核分裂と原子力発電 2011年8月7日 中学・高校生の皆さんへ
 

1.原子について
原子は中心にある原子核と周りを回る電子からできています。
原子核は陽子や中性子が引き合っていて、大きな核エネルギーを持っています。
核融合や核分裂で核エネルギーを放出します。  

2.核分裂
1つの原子核が2つの原子核に分かれることがあり、これを核分裂といいます。
このとき、ぼう大な核エネルギーを放出します。
原子番号92 U (ウラン)の質量数が異なる放射性原子核(同位体)について調べてみよう。
 は陽子の数が92、中性子の数が143、陽子と中性子を加えた質量数が235です。
に下図のように中性子が当たって吸収されると、2つの原子核に分裂します。
分裂してできる原子核はKr、Ba、Cs 137、I 131などいろいろな原子核です。


このとき、核エネルギーとして、γ線(ガンマー線)や中性子(2ないし3個)などを放出します。放出された中性子は他のに当たって、次々と核分裂が行なわれます。 *1
に中性子が当たって吸収されると核分裂せず となります。
は電子を放射して(ベーター崩壊)プルトニウムになります。プルトニウムになると中性子を吸収して核分裂するようになります。
使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して、原子力発電に使うのが、プルサーマルです。

3.核分裂のキーワード「連鎖反応」と「臨界量」について
「連鎖反応」:上の図のように、1個の核分裂で放出される中性子は2〜3個で、中性子はねずみ算式に増え、分裂が連鎖的に起こるようになり、これを「連鎖反応」といいます。
「連鎖反応」が短時間に急激に起こると、多量の熱と放射線を放出し、核爆発が起こります。
「臨界量」:核分裂の物質ウランがある量以上集まっていないと、分裂で放出された中性子がウランに当たることなく、通過して、「連鎖反応」を持続させることができません。従って、ある程度以上の量が集まっている必要があります。この量を「臨界量」といいます。

4.原子力発電
原子力発電の原子炉では、核爆発しないように、核分裂の連鎖反応を制御しながらエネルギーを取り出しています。
制御できなくなったときの大きなリスクを抱えています。
電力業界は原子力発電のリスクを伏せて、推進してきました。
1979年のスリーマイル島、1986年のウクライナのチェルノブイリ、そして福島の原子力発電事故から、原子力発電や自然現象の恐ろしさを謙虚に受け止め、原子力発電を縮小の方向へ進めなくてはならない。

5.ベクレル、シーベルト、半減期について

ベクレル(Bq) :野菜や水に含まれる放射能の量を表す単位です。
食品の放射能汚染の規制 1Kg当たり370ベクレルを超えると、日本に輸入できない。
シーベルト(Sv) :人体が受ける放射線の強さです。
一般の大人が法律で許されている被ばく量は年間1ミリシーベルトです。
妊婦の赤ちゃんや小児は放射線に敏感なので、許される被ばく量を大人の半分にした方がよいようです。
(胸のレントゲン写真1回は0.06ミリシーベルト)
受ける放射線が少なくても、運悪く放射線が遺伝子に当たり、遺伝子を壊すことが考えられますので、できるだけ少ない方が良いのは当然です。
広島、長崎の被ばく者9万人の統計学的調査では、年間50ミリシーベルトの被ばく量でも、がんや白血病になる確率が高くなるようです。(米国1950年からの調査)

ベクレルとシーベルトは地震のマグニチュードMと震度の表現に似ていますね。並べて覚えると良いかも。
ベクレル(放射能の量)→マグニチュードM(地震のエネルギーの量)
シーベルト(人体が受ける放射線の強さ)→地震の震度(受ける揺れの大きさ)

放射能の半減期
放射能の量が半分になるまでの期間を半減期といいます。
今心配されている放射性ヨウ素の半減期は8日、放射性セシウムの半減期は30.1年です。
水道水に放射性ヨウ素が含まれている場合、ポリタンに入れて8日間経過すれば放射能は半分になります。16日経てば4分の1、24日経てば8分の1・・・・になります。
水道水の放射能は測定し公開されていますので、少ない日にポリタンへ入れて、日が経ってから使うと良いですね。

*1 原子核が崩壊するとき、α線、β線、γ線などの放射線を放出します。
α線:陽子2個と中性子2個の原子核。(ヘリウムの原子核)透過力は弱く、紙1枚で遮蔽できるようです。
β線:高速度の電子。アルミニュウムの薄い板で遮蔽できるようです。
γ線:光やX線より波長が短い電磁波です。透過力は強く、鉛の厚い板でないと、遮蔽できないようです。