緊急地震速報と心得 中学・高校生の皆さんへ 距離と速さとかかる時間の計算


緊急地震速報  

 P波(縦波)の初期微動から、ある地域に震度5弱以上の地震が予想されると、気象庁からテレビ、ラジオで緊急地震速報がながされる。緊急地震速報からS波の揺れが来るまでを考察してみる。
 地震の波を地震計で記録すると第1図のようになる。
P波はたて波で、戸障子などが、かたかたという小さな揺れである。伝わるのが速く、最初に地震計に到着する。この小さな揺れが続いている時間を初期微動継続時間(t秒)という。初期微動で8分目程入ったコップの水がこぼれるときは、直ぐに大きな揺れが来る大地震である。
S波はよこ波で、家がゆさゆさと揺れる。伝わるのが遅い。振幅が大きい。
L波は表面波といい、地表面を伝わる。振幅がさらに大きい主要動である。


第1図 地震計による地震の記録

地震の波が伝わる速さは伝わる岩石の種類によって異なるが、平均的な値は次のようになる。
   P波の速さ  Vp=約5.5Km/sec
   S波の速さ  Vs=約3.3Km/sec
   L波の速さ  Vl=約3.0Km/sec


第2図 震源から2つの経路で三島へ

 第2図のように震源を東海地震とし、三島市に緊急地震速報が流れ,P波、S波が来るまでを考察してみる。
地震発生で、P波、S波が同時に震源をスタートする。数値には誤差が大きい。

@震源から20Km離れた東海地方の地震計が東海地震のP波をキャッチした。
  P波が震源から地震計までかかる時間は   20Km/速さ5.5=3.6秒
  S波が震源から地震計までかかる時間は   20Km/速さ3.3=6.1秒 
A地震計から気象庁へは電波など電気信号で送られるので時間はかからない。(光の速さである)
  気象庁のコンピユーターが計算するのも瞬時にできる。(コンピュータが計算に 1.4秒かかるとする。)*1
  地震発生から5秒後(3.6秒+1.4秒)にラジオ,テレビから緊急地震速報がながれたとする。
B三島市は東海地震の震源から60Km離れているとする。想定震源域は面で誤差は大きい。
  P波が震源から三島市までかかる時間は 60Km/速さ5.5=11秒
  S波が震源から三島市までかかる時間は 60Km/速さ3.3=18秒
C結果
三島市では緊急地震速報を聞いてから、P波は6秒後( 11−5=6秒)到着し、
S波は13秒後(18−5=13秒)に到着することになる


東海地震発生→地震計→気象庁→5秒後に緊急地震速報→6秒後にP波到着→それから7秒後にS波到着
L波については自分で計算してみる。


*1:気象庁のコンピユーターやアプリケーションによる。岩手・宮城内陸地震の緊急地震速報で約1秒のようです。計算では1.4秒とした。

初期微動継続時間(t秒)と震源距離(dKm)の関係(大森公式)
 P波の速さをVp Km/秒
 S波の速さをVs Km/秒
P波とS波が震源を同時にスタートする。震源距離 d Kmを伝わるのにかかる時間
    P波は d/Vp 秒、  S波は d/Vs秒 となる。
この時間の差が初期微動継続時間であるから、次の式ができる。
         d/Vsーd/Vp =t
上記のVp=5.5 Km/秒、Vs=3.3 Km/秒を使って整理すると
         d=8.3 t   、  d=k t    大森公式
となる。8.3という数値は分布する岩石によって異なるのでkとする。kは6から8の数値が使われる。
大森公式からも、震源距離が遠くの地震ほど、初期微動継続時間が長くなることが分かる。

緊急地震速報があった時の心得


 駿河湾から紀伊半島、四国の南東にある南海トラフ(フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境)には、数十年以内にM9クラスの大地震が心配されている。

@数秒間で広場へ出られる場合は飛び出すと良い。(屋根かわらの落下やブロック塀の倒壊の心配がない広場。)
A木造家屋の二階にいた時は二階の方がかえって危険が少ない。
B部屋の中ではしっかりした家具の下に身をよせる。教室では机の下で机の脚を持っている。
 安全な寝室を用意する。
C火災の防止をまっさきにする。大きな地震で家が壊れると、動けなくなり、火を消すことができない。
 ただし振動に反応して、自動で消えるガス器具やストーブなどは別。
D海岸にいた時は津波の心配があるので高台に逃げる。
E震源が火山の時は噴火の可能性がある。
F車を運転している時はハザードランプをつけ、ゆっくり速度を落として路肩へ止める。
Gがけ崩れに注意する。