NO.036
気になる樹  乗鞍の冬 05頁

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  その日、雪原はシーンと静まりかえっていた。風もパタッと止んで、物音ひとつしない。私はいつものようにどじょう池の先の大木を写そうと歩いてゆくと、空の一角が青白く輝き、炎のような水蒸気が猛烈な勢いでこちらに向かってくるのが見えた。
 何だ、なんだ! どうしたんだ!
 雲のような、蒸気のような青白い火の玉が空からサーッと降ってきた。ワァーっ、と雪面に伏せながら、1枚パチリ(だてにカメラを下げているんじゃないよ)。
 瞬間、ファインダーの中で炎が炸裂。私は何も見えなくなって、ギャッ、と雪の上に倒れてしまった。

 

 

 

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