ボーリングコアーから調べた三島溶岩の気孔   

1. はじめに
 
楽寿園の湧水調査のため、地下地質調査が行なわれ、「三島市小浜池保存調査に関する報告書 1,985年」、「小浜池の地下構造と地下水・湧水」 土 隆一などの資料がある。 
この調査のボーリング コアー及び2,010年、郷土資料館建設予定地のボーリング コアーが郷土資料館に整理され、保存されている。
 楽寿園に分布する三島溶岩は、約1万年前の富士山の噴火で流出した玄武岩質溶岩である。斜長石、キセキ、カンラン石などの鉱物を含み、キセキ・カンラン石玄武岩と呼んでいる。
 三島溶岩は気孔が多いのが一つの特徴である。しかし溶岩単層(1flow unit)をよく見ると、中心付近はち密で気孔が少なく、中心から上下に離れるに従い、気孔の数が多くなり、気孔の直径も変化する。単層と単層の境ではコークス状(クリンカー)になっていることがある。(相原 淳 2,011年1月13日)

2, 多孔質度について

溶岩単層調査のため、多孔質度として、写真 T1からT5のように、5段階に分けた。

T1:緻密で気孔がない。溶岩単層の中心付近。
T2:小さな気孔が少しある。気孔の直径約0.5cmから1.0cm
T3::気孔が多い。直径が大きい。約0.5cmから約1.2cm
T4:気孔が合体して数は少ないが大きい。気孔の直径は約0.5cmから約3.0cm
T5:コークス状(クリンカー)、ガサガサしている。


多孔質度 T1:緻密で気孔がない。白い鉱物はシャチョウセキである。
有色鉱物はカンランセキやキセキである。

多孔質度 T2:小さな気孔が少しある。
気孔の直径0.5〜1.0cm
(付箋紙の1.5mは1.5cmのミス)

多孔質度 T3::気孔の数が多い。
気孔の直径0.5〜1.0cm。

多孔質度 T4:気孔が合体して大きくなる。
気孔の直径0.5〜3.0cm

多孔質度 T5:気孔や割れ目が多く、ガサガサしている。
風化し色が変化していることもある。

3.考察と結果

 ボーリングコアを観察すると、溶岩単層の中心部で気孔が少なく、上下に離れると気孔が多くなる。(高温のやわらかい溶岩の中では気泡と使い分けた。)
 地下深くで高圧ならば、マグマに含まれる水や二酸化炭素など揮発性成分はマグマに溶け込んでいる。しかし、マグマが上昇して、低圧になると、温度は約1000℃あるので、揮発性成分は発泡して、気体になる。富士山噴火で流れ出てくる溶岩には、このような気泡がたくさん含まれている。
 厚い溶岩単層の内部は直ぐに冷えず、高温でやわらかい状態を長く保つことができる。高温状態の間、気泡は浮力で上昇し(沸騰したお湯の泡のように)中心部は気泡の少ない溶岩になる(T1)。
溶岩の表面付近が固まっていれば、上昇する気泡は大気中に出ることが出来ず、表面付近に気泡が集まり、また、気泡が合体して大きくもなる(T4,T5)。
溶岩単層の下部は冷えた下の溶岩層と接するので気泡を含んだ状態で固結する。したがって、溶岩単層と溶岩単層の境はクリンカーになる。
 気泡が少ないT1やT2の溶岩が割れ目などから流れ出るとパホイホイ溶岩になり、気泡が多いT4やT5の溶岩が流れ出るとアア溶岩、クリンカーになるに違いない(相原 淳 2011年)。

4. 気付いた事項

@溶岩の気孔の様子は溶岩の規模によって異なる。
A多孔質になると(T3以上)溶岩は割れやすく、ボーリングの作業中に割れてしまう。しかし割れ目が新しく、変色していない。
B溶岩単層と溶岩単層の境のクリンカーは変色しているが、地下水を通していたためと思われる。
C直径約0.5cmまでの小さな気孔は球形だが、大きくなると水平方向に長い不規則な形になる。
これは高温で流れている溶岩の中に気泡が出来ていたことを示している。
D溶岩単層の厚さが約4m以上になると、固まるのに時間がかかり、気泡が除かれて,T1ができるようである(2,011年2月、2,013年9月加筆)。
  
                                             (2,011年2月、2,013年9月加筆)

5,調査したボーリング資料

その1.郷土資料館建設地(小浜の森)ボーリングコアー 

海抜高度 39.8m、地表から深さ10mまでのボーリングコアー
2010年6月2日〜8月31日 調査

NO1

溶岩層名 深さ(m) 単層の厚さ(m) その他
表土  0〜0.8 0.76
溶岩単層1 0.8〜1.2 0.4 多孔質度T
溶岩単層2 1.2〜2.6 1.4 中心T3,T4
溶岩単層3 2.6〜5.8 3.2 気孔は少ないが、直径が大きい。〔直径3〜4cm)中心T1
溶岩単層4 5.8〜10 4.2 単層が厚くなると内部は緻密になる。中心8.4m付近T1

 

NO2

溶岩層名 深さ(m) 単層の厚さ(m) その他
表土 0−0.25 0.25
溶岩単層1 NO1の溶岩単層1はない。
溶岩単層2 0.25−6.3 6.1 中心2.8m付近でT1
溶岩単層3 6.3−7.8 1.5 中心T2
溶岩単層4 7.8−10m・・ 4.2 10m付近T1


その2.小浜池のボーリング コアー 

NO4
楽寿館の東方約40m付近
NO4の写真資料を参照。

溶岩層名 深さ(m) 単層の厚さ(m) その他
表土 0−0.6 0.6
溶岩単層1 0.6−3.3 2.7 多孔質度の変化 T2〜T3
溶岩単層2 3.3−4.8 1.5 多孔質度の変化 T3〜T2〜T3
溶岩単層3 4.8−6.6 1.8 多孔質度の変化 T4〜T2〜T3
溶岩単層4 6.6−12.2 5.6 T4〜T1〜T3、10mから11mまでT1
溶岩単層5 12.2−17.8 5.6 T3〜T1〜T4、15mから17mまでT1
溶岩単層 17.8−21.7 3.9 T4〜T2〜T3、空洞(20.6mから21.4m)
ローム層 21.7ー30+ 8.3+ ローム層と接する溶岩はT3で割れ目などない。

NO4の写真資料
コアーの直径5cm,地表(0.0m)から深さ30.0mまで。
1mごと、左が上で右が下。左右の枠の数値が深さである。(単位はm)


地表(0.0m)から深さから5.0mまで。
地表から2.5m付近までは本来の溶岩流ではなく、手が加わっているようだ。

深さ5.0mから10.0m

10.0mから15.0m

15.0mから20。0m

20.0mから25.0m  空洞(20.6mから21.4m)、ローム層(21.7mから)
ローム層へ接する溶岩は気孔はやや多いが、乱れがない。

25.0mから30.0m ローム層、保管時の汚れがある。


NO不明(楽寿館の西北西約15mのNO1と思われる。30m以深は欠)

溶岩層名 深さ(m) 単層の厚さ(m) その他
表土 0−0.7 0.7
溶岩単層1
0.7−3.1 2.4 中心は1.5m
溶岩単層2 3.1−6.1 3.0 中心は4.6m
溶岩単層3 6.1−12.0 5.9 中心は10.3mT1, 単層3と単層4の間はT4程度で変化。
溶岩単層 12.0−13.6 1.6 中心は12.8m 単層4と単層5の間はT4程度で変化。
溶岩単層5 13.6−16.1 2.5 中心は15.0m
溶岩単層6 16.1−21.6 5.5 中心は20.5mT1、17.5m付近に直径@0cmの気孔  
溶岩単層7 21.6−23.0 1.4 中心は22.3m
溶岩単層8 23.0−29.1 6.1 中心は26.5mT1, 29m付近に10cmの気孔
溶岩単層9 29.1−30・・・ 0.9+ 富士山三島溶岩上部層(土、1985年)は厚さ約31mとあるので、
残り1mで三島溶岩上部層は終り、ローム層混じりの砂礫層になるはずだ。

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