レピドシクリナと伊豆半島 地学を選択する高校生へ

1、レピドシクリナ(Lepidocyclina)

大型有孔虫レピドシクリナ(Lepidocyclina)は新第三紀の示準化石(*1)で、暖かい浅い海に住む、単細胞動物です。
細胞は1つですが、石灰質の殻をもち、多くの室に分かれています。殻に小さな孔が沢山あるので、この仲間を有孔虫と言います。
フズリナやカヘイセキなども有孔虫の仲間です。
殻の孔から細い足のようなもの(仮足)を出して、食べ物を捕えたり、移動したりします。
生活史は、図のように、大型レピドシクリナ(直径約1.5cm)の分裂で増える方法と、小型レピドシクリナ(直径約0.5cm)が配偶子を放出し、その配偶子が接合して増えるという、二つの別の生殖様式で増殖します。(世代の交番)


約 X10

2、日本のレピドシクリナの時代と分布

@今から、約1500万年前の関東地方から東北地方の地層からレピドシクリナの化石が見つかります。
その頃、関東地方から東北地方は気候が温暖で、浅い海にはレピドシクリナが繁殖していたようです。(示相化石 *2

Aその後、約1300万年前になると、関東地方から東北地方は気候が寒冷になり、海水の温度も下り、レピドシクリナは棲めなくなり、地層からレピドシクリナの化石は見つからなくなります。

Bしかし、伊豆半島の下白岩、梨本、差田、滑川では約1100万年前から約500万年前までの地層からレピドシクリナが見つかります。

3、下白岩層
伊豆市下白岩に分布するレピドシクリナが見つかる凝灰質砂岩の地層を下白岩層とよびます。
下白岩層は従来湯ヶ島層群(*3)の上部層とする考えもありましたが、岩相、構造、含まれる貝化石、浮遊性有孔虫群集調査などから白浜層群(*4)に属するとしたようです。(鮫島輝彦1966、茨木雅子1983、池辺展生1972)

その後、小山真人は梨本の石灰岩及び下白岩石灰質砂岩の地層全体の分布や構造を調べて、湯ヶ島層群に属するとしています。(小山真人2010、伊豆の大地の物語)


北東へ40度傾斜した下白岩層

レピドシクリナを含む石灰岩  第三紀中新世下部 埼玉県秩父

4、考察

2の@からBはどのように説明したらよいか、プレートテクトニクスの考えを入れて説明してみよう。

ヒント:フィリッピン海プレートは北西の方向へゆっくりと(1年に数cm)移動しています。
伊豆半島はフィリッピン海プレートに属し、ともに移動してきたと考えます。(下図)

*1 示準化石:進化が早く、特定の時代しか生息しない生物で、時代を決めることが出来る化石。(三葉虫は古生代、アンモナイトは中生代、、カヘイセキは新生代の示準化石です。)
*2 示相化石:地層が堆積した環境を示す化石。( サンゴやレピドシクリナは暖かい、浅い海を示します。)
*3 湯ヶ島層群:深い海の時代、海底火山による溶岩や火山灰が堆積した地層群。(2千万年前から1千万年前まで)
*4 白浜層群:レピドシクリナが生息する暖かい、浅い海の時代、海底火山による溶岩や火山灰が堆積した地層群、凝灰岩、石灰岩など(1千万年前から2百万年前まで)

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