『AHAHA』6号リレーコラム

『“ゲーム・マンガ・プロレス”とは?』

桜恵 歌織

ロッカーなら“セックス・ドラッグ・ロックンロール”と言うように、コギャルには“日焼け・茶髪・ルー ズソックス”が似合うように、芸人には“ゲーム・マンガ・プロレス”が切っても切っても切り離せない。
芸人であるための必須アイテムとは思えないけど、特に若手のプロフィールを見ていると、これら3つのい ずれかを趣味としている人が多いことは確か。
“ゲーム”や“マンガ”は、芸人に限らず若い世代全体の傾向とも言えますが、これだけ口を揃えて“プロ レス”となると、芸人魂に訴えかけてくる魔力のようなものが潜んでいるようにも感じられます。
“ゲーム・マンガ・プロレス”、芸人さんにとってどんな魅力があるんでしょうね。

飯野 形而

今は格闘技ブームですから、10〜20歳代男性のプロレス・ファンは、女性が想像するよりも多いですよ。
ただ彼らにとってのプロレスは密かな楽しみであり、人前で積極的に話題にすることはない。理由はもちろ ん、女性にモテないから。
リットン調査団、バッファロー吾郎、G★MENSあたりがコアなプロレス話をすると、女の娘たちは「ひ く」でしょう。それでも頻出するプロレス・ネタは、彼らが信じる「芸」なのか、女の娘への啓蒙か、ある いはプロレス者の抑えきれない衝動なのだろうか?
他方、男性にとってのプロレスのように、女性固有の楽しみで男性が「ひく」ようなネタもありますよね。 例えば、元−4℃松本美香のジャニーズ・ネタ。私は大好きですが…。

鳥崗 シヱテ

すみません、その松本美香さんのジャニーズネタは見たことがないんですけど、想像するに、ご本人はとて も楽しそうにやっておられるのでしょう。 そういえば、吉本印天然素材が飛ぶ鳥を落とす勢いだった1992年に放映されたテレビの特番で、当時坊 主頭だったバッファロー吾郎・竹若さんが“自分たちが面白いと思うものを、お客さんが分からなくても、 うまく伝わるようにやっていきたい”と初々しく語る場面がありました。 『コア』なネタであればあるほど、それが伝わって笑いを取れた時って、芸人さんにとっては大きな喜びな んでしょうね。 プロレスネタを共有できない“女の娘”である私は、芸人さんのそういう楽しげな姿を見るのが楽しみなの です。

太田 雅文

舞台で楽しい顔を見ているとその裏にある努力や苦しさってどんなだろうと思いがちなんですが、“ゲーム ・マンガ・プロレス”ネタって好きな演者にとっては、まずは楽しさが先にくるジャンルなんでしょうね。
東京の若手芸人さんもプロレスが大好きな方が多くて、大きな試合ではよく見かけるんだけど、あまりそれ をネタの中には出さないので知られていないようです。
『楽しい』ことのこだわりをネタという仕事にあえて生かさない、その辺のストイックさが『楽しい』こと をまっすぐに提示できる大阪芸人のネタ作りとの違いのような気もします。
シビアに考えれば大阪の芸人さんは仕事に甘い、舞台に対するプロ意識に欠けるのかなあ。

杉久 彰子

「プロ意識」?「遊び」という領域が仕事の彼らが、仕事と遊びを共存させるところに「プロ意識」の稀薄 さを指摘するのはなにか矛盾を感じます。仕事か遊びかよりもむしろ客に伝わる努力を欠いている人こそ 「プロ意識に欠ける」というんじゃないでしょうか。 それを知っている人にしかわからないようなやりかたをして、内輪受けに終わってるのに納得しちゃうのが 問題なわけで。何を言ってるのか分かろうが分かるまいが、見てる方は笑えたらいいんですけどね、結局の ところ。 万人の知る事ばかりで表現するよりも、別に知らない(意味不明の)ことでも面白く刺激的に伝えることが できるのが「プロ」なのではと思うので。

宮下 きぬ子

天然素材を見て「ゲーム・マンガ・プロレス」ネタが出る度、「あーこれを男の子に見て欲しいのに!」と いつも思った。メジャーな家庭用ゲームしかやらない、自称ヌルゲーマーの私でもすら、わかるようなゲー ムネタがあると思いっきりツボ入ってしまうぐらいだから、きっと同じものを見てきている男の子達なら私 以上に楽しんでもらえるのに、と。自分がプロレス話のわからない「女の娘」なのが悔しかった。
でもそれは、例えば男の子の友達にお気に入りのCDを貸してもらったり、ハマってるゲームを勧めてもらう 時みたいに楽しい。
杉久さんの言う様に結局は「どんな風に伝えられるか」なのだと思う。見る側が「うわーそれ見てみたい!」 と思えたのなら「表現者」として勝ってる!と思うのです。

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