ・3D画像が大き過ぎると立体視が困難になる。



写真4, 1枚の拡大鏡で立体視する。(交差法)

B裸眼による立体視(何も使わない方法)

 裸眼による立体視には平行法と交差法がある。
平行法は焦点を遠方に置き、視線を平行にして、3D画像をみる。
(交差法は3D画像の前で視線を交差して、左目で右の画像を、右目で左の画像をみる。一般の3D画像を交差法で見ると遠近が逆になる。この見方を知覚が覚えてしまうと、なかなか直すことが出来ないので注意する。)
 裸眼による立体視(平行法)を、次のような方法で練習してみる。

ア、窓を開けて、遠くの樹木、電柱などを見て焦点を合わせる。遠くの物を見たとき、左右の目の視線はほぼ平行になっている。
イ、アの状態で、写真5のように左右の人差し指を目から 約20cm離してたてる。指と指の間隔は約15cmにする。
ウ、焦点は遠方の樹木や電柱へ合わせているので、指は、はっきり見えないが、2本の人差し指の間隔を近づけていくと3本に見えるようになる。
 3本の指になる見方が立体視である。この見方に慣れると、3本の指がはっきり見えるようになる。
 同じ見方で3D画像を見ると3枚の画像になり、真ん中の画像が立体画像になる。



写真5 人差し指を使って裸眼による立体視の練習


2、 3D画像の説明と作成
 多くの動物は水平方向に離れた2つの目を持っているので、物体の遠近を知ることができる。これは、生活していくのに是非必要なことである。
 片目では動物を捕食するのが困難になり、片目のサルは枝から枝へ飛び移る時、目測を誤り、簡単に木から落ちてしまう。
 3D画像は左目用と右目用の2枚の画像を作成し、並べたものである。

@3D画像の作成、その1 色紙とハサミ、のりで作る3D画像
 この3D画像の作成は小学生の実験用に考えたものである。
考え方
 基準面より近くや遠くにある物体を基準面に投影すると、左目と右目で位置がずれる。逆に位置をずらせた左目用と右目用の画像を作成すれば3D画像ができるはずである。

カードケースを基準面とし、基準面より近くにある物体、及び遠くにある物体を基準面に投影したとき、左目と右目で見た物体の位置のずれを調べる。カードケースに左目で見た投影図形を挟んでおくと良い。(写真6)
基準面より近くにある物体 →物体を左目(片目)と右目(片目)で見たときのずれを調べる。
基準面より遠くにある物体 →物体を左目(片目)と右目(片目)で見たときのずれを調べる。



写真6  物体の遠近と左右の目で見たずれを調べる。


 このずれを考慮した左目用の画像と右目用の画像を作成すれば、立体視できる。
 青空に、いろいろな色の風船が浮かんでいるというイメージの3D画像を作成する。
丸い風船の紙は色画用紙とホールパンチャで簡単にできる。
左目用の画像と右目用の画像上に、同じ色の風船を水平方向(両目が水平方向にあるから)で少しずらせて置く。
左の画像の風船をのり付けし、右の画像の風船はのり付けせず、横方向へ動かし、立体視の遠近を調べる。
立体視できることを確認して、右の画像の風船ものり付けする。(図1、写真7)

考察1、 風船の位置のずれと遠近の関係を調べてみる。(図1)
考察2、 ホールパンチャで同じ大きさに切った風船は、立体視すると、遠くのものほど大きく見える。(新発見である。)
 この不思議な現象はどうして生ずるのか考えてみた。
二つの同じ大きさの風船を考える。一方の風船を遠くへ置くと小さく見えるはずである。それが同じ大きさに見えるということは遠くへ置いた風船が近くの風船より大きいからであるという経験から来る錯覚だと思う。



図1 
考察1 左右の図で、同じ色の風船や文字の位置のずれと遠近の関係が分かる。
立体視すると、白い風船が最も近く、ピンク、科学、淡青、黄色の順に遠く、沼津の文字が最も遠くに見える。




写真7  富士山を背景にした風船の3D画像、ピンクの風船が近くに、緑色や黄色の風船が遠くに見える。

A3D画像の作成、その2 デジカメとパソコンを使う。
 カメラの位置を水平方向へ移動して、左目用と右目用の2枚の写真を写す。
撮影した写真をパソコンへ取り入れ、画像処理ソフト(フォトデラックスやフォトショップなど)を使って、左右を間違えないように、2枚を並べる。(写真8)
注意
・移動は左から右へと決めておくとよい。1枚写真を撮って、右へ移動して2枚目を撮る。
・移動距離 近い(数メートルまで)被写体は10cm、遠い被写体(景色など)は約150cmがよい。距離を大きくすると立体感は増すが不自然になる。
・2枚の被写体の中心がずれないように注意する。ファインダーを覗いて十字に合わせる。
・2枚の写真は撮影条件(ズーム、シャッター速度、絞りなど)を同じにする。



写真8  御殿場で写した3D画像。左の写真を写して、約150cm右へ移動して右の写真を写した。


B3D画像の作成、その3  3D合成画像
 画像処理ソフト(PhotoDeluxe)を使って写真の合成をする。
 小惑星探査機 はやぶさ の写真を切り抜き、小惑星イトカワの写真へ位置をずらせて貼り付ける。(写真9)

写真9−1 合成する前の小惑星イトカワと小惑星探査機はやぶさの写真




写真9−2  3D合成画像、小惑星探査機はやぶさや文字(小惑星)が近くに見える。


C3D画像の作成、その4 タイル貼り3D画像
写真10,写真11の3D画像は入浴中、風呂場の水とお湯の2つの蛇口及び背後のタイルを立体視して気付いた方法なので「タイル貼り3D画像」と呼ぶことにする。(新発見である。)
 同じ画像を水平方向へ、タイルを貼るように並べる。画像と画像の間隔(タイルの目地)を変化させると3D画像になる。
目地の幅や目地の置き方によって3D画像の見え方が変化する。
 立体視すると、上の2枚の赤花画像が3枚に、中と下の画像も1枚増えて5枚づつに見える。他の見え方もある。



写真10 同じ写真を水平方向へタイルのように貼り付けた3D画像(日本春ラン)




写真11 同じ写真を水平方向へ貼り付けた3D画像(星雲)

「タイル貼り3D画像」の説明
「タイル貼り3D 画像」も基本的には、これまで説明した立体視用画像と同じである。
写真12、写真13の説明図のように左目用の画像と右目用の画像を並べる。これのくり返したものである。
いろいろな画像を作成し楽しんでいる。




写真12 2枚画像を立体視する基本図




写真13 3枚の写真を並べた