ウソ丸見えストーリー 創刊準備号

その零「陣(じん)くんたちの野望」〜リミテッド

みなさんは大阪は心斎橋筋2丁目劇場の漫才コンビ、リミテッド(西口・陣内)を覚えていますか?
彼らリミテッドがあっけなく解散してしまったことはまだまだ記憶に新しく、活躍もこれからだと期待していたところのその事実はショッキングでした。コンビが 不仲だったのか、経済的に苦しかったのか、それとももっと他の事情があったのか。解散にまでいたってしまった理由もかなり気になるところです。最近で はボケを担当していた西口の姿をすっかり見かけなくなりました。またツッコミ役の陣内ももし千原兄弟の弟・ジュニアとそれほど仲がよくなかったら、今ほ どテレビに出る機会を与えられていないのかも知れません。いったい解散の真実はどこにあるのでしょうか。


陣内は独り悩んでいた。さっき、元相方の西口から相談の電話がかかってきたのだった。何やら最近ジンマシンがよく出て困っていて、日本に帰りたいと訴 えていたのだった。そう西口は現在日本にはいない。カリフォルニアに住んでいるのであった。最近見かけないのも納得がいく。
「大丈夫、大丈夫。カリフォルニア巻の食べ過ぎやろ。アボガドに当たったんちゃうか。帰ってきたい気持ちもわかるけどなぁ、もうしばらくそっちでがんばれ や」と、とっさに答えたけれども本当は心配で心配でたまらなかった。
西口は今、遠い異国でタップを踏んでいるのでもない。本場のアメリカン・ジョークを勉強しているのでもなかった。
「でも、かゆいねん…」と、受話器の向こうの、涙ながらにくじけそうな西口に、「何ゆうとんねん。俺らの夢もだいぶ近くなったやんか。ガマや。」と、心を鬼に して言葉を振り絞らなければならない陣内だった。
彼らの夢。正確に言うと彼らの計画である。思い起こせばNSC(吉本総合芸能学院)に入学したのも、リミテッドで舞台に立ったのもそうだ。彼らには大きな 大きな夢がありそれを実現するべくある計画を実行しているのだった。
そして今回の解散も実は壮大な計画の一部分に過ぎなかった。これは仲間にも会社にも内緒である。陣内と西口だけの秘密でまだ誰も気付いていない。 すべてが順風満帆である。

西口が外国に住んでいるのにももちろん訳があった。彼はヘア・デザイナになるための修行をしているのだ。陣内の強いすすめのもとに西口は飛び立った。 カリフォルニアをヘア・デザインの本場と勘違いしているところなどは彼ららしい。
日本に残った陣内も何もしていない訳ではなかった。彼は劇場に出演することで2丁目にやってくる女子中高生を舞台の上から毎日毎日チェックし、近頃 の流行のファッションというものを研究し、メイクの技術を盗んでいたのだった。そしてそこで学んだテクニックを自分の身につけるための努力ももちろん怠 ってはおらず、よく若手芸人たちのコントのメイクも陣内が進んで施してやっていた。

『サロン・ド・リミテッド』これが陣内と西口の大きな大きな夢の最終到達地点である。二人で長年の間ずっと開きたいと考えてきた美容院の店の名前だ。 さすが彼らひねりがなさ過ぎる。今までの彼らの人生はこの店を開きたいがための大計画だったのである。

いつの日か彼らは自分たちの生まれ育った神戸にカットからメイク・アップまでコーディネイトする店をオープンし、西口のハイセンスなカットと陣内による メイク・アップのアドバイス、そしてリミテッド時代につちかった話術でお客さんに楽しいひとときを過ごしてもらおうという訳である。自分たちを育ててくれた 神戸という街への感謝の気持ちも込めて、その近隣に住む人たちに恩返しがしたい彼らであるが、なにせ西口はカットの勉強よりもカリフォルニア巻を食 べるほうに必死のようである。また陣内もコント用の汚れのメイクばかりで忙しい。

端から見ている者は不安であるが、彼らの計画はまだまだ始まったばかりなのである。


リミテッド(西口圭・陣内智則)

平成4年4月結成のNSC十一期生同士のコンビ。
存在感がないことをアピールすることで存在感を示していた西口。強引なツッコミは今でも変わらない陣内。
たった3年半で解散してしまったが、人々の記憶と共に忘れ去られるにはおしいコンビである。

1号へ
ウソ丸見えストーリーメニューに戻る