NO.036
気になる樹  乗鞍の冬 06頁

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 目は見えない。体が硬直してしまって、力が入らないので転がったままでいると、「お前が見たことは人にしゃべるでねえど。いいか、木霊はああやって宇宙から精気をもらって厳しい冬に耐えているんだ」と風がうなるように囁いた。
 そうか、あれは宇宙の精気だったんだ。動物は雪の中の巣穴で冬を過ごすけど、樹木は天の恵みで冬を越すのかあ。自然て、偉いなあ、うまくできているなあ。
 しばらく経って立ち上がると、何事もなかったように、大木のてっぺんで太陽が輝いていた。

 

 

 

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