富士山の噴火 富士山の噴火は百数十年後  2017年2月10日 記 

  
1.富士山はいつ噴火するか

 火山がいつ噴火するかは、その火山の直下にあるマグマ溜り(深さ数Kmから10数Km、大きさ直径約10Km)のマグマの状況による。マグマ溜りはマグマが補充されて、いっぱいになると、マグマの圧力が大きくなり、噴火が近づいたことになる。マグマ溜りの周囲の岩盤がマグマの圧力に絶えられなくなったとき、火山は噴火する。また、いっぱいになった状態のとき、巨大地震があるとマグマ溜りの周囲の岩盤に地震動による割れ目が生じ、これがきっかけになって、火山噴火が始まることもある。
 大噴火により、マグマ溜りのマグマが少なくなると、マグマの補充が行われ、次の噴火までの期間は静穏期になる。火山噴火はかなりの時代間隔(数百年から数千年)を於いて行われることが多い。1万年に一回程度発生する巨大噴火により、100Km³以上の大量マグマを噴出すると、マグマ溜りは潰れて、陥没カルデラが生ずる。7000年前に発生した鬼界カルデラ噴火は、この巨大噴火で半径100Km周辺が火砕流に覆われるという大変恐ろしい噴火もある。
 このように、火山噴火の予知はマグマ溜りの状況を知る必要があり、GPSによる火山斜面の変化、地震波によるマグマ溜りの調査研究などが重要である。
 歴史時代の記録に残っている富士山の噴火は多数あるが、貞観噴火宝永噴火は際立って大きい。

・貞観噴火⇒西暦864年噴火、流出した溶岩 約1.3Km³
・宝永噴火⇒西暦1707年噴火、噴出したスコリアを溶岩に換算 約0.7Km³


 貞観噴火から宝永噴火まで843年間(1707年−864年)大きな噴火がなかったのは、貞観噴火で多量の溶岩を流出したので、マグマ溜りのマグマが少なくなり、補充に期間がかかった為と思われる。
 宝永噴火から現在まで310年間(2017年−1707年)経過している。貞観噴火で流出したマグマ1.3Km³を満たすのに843年必要とした。他の小さな噴火は噴出物が少ないので無視する。マグマ溜りへ補充されるマグマの量は経過する年に比例するとして計算した。マグマ溜りへ、どのようにマグマが補充されるか、単純ではないと思うが、概略を知るための試みである。宝永噴火で噴出した0.7Km³を満たすのに必要な年数(H)は454年となる。
        1.3 : 843 = 0.7 : H      H = 454年
宝永噴火から、今年(2017年)で310年経過している。
           454年 ー 310年 = 144年
富士山のマグマ溜りがマグマで一杯になるのは、あと百数十年後となる。
 
 2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の4日後に富士山直下15Kmの深さでM 6.4の地震が発生し、その余震活動は2週間以上続いた。宝永の噴火は宝永地震から一ヶ月後に活動が始まったので、富士山が噴火するのではと心配した。しかし、富士山のマグマ溜りの上の岩盤に割れ目ができた程度で終わったようである。計算結果のように、富士山のマグマ溜りはマグマでいっぱいになっていないようである。
 富士山のマグマ溜りがマグマで一杯になっていなければ、富士山の噴火より先に起こると、心配される東南海地震が発生しても、富士山の噴火が誘発されることはないだろう。
 富士山のマグマ溜りは地下約20kmと深く、変化が分かりにくいようである。富士山が噴火する頃までには、マグマ溜りの調査研究も進み、噴火の正確な予知ができるようになっているに違いない。

私のオリジナルな計算である。ご意見をお寄せ下さい。メールアドレス aihara@mxz.mesh.ne.jp

2.次の噴火は富士山のどこか

 富士山は約10万年前から多量の溶岩や火山灰などを繰り返し、噴出して成長した複成火山である。中央には山頂火口があり、山麓には多くの側火山がある。山頂火口からの噴火は2200年前にあってから行われていない。富士山は山頂まで尖った円錐形で、山頂に近い火道は熱の発散を護る周囲の岩石が少なくなる。火道の上部のマグマは冷え固まり、火道を塞いでしまったと思われる。その後の噴火は貞観噴火、宝永噴火ともに側火山である。次の噴火は富士山の北西から南東方向の山麓に側火山として行われるだろう。噴火は噴火口が標高の低い所にできると溶岩流を流出し、高い所にできると爆発的噴火で、スコリアを噴出する可能性が高い。(マグマの圧力と位置エネルギーの関係)
噴火する場所は噴火が近づけば火山性の弱い地震が発生するので特定できる。

3. 噴火のシナリオ
 
 噴火の前兆現象から噴火にいたる経過は防災対策上重要である。富士山ハザードマップ検討委員会が作成した、宝永噴火と貞観噴火のシナリオに加筆した。

・宝永噴火のシナリオ(標高が高い急斜面の山麓)
・x年10月から11月  震源が富士山の下の弱い地震(M 2〜M 3)が起き、次第に活発化する。
・12月3日〜15日  地震活動が多発,土地の傾斜が始まり、傾斜計にわずかな変化。
・12月15日〜16日 地震が急増(1日数十回),北西ー南東方向に数cmの縮み、北東ー南西方向にわずかな伸び、などの地殻運動
・12月16日午前  M 5の大きい有感地震が起きる。土地の傾斜変化は大きくなる、10時噴火微動、空振を伴って宝永第2,第3火口で軽石噴火が始まる。
・12月16日  夕方噴出物は白色の軽石から黒いスコリアに変わる。黒い火山灰が神奈川、東京など広い範囲に降る。
・12月17日〜25日  17日夜、大きい地震があり、宝永第1火口からの噴火が始まる。噴火は強弱を繰り返す。
・12日25日〜1月1日 宝永第1火口からの噴火が活発化、1月1日にやや爆発的噴火をした後、一連の噴火活動は終る。
・4月〜8月 丹沢山地、足柄平野で土石流、洪水による被害が発生する。

・貞観噴火のシナリオ(標高が低い緩斜面の山麓)
・x年4〜5月  震源が富士山の下の弱い地震(M 2〜M 3)が起き、次第に活発化する。
・6月上旬    地震活動は活発(M 3)
・6月中旬  噴火前日M 5程度の大きい地震がある。東京など遠方でも揺れを感じる。
 噴火当日午前、M 5程度の大きい地震があり、昼頃、爆発的噴火があり、スコリアを噴出した後、割れ目  から溶岩を流出する噴火が始まる。長尾山を中心に大量の溶岩を流出する。溶岩は朝霧高原、精進湖、  西湖方向へ流れる。
・8月中旬  溶岩の流出噴火は終わる。溶岩の堆積範囲は、西は朝霧高原、北は精進湖、東は西湖・鳴沢  集落に及ぶ。
 
噴火の前兆現象から噴火にいたる経過は次のようになる可能性が大きい。

ア、震源が富士山の下の弱い地震(M 2〜M 3)が起き、次第に活発化する。
イ、地震が急増、土地の隆起、傾斜など僅かな地殻変動が始まる。
ウ、M 5程度の大きい地震があった後、爆発的噴火があり、スコリアを噴出する。
エ、次に溶岩流の流出が始まる。
オ、溶岩流の流出は1〜3ヶ月続き、1輪回の噴火活動が終わる。


4.富士山の過去の噴火から考えられる災害

溶岩流による災害 富士山の側火山は北西から南東の方向に分布している。次の噴火もその方向に側火山ができる可能性が大きい。
玄武岩質の溶岩は軟らかいので傾斜が急だと流れの速さが大きくなる。溶岩の量が多いと、谷に沿って三島溶岩流のように遠方まで流れる。噴出する溶岩の温度は1000℃〜1200℃である。(1.富士山の地質と火山 地質図参照)
テフラ(火山灰、スコリア等)による災害 宝永の噴火では溶岩の流出はなく、スコリアを多量に放出した。積もった厚さは須走で2〜3m,小山で1m,横浜で5cmになった。偏西風帯のため、火山灰は西風によって、富士山の東方に運ばれる。交通網にもたらす災害は大きい。(2.富士山の噴火活動 噴出物の分布図参照)
泥流による災害 小山町須川橋付近の噴出物には、約2万年前、約1万6500年前、約2500年前の3枚の火山泥流堆積物がはさまっている。2500年前のものは御殿場泥流と呼ばれているが、御殿場市を広く覆い、三島市の扇状地も御殿場泥流で出来たと言われている。こうした崩壊による災害も心配される。(1.富士山の地質と火山 参照)
その他 地すべり,火砕流,火砕サージ,火山ガス、地殻変動、地下水の変動、空振などの災害も考えられる。

5.富士山ハザードマップ検討委員会 中間報告(平成14年6月12日)  2002年8月2日記        
 富士山ハザードマップ 中間報告の資料はYahooから 「富士山の火山防災対策」で検索すると入手できる。私なりにまとめてみる。
(1) 富士山の溶岩を流出する火口のほとんどは、山頂方向に連なる割れ目火口で、大部分の溶岩はもっとも低い標高の火口から流出した可能性が高い。
(2) 山頂火口からは約2200年前以降マグマそのものを噴出する噴火は発生していない。
(3) 2200年前以降は山頂以外の場所からの噴火が多く(測火山),平均的な噴出量はそれ以前よりも少ないという特徴がある。
(4) 山頂の噴火は山頂火口から,繰り返し発生したが、山頂以外の測火山では同一火口からの再噴火の例は知られていない。(1.富士山の地質と火山 富士山の地質 単成火山 参照)
(5) ある火口から見て、他の火口は概ね1km以内の範囲に存在する。今後噴火する可能性の高い領域は、既にある火口から1km以内と考えられる。
(6) 溶岩や火砕物の噴出量によって、小規模(0.002〜0.02km³),中規模(0.02〜0.2km³),大規模(0.2〜0,7km³、宝永噴火,貞観噴火)に区分する。規模の大きな噴火は規模の小さな噴火に比べて狭い領域で発生している。いずれの規模の噴火も山頂をはさんで北西から南東方向に分布している。(図10)

溶岩流の到達時間を表した地図