ウソ丸見えストーリー 1号

その壱「メッセンジャーとワンカップ」(前編)

この地球上にはいったい何人の人がいるのだろう?毎日笑ったり、悲しんだり、踊ったり、つまづいたり、感動したり、やけくそになったり、生まれてきたり、 死んでいったり。みんなそれぞれに生きているけれども、一人の人間が一生の間に出逢う人数なんて地球全体の人口から考えたら、ほんのわずかなも のだ。
そんな中、何気なく自分の間近にいる人たちというのはすごい運命に導かれてやって来た人たちなのかも知れない。そんなことを考えると、ちょっと気の 合わない人とでも、少しは仲良くしてみようかと思えてくる。
漫才師には必ず相方がいるけれども、彼らはその相方をどのようにして決めたのだろう。日本にだけ限定して考えても、自分以外の人間は一億人以上も 住んでいる。その中からたった一人だけ、そう、たった一人だけ自分の相方に選ぶことができるのだ。
冒頭のランキングにも挙がっているメッセンジャー(会原・黒田)は、NSC(吉本総合芸能学院)に入学したのがきっかけでコンビ結成となった。 同じ目標があったとはいえ、二人はここで出逢うべきして出逢ったような気がしてならない。
メッセンジャー・黒田と千原兄弟のせいじお兄ちゃんというコンビって面白いと思うし、同じ時期に入学したのジャリズム・渡辺、メッセンジャー・会原というコ ンビも考えられないことはないけれども、やっぱりメッセンジャーはあの二人でないと嫌だ。類は友を呼んだのか。それとも、ただの偶然か。それとも、運命 の巡り合わせなのか。二人揃うと見ている方も妙に落ち着いてしまう、メッセンジャー結成の秘密を探ってみよう。


自分ではそんなつもりはなかったのだけれども、いつも仕事からの帰り道の途中にあるコンビニの店員に、「いらっしゃい。会原さん、昨日もテレビ見ました よ。」と愛想よく言われてしまうということは、毎日立ち寄るのが習慣になってしまってるのだろう。晩飯を食べていても食べなくていなくても、味わいカルピス とブルボンルマンドかホワイトロリータなどのちょっと甘めのお菓子をとりあえずカゴの中に入れる。ひとまずこれで安心したら、次は雑誌の立ち読みだ。本 当に自分は常連客らしく、カゴの中のカルピスがたっぷりと汗をかくまでこのコーナーにいても、店員が黙認してくれている。
心ゆくまでネタ作りの情報収集ができたらやっとレジに行くのだが、「そうそう、これを忘れてたやん。」とポッキーをカゴの中に入れて今日の最後の買い物 は完璧だ。レジのすぐそばに何種類もつり下げられている通常の箱入りのものより安くて、本数も少なめのアルミのパックに入ったポッキーだ。
コンビニを出たら自分のアパートまではもう目と鼻の先で、コンビニのすぐ隣りの酒屋の前に並ぶジュースやお酒やたばこやビールなどの自動販売機を通 り過ぎたらもう到着である。

自分の部屋で誰が待っている訳ではないのだけれども、「あぁ疲れたー。」と家に着くなり冷蔵庫のドアを開けていつものアレを・・・
「な、ない。クソ黒田のやつ勝手に飲みやがった。」昨日新しいネタを考えようと久しぶり黒田がうちに泊まっていたのだが、ちょっとだけ眠りこけたすきにや られてしまったようだ。アレがないと一日が終わらない…。
「面倒くさいけど、しゃあないなぁ。」とアパートから先ほどの道を引き返そうと酒屋の方を見た。
イヤな予感だ。自分はなぜだか昔から視力はいいほうで、お酒とたばこの自動販売機のボタンに全部赤いランプがついているのが良く見える。
「まさか、売り切れとか。さっきここを通った時には、全部あったよなぁ。」近くまで足を進めると、どのボタンも「販売禁止」と赤く輝いている。売り切れではな いようだが、午後十一時を過ぎるとお酒とたばこの自動販売機は店じまいになってしまうらしい。
腕時計を見ると「十一時五分」。その針の指す形が、吉本興業のにやけた会社のシンボルマークに見えてきて、余計に腹が立ってきた。
「黒田、覚えとけよ。」

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メッセンジャー(会原雅一・黒田有)

平成3年4月結成のNSC10期生同士で心斎橋2丁目劇場で活躍する。
このコンビの心地良さ、それは二人のコントラスト。オール阪神・巨人や今いくよ・くるよは見た目が対称的だけれども、メッセンジャーは二人の声がそうと 言えよう。黒田の地を這うようなボケに会原が天からツッコんでくるのに魅力を感じている人も少なくないはずだ。

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