島弧火山の噴火活動  2014年8月 作成中

1.はじめに 

 プレートテクトニクスによるプレートの沈み込み帯に分布する弧状列島の火山を島弧火山という。日本の火山は島弧火山である。
島弧火山のマグマ溜りは、地震波の調査から、火山の地下数Kmから十数Kmのところにあり、その大きさは直径が約10Kmと調べられている。

2.島弧火山へ働く力

  図1は島弧火山へ働く力と、岩脈を説明する模式的地図である。島弧火山へ働く力は2つ考えられる。
@ 1つは海洋プレートが大陸プレートへ働く押す力である。富士山、箱根火山、伊豆半島、大島などでは南南東から北北西の方向へ働いている。この力によってできる岩脈は押しの力の方向と平行にできる。
A 2つ目はマグマ溜りや火道のマグマの力である。この力はマグマ溜りや火道の周辺の岩石を押す力になる。この力は周辺の岩石へマグマ溜りや火道を中心に放射状の割れ目をつくって入り込んでいき岩脈をつくる。
プレートの押しの力とマグマの押しの力が一致した方向は力が大きくなり、その方向の岩脈は多くなり、側火山も多い。(図1、写真1)

 
図1
マグマ溜りや火道からのマグマの力は周囲の岩石を押す力で中から外へ向かう力だが、
図では説明上方向を外から中へ茶色の矢印で示してある。(作用反作用の法則)
 
写真1 富士山の宝永火口内壁(宝永山頂から富士山頂の方向を写す。)
プレートの押しの方向と一致する5枚程の平行した岩脈が観察できる。
 
図2
地震波や地質の調査資料から想像した島弧火山の模式的な垂直断面図である。
岩脈は薄く板状である。

3,島弧火山の噴火について
 
 マグマ溜りや火道に、次のような現象が発生すると噴火活動をおこす刺激となる。
@マグマの結晶分化により、気泡が増加して、圧力が増す。
A地震断層により、マグマ溜りの圧力が減少し、発泡温度が下がり、気泡が増加して圧力が増す。
B深部からマグマ溜りへマグマの供給があるとマグマ溜りや火道の圧力が大きくなる。

 島弧火山の山頂噴火はマグマ溜りの圧力が増加し、管状の火道へ大量のマグマが送られ、長期にわたって、噴火を繰り返す。このような噴火活動により、富士山のような複成火山ができる。

 複成火山の山腹にできる側火山(寄生火山)はマグマ溜りや火道の圧力が増加し、周囲の岩石へ割れ目をつくり、気泡やマグマが貫入して岩脈ができる。割れ目が地表へ達したときに側噴火が行われ側火山ができる。側火山の火道は線的で、噴火が終わると火道のマグマは直ぐに固結し、単成火山となる。
 噴火が始まるとマグマ溜りや火道の圧力は減少し、火山全体の膨張や地面の隆起はなくなる。
 側噴火は割れ目噴火で、マグマの供給は管状の火道ではなく、面的な火道である。しかし、噴火に偏りが生じて、最終的には管状の線的な火道となるようだ。

4. マグマ溜りのマグマの組成変化について

 マントルウエッジで生まれたマグマが上昇して、マグマ溜りをつくるとき、マグマの組成は初め玄武岩質と考えられる。しかし、長い火山活動の間には、結晶の重力分化、マグマ溜りの周辺の岩石の溶け込み、新しいマグマの補充などで、マグマの組成はいろいろ変化する。従って溶岩の組成や火砕物の違いに重きを置いて、火山を分類すると複雑になる。
 同じマグマ溜りからの噴火活動と思われる複成火山は噴火活動に時代的隔たりがあって、組成が変化しても、1つの複成火山とすべきではなかろうか。(2014 相原) また、山頂火口からの噴火による主となる複成火山と側火山の区別も必要になる。

もどる